embassy seal U.S. Dept. of State
Japan Embassy flag graphic
U.S. Embassy - Japan


ハワード・H・ベーカー・Jr. の駐日特命全権米国大使指名の件

上院本会議 - 2001年5月23日

議長 定められた議事進行規則に従い、上院は、ハワード・H・ベーカー・Jr.指名の審議に入る。

書記が、テネシー州出身ハワード・H・ベーカー・Jr.の駐日特命全権米国大使指名の内容を読み上げた。上院は指名の審議に入った。

議長 指名審議には2時間が当てられる。最初は? ワイオミング州選出上院議員。

トーマス上院議員 議長、ハワード・ベーカーの駐日大使指名について少し述べたい。私は、アジア・環太平洋小委員会の委員長である。本日、ハワード・ベーカーに関する公聴会を開いた。幸いなことに、本件は委員会を通過して、本日の本会議において指名承認投票を行なうことができる。

 議長、私はハワード・ベーカーを駐日大使として喜んで受け入れる。私は、アジア・環太平洋小委員会の委員長を務めている。この地域で最も重要な国の1つが、日本であることは間違いない。 日本との間には、長年にわたる緊密な協力関係がある。米国は過去日本に多くの非常に卓越した大使を送ってきた。 駐日大使の中には、上院出身者、下院議長や何年か前には多数党上院院内総務を務めた者もいた。

  本日、大統領がこの重要な任務に指名したハワード・ベーカーの公聴会を開く機会が訪れたことを、私は大変喜んでいる。本件が委員会を通過したことを誇りに思う。今日、駐日大使任命の件を本会議に諮ることができたことを、上院院内総務に感謝する。

 もちろん、日本は、米国のアジアにおけるほとんどの活動にとって重要な存在である。 そして、日本は、米国の韓国における活動、特に北朝鮮と朝鮮半島に対する活動にとっても重要な存在である。米国の活動には、日本の協力が必要である。台湾と中国についても同様である。日本は米国のパートナーなのだ。

 日本は、この地域最大の経済大国であり、引き続き幾つかの経済問題、特に銀行の問題を抱えている。米国は、沖縄に駐留する米軍に関して日本との間に解決すべき問題がある。また、対日貿易赤字を削減する方策を見出さなければならない。

 米国を代表する人物としてハワード・ベーカー以上に適切な人は思いつかない。彼は、豊富な経験と、深い思いやりの心を持つ人物である。彼は、ホワイトハウスのスタッフや上院議員としての経験を持ち、また上院の院内総務も務めていた。彼が今まで行なってきたことは、すべて公のものである。私は、ハワード・ベーカーが指名されたことを喜んでいる。

 以上である。

議長 多数党院内総務。

ロット上院議員 議長、今日ここには、駐日大使に指名されたハワード・ベーカーの支持を表明するために集まってきた何人もの上院議員がいる。簡潔に話したい。話をする機会をいただき、嬉しく思う。駐日大使という大変重要な職務にハワード・ベーカーを指名したことは、素晴らしい選択だと考える。

 私は、ハワード・ベーカーに対して、多くの理由から、個人的な思いがある。まず第1に、ハワード・ベーカーは、私が初めて目の当りにした共和党員だったと思う。私が育ったミシシッピ州パスカゴウラは、まったく何もない所だった。その後、幸いにも同州の教育の中心地オックスフォードで学ぶ機会を得た。そこで、メンフィスのテレビ番組に出演していたハワード・ベーカーを見たのである。大変物静かでしかも明晰なスピーチをする傑出した人物だった。私は感動した。そして彼は共和党員だった。私は、彼の話に耳を傾け、彼に注目するようになった。 そして、大学を訪れた彼に1度だけ会うことができた。

 当然のことながら、テネシー州の小さな町の出身であるこの卓越した人物は、上院に立候補した。彼は、州議会、下院、そして最後に上院という道をたどらず、最初から、上院議員を目指した。

 彼の両親もまた下院議員を務めたことは、もちろん興味深い。彼の母は、テネシー州の郡保安官を務めたことがある、と記憶している。間違いないと思う。彼には、知識の血筋と、テネシー人と政治家の血筋がある。従って、上院を直接目指すことは、彼にはごく自然なことであった。

 彼の妻は、エバレット・ダークセンの娘である。ハワード・ベーカーは、魅力ある声の持ち主で、時代の伝説的人物としてその肖像画が、多数党院内総務の会議室の壁に飾られている。彼はそれほどの影響力を持っている。

 時を移さず、彼は注目を集め、尊敬される存在になった。間もなく、彼は、上院の指導者的地位を目指し始めた。初めは成功しなかった。この時のいきさつは、アラスカ州選出の上院議員が記憶していると思う。彼は、比較的に、大変早く上院共和党の院内総務になり、その後、選挙後の1980年に多数党院内総務になった。

 当時、下院共和党院内幹事であった私は、連邦議会議事堂の下院側にあった自分の席から、当時の上院共和党の院内総務ハワード・ベーカーを見ていたこと、また、常に暖炉に火がくべられている彼の部屋で会合をもったことを覚えている。いつも感銘を受けた。当時、解決すべき問題が2、3あった。早期警戒管制機(AWAC)やパナマ運河の問題である。このうちの少なくとも1つの問題で、彼とは異なった立場を取ったことを覚えている。

 私は、彼に指導者としての資質を見た。私は上院議場にやって来て、投票の様子を見守ったことを覚えている。われわれは、議場の後ろに立っていた。ハワード・ベーカーは、確か、テーブルの端に座っていたと記憶している。彼がそこに座っているだけで、投票者に影響を与えていたように見えた。いずれの動議も、いろいろな意味で不人気だったにもかかわらず、採択された。こうした問題で、超党派的な協力を引き出したハワード・ベーカーの手腕に深い感銘を受けて、その旨を記した手書きのメモを彼に送ったことを覚えている。

 彼の話し方は、物静かで、実際、知性に溢れている。知性派があの地位まで上り詰めたことに驚く人は少なくないはずだ。 ハワード・ベーカーは、それを成し遂げた。

 さて、この5年間、多数党院内総務を務めてみて、私は、改めてハワード・ベーカーの指導力に対してこれまで以上の敬意を抱くようになった。私は、自分の直前の前任者であるボブ・ドールに「院内総務なんて大して難しい仕事ではないと思っていた」と話したことがある。私は間違っていた。院内総務の仕事は毎日がチャレンジなのだ。反対の意見を持つ議員に周りを囲まれている。自分の友人が敵味方に分かれている。その中で、何らかの結論を導くための方向付けを他の議員に与えるのである。私は心から、多数党院内総務とその職務に、そして特にハワード・ベーカーに、今まで以上の敬意の念を改めて表する。

 ハワード・ベーカーは、もちろん、大統領選挙に立候補した。事実、ジョージ・ミッチェルとトレント・ロットを除くほとんどすべての多数党院内総務の経験者が大統領候補になっている。そして、そのだれもが大統領になっていないことに注目したい。最も、リンドン・ジョンソンだけは、副大統領になった後で、「裏口」を使ったような形で大統領になっている。ハワード・ベーカーは、素晴らしい実績を残した。

 そして、彼はさらに素晴らしい見識を示した。彼は「ここでの仕事はもう終わった。政界から退く」と言った。そして、民間に戻った。それでは、ベーカーはテネシー州の丘の向こうに消えてしまったのだろうか? そうではない。そこが今日この日までハワード・ベーカーが避難してきた場所ではあるが。彼は、民間の法律事務所での仕事に就いた。彼は熱心で思慮深い人物である。そして、彼はレーガン大統領の首席補佐官として公務に戻った。

 彼の近年における最大の手柄は、恐らくカンザス州選出の優れた元上院議員ナンシー・カセバウムとの結婚であろう。この2人は素晴らしい組み合わせである。

 ほんの1年ほど前のことである。われわれが以前から続けている「院内総務講演シリーズ」の講師の1人としてハワード・ベーカーを招いた。彼の講演は極めて興味深いものだった。彼は、われわれに「ベーカーの上院における1ダースの提案」を語ってくれた。南部の出身ではない方や「パン屋の1ダース」(baker's dozen)(訳注: 量目不足の罰を恐れて追加したことに基づく慣習から)の話を知らない方に説明するが、ここでいう1ダースとは13なのである。その13の提案は示唆に富むもので、彼の講演は素晴らしいものだった。

 今回ハワード・ベーカーは、駐日大使に指名された。数週間前、私はバード上院議員から電話をもらった。彼は、電話で「ハワード・ベーカーは、われわれの仲間だ。みんな彼を良く知っている。彼はわれわれの多数党院内総務だった。彼は普通の議員や上院幹部とは違い、大変つらく困難な時代に多数党院内総務を務めた」と語った。

 ハワード・ベーカーとバード上院議員は、党派を超えて共に仕事をした仲である。

 何週間も何カ月もかけて調査の結果を待つ必要はない。われわれは皆、彼を良く知っている。早く進めよう。急ごう。

 委員会は、今日公聴会を開き、そして上院は今夜投票を行なう。われわれは、ハワード・ベーカーの承認に票を投じる。そして、彼は大使になるのだ。彼の前任者である元多数党院内総務のマイク・マンスフィールドや元下院議長のトム・フォーリーと同じように。

 米国が大使として最高の人物を日本に派遣することを、日本が認識し、評価することを期待する。ハワード・ベーカーは、この伝統を継ぐものである。審議が速やかに進行していることは、喜ばしい。承認は取りつける。ベーカー上院議員と、彼の妻カセバウム上院議員は、米国にとって素晴らしい外交官になるだろう。日本で彼の知り合いになるすべての人々にとって、この2人は素晴らしい価値のある存在になるだろう。上院の仲間の皆さんに、この指名を速やかに支持してくださることを感謝する。

 私は、ハワード・ベーカーをこれから約1時間半ほど後に始まる「院内総務講演会」に招待している。講師は、元上院議長であり、元下院議員でもあるジェラルド・フォード元大統領である。

議長 アラスカ州選出上院議員。

スティーブンス上院議員 議長、院内総務に続いて、ハワード・ベーカー元多数党院内総務と彼の妻カセバウム元上院議員について話をすることは光栄である。ワシントンDCよりも東京に近い州に住む者として、この指名を歓迎する。

 21世紀は、太平洋の世紀である。世界における地政学的情勢を真剣に検討すれば、結論はただ1つである。その結論は、太平洋が、世界に大きな影響を与える地域であり、多くの可能性を秘めた地域であるということだ。ただし、この地域は大きな紛争が起こる可能性がある慎重を要する地域でもある。

 私は、大統領がハワード・ベーカーを駐日大使に選んだことを、嬉しく思う。彼は、上院で、また上院を離れた後の活動の中で、その指導力を示してきた。彼の妻は、ご存知のように、米国の傑出した女性指導者の1人である。大統領は大変賢明である。大統領は、1人分の費用で、2人の「大使」を得ることになる。

 親友である彼に、日本に赴任の途中、また帰国の途中にアラスカ州に立ち寄ってほしいと思う。ハワード・ベーカーに仕えたことは、私にとって名誉なことである。彼が院内総務を務めた8年間、私は副院内総務だった。そして、私は、彼をこれまでで最も優れた米国人の1人だと思う。引き続き国のために尽くす意欲を示している彼の姿を見ることは、喜びである。 私は彼の指名承認に票を投じる。

 以上である。

ワーナー上院議員 議長、私は、今日、良き友人であり、かつての同僚ハワード・ベーカー上院議員の駐日大使指名を強く支持する。この重要なポストに相応しい人は、彼の他には考えられない。なぜならば、彼は、この上院においても最高の人物だったからである。

 ベーカー上院議員のような経験と、知識と、政治手腕を持った人物を駐日大使に派遣することは、日米関係にとって大切なこの時期に極めて重要である。この地域の平和を目指す米国の目標にとって、不可欠である。アジアにおける全般的な安全保障は最重要事項である。ベーカー上院議員を米国の代表として日本に派遣することは、この重要な地域の安全保障と安定を維持する米国の努力に対し、この上ない価値をもたらすだろう。

 彼は、荒波を乗り切る術を知っている誇り高い水兵(魚雷艇の水兵)だった。

 ベーカー上院議員のこれまでの米国への貢献は、模範になるものである。彼は、1967年から85年まで、故郷テネシー州選出の上院議員を3期にわたり務めた。上院議員としての最後の4年間、ハワード・ベーカーは、上院多数党院内総務として、素晴らしい業績を残した。上院を去った後も、ベーカー上院議員は、レーガン大統領の首席補佐官として、また大統領の対外情報諮問会議の一員として、国への奉仕を続けた。

 ベーカー上院議員は、すべての人々、そして公務員やその家族に国民が期待する要求と犠牲を十分に理解している。このチャレンジに立ち向かい、再び公務に戻る彼の意欲を高く評価する。彼の傍らには、事実上の協力者であり、元の上院仲間である愛妻のナンシー・カセバウム・ベーカーがいる。

 議長、私は、長年ベーカー上院議員と共に仕事をするという幸運に恵まれた。彼の助けと、とりわけ彼の助言と友情により、現在上院の4期目を務めていることは大変名誉なことである。米国も、上院も、この2人の幸運を祈る。

ハッチ上院議員 議長、わが国の歴代大統領は、駐日大使として最も傑出した政界指導者を指名するという伝統を長い間築いてきた。マンスフィールド元上院議員やモンデール元上院議員、そしてごく最近ではトム・フォーリー元下院議長が、優れた外交と奉仕をもって、今日までこの伝統を維持してきた。

 ブッシュ大統領は、私の旧友であるハワード・ベーカーを、米国にとって最も重要なアジアの同盟国の次期大使として指名することで、この重要な伝統を最高の水準で守った。従って、私は、今日上院議員諸氏がこの指名を支持してくれることに、疑いを持たない。また、われわれの友人、そして彼の妻であり上院の仲間として信望の厚いナンシー・カセバウム・ベーカー(彼女自身も、この上院で、最も思慮深い外交政策の指導者の1人として高い評価を得ている)がワシントンを去ることは残念ではあるが、この2人が再びわが国に貢献することにより、失うもの以上に得るものが大きくなるだろう。

 ハワード・ベーカーは、これまで一貫して公務に身を捧げてきた。上院議員を務めることが名誉である理由の1つは、このような傑出した、尊敬できる仲間と一緒に仕事ができることにある。しかし、私の上院での任期が、テネシー州選出の著名上院議員の3期と重なっていたことは、特に幸運であったといつも思う。私が特に名誉に思うのは、彼が多数党であった共和党院内総務を務めていた時期に、彼と共に仕事ができたことである。そして、私の上院の仲間たちが良く知っているように、ベーカー上院議員は、本当の意味で引退したことはない。彼は上院を離れて、レーガン大統領の首席補佐官になり、この偉大な大統領のために傑出した奉仕をした。それ以降、この優れた公僕が果たした功績のすべてを列挙するには長い時間を要する。1つ注目してほしいのは、ごく最近彼が、ロシアとの核協力計画の基本的な見直しを行なう重要な委員会の委員長を務めていたことである。この超党派の委員会の提言は、新政権による米・ロ関係の非常に重要な政策見直しにおいて中心的な役割を果たしている。そして、今度は、ハワード・ベーカーは、米国のもう1つの重要な2国間関係である日本に大使として赴任する。

 私は、米国がアジアで戦略的パートナーシップを育てる必要のある相手は、中国ではなく、日本であることを、長年にわたり言い続けてきた。ブッシュ大統領は、明確にこの現実を認識している。そして、大統領はこのことを、国務省や国防総省そして国家安全保障会議に知日家を任命することで、示してきた。大統領は、ハワード・ベーカーを駐日大使に選ぶことで、これらの人事の仕上げをしたのである。このような戦略的思考をする大統領を賞賛する。大統領は、このポストに対して最善の選択をしたと私は考える。

 ハワード・ベーカーは、上院やホワイトハウス、さらには民間の経験をもって、大使の任務に就く。この経験は、同盟国日本において米国の代表となるハワード・ベーカーの努力にとって、あらゆる面でプラスになるだろう。すでにこの指名を暖かく歓迎した日本の指導者に対して、ベーカー元上院議員は、米国社会のあらゆる面における理解をもたらし、日本の社会と文化に対する心からの敬意を表わすだろう。これにより、小泉純一郎新政権は、ブッシュ政権との関係において、幸先の良いスタートを切ることができるだろう。

 私とハワード・ベーカーの個人的な関係は、ほぼ四半世紀に及ぶ。ハワード・ベーカーは、落ち着いて静かな品格のある、賢明な助言を与えてくれる人物である。彼は、国を愛し、国際社会の仕組みに深い理解を持つ人である。彼と彼の妻、ナンシー・カセバウム元上院議員がワシントンを去るのは残念である。しかし、この極めて献身的で有能な2人が日本に駐在することで、米国の国益が堂々と主張されることは間違いない。同僚の議員である皆さんが、私の考えに同意し、私と共にハワード・ベーカーの幸運を祈ってくれるものと思う。

フェインゴールド上院議員 私も、ハワード・H・ベーカー・Jr.の駐日米国大使指名を支持する。

 ハワード・ベーカーは、米国海軍士官として、上院議員として、レーガン大統領の首席補佐官として、そしてまた数多くの大統領諮問会議の一員として米国民に奉仕してきた傑出した経歴の持ち主である。テネシー州選出の上院議員を務めていた約20年間に、彼は少数党院内総務と多数党院内総務の両方を務めた。この間、仲間の尊敬を集め、有能で公正な指導者として、まとめ役として高い評価を得ている。ベーカー上院議員は、外交委員会委員として、また議会を代表して国連総会でも活躍した。

 ベーカー上院議員が長年にわたる公僕として培った経験と手腕は、日米関係強化という重要な役割を果たす上で、価値あるものとなる。ハワード・ベーカーは、トム・フォーリー元下院議長、ウォルター・モンデール元副大統領、マイケル・ヘイドン・アマコスト、そしてマイク・マンスフィールド元多数党院内総務等の長期間に及ぶ数々の傑出した大使たちの後を継ぐことになる。ハワード・ベーカーが、前任者たちと同様に、尊敬の念と共に米国を代表することは間違いない。

 重要な任務に赴くハワード・ベーカーに同行する妻、ナンシー・カセバウム・ベーカー元上院議員の見識と専門知識が米国に貢献することも、私の特別な喜びである。私は多くの問題でカセバウム上院議員と仕事をする機会に恵まれたこともあり、米国が真に優れたチームを日本に派遣することになることが分かっている。

ロックフェラー上院議員 議長、私は、大統領がかくも有能で誠実な政治家を駐日米国大使に指名したことを大変喜ばしく思っていることを、お伝えしたい。私が上院議員になったときに、ハワード・ベーカーは、ちょうど上院議員として3期(多数党および少数党の院内総務を含む)終えたところだった。礼儀と思慮深さで良く知られるハワード・ベーカーは、上品さとユーモアで、困難な政治の戦いを乗り切ってきた。彼はこうした特質をもってホワイトハウスに首席補佐官として赴き、外交スキャンダルに揺れる政権が国民の信頼を取り戻す上で重要な役割を果たした。ベーカー上院議員は、キャリアを通じて、ウォーターゲートやパナマ運河あるいはイラン・コントラ事件などで生まれた政府に対する国民の不信感を解消するために、公職に就くことをしばしば求められた。そして、彼は、米国政府と国民の信頼を前進させるために、必要な超党派的な合意を取りつける上で、何度も重要な役割を演じた。

 日米関係ほど重要な関係はない。米国と新興中国との困難な関係や、朝鮮半島で見られる軋轢などの情勢により、多くのマスコミの関心がアジアに向かいがちである。しかし、実際はアジアの中で米国にとって重要な国は、日本である。10年にわたる低成長の後も、日本はアジアにおける突出した経済大国であり、米国製品にとって最大の外国市場である。日本は、私の地元ウェストバージニア州も含めて、米国における重要な投資国である。日本は、また、アジアの中で米軍の最大の受け入れ国であり、アジア全体の平和・繁栄・民主主義を推進する米国の努力にとって重要な同盟国である。

 米国は、駐日大使というこの重要なポストに大物政治家を何人も続けて派遣してきた。ベーカー議員の駐日大使への指名は、米国が日本とのパートナーシップを極めて重要視していることを、同盟国日本に示すメッセージである。ベーカー上院議員が、小泉新政権と協力して、日本経済の再生と、世界経済成長の原動力の1つとして日本再生のための措置を支持することは、間違いない。ベーカー上院議員が、日本と協力して、アジアの平和維持に重要な役割を果たしている日米同盟に引き続き活力を取り戻すための努力することに間違いはない。彼が大使として日本に駐在することで、米国が日本を軽視するという「ジャパン・パッシング」なる見方が一掃されることは、間違いない。過去40年の日米関係を振り返ると、日米両国は、停滞ではなく、実際は成熟した関係にあることを確信している 。

 この重要なポストに対し、大統領が優れた選択をしたことを賞賛すると共に、われわれのかつての仲間であるナンシー・カセバウム上院議員が、ベーカー上院議員の素晴らしく有能な妻として日本に同行することを大変嬉しく思っていることを付け加える。この任務に、私の敬愛し尊敬するこのかつての同僚の他には、相応しい人物はいない。

 私は、この指名を支持する票を投ずる。

議長 テネシー州選出上院議員。

フリスト上院議員 議長、私もまた、本日、ハワード・ベーカー上院議員の駐日米国大使指名を熱烈かつ強力に支持する。議長、実際のところ、友人であるテネシー州出身のハワード・ベーカー以上にわが国を栄誉と卓越性をもって代表できる者は他に思い当たらない。彼は、上院においても、彼のコミュニティーにおいても、また米国においても非常に素晴らしい人物であり、指導者である。

 ご存知のように、ベーカー上院議員は、重要なテネシー州選出の上院議員を3期にわたり務めた。彼は、少数党院内総務や多数党院内総務を務め、さらにロナルド・レーガン大統領の首席補佐官を務めた。

 さらに重要なことは、ご承知の通り、彼は長い間、確かな魅力と尽きることのない勇気と誠実さをもって、国に奉仕してきた。先ほど、多数党院内総務が述べたように、彼は決してためらうことなく、困難な仕事や任務を引き受け、われわれを絶えず公正に扱い率直に接してくれた。彼は、多くの困難な局面に立ち向かっても決して怯むことはなかった。伝統的に民主党の地盤であるテネシー州で民主党候補や組合候補を破って、共和党としては初めて同州の連邦上院議員に選出された。他の上院議員と協力して歴史に残る大気・水浄化法案を1人の反対投票もなく可決させたこともある。今では当たり前のことになっている上院のテレビ中継を他の上院議員を説得して認めさせたこともある。徴兵制度の廃止案を支持したこともある。大統領の直接選挙法案を提出したこともある。18歳の若者に選挙権を認める法案、共和党大統領の調査を求める法案、そしてソ連の冷戦拡大阻止の外交政策に関するコンセンサスを取りまとめたこともある。

 彼は、いつも政治に対して信条を優先させた。彼は優れた上院議員というだけではなく、優れた指導者というだけでもない。彼は、私にとって個人的に良き師であり、友人でもある。

 上院で人々が彼を語る話に耳を傾けて驚くのは、彼の才能である。連立をまとめる彼の才能である。支持者の懸念事項に対処すると同時に、反対者の問題点とその妥協点を見つけ出し、反対意見の矛先を和らげていく彼の才能である。つまり、支持者と反対者の両サイドが抱える普通はまとまりそうにない問題に対処し、両者が満足するような状況に導く彼の才能である。

 私は、良き師であり、良き友に対する個人的な感想を述べてきた。繰り返しになるが、これは、私が公務に入るための最良の方法を模索していた10年前の個人的な体験談である。そこで、初対面となるベーカー上院議員に会いに出かけた。そして、彼と膝を交えて話し合った。これは公務に思いを巡らす数多くの人々と交わした会話でもある。1時間、膝を交えて、選挙選の動向についてのみならず、上院でわが国に奉仕することの名誉についての話を聞いた。

 その後1年半の間に、ベーカー上院議員と3回の面会の約束を取り付け、妻のカレンと共に話をする機会があった。実際のところ、彼は自分で話をするよりも、われわれの話を聞くほうが多かったように思う。われわれの話の内容を注意深く咀嚼した上で、コメントをしてくれた。そう、この面談の後で、最終的に上院に立候補することを決心した。私の決断に大きな影響を与えたのは、ベーカー上院議員との会話である。

 政治家として最盛期にあったハワード・ベーカーは、市民の議員としての任期に対する考え方から上院を去ることを決断して、ワシントンを驚かせた。そして、ホワイトハウス首席補佐官としてレーガン大統領に呼び戻された。そして、レーガン大統領の下でも活躍した。

 多数党院内総務は先ほど、その遺産は生きている、と述べた。講演シリーズでベーカー上院議員が講演したのは2年前である。今晩、この講演でフォード元大統領が話すことになっている。ベーカー上院議員は、「統率力について」と題する2年前の講演で、上院での経験を語った。このテネシー州出身の同僚が語った「パン屋の1ダース」にある13のポイントを1つ1つ、私は畏敬と誇りの念をもって聞いたことを思い出す。

 「話すよりもっと聞きなさい」が13のうちの1つだった。

 「耐えなさい」もあった。

 「必要のあるなしにかかわらず、真実を語りなさい」もあった。

 「礼儀を重んじ、他人にも礼節を勧めなさい」もあった。

 この話はまだまだ続く。今晩、われわれはベーカー上院議員を褒めたたえ、彼の指名を支持するために集まった。われわれは、彼が、引き続き、親しみやすく信頼の置ける助言者であり、テネシー州の政治家すべてがかくありたいと切望する模範であり、自由と民主主義の友であり、信条の擁護者であり、誠実と高潔と勇気の人であり、米国をよく代表する人物であることを認識している。

 彼の妻、ナンシー・カセバウム・ベーカーについての話があった。彼女は、われわれ皆の友人である。この2人の組み合わせは、経験豊かで知識に溢れるチームである。このチームは、わが国にとって素晴らしい財産である。

 名誉と喜びをもって、またテネシー人としての誇りをもって、ハワード・H・ベーカー・Jr.の駐日大使指名を支持することを申し上げて、私の話を終える。

 以上である。

議長 テネシー州選出上院議員。

トンプソン上院議員 議長、私は、ハワード・ベーカーの駐日大使指名を支持する。最初に、フリスト上院議員が、ベーカー上院議員の経歴と人柄について感動的な話をしたことに敬意を表する。われわれが深く敬愛する方について多くの好意に溢れる話を聞くことは、大変嬉しい。

 ベーカー上院議員に関する今朝の公聴会が、まさにそうであった。われわれは、両党の議員から多くの話を聞いた。バイデン上院議員とバード上院議員は、ベーカー上院議員に関する多くの良い話をしてくれた。私にとって、多くの点で、初めて聞く個人的な話であった。

 大分以前のことであるが、私は、ベーカー上院議員から電話をもらっていたので折り返しの電話をするために、震える手でダイアルを廻した。ベーカー上院議員は、私に、彼が委員長に次ぐ地位を占めていたウォーターゲート委員会に法律顧問として参加してほしいと頼んできた。震える手でダイアルしたその番号が、現在の私のオフィスの電話番号である。名誉なことに、私は、当時のベーカー上院議員と同じ職務についたのである。前にも申し上げたように、ハワード・ベーカーに匹敵するような者はだれもいない。しかし、私は、幸運にも、皆がハワード・ベーカー・シートと呼ぶ席に座る栄誉を得た。このシートに座ったことがある者で、私のこの言葉に腹を立てる者はいないはずだ。

 ハワード・ベーカーがいなかったら、私は政治の世界に入らなかっただろう。私は当時若輩の法律家で、務めていた米国連邦検事補の職を気に入っていたものの、ハワード・ベーカーのためにテネシー州中部を担当すべく、その職を離れることにした。まるで、だれかがハワード・ベーカーを管理できるかのように、あるいはハワード・ベーカー自身が管理者を必要としていたかのようにである。

 ラマー・アレクサンダーという、後にテネシー州知事になった若い弁護士が私にこの話を持ちこみ、またハワード・ベーカーに提案し、その結果私はハワード・ベーカーと会うことになった。給料が幾らなのかと聞いても、2人からの返事はなかった。自分のビジネス感覚に従い、私は「結構でしょう」と言った。そして、その仕事を引き受けた。彼は、テネシー州の一般選挙で、共和党員としては初めて同州の連邦上院議員に選ばれた。

 ウォーターゲート事件が起きたとき、私は、これまでいかなる若者も、また若い弁護士もしたことがない体験をした。つまり、われわれの世代、そして米国が歴史の中で最も揺れた時代に、文字通り華やかなハワード・ベーカーのような人物の右手に座る機会を与えられたのだ。私は、彼と、彼が立ち向かっている困難を理解した。われわれの相手は、ベーカー上院議員の友人でもある米国大統領だった。われわれが相手をしたのは、ベーカー上院議員の友人のジョン・ミッチェルのような閣僚たちであった。私には、公正であろうとするが故に味わう彼の苦痛が分かった。それにもかかわらず、彼は、断固として米国憲法を守ろうとした。彼は、そうした道を歩み、彼の人格の倫理と道徳の側面を示した。

 彼は、この若い弁護士に模範を示しただけではなく、すべての米国民に政治家の何たるかを示した。事実、「ステーツマン」(政治家)という言葉は、ハワード・ベーカーのような人のためにつくられたのだと思う。なぜならば、彼は、われわれ全員に、何をなすべきかだけではなく、いかになすべきかが重要であるかを示してくれたからである。

 彼と仕事を共にした人々がいかに彼を崇敬しているかを知ることは、大変嬉しいことである。その中にはもちろん、ベーカー上院議員が少数党院内総務のときに、多数党院内総務を務めていたウェストバージニア州選出のバード上院議員が含まれる。今朝すでに彼らの話を聞いた。バード上院議員の話を再び本会議で聞くことを楽しみにしている。私は今日の公聴会で、この有力で偉大な2人がしばしば議論を戦わせ、しかし国益のために協力するのを、そしてお互いに尊敬し合い、ただ1つ、最終的には自分たちの州のため、国のために尽くすことを心に抱いて仕事をすることに、思いをはせていた。

 ベーカー上院議員は、今朝の発言で、自分は結局本質的に上院の人間である、と述べていた。もちろん、バード上院議員についても同じことが言える。

 私は、今回のブッシュ大統領による指名を賞賛する。彼に確認したわけではないが、ベーカー上院議員は、ブッシュ現大統領の選挙運動の内輪の仲間ではなかったようだ。しかし、選挙運動のために懸命に努力したことは知っている。振り返ってみれば、(現大統領の父である)ブッシュ元大統領と彼は、おおよそ同時期に政界に入り、どちらかというと友好的な競争相手だったようだ。この極めて重要なポストに最良の人事が行われたことは、ブッシュ現大統領の優れた裁量によるのは明らかである。

 この(アジア・太平洋)地域は、世界でも問題が多い所である。今後も、さらにもっと多くの問題が出てくる可能性がある地域だ。現在、米中関係は異常で曖昧な状況にある。つまり、中国は、経済面と経済開放の面で進展を見せる一方で、軍事力を増強し、沿岸には台湾に矛先を向けたミサイルを300基も据えている。明らかに中国は、世界のその地域、台湾や南シナ海諸島そしてその地域の他の部分において、支配的な地位の獲得を目指している。

 この地域の友好国・同盟国と最良の関係を維持することは極めて重要である。日本ほど重要な国は他にない。

 現在日本では、改革が進められている。この時点で米国は、それが金融システムの改革であろうと、その他の経済改革であろうと、また米国や他の国々が目標達成のために経験してきた困難な改革を行なう上で、尊大な態度ではなく、友人として手助けとなるように努めている。今は、細心の注意を要する時期である。日本は、今や、自らの指導者の下で改革を進めている。

 こうした理由により、この地域で米国を代表する賢明な人物、そして堅実な手腕が必要になる。このようなポストにハワード・ベーカーのような人物を送ることができるのは、本当に良かった。

 今日、わが国に進んで奉仕しようとする人々には大変な困難が待ち受けている。指名プロセスは、時間がかかり過ぎ、面倒なプロセスでもある。われわれの努力が報われないこともしばしばある。しかし、幸いなことに、わが国には、国のために自分の時間を喜んで捧げるハワード・ベーカーのような人がいまだに多くいる。

 ベーカー上院議員が、駐日大使として米国が誇る多くの傑出した前任者たちの仲間の1人に加わることに、大変満足している。ベーカー上院議員の働きで、より良い米国と、より良い世界がもたらされるだろう。

 以上である。

議長 ウェストバージニア州選出上院議員。

バード上院議員 議長、上院は、ハワード・ベーカー元上院議員の次期駐日米国大使指名に関する投票をまもなく開始する。この投票は、私が長い間記憶に止め、誇りに思うものになるだろう。これは、上院の歴史の中でも誇るべき瞬間の1つになるだろう。

 私は、多くの指名に投票してきた。今の時点で16,027票を投じたことになる。今日の投票は、その中でも最良の投票の1つになるだろう。共に親しく仕事をしたことのある私の仲間が、日本政府と日本国民に対する米国の優れた代表になることに、なんらの疑いもない。

 ハワード・ベーカー上院議員は、故郷のテネシー州選出上院議員を、1967年から85年までの3期務めた。ウォーターゲート・スキャンダルにより米国が受けた傷が癒え始めた時期に、ハワード・ベーカーが共和党の少数党院内総務に選出され、私は民主党の多数党院内総務を務めることになった。この少数党と多数党の立場はその後入れ変わることになる。強い性格と健全な判断力と優れたユーモアの持ち主であるベーカー上院議員は、際立った存在だった。私が下院時代に同僚議員であった彼の父親や、彼の継母、そして彼の義父の後に続き彼も政界に入った。また、彼の義父エバレット・ダークセンが、下院で立っている姿をよく覚えている。乱れた髪そして、美しい言葉を交えた彼のしぐさが目に浮かぶ。言葉で絵を描くことができたのがエバレット・ダークセンであった。

 ベーカー上院議員は、多くの意味で偉大な信任状を携えている。彼は、立法機関に対して深く変わらぬ理解を持ち、また敬意の念を抱いていた。ハワード・ベーカーは、立法機関の立場について、何らの疑いも持っていなかった。彼は、憲法を理解していた。彼は、権力の分散と、三権分立のためのチェック・アンド・バランスについて理解していた。彼は、こうした原則を絶えず支持する人だった。彼の上院に対する愛情と、国に対する愛情は、いつも党の使命より勝るものであった。

 ベーカー上院議員が、困難を迎えたときの理性の声になったことも、しばしばある。ウォーターゲート事件調査特別委員会の最古参委員として、公聴会での彼の明かな狙いは、記憶に残るあの質問、「大統領は何を知っていたのか、それを知ったのはいつなのか」という質問に対する答えを見出すことだった。

 米国民のだれもがこの言葉を聞いたことがあり、またわれわれの大半がその言葉を聞いたことを覚えていることと思う。

 ベーカー上院議員と私は共に、わが国と上院にとって重要である多くの主要な法案提出に参加してきた。私は、パナマ運河条約のことを覚えている。当時、私は多数党院内総務だった。最初、私は条約に反対だった。ハワード・ベーカーも、条約に反対だった。私は、他の6人の上院議員、サーベンズ上院議員、メッツェンバウム上院議員、マツナガ上院議員、リーグル上院議員等を率いてパナマを訪れた。全員で7人だったと思う。

 われわれは、パナマに出かけた。パナマに住む米国人、米軍の軍人、国務省のスタッフと話し合った。トリホス将軍を含むパナマ政府代表とも話し合った。私は、デービッド・マカロウの「海をつなぐ道」(The Path Between the Seas)を読んで、パナマ運河の歴史に関するすべてを学んだ。素晴らしい本だった。デービッド・マカロウの書く本はすべて面白い。この本で、私のパナマ運河に対する考えが変わった。

 ハワード・ベーカーも私も、これが流れに逆らうことは分かっていた。世論調査によると、米国民の大半が、条約に反対の立場を取っていた。条約は2つあった。国民の大半が条約に反対していた。上院議員の大半も、条約に反対していた。だから、われわれは、大勢に逆らう戦いをすることになった。ハワード・ベーカーも私も、条約を批准することが、米国の国益にとって最良の方策だという結論に達していた。難しい仕事だった。

 マンスフィールド・ルームと名づけられたこのすぐそばの207号室で、ある日曜日に国務省の担当者を交えて駐米パナマ大使と会合したことを今でも覚えている。あの会合は覚えている。そして、以前は上院臨時議長室だったその部屋に集まり、打開策を探った。

 ハワード・ベーカーと私は、条約に2つの修正を加えた。2人の院内総務が加えた修正なので、「院内総務修正」と呼んだこの修正がなければ、条約が承認されることはなかっただろう。

 つまりこういうことである。党の立場を超えて、次期選挙にマイナスになることを知りながら、国益に最良の票を投じたのが、この人ハワード・ベーカーである。私も、ウェストバージニア州で、その時の影響をいまだに受けている。この条約を支持した私の票のことを覚えている人がいまだにいて、手紙を私に送ってくるので、私もこのことを忘れることができない。しかし、ハワード・ベーカーの立場は、私よりもはるかに困難なものだった。当時は、民主党が上院を支配していた。そして、当時の大統領は、民主党のジミー・カーター大統領だった。だから、ハワード・ベーカーの立場は、さらに難しいものだった。

 しかし、そうした困難にもかかわらず、またパナマ運河問題に関して民主党と異なる立場の共和党の方針に反して、ハワード・ベーカーは、誇りをもって、明白に、はっきりと、そして効果的に自分の立場を主張した。彼の賛成があったから、条約は批准された。結果として、上院の3分の2を1票超える条約の支持票を得ることができた。1票の差だった。これが、2人で協力したときの話である。忘れることのできない体験だ。

 これまで繰り返し述べてきたことだが、また、今朝の外交委員会の指名に関する公聴会でも述べたが、議場の近くにある応接室には、幾つかのメダリオンが飾られている。その中の5つにウェブスター、カルフーン、クレイ、ラフォレット、オハイオ州のタフトの肖像を見ることができる。私は、この上院が残りのメダリオンにどの上院議員の肖像と名前を入れるかの決定をすることになる、と申し上げた。上院は、すでに次のメダリオンに関する決定を下しているのではないかと思う。

 しかし、いつの日か、メダリオンの1つにハワード・ベーカーの肖像が入れられることを希望する。その決定がなされるときには、私は間違いなくここにはいないと思うので、私がハワード・ベーカーを推薦したことを記録に残してほしい。ハワード・ベーカーは、公務の中で冷静に自分の考えをまとめ、困難な立場を貫き通した上院議員だからである。彼にとっても、共和党にとっても難しいことだった。私よりも、もっと大変だったと思う。今述べたように、あの時の彼の支持は、大変貴重なものだった。また、彼は、上院議会審議のテレビ中継を認めさせようとした私を後押ししてくれた。

 その後も、彼は活躍した。私が多数党院内総務だったときには、彼は少数党院内総務だったし、その後、私が少数党院内総務だったときには、彼は多数党院内総務だった。ハワード・ベーカーは、常に大変人当たりの良い米国南部出身の飾らない人だった。今の政界にはあまり見ることのない卓越した良識の持ち主で、またユーモアと大変な知性と、並外れた知識の持ち主であり、非常に明晰で、人々から信頼される人である。

 彼は、ホワイトハウスが慎重な助言と穏健な指導力を必要としている時に、レーガン大統領の首席補佐官を務めた。

 ベーカー上院議員は、1998年の上院における演説で、1981年から85年まで多数党院内総務を務めていた自分を支えた教訓を振り返り、こう言った。

 「われわれの英雄が良く知っているように、上院を真に機能させるためには、人間の本質を理解すること、心と精神を理解すること、同僚そして選挙区民の強さだけではなく弱さも理解することである」

この言葉は、共通の理解と、現実に、われわれを引き戻してくれる。この教訓は、駐日大使としての彼の任務遂行の助けになると思う。

 長年にわたり、米国は、大統領の代理として、優れた米国民を日本に送ってきた。最近では、元下院議長のトーマス・フォーリー、その前には元副大統領のウォルター・モンデール、そして元上院多数党院内総務のマイク・マンスフィールドなどである。ベーカー元上院議員の駐日大使任命は、アジアで最も繁栄している国日本との関係を米国が重要視していることを示し、さらに重要なことは、わが国に人生の大半を捧げてきた大変有能な人物の奉仕を米国が再び受けることを可能にする。

 トンプソン上院議員が先ほど述べたように、ナンシー・カセバウム元上院議員も同行するという。ハワード・ベーカーと妻ナンシーの2人は、素晴らしいチームである。彼女自身も、立派な駐日大使となれる人である。

 「太平洋の世紀」と多くの人が呼ぶ新世紀において、日本は米国にとって極めて重要なパートナーである。ベーカー上院議員は、非常に重要な国で、大きな変遷を遂げている地域で、過度期にある世界で、米国を代表することになる。彼が、日本との豊かで平和で生産的な関係を確保するために、全力を尽くすことを確信している。

 民主党員であれ共和党員であれ、この議場に立ち米国民に駐日大使として推薦するに当たり、より有能で、より効果的に任務を遂行できる人を他に知らない。ハワード・ベーカーほどに、わが国を愛し、献身的な人は他にいない。

 私は、公聴会終了後、直ちに議場に駆けつけて、多数党院内総務にこの指名を今日中に審議することを迫った。待つ理由は何もない。今日審議にかけよう。この指名の審議を今日できるかどうか、わが党の院内総務に尋ねた。もちろん、彼らはすでに今日審議することを決めていた。

 この時を私は待っていた。ハワード・ベーカーと共に仕事をしたことを、誇りに思っている。ハワード・ベーカーは、私にとって真の上院議員の象徴であり、誇りである。ハワード・ベーカーは、政党の重要性を理解しながらも、政党よりも上院を、憲法を、そして国を思う上院議員なのだ。そう思うのは、彼がそうした行動を取ったときに私は上院にいたからである。

 かつての同僚がこの指名承認後に東京に向かうに当たり、私は妻のアーマと共に、彼とナンシー夫人の日本における成功を祈る。

 議長、私の話をホーラス・グリーリーが最初に書いた言葉で閉めくくることにする。その言葉は、ハワード・ベーカーを最も良く表わしていると思うからである。連邦政府であれ、地方政府であれ、基本的に政府の仕事をするすべての政治家に最も必要とされるものだからである。多分、人と人との違いを区別する基本的なものだからである。その言葉は「名声はかすみのようなものであり、人気は気まぐれの産物であり、富はなくなるものなのだ。持続するのはただ1つ、それは人格である。」

 彼には、それがある。以上である。

議長 民主党院内総務。

ダシュル上院議員 議長、ウェストバージニア州選出のバード上院議員による、特徴をつかんだ素晴らしいお話に敬意を表したい。彼は、われわれすべての気持ちを代弁してくれた。彼の話は、感動的で、誠実で、真実であった。

 マイク・マンスフィールド上院議員は、かつて日米関係を最も重要な2国間関係と呼んだ。まったく、その通りである。

 日本と米国の国内総生産(GDP)を合わせると、世界の40%を超える額になる。日米両国の協力により、アジアの安定と日本の強化、そして米国の安全保障の強化が行われてきたし、また今後も強化することができる。

 今日のアジアにおける変革の時代には、日本との同盟関係がかつてないほど重要である。日米両国が協力し、共に栄えることを確保する上で適切な人物は、ハワード・ベーカー上院議員をおいて他に考えることができない。

 バード上院議員が指摘したように、ベーカー上院議員は、共和党院内総務であり、党の少数党院内総務であっただけではなく、米国が国内で問題を抱え、冷戦時代の歴史に残る困難に直面していた頃の多数党院内総務だった。ベーカー上院議員は、党派を超えて上院の仲間と協力し、立法の障害となる多くの諸問題を解決してきた。そして、彼が並ぶもののない政治家であることを証明した。

 ベーカー上院議員の指名を承認することは、最も傑出した大使を日本に送ることになる。これにより、マンスフィールド上院議員の所見が今まで以上に正しいと米国が信じているというメッセージを日本に送ることになる。日米両大国の同盟関係が非常に重要であり、そのためにハワード・ベーカー上院議員の大使としての手腕が必要になるのだ。ベーカー上院議員とナンシー・カセバウム上院議員を迎えて、米国が最高の大使を送ったことを、日本が認識することを確信している。

 私は今日、上院の仲間と共に、ハワードとナンシーに心からのお祝いの言葉を述べると同時に、上院議員のすべてが胸に抱いている2人に対する誇りと尊敬の念、そして2人が引き続き公務を楽しむことへの期待の念と、2人の米国への優れた奉仕に対する感謝の念を表したい。以上である。

議長 メリーランド州選出上院議員。

サーベンズ上院議員 議長、私は、ハワード・ベーカー上院議員の駐日大使指名を強く支持する。まず申し上げたい。この指名は、米国の日米関係重視の姿勢を再びはっきりと示していることを、日本の国民の皆さんにお伝えしたい。

 今まで四半世紀にわたり、米国はマイク・マンスフィールド上院議員やトム・フォーリー下院議長を派遣してきたが、今回はハワード・ベーカー上院議員を日本政府および日本国民に対する米国の代表として送るのである。この意味を、日本が十分に理解してくれることを期待したいし、またしてくれると考える。これはつまり、米国が、いかに日米関係を重要視しているかということであり、日米関係を国際問題の中で重要な関係と位置付けているのである。ハワード・ベーカーと妻ナンシーが米国を代表して、素晴らしい仕事をするであろうことに、われわれすべてが強い確信を抱いていることを表している。

 私は、時として上院本会議で大使指名、特に生え抜きの外交官以外の大使指名に反対の立場を取ることがあった。私は別に、すべての大使は生え抜きの外交官から選ばれるべきだとは考えていない。真に貢献できる人を生え抜きの外交官以外から見出すことはできると思うからである。米国には、このような考え方をする伝統がある。しかし、大使の多くは生え抜きの外交官から選ばれているのは、非常に重要であると思う。それは、1つには外交官の士気の高さを保つためであり、若くして外交官勤務に就き、外交官を生涯の仕事とする人々に、大使に昇進する機会を与えるためである。大使がすべて外部から選ばれた場合、彼らに大使に昇進する道を閉ざすことになるからである。このようなことがあれば、外交官の士気に大変悪い影響を及ぼすことになるだろう。士気の高い外交官がいることは、世界における米国の国益と目標への貢献にとって大変重要である。

 もし、私が「あなたは生え抜きの外交官以外の人を大使として派遣することを認めた。それに関して確固たる立場を取ってはいない、生え抜きの外交官以外から大使を求めるとしたら、どのような人を選ぶか」と聞かれたら、私は直ちに、ハワード・ベーカーのような人を選ぶ、と答えるだろう。ハワード・ベーカーは、生え抜きの外交官以外から見出すことのできる大使の、ある意味での典型である。

 われわれは皆、上院におけるハワードを良く知っている。われわれは、彼に対して非常な尊敬の念を抱いている。彼は、大変な見識と分別の人であり、決して礼儀に欠けることのない人である。彼と関わりをもったここにいるすべての人は、彼が他人に対して払う敬意を常に感じ取り、当然のことながら、彼に対して敬意をもって応えてきた。上院で、そうした経験を時には思い起こす必要がある。

 長年の間、われわれは彼が自分の力を注意深くかつ責任を持って行使してきたのを見てきた。これは、彼が指導者として天から授かったものである。米国と日本の間には、時々、幾つもの困難な問題が発生する。

 こうした問題が原因で、日米両国間の強力で建設的な関係の重要さを見失うようなことがあってはならない。私は、ハワード・ベーカーが、前任者のトム・フォーリーやマイク・マンスフィールドと同様に、このことを日本国民に伝え、また日本における状況を米国の議員に伝えることができると確信する。

 マンスフィールド大使やフォーリー大使のいずれもが行なったことの1つは、議員との接触を保つことであった。議会出身者として、2人とも、日米関係に果たす議会の役割を十分理解していた。このことは、ハワード・ベーカーが大使の仕事を遂行する上での強みの1つになると考える。さらに、ホワイトハウスの首席補佐官としての経験から、彼は行政府の仕組みを理解している。この大変重要な責任を果たす上で、彼はこうした経験を活かすことができる。

 今回の大使の任務遂行においてナンシー・ベーカーは、極めて重要な役割を果たすと、考える。私は、共同大使という話が一時出たことを知っている。もし、大使の責任が直接的であるとするなら、共同大使なるものが実現可能かどうか分からないが、日本において米国を代表する上で、ナンシー・ベーカーが極めて重要で新しい側面を加えてくれることは確かである。

 私は、他の上院議員と共に、この指名を支持する討論に加わる。私は、バード上院議員が語ったハワード・ベーカーについて、また上院でのベーカー議員との関係について、そしてベーカー議員の人格についての話に大変感動した。

 ハワード・ベーカーは人格者である。彼は賢者である。分別の人である。礼節を重んじる人である。ハワード・ベーカーが駐日大使になることを喜んでいる。

 以上である。

議長 カンザス州選出上院議員。

ブラウンバック上院議員 議長、私は、ハワード・ベーカー上院議員の駐日大使指名ならびに彼に同行する私の良き友人で、カンザス州選出のナンシー・カセバウム元上院議員を支持する。

 私は、ベーカー上院議員のことを十分には知らない。上院で彼と仕事をした経験もない。

 私は、長年にわたりナンシー・カセバウムを良く知っており、彼女のカンザス州における政治家としての経歴も十分承知している。彼女の一家は、カンザス州における偉大な指導者である。彼女の父アルフ・ランドンは、かつての大統領候補者で、また1936年にはカンザス州知事も務めていた。カセバウム上院議員は、父の後を継いで、大変有能かつ、適任の、慎重で品位のある公僕になった。彼女は、素晴らしい仕事をした。彼女は、日本でも同様に素晴らしい成果を上げるだろう。

 ハワード・ベーカー上院議員については、後になって知ることになった。彼がカンザス州立大学のフットボールの試合を観戦に来ることもあった。素晴らしいファンでもあり、その彼が応援するチームは素晴らしいチームである。カンザス州立大学がテネシー州で試合をするときには、ハワード・ベーカーがテネシー州の大学を応援し、ナンシー・カセバウムがカンザス州立大学を応援して、2人の間に争いが起こるという。

 これは、すでに指摘されているような理由から、重要な指名である。しかし、繰り返し述べたいのは、米国民の代表者として日本に派遣する大使の能力の重要さである。日本は、米国にとって重要な同盟国である。日本は、将来ますます米国の注目を集める地域にある。そして、最近、その傾向はますます強まっている。従って、米国は、世界において米国がますます関心を強める地域に、米国を代表する才能を持つ人物を日本に送るのである。

 近年、米国は、アジア特に対中関係において、幾つもの問題に直面した。米国は、アジアにおいて他の諸国との関係を拡大した。米国は、インドおよび南アジアとの関係を広げてきた。世界に対するそして米国に対するこの地域全体の重要性が増している。

 米国が、このアジア地域全域で活動と関与を拡大しているときに、米国の国益と考え方を代表してくれるように、ベーカー上院議員のようなレベルの指導者をこの地域に送ることは重要である。

 私は、外交委員会の一員として、彼の指名を心から支持する。私は、米国が外交の分野にこのような人物を迎えることを、喜びとする。彼は、傑出した代表、傑出した大使になるであろう。ナンシー・カセバウムも、大使を補佐するだろう。ナンシー・カセバウムは、カンザス州の人に愛されるように、日本の人々からも心から愛されるであろう。ナンシー・カセバウムの上院議員時代に、彼女ほど高い支持率を得ている政治家は米国にはいなかった。カンザス州における彼女の人気は、「夕映え」と「麦の収穫」に次ぐものだ、と言う者もいるぐらいだ。彼女には高潔な才能があり、その才能を持って日本に赴く。この素晴らしい指名を私は心から支持する。

 以上である。

議長アラード上院議員) ノースカロライナ州選出上院議員。

ヘルムズ上院議員 席に座ったままで、簡潔に話すことをお許し願いたい。

議長 要請を認める。

ヘルムズ上院議員 議長、私は今朝、外交委員会の委員会報告を行ったとき、ハワード・ベーカーの駐日大使への大変賢明な指名に関して発言した。そこで述べたことを繰り返すと、あそこに彼が座っていたのが目に浮かぶようであるが、この著名な元上院多数党院内総務であるベーカー議員ほど、同僚の上院議員から尊敬された者はいない。

 われわれは皆、ベーカー上院議員との関係に良い思い出を持っている。そして、われわれは皆、彼の教養と立法能力、そして意味ある妥協点を見出す能力を持つ、素晴らしい人物である彼を愛し、敬意と尊敬の念を抱いている。

 正直に言うと、彼に対して親愛の情を持っているのは、彼が私の孫に大変やさしくしてくれたからだ。そして、こういうことが人の心を捕らえる。私の孫娘が生まれた次の日に、ハワードと一緒にノースカロライナにちょっとした旅に出ようとしたときのことだ。出かける前にハワードが電話してきて、「ジェシー、だれが空港に迎えにくるんだい?」と聞いた。

 「分からない、でも調べてみようか」と私が言うと、

 「ちょっと、行きたい所があるんだけど」とハワードが言う。

 「どこだって、好きな所に行けばいいさ」と私が言うと、

 「昨日君のおちびちゃんが生まれた病院に行きたいんだが」とハワードが言う。

 「ハワード、そんなことする必要はないよ」と私が言うと、

 「いや、孫たちが好きなんだよ、君さえよければ、行きたいんだけど」とハワードは言う。

 「構わないさ」と私が言うと、

 「出かけるときに、カメラを持っていってもいいかい?」とハワードは尋ねた。

 彼が熟練写真家で、素晴らしい写真集を2、3冊出していることを知る人は少ないだろう。彼は、24時間前に生まれたばかりの赤ちゃんやママ、自慢げのパパやおじいちゃん、それに病院中の看護婦さんたちの写真を撮り続けた。

 あっという間に4、5年が経ち、ケーティ・スチュアートがわが家にやってきた。そして、このことを、ハワードが聞きつけた。当時ハワードは、レーガン大統領のホワイトハウス首席補佐官だった。ハワードが電話してきて、「病院で撮ったように、また新しい写真を撮らなきゃ」と言う。そして、ケーティを連れてホワイトハウスに出かけると、照明を準備して待ち構えていたハワードが、「さあ、ジェシー、ケーティを腕に抱いてくれないか。鼻高々のおじいちゃんと、見たこともないほど可愛いい孫娘が一緒の写真を撮りたいんだ」と言った。そして、写真を撮った。その写真は今でも私の部屋の壁に飾ってある。

 ハワード・ベーカーは、偉大な大使になるだろう。彼自身が偉大であるだけではなく、彼にはもう1つの強みがある。それは、この議場に偉大な上院議員として在席したことのあるナンシー・カセバウム・ベーカーである。今朝だれかが述べたように、ナンシー自身が、どこに行こうと優れた大使になれる。

 話せば切りがないが、ハワード・ベーカーの経験と個性、そしてナンシー・カセバウムの経験と個性は、2人の大使の任務遂行に大いに役立つであろうことを申し上げるだけで十分だろう。日米関係は、この新たな時代に極めて重要である。ハワード・ベーカーのような人物を大使として送り出すことにより、ブッシュ大統領は、米国にとって非常に重要な同盟国日本における米国民の代表者として、これ以上望むべくもない適切な米国人を選択した。

 以上である。

議長 デラウェア州選出上院議員。

バイデン上院議員 議長、私はハワード・ベーカーを支持する。委員長が最後に発言するべきなので、私がここで発言するのは異例であることは分かっている。お詫びする。委員長がすでに話していたことを知らなかった。私が最後だと思うので、話を簡潔にしたい。

 ハワード・ベーカーは、大使に指名された者の中でも、簡潔には語れない数少ない1人である。彼については、あまりにも語ることが多いからである。演壇前に立っているハワイ州選出の古参の上院議員は、ハワード・ベーカーのことを私と同様に、いや恐らく私以上に知っている。私は上院議員を28年間務めている。彼は、上院両党の中でも優れた指導者だった。今朝申し上げたように、彼は、優れた見識のみならず、深い教養を身につけた人である。

 彼には地方の弁護士のようなところがある。つまり、問題を解決すると同時に、当事者の自尊心および、または立場を傷つけたり、害することのないようなかたちで、困難な状況を切り抜ける術を知っているような地方の弁護士である。これが、指導者のしるしである。これは大使が必ず身につけているべき基本的な要素であるようだ。

 ハワード・ベーカーを駐日大使に任命することは、日本の人々に対して、米国が日米関係を重視していることを示す誠実で最も強力なシグナルを送ることになる。

 ヘルムズ上院議員と私は同じ期間、イノウエ上院議員はさらに長い間上院議員を務めているが、このように多くの傑出した人々を米国が送った国は、日本をおいて他にないのではないかと思う。ハワード・ベーカーは、これらの真に偉大な米国人の伝統に加わる。「偉大な米国人」という言葉は陳腐に聞こえるかもしれない。しかし、モンタナ州出身の「鉄のマイク」、大半の人が身体全体で持つ以上の誠実さを小指1本に持つだれもが尊敬するマイク・マンスフィールドがそうであり、われわれの同僚であった元下院議長のトム・フォーリーも、ノースカロライナ州出身のわが友ヘルムズ議員とは政党が異なる民主党の尊敬する元副大統領でこの上院を光輝あるものにした、まさに文字通り上院を光輝あるものにしたフリッツ・モンデールもそうであり、そしてハワード・ベーカーもそうなのだ。同じように偉大な人々が他にもいるが、ここでは省略する。

 今朝私が申し上げ、またヘルムズ上院議員も触れたように、ナンシー・カセバウム元上院議員自身も、駐日大使の任務を果たす力を十分に持っている、ということは決して誇張ではない。実際、すべての大使の承認を扱っている外交委員会の一員であるヘルムズ上院議員も私も常に言っているのは、大使に任命された者の配偶者というのは、犠牲を払うと同時に貢献もしている、ということである。このことは、ほとんどの場合に当てはまるし、時にはそれ以上のこともある。

 これは、政治的な指導力と、外交知識と、ホワイトハウスへのアクセスが結びついたものであり、他に類を見ることのないものだと、私は思う。

 ハワード・ベーカーは優れた選択であると述べた上院議員に賛同する。それ以上に、彼は真に優れた人である。

 今朝申し上げたように、彼と私は、異なる党に属していながらも、共に仕事をする機会が多かった。しかし、私は彼を真の友人と思っている。彼のような偉大な人物を友人と呼ぶのは、おこがましいことである。彼は、私が上院に入るよりもはるか以前に、上院の中心的存在だった。私は、生意気な意味で、2人が親しい友人だと言っているわけではない。2人は、世代も年齢も異なっている。しかし、2人は友人である。私は彼を尊敬している。彼を大変尊敬しており、そして大統領に敬意を表する。

 私がいつも、これは古いアングロサクソン語だと思い、そしてそう信じている言葉がある。その言葉で私の話を終えたい。それは「人格は、その人の長く伸びる影に他ならない」という言葉である。

 ハワード・ベーカーの影は、大変長いものだ。彼は、偉大な人格者である。第2次大戦後、米国と日本、米国とアジアの関係で最も重要な時期に、彼は、米国のために素晴らしい働きをしてくれるだろう。言葉は大切である。ハワード・ベーカーは自分が使う言葉を上手に選ぶ。そして、日本ほど言葉や礼節そして外交を大切にする国を他に知らない。

 これ以上の選択はない。大統領に敬意を表する。

議長 サウスカロライナ州選出上院議員。

ホリングズ上院議員 ハワード・ベーカー元上院議員を駐日大使に指名したブッシュ大統領を賞賛する。上院議員を同じ時期に始めたこともあり、私は彼を大変良く知っていると思う。彼と一緒に旅をしたこともある。旅先での彼の仕事振りを見たこともある。彼の撮った写真が私の家に飾ってある。テネシー州のハンツビルにある彼の家を訪れて、彼の妻だったジョイに会ったこともある。そして、ジョイが亡くなった後、彼は、われわれの素晴らしい友人であり、カンザス州出身の元上院議員ナンシー・カセバウムと再婚した。

 ベーカー家は、ナンシーの息子とその妻や孫たちのいる素晴らしい家族である。彼らは私の故郷のチャールストンに住んでおり、幸いなことに、私は折に触れて彼らと会うことができる。

 上院への登院について、昔から言われている面白い話がある。初めて上院に登院したときには、このような特別な社会によく入れたものだと驚く。そして数年後には、謙虚な心を忘れてしまい、他の連中が上院によく入れたものだと驚く。

 彼らを見なさい。皆才能があり、知性があり、経験がある。もっとも、それがなかったら、それぞれの州で上院議員に選ばれないことになる。

 しかし、私が真に求めているのは、判断力である。バランスのとれた予算以上にバランスのとれた上院議員が必要とされるのは間違いない。それがハワード・ベーカーである。私が大統領選挙に立候補したときのことだが、もうだれも覚えていないだろうか。

バイデン上院議員 私は覚えている。

ホリングズ上院議員 あなたも私も、そのとき一緒だった。でも、2人とも忘れられてしまっている。

 選挙活動を進めるうちに、国務長官をだれにするかという質問が出た。1980年代初期の頃の話だ。私の答えはハワード・ベーカーだった。彼の歴史感覚、理にかなった判断力、そして彼の知性を評価したからだ。彼は、世界を知っている。彼は、日本を知っている。彼は、国防の必要性を知っている。環太平洋地域の安全保障の必要性を知っている。日本における貿易問題や貿易機会を知っている。そして、すべてを理解している。

 皆投票を待ち構えていることでもあり、最後に一言だけ言わせてほしい。私は、今回の指名に感激している。彼を大使として送り出すことができるのは、米国にとって幸いであると私は思う。

 以上である。

議長 ノースカロライナ州選出上院議員。

ヘルムズ上院議員 議長、多数党院内総務に代わって、残りの時間を譲る。

賛否を問うてほしい。

議長 支持する者は? 支持ありと認める。

フロリダ州選出ネルソン上院議員 委員長、私に一言発言させて頂きたい。

ヘルムズ上院議員 どうぞ。

フロリダ州選出ネルソン上院議員 外交委員会の一員として、また新人議員として、今日のベーカー上院議員に関する証言に心を打たれたことを、外交委員会委員長ならびに最古参議員に申し上げたい。

 まず第1に、バイデン上院議員ならびにヘルムズ上院議員がハワード・ベーカーに抱く尊敬の念の深さが分かった。ついで、ドール上院議員そしてバード上院議員の証言を聞いた。

 私の心を打ったのは、ベーカー上院議員を上院の人と呼んだバイデン上院議員の言葉である。上院議員になる前だったら、この言葉が持つ深い意味を理解できなかっただろう。しかし、名誉なことに、上院議員の皆さんを知り、日常接触することができるようになったために、今皆さんがベーカー上院議員を上院の人と呼び尊敬することの意味が理解できる。上院の人、すなわちその言葉を信じることのできる人、道義を重んじる人、他人が感じることのできる誠実の感覚を持つ人、である。これこそが、今日われわれの政府に必要とされるものだろう。

 従って、私は新人上院議員として大いなる名誉の念をもって、米国の国益を促進するために、ベーカー上院議員をこの非常に重要な国に大使として送ることを皆さんと共に支持する。

ヘルムズ上院議員 議長、先ほどお願いしたように、賛否を問うてほしい。

議長 時間がきた。案件は、テネシー州出身のハワード・H・ベーカー・Jr.の駐日特命全権米国大使の指名を上院は助言し、同意するかどうかである。

 賛否の投票が行われた。書記がこれから名簿を読み上げる。

 書記補佐が、名簿を読み上げた。

ニクルズ上院議員 ネバダ州選出エンサイン上院議員が、やむを得ぬ事情で欠席したことをお知らせする。

 結果は、賛成99、反対0、無投票1である。

 指名は承認された。

レーヒー上院議員 議長、採決再考動議を提案し、その動議を棚上げする動議を提案する。棚上げする動議が認められた。

議長 上院の決定は、直ちに大統領に通知される。 以上。

 HOME |  U.S. CITIZEN SERVICES |  VISAS |  POLICY ISSUES |  STATE DEPARTMENT
CONTACT US |   PRIVACY |  WEBMASTER
Embassy of the United States