embassy seal U.S. Dept. of State
Japan Embassy flag graphic
U.S. Policy Documents


欧州概観

2001年10月10日、米国国務省での会談後、記者団に語るNATOのロバートソン事務総長とパウエル国務長官
2001年10月10日、米国国務省での会談後、記者団に語るNATOのロバートソン事務総長とパウエル国務長官

 「テロ撲滅の戦いは新たな段階に達した。この戦いは、多くの分野で決意と忍耐を持って推進されるだろう。反テロ連合は、その役割を果たす用意ができている」

ロバートソン北大西洋条約機構(NATO)事務総長、2001年10月8日

 欧州諸国は9月11日の同時多発テロ直後、この危機に対処するための支援を直ちに提供し、さらに、国際的な反テロ連合の構築と維持のため献身的に取り組むなど、目覚しい対応を見せた。米国と欧州の友好国・同盟国は、2国間および多国間の枠組みで共同で取り組むことで、協調して行動することの重要性を示した。ひとつの共通した目標に対し緊密な協力関係を維持することは、長期間に及ぶ作戦を成功させるための強力な要素になるであろう。

 多くの欧州諸国は、法執行および諜報分野での情報交換、同時多発テロ事件の捜査、そしてテロと戦うための法律の強化を迅速に行った。英国、フランス、イタリア、そして他の欧州の同盟国は、アフガニスタンからタリバンとアルカイダを掃討する軍事作戦に、米国とともに参加した。9月11日の事件発生時に欧州連合(EU)理事会の議長国(6カ月任期交代制)であったベルギーは直ちに、テロとの戦いをEUの中心課題にした。スペインは、バスク地方のテロ組織「バスク祖国と自由」(ETA)の弱体化を進めるだけでなく、国内のアルカイダ細胞の指導者やメンバーを逮捕し、さらに、EU理事会議長の任期中(2002年1月から6カ月間)もテロ対策を中心議題とした。ベルギー、ボスニア、フランス、ドイツ、イタリア、英国でも、同様にアルカイダに関係する容疑者が逮捕された。

 イタリアはG8の議長国であった期間中、法執行分野の専門家(リヨン・グループ)とテロ対策専門家グループ (ローマ・グループ)との共同作業に指導力を発揮し、その結果、テロ対策行動計画が大幅に進展した。フランスは、国際的な反テロ作戦に対し、政治、外交、軍事面で際立った支援を行った。フランスはまた、国連のテロ対策能力を高める措置と、欧州内でのテロ対策に関する地域協力を推進する措置の強化も支援した。ギリシャの反テロ連合に対する支援は注目に値するが、テロ組織「11月17日革命機構」のメンバーの逮捕や訴追が進展していないことが懸念される。ドイツの同時多発テロへの対応は目覚しく、外交や法執行、軍事などの主要な活動に重要な貢献をした。ドイツの警察は、同時多発テロ事件に関連する糸口の捜査を迅速に始め、アルカイダのメンバーを特定し、拘束し、逮捕した。トルコは、外交と政治面で全面的な支援をしただけでなく、アフガニスタンでの軍事作戦でも後方支援や基地の提供など重要な支援を行った。トルコ政府の取り締まりが功を奏し、クルド労働者党(PKK)、革命的人民解放党・戦線(DHKP・C)やトルコ・ヒズボラの活動は打撃を受けたが、これらの組織は依然として破壊的な攻撃をする能力を維持している。

 同時多発テロに対する、EUと北大西洋条約機構(NATO)を通じた欧州諸国の反応は、迅速でかつてないほど強力であった。EUは、国際的な反テロ連合の維持や政治協力の推進に当たり、強力なパートナーであることを示した。EU(議長国はベルギー)は同時多発テロが起きたその日に、米国との連帯を表明した。EU加盟国は、強力なテロ対策決議の採択に向けた米国の国連活動や、テロに対する第三国の取り組みを求める米国の外交活動を強力に支持した。EU理事会はその後、警察や司法分野の協力、人道支援、輸送機関の警備、経済・金融政策などのテロとの戦いに資する分野を特定するため行動計画を採択した。理事会はさらに、資産凍結などテロリストとその支援者に対するEUおよびEU加盟国の法的・行政能力を大幅に強化するため、「コモン・ポジション(共通姿勢)」、包括的な規制そして実施決議を採択した。EUは、国連決議を待たなくともEU全域でテロ資産を凍結できる規制を採択することを通じ、テロ資金の移動を阻止する能力を強化した。米国は12月、EUとの間で当局間の協力を促進するため、「米国・欧州警察協定」に署名した。EUは、加盟国間でのテロリスト犯の引き渡しを大幅に円滑化する加盟国共通の逮捕状に関する合意を得た。EUは議長国であるベルギーの指導の下、テロに関連する個人と組織の資産を凍結する規制についても合意し、欧州議会は12月、この措置を承認した。EUはさらに、テロの定義とテロ組織のリストを共有することにも合意したのに加え、金融制度を利用した資金洗浄を阻止し、かつテロ関連犯罪から得られた資金にも資産凍結手続が拡大適用できる指令を迅速に採択する意図を含め、テロとの戦いに協調して対処した。EUは、共通のテロ対策を取る能力を改善するため、EU域内、米国そしてその他の国々との協力を続けている。

 NATOは初めて北大西洋条約第5条を発動し、テロに対する自衛に向け組織の総力を傾注した。NATO軍は、アフガニスタンのテロリストの隠れ家としての役割を終焉させ、また、米国をさらなるテロ攻撃から守るため、直接的な軍事支援をするなど重要な役割を果たした。

 NATOの新規加盟国であるチェコ共和国とハンガリーは、9月11日の事件直後、人道支援と軍事支援を申し出た。バルカン半島の米英部隊を「埋め合わせる」様々な申し出がある中で、チェコは、第9NBC(核生物化学兵器担当)中隊を派遣し、クウェートで不朽の自由作戦に参加させ、またNATOにTU-154輸送機を貸与した。ハンガリーは軍事医療部隊を派遣したほか、地域の他国に対しテロ対策訓練も行っている。両国は、東京で開かれたアフガニスタン復興支援会議で同国に対する大規模な人道支援を約束した。

 ビリニュス諸国10カ国 (アルバニア、ブルガリア、クロアチア、エストニア、ラトビア、リトアニア、マケドニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア) は共同で、また個別に、9月11日のテロ攻撃を非難した。これらの国々は、国際的な反テロ連合を積極的に支持し、軍事・外交支援を行い、また一部の国は後方支援も行った。これらの国々は、国境警備の強化から不審な金融取引の調査まで、数多くのテロ対策措置を実施した。

 欧州南東部では1999年以降、アルバニア系過激派組織がセルビア南部やマケドニアで政府軍を武力攻撃している。2月には、「民族解放軍」 (NLAまたはUCK) と名乗る民族系アルバニア人過激派が、マケドニアで武装蜂起した。7月に解散を宣言したNLAは、マケドニアだけでなく、コソボやその他の地域からも資金や武器の提供を受けていた。NLAとセルビア南部に展開する「プレシェボ・メドベジャ・ブヤノバツ解放軍 」(PMBLAまたはUCPMB)と呼ばれる組織は、「コソボ人民運動」や「コソボ解放民族運動」などのコソボの政治団体と強力なつながりを持っていた。NLAとUCPMBはどちらも民間人や治安部隊の隊員を殺害したほか、自らの支配地域で民間人に対する略奪や監禁行為を行った。いわゆる「アルバニア国軍」(ANAまたはAKSH) や「アルバニア国土解放・保護全国委員会 」(KKCMTSH) を含むその他のアルバニア系武装勢力も暴力を標榜し、マケドニアやこの地域で政府庁舎などに対する威嚇を行っている。

 

アルバニア

 アルバニアは、9月11日の同時多発テロ以降、米国の活動に対して「あらゆる支援」を約束し、国際テロとの戦いに積極的に関わってきた。アルバニア政府と政治指導者は、テロ攻撃を直ちに非難した。政府はまた、不朽の自由作戦に参加する奇襲部隊やNATO部隊に対する空港や港湾へのアクセスを約束した。さらにアルバニア議会は国内の全銀行に対し、テロと関連する疑いのある個人の口座を特定し、資金の引き出しや送金を阻止するよう求めた。アルバニアの裁判所は、すでにアルカイダ支援者の疑いのある人物1人の資産を凍結した。財務省は、資金洗浄を防止する法律を強化する作業を進めている。

 テロ活動支援組織と特定された、中東に本拠を置くさまざまな非政府組織(NGO)が、アルバニアでも活動を続けてきた。一部NGOは偽造書類を用意したり、テロリストの移動を支援するなど、地域のイスラム過激派を援助してきた。しかし、アルバニア政府は10月初め、国際的なイスラム過激派に関係していると見られるイスラム関連NGO4団体のティラナの本部を同時に急襲し、幹部の拘留と取り調べを行い、その後、家族と共に母国の警察当局に引き渡した。アルバニア当局はさらに10月末から12月にかけ3度の急襲を行い、過激派の活動を支援している疑いのあるイスラム系NGO2団体と、米国財務省の監視リストに掲載されたアルカイダ支援者が所有するアルバニア企業のティラナ本社を捜索した。アルバニア政府は、これら組織の幹部を拘留し取り調べた。

 アルバニアは、さまざまなレベルで米国のテロ対策活動に緊密に協力している。しかし、国境警備が全く不十分で、また汚職や組織犯罪、そして制度的な欠陥ともあいまって、アルバニアはテロリストやイスラム過激派に利用される、格好の標的になっている。

 

ベルギー

 9月11日の悲劇に対するベルギー政府の反応は迅速で協力的であった。フェルホフスタット首相は、同時多発テロ攻撃をその日に公然と非難し、翌12日にも欧州議会の場で再び非難した。ベルギーが議長国を務めた2001年後半の6カ月間に、EUは、テロに対する戦いで大きく前進した。ベルギーは事件直後、テロ対策をEU改革の最優先課題に据えた。ベルギーはまた、加盟国間での犯罪容疑者の引き渡しを大幅に円滑化する欧州共通の逮捕状導入のカギとなる、加盟国の総意取り付けを支援した。またNATO同盟国として、海軍のフリゲート艦1隻を地中海に派遣し不朽の自由作戦を補強したほか、アフガニスタンに対する人道支援のため航空機を提供した。

 ベルギーは、情報の共有から政策決定に至るまで、多くのレベルで米国のテロ対策活動に協力した。ベルギー当局は、パリの米国大使館に対するテロ未遂事件で、チュニジア国籍のニザル・トラベルシ容疑者とモロッコ国籍のタブデルクリム・エル・ハドウティ容疑者(アフガニスタン北部同盟のマスード将軍を暗殺した自爆犯への偽造書類の提供を手助けしたとして、モロッコで起訴されているサイド・エル・ハドウティの兄弟)を9月13日に逮捕した。警察はまた、トラベルシ容疑者の住居から軽機関銃、弾薬そして爆発物製造の化学マニュアルを押収した。

 しかしテロリストは、寛大な外国人保護法制や開かれた陸上国境を持ち、そして捜査・起訴・手続面の欠陥を抱えるベルギーを、国際テロ攻撃のための準備場所として比較的利用しやすいと考えている。ベルギー旅券が偽造されたり、政府庁舎から盗まれたことで、テロリストの移動が容易になった。例えばアフガニスタンでマスード将軍を9月9日に暗殺した自爆テロ犯2人は、フランスとオランダの領事館から盗まれたベルギー旅券に偽名を記し、ジャーナリストと偽りアフガニスタンに入国していた。ベルギー政府は2001年3月、最新鋭の偽造防止機能を持つ新たな旅券を導入した。

 ベルギー当局は12月、チュニジア生まれでベルギー国籍のタレク・マロウフィ容疑者を、偽造ベルギー旅券の取引に関与した疑いで逮捕した。マロウフィは、偽造、犯罪への関与、外国の軍隊のための隊員募集を行った容疑で起訴された。ベルギー当局は、偽造旅券がマスード将軍の自爆暗殺犯によって使用された旅券と関係があると見ている。イタリア当局も、既知のアルカイダ細胞との関係からマロウフィの行方を捜索していた。ベルギー当局は12月22日、アメリカン航空63便の爆破未遂事件で逮捕された、「靴爆破犯」リチャード・リード容疑者に関する捜査も開始した。リードは、12月5日から16日の間ブリュッセルのホテルに宿泊し、現地のインターネットカフェに頻繁に出入りしていた。

 ベルギーはテロの脅威に対処する能力を強化するため、立法と司法分野の対策を追加している。ベルギー政府は、欧州諸国や米国と協力し国際テロ事件数件の捜査を行った。ベルギーの閣僚は11月、電話盗聴や密告者の利用などさまざまな捜査方法の採用を円滑にすることを目的とした法案に合意した。

 ベルギーは、タリバン関連の資産の凍結を求める国連安保理決議のすべてを完全に履行している。

 

ボスニア・ヘルツェゴビナ

 ボスニア政府は9月11日の同時多発テロ後、国際テロとの戦いに利用可能な資源のすべてを投じることを約束した。ボスニアはイスラム過激派の中継点として利用されてきたため、国境管理当局は、空港到着時での記入を義務づける新たな入国証明書類の導入を含め、国境管理をより効果的にするためさまざまな措置を実施した。

 内務省は9月11日の事件後、ビンラディンの副官の関係者であるアブ・ズバヤダ容疑者とアルジェリアの「武装イスラム集団」 (GIA) の工作員である可能性のあるアルジェリア人5人を含め、テロ活動に関与した人物数人を逮捕した。拘束されたGIA活動家の1人、サビル・ラマル容疑者は、過去に国連ボスニア・ヘルツェゴビナ平和安定化部隊(SFOR)や米国の権益に対する脅迫行為を行っていた。

 ボスニア政府は9月11日の事件以前も、テロ対策措置を積極的に取っていた。ボスニア当局は4月、カナダ滞在中にアハメド・レッサムと同じ部屋に住んでいたGIAの一味と見られるサイド・アトマニ容疑者を逮捕し、7月には、国際刑事警察機構を通じて指名手配していたフランスに引き渡した。ボスニア政府当局は同月、エジプトの組織「アル・ガマア・アル・イスラミア」のメンバーであるイマド・アルミシリ容疑者とアルシャリフ・ハッサン・サアド容疑者の2人を逮捕した。彼らの身柄は10月にエジプトに引き渡された。

 しかしながら、ボスニアには、テロ活動支援団体と特定されたさまざまなNGOが活動していた。ボスニア戦争(1992年から1995年)当時この地域に進出したNGOは、偽造書類の調達やテロリストの移動支援を含め、地域のイスラム過激派を援助し続けた。政府は、一部NGOの資産を凍結し、その活動を監視するため重要な措置を取ったが、戦時にボスニアを支援したイスラム世界のこうしたNGOに対する同情が残っており、これらの組織を効果的に取り締まる政府の能力は低い。

 ボスニアの金融当局は9月11日の事件後、テロリストのものと思われる金融資産を特定・凍結するため真剣に取り組んだ。

 

フランス

 フランスは、テロとの戦いに外交や政治など多面的な分野で大規模な支援を提供した。フランス政府当局者はテロという「邪悪な疾病」を根絶する決意を表明し、軍事と兵たん分野で貢献を申し出た。フランスは9月11日のテロ攻撃後、国連によるテロ対策のとりまとめに重要な役割を果たしたほか、NATO条約の相互防衛条項である第5条の発動に当たり、他の加盟国と協力した。フランス政府は米軍機に対し、3カ月間におよぶ包括的な領空通過権を速やかに与えたほか、陸・海・空軍の兵員・装備などの軍事支援を提供し、不朽の自由作戦に参加した。2001年末には、アフガニスタンでの国際平和維持軍に地上部隊も投入した。

テロとの戦いを協議するため、2001年11月6日、ホワイトハウスで会談したブッシュ大統領とフランスのシラク大統領
テロとの戦いを協議するため、2001年11月6日、ホワイトハウスで会談したブッシュ大統領とフランスのシラク大統領

 フランスの司法・捜査当局は2001年を通じ、アルカイダなどの過激派に関係する疑いのある人物を追跡し、逮捕し、起訴した。4月には、パリの裁判所がアルカイダに関係する秘密のテロリスト兵たん網を管理していたとして、ファテ・カメル被告に8年の懲役刑を言い渡した。フランス当局は、カメルと1999年12月にロサンゼルス空港の襲撃計画を立てたアハメド・レッサムとの明白な関係を立証した。9月10日にはフランスの判事が、アルカイダ関連組織による同国内での米国権益を標的とした襲撃計画の捜査を正式に開始し、10月1日にアラブ首長国連邦から身柄引き渡しを受けたジャメル・ベガルをその計画の首謀者という容疑で、捜査対象者として拘留した。

 11月、フランス議会は、警察による捜索や電話・インターネットの監視強化を可能とするほか、テロ資金遮断の手続きを強化する「常時警戒」 法を可決した。ファビウス財務相は、タリバンとアルカイダの資産凍結を求める米国大統領令第13224号に関連する米国政府の要請に速やかに応じた。12月の時点で、フランスは400万ドル相当のタリバン関連資産を凍結していた。財務相はまた、テロ資金を断つための行動拠点を財務省内に設置するため、新たに各省庁の代表者で構成する部門FINTERを設置した。国際レベルでは、フランスは他国と協力し国連安保理テロ対策委員会の設置を主導し、G8テロ対策会議でも米国の担当者と協力した。

 地域レベルでは、フランス政府はスペイン政府と協力を続け、テロ組織「バスク祖国と自由」 (ETA)の取り締まりを強化した。2001年後半にはフランス当局とETAの対立が著しく激化し、警察官数人が負傷した。フランス当局はまた、国内でETAが大規模な訓練を行っていたことを発見した。9月にはフランスの判事が前例のない判断を下し、ETAに関係するスペイン系バスク地方住民17人のフランスでの居住を認めず、1カ月以内に国外退去するよう命じた。また、フランス当局者は、同月、ETAの兵たん部門の責任者と見られるアシエル・オヤルザバルを含め、ETAのメンバー数人を逮捕した。

 コルシカ分離独立派組織も、島内の政府庁舎襲撃を続けてきた。8月の民族主義派の指導者フランソワ・サントーニの殺害や、島の自治をめぐるフランス政府との協議が継続していることで緊張が強まり、暴力が継続する恐れも高くなった。フランス当局は、殺人と誘拐に関与した容疑でレネ・アゴンスティーニを逮捕した。(次ページへ続く

 

 HOME |  U.S. CITIZEN SERVICES |  VISAS |  POLICY ISSUES |  STATE DEPARTMENT
CONTACT US |   PRIVACY |  WEBMASTER
Embassy of the United States