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*以下は、2001年12月3日付の毎日新聞朝刊に掲載されたベーカー大使の寄稿を、毎日新聞社の許可を得て転載したものです

「テロから文明を守る戦い」

駐日米国大使 ハワード・H・ベーカー

 9月11日の同時多発テロで、ニューヨークの世界貿易センターでは約80カ国の人々の命が失われた。米国を襲ったテロの使者たちは全世界を攻撃したのである。そして世界は、これに反応して立ち上がった。

 北大西洋条約機構(NATO)は史上初めて、条約第5条の集団的自衛権を発動した。国連安全保障理事会や国連総会、米州機構、アジア太平洋経済協力会議、イスラム諸国会議機構、アラブ連盟、その他の何十もの国際機関が、このテロ攻撃を非難する決議や声明を出した。

 日本など親密な友好国はもちろん、それまで米国と対立していた国々さえ、この重要な戦いへの支援を申し出た。世界は結束してテロに対抗している。

 しかし、まだいくつかの誤解が残っている。

 テロとの戦いは、イスラム教に対する戦いではない。米国は宗教的な寛容を実現すべく、ひたすら努めてきた社会である。米国人のうち数百万人はイスラム教徒である。イスラム教は人命を尊重し、大量殺戮を容認しない。テロリストはイスラムの教えを冒涜している。

 テロとの戦いは、アフガニスタンの人々との戦いでもない。国際テロ組織「アルカイダ」とその支援者タリバンに対する戦いなのである。アルカイダは少数の過激派であり、米国の敵というだけでなく、その背教的な観念を拒むすべてのイスラム諸国の敵でもある。タリバンはイスラム教の正統ではない。アラーの意思や人々の意思を代表していない。人々はタリバンの狂信的な支配の下で、苦しみ、命を失ってきたのだ。

 テロとの戦いは、政策や貧困によって引き起こされたのではない。それは、私たちが体現する自由や価値観ゆえに文明世界全体を憎む犯罪者たちに起因するのである。

 テロとの戦いは、「報復」攻撃ではない。報復という表現は誤っている。私たちはテロリストたちが狙うような何の罪もない人々を標的にはしない。民間人の生命のいかなる損失も遺憾に思う。米国は軍事施設とテロリストの施設だけを標的にしている。米軍はアフガニスタンに潜伏しているテロリストを追い詰めるにあたり、民間人の死傷を避けるために並々ならぬ対策をとっている。

 テロとの戦いは単なる軍事作戦ではない。9月11日以前から米国はアフガニスタンの人々に対する人道支援の最大の提供国だった。その後も支援を続けている。そして、アフガニスタンとその周辺全域が抱える問題の政治的、外交的、経済的解決のために、すべての文明諸国とともに不断の努力を重ねている。ブッシュ大統領が述べた通り、「アフガニスタンに、すべてのアフガン国民の利益を代表するリーダーシップが登場するのを私たちは見たい」のである。

 アフガニスタンでの軍事作戦の終結後も、私たちの前にはテロとの長い戦いが待っている。しかし私は、日本がこの努力に加わった決断に勇気づけられている。小泉純一郎首相は、7項目の支援策や後方支援の艦船の派遣などに偉大なリーダーシップを発揮された。日本政府は懸案だった爆弾テロ防止条約の批准手続きを取り、テロ資金供与防止条約に署名した。

 日本はこのテロとの戦いが米国だけの問題ではないことを理解している。それは日本の問題であり、中国の問題、ロシアの問題、アフガニスタンの問題であり、要するに人類の問題なのである。それは文明を守るための戦いであり、私たちは必ずや勝利するであろう。

【訳・竹川正記】

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