embassy seal U.S. Dept. of State
Japan Embassy flag graphic
U.S. Policy Documents


*以下は、2004年7月11日付毎日新聞朝刊5面の「発言席」に掲載されたベーカー大使の寄稿を、毎日新聞社の許可を得て転載したものです。

WTO進展へ日本は貢献を

駐日米国大使 ハワード・H・ベーカー

 今年、北米自由貿易協定(NAFTA)は発効10周年を迎えた。米国、メキシコ、カナダ間の地域貿易協定であるNAFTAは、北米市場の統合と3国の経済成長促進に重要な役割を果たしてきた。

 市場開放努力を続ける米国は、ゼーリック通商代表が「競争的自由化」と呼ぶ意欲的な計画に乗り出した。競争的自由化とは地球規模、地域、そして2国間で貿易自由化を進めることである。米国はシンガポール、チリ、イスラエル、ヨルダンとの自由貿易協定(FTA)に加え、オーストラリア、バーレーン、モロッコ、中央アフリカと協定をまとめつつある。タイ、南部アフリカ関税同盟や多くの中南米諸国との間でも、FTAに向けてさまざまな交渉段階にある。われわれは、こうした先進的、包括的な2国間・地域貿易協定は、多国間貿易協定とともに、世界中の人々の生活を向上させる累積過程の一環と考える。

 日本は長い間、多国間貿易体制を支持し、それに参加することで恩恵を受けてきた。近年は独自のFTAを通じ、主要貿易相手国との関係を一層深める道も追求してきた。シンガポールやメキシコと、特定農産物を含むモノ、サービス、投資、技術、ノウハウの一層自由な新しいチャンネルを作ることで、単なる関税引き下げ以上の経済パートナーシップを確立する協定を結んだ。

 最近は韓国、タイ、マレーシア、フィリピンとの交渉も始めたが、そこでの新しい課題は主要な農産物と、人の移動の分野だ。日本はそうした交渉を通じた将来の協定が、世界貿易機関(WTO)規則が求める、農産物を含む事実上すべての品目を網羅するものにすべきだ。

 世界経済の約半分の規模を占める日米両国は、国際的な貿易障壁を削減することで経済成長や繁栄、発展に非常に大きなプラスを与えられる。WTOのドーハ・ラウンド交渉で、米国は意欲的で主導的な役割を果たしてきた。貿易は「ゼロ・サム・ゲーム」ではない。すべてが共に成長できる「ウイン・ウイン・ダイナミック」なのだという認識が重要である。新興経済では経済成長が中産階級を台頭させ、消費者部門を活気づけて、日本や米国などのモノとサービスの輸出機会を増大させる。

 ドーハ・アジェンダの好機は限られている。今後3週間で交渉担当者は、交渉の次の段階の基盤となる枠組みを打ち出す。具体的な数字や最終的な合意はその後になる。この重要な時期に勢いを失ってはならないし、意欲を失うべきでもない。日本が世界経済の主要なプレーヤーとして適切な役割を果たし、ドーハ交渉で強力なリーダーシップを発揮することを求めたい。

 経済が最近回復しつつある日本は、以前よりもこうした交渉に積極的に貢献できるはずだ。どの国も微妙な問題や政治的な問題を抱えている。しかし、重要なことは、こうした微妙な問題によって、われわれが無力になってしまうか否かだ。

 最近の日本のFTAへの取り組みは、日本と世界の経済全体のために、日本が微妙な国内問題に取り組み始めたことを示している。日本が直面している真の課題は、ドーハ交渉の促進にも、日本が同じ決意で臨むことができるかどうかである。

 ドーハ交渉は世界全体の成長を促進する戦略的機会だ。世界の2大経済国としてこの好機をとらえ、世界中の貿易自由化を一層促進するために緊密に協力することは、日米両国の特別な責任だ。自由貿易の促進と、より豊かで公正な世界の創出のために意欲的な方向性を示し、貿易面での前進を先導することもまた、日米両国の責任である。

 HOME |  U.S. CITIZEN SERVICES |  VISAS |  POLICY ISSUES |  STATE DEPARTMENT
CONTACT US |   PRIVACY |  WEBMASTER
Embassy of the United States