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情報通信審議会による「平成17年度以降の接続料算定の在り方について 答申(案)」=7月27日発表に対する米国政府のコメント

(仮訳)

平成16年8月27日

 米国政府は、7月27日に発表された情報通信審議会(以下「審議会」という)による「平成17年度以降の接続料算定の在り方について 答申(案)」(以下「答申案」という)に関して総務省に意見を述べる機会が与えられたことに感謝致します。

 7月27日付けの報告書は提言の基礎と成りうる様々な論点を網羅していますが、その中で次の3点について言及致します。(1)接続料単価からNTSコスト(通信量に依存しない費用)を控除する提案(2)NTTが基本料の範囲内でNTSコストを吸収する可能性の分析(3)NTT東日本とNTT西日本の接続料を同じ水準にする事によって可能となるNTT東日本からNTT西日本に交付される金銭の継続を促す提案。

(1)接続料単価からのNTSコストの控除

 米国政府は、今日に至るまで既存通信事業者が接続料からNTSコストを回収する行為を容認するルールに反対してまいりました。その理由はネットワークが効率的に利用されず経済の繁栄を妨げそのコストを負担しなければならない競争事業者に不適当な負担を強いる事になるからです。NTSコストがNTT東日本及びNTT西日本の接続料の半分(或いはそれ以上)を占めている事実は、日本の通信ネットワークの競争力と効率性に関する大変重要な問題を提起しています。移動系通信とVoIPは競争原理を導入する事でそもそも高額である発信サービスの料金の低廉化に貢献しましたが、NTT東日本及びNTT西日本が6000万の加入者を確保し事実上独占している着信サービスが、日本の通信トラフィックの大部分を占めており、この状態は予測可能な範囲で続くと見られます。しかしながらNTT東日本及びNTT西日本の通信トラヒックが最近減少し、またNTSコストが接続料に含まれている事から通信事業者が市内・県内固定通信、長距離固定通信及びVoIPの分野で競争力あるサービスが提供しづらい状況となっています。なぜならNTSコストを回収する原資となる接続料の値上げ分で、トラヒックの減少分を補完するべきとNTTが主張するからです。よって、競争力のある供給モデルを確保するためにNTSコストを早急に接続料単価から控除する必要があります。

 米国政府は答申案のNTSコストに関する記述「原則として基本料はNTSコスト・・という費用範囲となるものであるが」(第一部 第三章)及び「NTSコストについて接続料の原価から除くことが必要であり」(第二部 第一章)の両方に賛成いたします。米国政府は2000年からこの措置を奨励しており、審議会がようやくこの概念の採用を明確に示したことに賛成します。

 答申案は、第一部第三章で「4〜5年という期間をかけて段階的にNTSコストを接続料の原価から除くことが適当と判断される。」と提案していますが、総務省はこれを受け入れるべきではないと考えます。このように設定することにより、(2004年度の値上げ後も)日本の接続料が必然的に許容しがたい水準に引き上げられ、結果としてこのような料金を効果的に規制している他のOECD各国の後塵を拝するからです。将来の接続料の算定方法が不確定な中、段階的に控除する期間が、新モデルの適用期間(3年)よりも長いことも矛盾しています。長い期間かけてNTSコストを控除することはNTTの競合他社の不利益となる事は明らかで、スタディグループは長い期間の必要性及びNTSコストを直ちに控除する選択肢を示さなかった妥当な理由を示していません。従って、答申案の提案は公平な基準を満たすとは思いません。次に示す通り、NTT東日本及びNTT西日本は毎月請求している基本料の中で既にNTSコストを回収していない事を立証していません。

(2)NTTが基本料の範囲内でNTSコストを吸収する可能性の分析

 審議会がNTTの基本料について「その費用構造がブラックボックス化しており、透明性を欠いている」と述べていることから、同社がNTSコストをこの収入源から控除する時期を遅らせる事に強く反論します。NTSコストを段階的に控除する期間の正当な理由付けはNTTが公表するべきであり、同社が相互接続に必要なNTSコストを基本料の中で回収できないことを証明しない限りこれらを長期増分費用モデルから直ちに控除し基本料を引き上げることなく同料金から回収できると考えるべきです。既にNTT東日本及びNTT西日本の基本料が他国と比べて相対的に高いことは注目すべき事実であり、例えばOECD30カ国の住居用固定料金の2002年度の数字を参照した場合、日本は高い料金では7番目に位置しています。() 

 NTT東日本及びNTT西日本がNTSコストを基本料の範囲内で回収可能か否かを適確に分析するために、基本料の原価計算の透明性に関連して次の点に留意すべきと考えます。

施設設置負担金の配賦
 NTTは長年に亘り施設設置負担金を累積し、その額は4兆円(US$300億)()を超えています。同負担金の徴収額は現在加入者当り72,000円です。NTTの発表によれば同負担金はネットワーク建設費用に充当されていますが引き続き徴収するべきか否かに関らず、同社が現在接続料で回収しているNTSコストを含めこの負担金で既に回収したコストを明確に説明するべきです。例えば、現在接続料で回収されているNTSコストは加入者回線ネットワークの設備であるRTや伝送装置への投資の回収に充当されています。施設設置負担金がこのような設備のコストの回収を目的としている場合、将来重複して回収することとなるでしょう。事実、NTTは施設設置負担金を特定のネットワーク構成部分に明確に割り当てていない可能性があります。

 前述にもかかわらず、NTT東日本及びNTT西日本が競合他社から徴収する接続料によるNTSコストの回収を正当化するために現行の基本料が不充分であると主張するならば、両社は説明する義務があります。

ISDN、DSL、FTTHへの費用配賦
 過去20年に亘って、NTT東日本及びNTT西日本(及びその前身)はISDN、DSL、FTTH()サービスを提供する為に、数兆円単位の資金を投下してネットワークを増強してきました。NTTはISDNへの設備投資を抑制していますが、DSL及びFTTHは引き続き増強しています。NTTがこの分野で過去に積極的に投資を展開し、利益を回収するために長い期間を要することを考慮すればNTT東日本及びNTT西日本が最近まで財政基盤が弱く、損失も計上していたことは肯けます。(また加入者数が減少傾向にあるISDNサービスが今後黒字に転じないで、結果として回収不能な投資を著しく残す可能性があります。)損失の原因は従来の電話事業に関連したコスト(接続料で回収するべきコスト)の回収不足にあるのではなく、NTTが核とする電話サービスの収入によって新しいサービスの発展助成が難しいという事実を反映しているように考えられます。

 NTT東日本及びNTT西日本が透明性ある基本料配賦データの開示に躊躇する理由は、新しいサービス展開の為に利用される既存収入源の資金の流れを公表したくないためと推測されます。 ()このような透明性無しには、接続料に関連するNTSコストに割り当てる事の出来る基本サービスの収入の範囲は明瞭になりません。申すまでもなく、若しその収入がDSLやFTTHサービスを発展させるために使用されているならばNTTが月額基本料収入から相互接続に関連するNTSコストを吸収する事が出来ないと主張する事は不適当です。

 NTT東日本及びNTT西日本が、事業の核となる電話サービスから得る収入を、新しいサービスに投資する正当性に対して疑問を呈しているわけではありません。むしろ米国政府は競争政策の観点から、NTTがまず電話加入者が負担するサービス(市内、市外及び長距離ネットワークへのダイアルトーン接続)に関連するコスト(NTSコストも含めて)の支払いを優先し競合他社にそのコストを転化するべきではないと考えます。

 相互接続に関連するNTSコストを吸収する収益の流れに関する透明性のある評価を実施するためには、複数の役務細目にまたがっている費用の配賦が適正であることを確認する事も重要です。規制された市場でサービスを独占している事業者は、より競争の激しい分野で市場シェアを確保する為に独占しているサービス分野のコストを最大限にしたいという強いインセンティブがあります。()よって、ISDN、DSL或いはFTTH等のサービスに使用していたとしても、NTTは他事業者と共同で使用するインフラ(例えば、電柱、管路、交換機、建物等)や人件費(メンテナンス、セールス、マーケティング、研究開発)のコストを電話サービスに配賦するインセンティブがあります。NTT東日本及びNTT西日本が配賦状況を説明する正確な資料を公表しない限り、収益の内NTSコストの回収に充当可能な額を正当に証明する事はできません。

基本料で回収されるコストの減価償却費
 長期増分費用モデルに関する過去のパブリックコメントで、総務省が設定する減価償却率に反対する意見が数多く見受けられました。長期増分費用の新モデルは、一部の設備(例、デジタル交換機、ケーブル、管路)()の経済的耐用年数を実状に合わせて改訂していますが、総務省は同モデルが適用されない加入者回線の耐用年数については全く異なる数字の適用を許しているようです。(基本料は主に加入者回線のコストを吸収していると推測します。)以前長期増分費用モデルで提起された同じ問題への懸念を再びここに表明致します。NTT東日本及びNTT西日本が税務会計上の方法及び耐用年数に従い、加入者回線コストを減価償却(例えば、加速償却)する事が可能であれば、その額が実質的な経済原価よりも著しく高くなるケースが想定され料金規制の観点からより適正な水準となるでしょう。コストを水増しした結果、NTT東日本及びNTT西日本は収益の内NTSコストの回収に充当する額を低く設定している恐れがあります。

(3)NTT東日本の接続料収入からNTT西日本に金銭を補助する行為の不適切性

 米国政府はこれまでもNTT東日本が競合他社から徴収した接続料収入の一部をNTT西日本の事業を助成するために交付することに反対してきました。引き続きこの方法を認める答申案の提案を、総務省は受け入れるべきではないと考えます。NTT東日本が長期増分費用モデルで明確に規定しているように、コストよりも高く接続料を設定することを許容すれば日本の接続料がWTO基本合意に準じて「cost-oriented」であるか疑問視する声が上がるでしょう。NTT東日本の場合、接続料は明らかに「cost-oriented」ではありません。

 総務省はNTT東日本が原価を越えた収益を保持しない点を考慮すれば、NTT東日本からNTT西日本に交付される金銭は競争上の観点から中立であると主張していますが、これは議論の余地があります。NTT東日本がNTT西日本へ補助金として交付する金額は2005年度で190億円()にのぼると予想されます。このメカニズムは競合他社のコストを引き上げる事で、NTT東日本の小売サービスを競争から守る盾となっており、同社の料金を非常に低価格な水準に引き下げています。NTT東日本が独占する県内通信トラヒックから得る利益は 、()同社がNTT西日本に交付する190億円を越えていると推測され、将来競合する可能性のある事業者にとって不利益となるでしょう。NTT東日本が携帯電話サービスに市場シェアを奪われ固定通信トラヒックが逓減する状況の中で、総務省がこのような政策を許容することは通信業界の競争を促進し消費者に利益をもたらすその使命と矛盾しています。

接続料の均一とユニバーサルサービス
 審議会の答申案は、次のように記載しています。「現時点においても、ユニバーサルサービスである電話通話料の地域格差に繋がる可能性がある東西別接続料の設定が十分社会的コンセンサスを得られているとは言い切れない。」(第四章)米国政府が過去に提出した意見書でも言及した通り、この議論はほとんど意味をなしません。NTT西日本が接続料を値上げすれば、同じサービスエリア内の競合他社のコストは引き上げられますが、同社の社内コストひいては現行の小売価格の維持には影響がありません。NTT東日本からの補助金が無い場合、NTT西日本がコストを全て吸収出来るか否かは別の問題であり、NTT西日本が適正なコストデータを申請することでそのメリットを検討するべきです。同社が平成15年度の利益として900億円を計上した事()から、利用者料金の引き上げが正当化される可能性は低いでしょう。前述にもかかわらず損失が明らかにされた場合、NTT西日本は利用者料金を引き上げる事なく資金を工面する方法として公認されているユニバーサルサービス基金が利用可能です。同社がこの基金の利用に消極的なのは、自社のコストに関する秘密情報の保持を望むからです。これは説得力に欠けると共に、かえって相互補助の正当な根拠がそもそも存在しなかった可能性が高まります。

NTT東日本とNTT西日本によるプライススクイーズの可能性の分析
 総務省が昨年許可した接続料の引き上げを今年も検討する意思を表明した結果、排他的或いは略奪的なプライススクイーズへの不安が広がっています。NTT東日本及びNTT西日本が主張するコストの上昇により競合他社の入力値が引き上げられているにも関わらず、NTT東日本及びNTT西日本の小売価格はその影響を受けない場合、競合他社の市場撤退或いは値上げによる市場シェア縮小が予想されます。しかしながら、総務省は接続料の値上げを検討する前に、少なくとも、NTT東日本及びNTT西日本の卸売及び小売価格の関係を分析するインピュテーションテストを実行し公表するべきです。

結論
 米国政府は審議会の答申案に関して意見を述べる機会が与えられたことに感謝いたします。答申案が提案する日本の長期増分費用モデルが抱える基本的な問題のひとつ、NTSコスト控除の必要性、の解決策は特筆に値します。一方、米国政府は総務省がNTSコストを出来る限り速やかに控除すると共に、減価償却率を実情に合うように調整するよう積極的に取り組むことを強く要請いたします。米国政府は更に、NTT東日本及びNTT西日本の接続料を均一にする政策が競争政策に反し、ユニバーサルサービスを提供する観点からも不必要なため、総務省に再考を要請します。総務省が接続料政策を再検討する際にこれらの意見を真摯に受け止め、全ての利害関係者の利益が慎重かつ公平にバランスされるよう要請いたします。


 OECD Communications Outlook 2003, p. 179, Table 6.10, http://www1.oecd.org/publications/e-book/9303021E.pdf 参照方
 "Like NTT phone fee, line brokers face extinction," Japan Times, July 27, 2004, http://202.221.217.59/print/business/nb07-2004/nb20040727a1.htm 参照方
 NTT のISDN技術への投資金額が2001年までに8900億円にのぼると予測している"Dresdner Kleinwort Benson research report on NTT "1998年11月17日 (p. 19). 参照方
 現在NTTが新しいサービスを助成している事実は明白なようです。自ら認める高いコスト構造と最近の損失を考慮すると、NTT東日本とNTT西日本が現在月額3900円で提供する100Mb/sのFTTHサービスから収益があがるとは思いません。(NTT東日本ホームページ: http://flets.com/misc/prom_mansion_vdsl.html ).
 Laffont and Tirole, Competition in Telecommunications, MIT, 2000 p. 145. 参照方
 この例外の一つが伝送装置で経済耐用年数が8.8年のまま変更されていませんが、非現実的で短いと考えます。FCCは同様の設備の年数を現在11〜13年と定めています。 "Depreciation Ranges Adopted in CC Docket No. 98-137 - Dec. 17, 1999, http://www.fcc.gov/wcb/ppd/depreciation/documents/currDepRanges.pdf" 参照方。
 "Outline of NTT East's Business Operation Plan for Fiscal Year Ending March 31, 2005," http://www.ntt-east.co.jp/release_e/0403/040301_6.html 参照方。
 NTT東日本は2003年の市内、市外通信の市場占有率をそれぞれ64%、71%と公表しています。 "Operating and Financial Review and Prospects," p. 9, http://www.ntt.co.jp/ir/pdf/03/e/p16.pdf 参照方。
 "Non-Consolidated Statements Of Income," Financial Statements for the First Quarter Ended June 30, 2004 (Released August 5, 2004), http://www.ntt-west.co.jp/news_e/0408/040805_2.html 参照方

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