環境ニュース
メキシコ支援 
今月の NIEHS ニュース (p. A278) では、アリゾナ大学SBRP （Superfund Basic Research Program）によるメキシコの環境衛生科学能力を、特に米国とメキシコの国境沿いの地域で高めるための国際貢献努力を考察している。
Deep Blue Sea（紺碧の深海）における先細りの収益 
Focus (p. A282) では、食料源としての世界の海洋の状態を検証している。魚介類は多くの人々にとって重要な蛋白源で� るが、漁業過多、生息地破壊、その他の要因が重なって、増え続ける人口に対して魚類の数が不足しつつ� る。
ハッピーバースデー NEPA 
NEPA (National Environmental Policy Act) が35歳の誕生日を迎えるに� たり、 Spheres of Influence (p. A292) では、過去35年間の NEPA の業績と課題を検証し、環境保護立法のリーダーで� る NEPA にはどのような変化が必要かについて考えている。
石炭に良い知らせ? 
Innovations (p. A296) では、石炭燃料使用の発電所における水消費の目標を高めるために、現存する商業用乾燥剤の使用について調査している。
研究
えら DNA の汚染効果 
Malins ら(p. 511) は、１組は工業地帯で、もう１組はワシントン州ピュージェット湾の水質が比較的きれいな場所で捕獲したイギリスガレイのえら DNA の構造的違いを検証している。これら二組のえらNDAの違いの調査には、フーリエ変換赤外線（FT-IR）スペクトルの統計モデルが使用された。その結果として、環境に存在する化学物質がえらDNAに変化を与えていることが判明した。 ( p. 301のScience Selections も参照)
PCB と甲状腺ホルモンの作用 
発育過程で PCB（ポリ塩化ビフェニル）に曝露すると、甲状腺ホルモン（TH）シグナルの介入によって神経心理学的な機能障害を引き起こす可能性が� る。Gauger ら(p. 516) は、妊娠中のラットを PCB 化合物に曝露させることによって、循環 TH のレベル低下� るいは TH 受容体への直接の影響を通して、胎児の脳に影響が� るか否かを調査した。結果として、PCB は母体の甲状腺機能低下よりも、胎児への直接作用によって胎児の脳の TH シグナルと干渉を起こすことが判明した。 ( p. 300のScience Selections も参照)
200の農薬における hER
、? と hAR 作用
チャイニーズハムスターの卵巣細胞を使った高感度の transactivation 測定法を使用して、合計200種類の農薬（異性体と代謝産物を含む）におけるヒトのアンドロゲン受容体（hER）のサブタイプ2種類（hERα、hER?）と、ヒトのアンドロゲン受容体（hAR）に対する agonism（作用）と antagonism（拮抗）を調べた。Kojima らの研究結果(p. 524) によると、多様な農薬が ER や AR に対してエストロゲン性または抗アンドロゲン性で� る可能性を持っていることが認められた。
カモメの汚染物質と甲状腺ホルモン
バレンツ海のシロカモメ（Larus hyperboreus）の血液中に大量のハロゲン化有機体汚染物質が発見されたという報告が� るが、内分泌系の変化は報告されていない。Verreault ら(p. 532) は、幾種類かの有機塩素系殺虫剤変化を選択し、それらが異常な循環甲状腺ホルモン（TH）と関連しているか否かを調査した。結果として、ハロゲン化有機汚染物質の曝露により、カモメの TH ホメオスタシス変化は影響を受けやすいことが分かった。
血液中の鉛に対する
-ALAD 遺伝子型の防護効果
-アミノレブリン酸脱水酵素（ALAD）の遺伝子型が、血液中の高レベルの鉛の毒性に感染する度合いに影響を与える可能性が� る。Kim ら(p. 538) は、北朝鮮の鉛を使用する工場労働者の PbB、zinc protoporphyrin（亜鉛プロトポルフィリン）、ヘモグロビン、血清鉄（SFe）、 ALAD 遺伝子型の関係を調査した。鉄分の状態が普通の人たちのうち（SF レベル > 60 ｵg/dL）、遺伝子型が ALAD 1-2/2-2 の人より ALAD 1-1 の人に多く貧血症状が見られた。
DDT と生殖効果
既にDDT は多くの国々で禁止されているが、マラリヤ対策に使用し続けている地域も� る。Salazar-Garc?a ら (p. 542) は、メキシコでの DDT への職場曝露と生殖への影響について調査した。即時堕胎や性別の割合への大きな関連は見られなかった。しかし、高レベルの DDT への曝露については先天的欠損症のリスクが大きいことが認められた。低レベルの曝露における変化との関連性はまだ解明できていない。
妊娠中の鉛への曝露、-ALAおよび精神分裂症
精神分裂症は、妊娠中の環境要因と関連している可能性が� る。鉛がこれらの要因の１つで� るか否かを判断するために、Opler ら(p. 548) は、記録されている妊娠中期の血清サンプル中の -アミノレブリン酸（-ALA、鉛曝露の生物学的ﾏｰｶｰ）のレベルと、妊娠中に曝露された子供の精神分裂症の症例と状態の関係について調査した。ロジスティック回帰分析を使用して、高δ-ALAと関連している精神分裂症のオッズ比（OR）は1.83で、共分散を用いて補正した場合の OR は 2.43 だった。結果から、妊娠中の鉛への曝露� るいは高δ-ALA の影響は後々まで続く可能性が� ると判明した。
ノニルフェノールとヒトの好中球中の活性酸素
para-Nonylphenol（ノニルフェノール、NP）は内分泌破壊の性質が� るが、免疫学的効果の分析は十分に行われてはいない。Okai ら(p. 553) は、5-50 ?M NP がヒトの好中球中の活性酸素種（ROS）生成の際に、量によって異なる刺激効果を引き起こしたと報告している。ROS 生成の活性経路に� る様々な代謝抑制物質の効果に関する研究結果は、NP がヒトの好中球中の呼吸バースト機能に関連している信号導入経路を活性化すると示している。
PM10 と死亡
Schwartz (p. 557) は、死亡と粒子状物質 
10 ?M（PM10）の関係を調査するために事例の複合デザインを使用した。PM10 は、気体の空気汚染物質を測定した際に死亡を予測する重要な予測変数で、オゾンレベルが１時間� たりで最大のときには PM10 の 10 ?g/m3 の倍数について 0.45% 増加し、二酸化硫黄の24時間の平均値では PM10 の 10 ?g/m3 の倍数について 0.81% 増加した。
血液中の水銀と食物からの水銀摂取：1999-2000 
Mahaffey ら(p. 562) は、1999年と2000年のNational Health and Nutrition Examination Survey（全米健康栄養調査）に参加した女性の血液中の有機水銀（メチル水銀）含有量について、百分順位中の 50 位は 0.6 ?g/L、またその範囲は検知不能量（百分順位中の 5 位）から 6.7 ?g/L（百分順位中の 95 位）までで� ると報告した。血液中の水銀含有量が最大だったのは、魚介類を頻繁に食しているとされる女性たちだった。同研究結果は、米国における神経の発達に悪影響を持つリスクの高い乳児の出産数の推定に役立つ可能性が� る。
フタル酸塩と肺機能
子供と同様に大人にもフタル酸塩の曝露が呼吸器系への悪影響に関係しているか否かを判断するために、 Hoppin ら(p. 571) は、尿中のフタル酸塩と、努力性肺活量（FVC）、努力性肺活量の1秒量（FEV1）、最大呼気流量（PEF）、最大呼気中間流量（MMEF）という大人の肺機能の関係について研究した。モノブチルフタル酸塩は、男性には FVC、FEV1、PEF の減少との関連が見られたが、女性には見られず、モノエチルフタル酸塩は、男性には FVC と FEV1 数値の減少との関係が見られた。モノエチルヘキシルフタル酸塩は、実験した肺機能のパラメータには悪影響を与えなかった。
未成熟ラットの子宮におけるエストロゲン混合
混合物質への曝露反応は環境査定の中核をなす課題で� る。Tinwell と Ashby (p. 575) は、未成熟ラットの子宮肥大試験で個々では不活性な量のエストロゲンを混合したときに子宮肥大反応を引き出せるか否かについて研究した。結果として、個々では効果の出ない量のエストロゲン受容体（ER）作用物質各種が混在すると、これらが同時に作用して ER が促進する反応を引き出すことができると判明した。
カリフォルニア都市部のエンドトキシン濃度 PM10 
Mueller-Anneling ら(p. 583) は、南カリフォルニアの13の地域で1年間にわたり6週間に１度ずつ、24時間のPM10 (粒子状 10 ?m) 濃度と関連のエンドトキシンのレベルを測定した。PM10 とエンドトキシンには重大な相関関係が見られたが、エンドトキシンとその他の環境汚染物質（オゾン、二酸化窒素、酸の総量、PM2.5）の間には相関関係は見られなかった。エンドトキシンの濃度はすべて 5.5 endotoxin units/m3 未満で、職業上の曝露としては健康への悪影響の限度未満で� った。
個人曝露のリスク査定
環境測定に基づくリスク評価は不正確で� る可能性が� る。それはもっとも危険な有機化合物（VOC）に関していえば、人体への曝露は室外の空気中濃度と大きく違っているからだ。Payne-Sturges ら(p. 589) は、曝露の分類間違いの度合いと、それが U.S. Environmental Protection Agency（米国環境保護局）によるメリーランド州ボルティモア市の地域社会の査定のモデルが推定している曝露リスクに及ぼす影響を調査した。ボルティモア市では、人体への曝露が屋内の VOC 濃度を大きく上回っており、屋内の VOC 濃度は屋外の VOC 濃度を大きく上回っていた。
ヘアレスマウスの皮膚に亜砒塩酸がん多発 
UV で誘発した皮膚がんと砒素の経口投与の相互作用を研究できる動物は数少ない。Burns ら(p. 599) は、ヘアレスマウス（Skh1）に UV 照射と同時に発がん物質の亜砒酸ナトリウムを経口投与する投与量反応の研究を行った。何も投与されていないマウスや砒素を投与されているが UVR に照射されていないマウスには腫瘍が見つからなかった。UVR の照射のみを受けたマウスには182日目で2.4の腫瘍が見られた。砒素の経口投与は UV 照射で発生したがん腫瘍を大きく増大させ、ピークは 5.0 mg/L の砒素により発生したがん腫瘍のマウス１匹につき11.1で� った。
環境衛生の中で性差を理解する
Keitt ら(p. 604) は、環境衛生調査全般の最近の進展に関するワークショップの結果をまとめ、特に環境中での曝露への反応に対する性の違いについて説明している研究結果に焦点を当てている。今後の研究では、細胞列から行動にいたるまで性差を調査し、年齢層別にその違いを記録することを提言する。
環境医療
ノルウェイ人の男性の死亡率と空気汚染
Nafstad ら(p. 610) は、1972/1973年から1998にわたり、ノルウェイ人の男性について、全体死亡率と原因別死亡率、および長期的曝露を与えている各空気汚染物質の測定値との関係について調査した。コックスの比例ハザードモデルを使用して、曝露と全体死亡率と原因別死亡率の推定を作成した。調査結果では、都市部の空気汚染が死亡リスクを高めている可能性が� り、呼吸器障害による死亡が最大で� るように見受けられ、これは肺がんを上回っていた。
アスベストと� 膜中皮腫
Fonte ら(p. 616) は、アスベストに関連した珍しくも活発な悪性腫瘍で� る� 膜中皮腫による診断上の問題について説明している。65歳の男性が再発性の� 水症になり、初期には管状乳頭状をしている類上皮腫瘍増殖だと診断され、転移性腺がんだと思われた。その後の診断では悪性腫瘍を判別できず、腫瘍組織の免疫染色を行った。がん胎児性抗原と上皮糖タンパク Ber-EP4 はマイナスで、中皮のマーカーはプラスで� り、� 膜上皮中皮腫と診断された。
磁力反響分光学と鉛中毒
Weisskopf ら(p. 620) は、慢性鉛中毒の71歳の一卵性双生児男性のケースを検証している。双生児の１人（J.G.）はこれまでに多量の鉛の曝露を受けてきた。磁力反響分光学（MRS）の研究により、ニューロン密度のマーカーで� る N-acetylaspartate（Nアセチルアスパラギン酸）/creatine（クレアチン）の比率を調査した。J.G.の比率は双子のもう１人の比率より低かった。ワーキングメモリ/実行機能を査定する神経認知テストのスコアは、兄弟両人とも期待を下回った。調査結果はニューロン喪失と一貫性が� り、MRS の実用性を示唆している。
子供の健康
妊娠中の汚染物質への曝露と出産時の結果
Perera ら(p. 626) は、都市内部のアフリカ系とドミニカ系の非喫煙者の女性に対し、分子線量計として benzo[a]pyrene-DNA adducts を使用して、環境中のタバコ煙（ET）と環境中の多環式芳香炭化水素の曝露を妊娠中に受けた結果の出産の効果を評価した。ETS は頭囲のサイズ縮小と関係付けられた。またこれら２つの汚染物質の間におけて重大な相互作用が見られ、混合曝露を受けると出生時の体重と頭囲のサイズに大きな影響を与える。
農薬と子供のがん 
Flower ら(p. 631) は、子供のがんリスクと親による農薬の使用の関係を調査した。子供の農薬使用に関する情報は、アンケート調査を使用して親が回答したもので� る。子供のがん全体のリスクは、標準化羅病率（SIR）で1.36増加した。リンパ腫全体のリスクもまた増加（SIR = 2.18）し、Hodgkin lymphoma（ホジキンリンパ腫）のリスクも増加（SIR = 2.56）した。リンパ腫リスクが大きいことが判明したが、これは農薬を含む農村での曝露が子供のリンパ腫の一因となっている可能性が� る。(Science Selections, p. 300も参照)
農場作業者の家族へのリスクの伝達
環境研究サンプルを収集した場合、影響を受けている参加者に情報を伝達する義務が� る。しかし、一般人を対象として複雑な科学情報を説明するのは困難で� る。Quandt ら(p. 636) は、地域で参加者を募った調査プロジェクトで、ラテン系移民と季節農作業労働者の家庭で収集した環境農薬サンプルに関してリスクを伝達する方法を記述している。
[目次]
前回更新日：2004年3月17日
