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*以下は、2003年3月20日付読売新聞朝刊に掲載されたベーカー大使との会見本記(1面)と会見要旨(6面)を、読売新聞社の許可を得て掲載したものです。

「日米関係、今が最良の時」

ベーカー米駐日大使と会見

 ハワード・ベーカー駐日米国大使は19日、都内の米国大使館で読売新聞のインタビューに応じ、日本政府がイラク問題で米国支持をいち早く打ち出したことについて、「日米関係は過去50年で、今が最良の時だ」と語り、強い感謝の念を表明した。また、戦後イラクで実施されることが想定される平和維持活動への貢献を求めた。

 ベーカー大使は「英国を除けば世界で日本ほどの友人はいない」とし、仏、独などが査察延長、武力行使反対を唱える中、米国支持で一貫していた日本政府の対応によって、日米同盟の緊密化が図られたとの考えを力説した。

 さらに日本の具体的貢献について、テロ対策を目的にインド洋で実施しているような燃料補給や、戦闘終結後の機雷掃海業務への参加を求めるとともに、「東ティモールやゴラン高原での平和維持活動の実績」を生かした平和維持活動の例を挙げた。

 イラク攻撃の展開について、大量破壊兵器を保有するイラクをあなどれないとしながら、米英軍の準備は万全であり、「短く効果的な戦闘になるだろう」との見通しを示した。

 北朝鮮の核開発をめぐっては、プルトニウム抽出につながる再処理施設を再稼働させる可能性について「その兆候がある」と懸念を示し、再稼働させた場合は「最終的な挑発と見なす」と、制裁も含めた断固とした対応を取る考えを示した。 

ベーカー駐日大使 会見要旨

戦闘長引くとは思わない

 ――なぜ、米国は安保理決議なしにイラク攻撃に踏み切るのか。

 我々はフセイン大統領を説得し、武装解除させようとしたが、時間切れとなった。外交政策は成果を生まず、別の手段をとる時が来た。

 ――イラク攻撃で日本は速やかに米国支持を打ち出した。

 日米の間には長年の同盟関係、友好関係がある。日本が米国の立場を強く支持したことで、日米関係は今が過去50年で恐らく最高の時だ。日本の支持を誇りに思っている。小泉首相の言葉には非常な感銘を受けた。英国を除けば世界で日本ほどの友人はいない。

 ――戦争中、日本に何ができるか。

 まず日本が自らの国益にのっとって最善を尽くしてほしい。日本は主権国家であり、独自の外交、防衛政策を構築するだろう。湾岸戦争での支援と援助は大きかった。資金面が中心だったが、効果的だった。  今回、日本は、(インド洋で行っているような)燃料供給の継続のほか、掃海業務もできる。日本はできることは多いが、憲法、法律、文化にのっとって、自ら決定するだろう。

 ――日本に戦費の負担を求めるのか?

 その点については情報が全くない。しかし、米国は日本が国益にのっとって自ら行った判断を尊重する。

 ――戦争はどれぐらい続くか。

 私は軍人ではないので、判断する資格がない。だが、私の印象では、短く効果的な戦闘になるだろう。イラクは十分な軍事資源を持っており、ほぼ確実に大量破壊兵器も保有しているが、米国や同盟国の軍は、よく組織され、経験豊富だ。1週間か、1か月か2か月か分からないが、長びくとは思わない。

 ――戦闘終結後、イラク復興で何を日本に期待するか。

 日本は戦後処理で専門知識がある。アフガニスタン、東ティモール、ゴラン高原の平和維持活動など世界各地で活躍している。

北朝鮮とイラクは別問題

 ――イラク攻撃の北朝鮮危機への影響は。

 北朝鮮の政策は理解できない。過去数か月の挑発の目的も分からない。しかし、挑発行為を続けることで、米国だけでなく、国際社会、周辺国に対して極めて危険なゲームをしている。だが、米国は、この状況を「危機」とは呼んでいない。日本、中国など周辺国と話し合い、最良の解決法を探る。なぜなら、北朝鮮の核能力は、米国より中国、日本、ロシアにとって、より大きな脅威だからだ。北朝鮮とイラクは別の問題だ。同時に取り組まなければならなくても、個別に対処する。

 ――米国内で日本の核武装論が浮上していることをどう思うか。

 日本の歴史、文化、経験からいって、日本が核保有国になる道を選ぶ可能性は低い。その技術力は持っている。しかし、日米同盟の基礎は、日本が米国の安全保障の傘下にあることにあり、日本の核武装は合理的ではない。ただ、これは日本自身が決める問題だ。日本の核保有国化は、米国の政策ではない。朝鮮半島の核武装もしかりだ。我々は核兵器拡散の促進ではなく、封じ込めを目指している。

 ――今回の国連安保理の決裂が、国際社会の枠組みに与える影響は。

 安保理は、新決議修正案の採択を見送り、その責務を果たさなかった。だが、国連の意義や重要性が失われたわけではない。イラクの大量破壊兵器を廃棄させ、圧政を排除するという目的では一致していた。時間や手法に違いがあっても、国連の生き残りや効率に対する脅威にはならない。

 ――在韓米軍は北からの攻撃にもろいという指摘もあるが。

 現在は1950年や1955年ではない。もはや、非武装地帯への部隊の集結は重要でない。現代の兵力は移動性であり、動くものだ。兵器も変わった。だが、米国は、韓国との全面的な協議抜きに、韓国での軍事力の有効性を変えたり、規模を縮小したりすることも考えていない。現時点での朝鮮半島における米軍の再編は、世界のどの地域でも行われる米軍部隊配置の定期的な見直しの域を出ない。

 ――北朝鮮が核実験を行った場合、察知は可能か。

 前もっては多分無理だろう。実験を行わないことを願う。それは非常に深刻な挑発行為となりかねないからだ。実験が行われたら察知することはできる。

 ――もし北朝鮮がプルトニウムの再処理に踏み切った場合、米国の対応は。

 それは非常に深刻な挑発行為といえる。米政府はこの問題の重要性を指摘し、北朝鮮がこれ以上国際社会を挑発しないよう望むと繰り返し表明してきた。北朝鮮が再処理を試みるか、すでに試みようとした兆候はある。北朝鮮が再処理へ進まないよう、強く望んでいる。それは核兵器の材料の蓄積に直結し、最終  的か、それに近い挑発行為となるからだ。 

(聞き手 国際部長 山口 勉)

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