embassy seal U.S. Dept. of State
Japan Embassy flag graphic
U.S. Embassy - Japan


*以下は2002年12月19日付読売新聞朝刊に掲載されたベーカー大使の寄稿を読売新聞社の許可を受けて転載したものです。

関税撤廃が経済発展促す

ハワード・H・ベーカー 駐日米国大使

 米国は、先月26日、世界貿易機関(WTO)における交渉の枠内で、工業製品に対する関税を2015年までに全廃するという大胆な提案を行い、今月第1週にWTOで、貿易相手国と正式な協議を開始した。

 米国提案の目的は、世界各地で経済成長を刺激し、所得増と減税を実現させ、雇用を創出し、貧困を減らし、消費者ならびに企業のコストを削減することである。これは、農業およびサービス分野の市場アクセスの自由化に関する米国の同様に野心的な提案と、極めて高い整合性がある。実際に、あらゆる製品貿易に関する米国の目標は、関税の完全撤廃という点で一致している。ドーハ開発アジェンダのこの3分野は、市場アクセスの中核となる分野である。

 これが実現すれば、世界の貿易のうち6兆ドル近くが無関税となる。世界有数の経済大国で強力な貿易国の日本は、このような包括的な貿易自由化により極めて大きな恩恵を受ける立場にある。世界銀行の推定では、製品貿易の障壁をすべて撤廃した場合、世界経済は2015年までに8300億ドル拡大するという。これは、世界の人口1人当たり所得の年率2.5%増に相当し、世界中の人々の所得が1人当たり約136ドル増えることになる。

 また、われわれは、この米国の提案が世界的な経済発展に大きく貢献すると信じている。WTO加盟諸国は、経済の発展と貧困からの解放への道は、保護主義的な貿易政策の継続ではなく、多国間の貿易自由化にあることを、より広く認識するようになっている。その事実が証明されているからである。よりよい未来を積極的に追求する意思のある国が、繁栄する。そして、孤立した時代遅れの経済政策に固執する国は、ますます取り残されている。

 世界銀行の推定では、無関税貿易によって、開発途上国は5000億ドル以上の所得増を実現できる。その増加の4分の3は、途上国間貿易における関税撤廃で実現可能だ。同じく世界銀行によると、製品・サービスの無関税貿易と、その他の開発奨励策によって、2015年までに3億人が貧困を脱することができるという。これが追求に値する目標なのは、確かである。

 また、この米国提案により、途上国のかねての希望が実現することを指摘するのも重要である。途上国は、自国の輸出品について、他の途上国市場だけでなく、北米、ヨーロッパおよび日本の市場へも、無関税のアクセスが得られるのである。

 米国は、この提案が、「競争的自由化」戦略の重要な一部をなし、現在の米国の2国間および地域自由貿易交渉に合致するものと見ている。われわれは、交渉する用意のある国々と、進展が見込める分野での前進を求めていく。200を超える地域・2国間自由貿易協定によって、世界の製品貿易の約半分がすでに無関税となっている。だが、われわれは、その前進が主としてWTO内で実現し、全加盟国が貿易自由化の恩恵を得るよう希望している。今回の提案は、WTOが真に世界的な無関税貿易の国際的基準を設定するよう求めているにすぎない。

 しかし、米国およびその他の諸国は、WTOの動きが遅すぎる場合、自国経済の将来を犠牲にするつもりはない。そのメッセージは明快である。自由化に向けて他のWTO加盟国と協力する意思のない国にとっては、主流から外れる危険性がますます大きくなる。

 この提案は、経済成長という、われわれの米国民に対する確約を実現するとともに、世界各地で貧困を減らし、経済機会を刺激するという道義的責任を果たすことに貢献する。われわれは、WTOのパートナー各国が、すべての人にとってより豊かな未来をつくるために、米国と協力することを奨励する。 


 米テネシー州出身。18年間上院議員を務め、2001年7月から駐日大使。77歳。



 HOME |  U.S. CITIZEN SERVICES |  VISAS |  POLICY ISSUES |  STATE DEPARTMENT
CONTACT US |   PRIVACY |  WEBMASTER
Embassy of the United States