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「改革の門口に立つ日本」

(財)社会経済生産性本部主催の「国際政経懇話会」における
ハワード・H・ベーカー駐日米国大使の講演(草稿)
2002年10月31日 帝国ホテル 東京

 本日は、経済界首脳の皆さんと同席できることを喜ばしく思う。最近、日本がアジアのスイスになりつつあるとの声を聞く。すなわち、成長率は低く、国際的な影響力をほとんど持たない、豊かな小国になりつつあるということである。現に日本は、巨大な経済力を持ち生活水準も高く、またスイスと同様、美しい自然を持っている。しかし、日本が地域や世界の平和と繁栄に貢献する能力も含め、今後、国際的にどのような役割を果たすかは、日本が今、経済面でどのような選択をするかによって決まる。米国は、日本の友人として、また同盟国として、日本が活力ある経済を持ち、民主主義国家社会の指導者に相応しい役割を担う国となることを希望する。

 小泉首相は、日本が国際的に、より大きな役割を果たすことを望んでいる。最近の内閣改造をはじめとする首相の行動は、日本が経済の課題に取り組みつつあることを示している。

 しかし、日本は、国民が将来に希望を持てるようにするため、どのように信頼を回復すればよいのだろうか。日本は現在、改革の門口に立っており、その選択肢は極めて明白である。制度問題に断固として取り組むのか、それとも、これまで通りごまかしながら切り抜けていくかのどちらかである。小泉首相は行動しており、私は、日本国民も首相の改革を支持すると信じている。

 小泉首相には、改革プログラムを実行する意欲と勢いがあると思う。首相の平壌訪問は勇断であり、国民の関心を集めた。首相が米国との連携を維持し、また、日本が多くの重要な地域的課題について米国と協議していることに、われわれは感謝している。

 日本と北朝鮮との関係には、未解決の課題が数多く残っているが、小泉首相に対する高い支持率は、国民が首相に、日朝関係に変化をもたらすよう負託していることを表す。

 小泉政権は、日本が潜在成長率を完全に回復するために取り組むべき課題を明確に認識している。まず第1に、不良債権と業績不振の借り手の問題を克服し、第2に、バランスシートを悪化させ、投資や家計支出を抑制する継続的なデフレを解消することである。また、新たな投資と成長の機会を創出するための抜本的な構造改革と規制撤廃・緩和も、成長を促進する。そして、首相が強調するように、日本は、投資家や貯蓄者の信任を確保するため、財政の均衡を回復する確かな計画を必要としている。

 これらの分野は、いずれも1つだけでは十分ではなく、各分野での進展が他分野での取組みを支えるものとなる。しかし、包括的・統合的なアプローチを取れば、日本は過去数年よりもはるかに目覚しい経済実績を達成できる。

 ここで、3番目の課題である、新たな投資と成長の機会を創出するための構造改革と規制撤廃・緩和、そして外国直接投資が果たす役割について話したい。

 近年、対日投資は急速に伸びている。米国と同様に、日本にとっても、こうした外国直接投資が経済活力の新たな源泉となっている。

 外国投資家は現在、日米という2大経済大国間における技術とノウハウの交流につながる事業機会に注目している。日本には、外国人、日本人を問わず、投資家にとり大きな市場機会が存在することは明白であり、日産自動車の買収と再生が対日外国投資に関する最後の成功物語となる訳ではない。

 しかし、大型の投資案件以上に重要なことがある。それは、日本経済が活力を持ち、成長するためのカギとなる、中小企業が関わるM&A(合併・吸収)である。シスコ・システムズやマイクロソフトが現在の国際的大企業に変貌したのは、M&Aを通じ、最も優れた技術を取得し、最も創造的な人材を雇用し、新たな分野に進出したためである。

 日本には、優れた技術・人材・アイデアを有する中小企業が数多く存在する。

 しかし、こうした企業には、成功に必要な資金が不足している。ソニーは50年前、この課題を克服した。問題は、次に日本で誰がこの課題を克服するかということである。

 日本に対する外国直接投資は、伸びつつあるとはいえ、依然として総額は少ない。2000年の対日直接投資は国内総生産の1.1%を占めるにすぎなかった。これに対し、米国への外国直接投資は国内総生産の12.5%、英国では29.0%を占める。

 外国からの直接投資は、これまで米国の競争力向上に貢献してきたし、これからも貢献するであろう。外国からの投資に伴う資本、技術、経営ノウハウが、日本経済の再生にどう貢献できるか想像して欲しい。

 過去10年間の規制改革・法制度改革により、日本の投資環境は改善されてきた。日本は、外国からの投資誘致のため、さらなる措置を取り、また外国直接投資を歓迎することを積極的に宣伝できる。私の出身地テネシー州も、そうした取組みを通じ、日本をはじめとする外国からの投資誘致に成功してきた。

 日本は、国内外からの投資機会を創出し、規制改革や構造改革を通じ、より高い持続可能な経済成長率を回復することができる。

 日本は、経済の規制撤廃・緩和と再生に取り組んでいるが、一般的にその歩みは緩慢である。規制撤廃・緩和が成長率を押し上げることは、米国の経験から明白であり、日本には、近年の年率1%程度を上回る経済成長率を達成できる可能性がある。

 日本が規制撤廃・緩和を実行し、市場の柔軟性を高めた分野では、成功物語が見られる。小売業の改革により、顧客に対し、より多くの製品をより安く提供する新しい店舗の登場が促された。日本の企業や消費者は、電気通信業界改革の恩恵を受けてきた。日本は、携帯電話の普及率が世界で最も高い国の1つであり、携帯電話、インターネット、DSLなどのコスト競争力も極めて強い。

 しかし、こうした恩恵はは氷山の一角にすぎない。規制撤廃・緩和がもたらす恩恵には以下のようなものも含まれる。

  • エネルギー料金の引き下げ、消費者の選択肢の拡大、エネルギー効率の向上 
  • 輸送・物流サービス網の改善によるコスト削減と24時間サービス体制の確立

 国際的に比較しても、透明性があり、より開かれた経済ほど事業取引コストが低いことは明らかである。米国の競争力が高いことと、透明性が高く、比較的規制が少ない制度との間には関連がある。また、外国直接投資を歓迎する環境も、国際的企業が米国を第一の進出先とする理由となっている。米国の経験は、規制撤廃・緩和と構造改革が、経済成長を促し、雇用も創出し、消費者の選択肢を広げ、消費者物価を引き下げることを示している。

 日本も、小泉首相の規制改革計画を実行することにより、こうした恩恵を受けることができる。

 先に申し上げた通り、日本は今、改革の門口に立っている。小泉政権には選択の道があるようだ。小泉政権が行動すれば、日本はアジアで最も魅力ある投資先になると確信する。

 私は、 小泉首相の改革計画が日本経済の課題に取り組むものであると強く確信する。そうした措置により、世界で最も重要な2国間関係である日米関係の基盤がさらに強化されることになる。ブッシュ大統領と小泉首相の個人的関係が、日米間の政策協議の価値を高めていると考える。

 また、首脳同士の関係は、小泉首相による改革への取組みに重みを加えている。なぜなら、米国は、日本がどう改革を進めれば良いかを理解していると考えており、日本が取るべき行動を決定したならば、大統領と米国は、同盟国であり良き友人である日本を支持するからである。

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