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沖縄と日米関係

ハワード・H・ベーカー駐日米国大使講演
沖縄県経済団体会議
2003年2月28日、沖縄県那覇市

 仲井眞議長。沖縄県経済団体会議の会員の皆様。在沖縄米国商工会議所の皆様、ご列席の皆様。議長。丁重なご紹介ありがとうございます。皆様方を前にお話しできることは本当に光栄であり、また、沖縄に帰ってこれたことをとても喜んでおります。

 ご列席の皆様方に私が日米の経済関係について少しお話しするということは、適切だとは思いますが、まず最初に強調しておきたいことは、日米両国というのはただ単にビジネス・パートナーであるだけではないということです。私がよく言いますように、同盟国でもあり、友好国でもあり、わずか50年の間に、日米両国はお互いの国民にかつてないほどの富をもたらし、この地域と事実世界全体に平和と安定をもたらす関係を築き上げました。日米両国は運命共同体の関係にあるといっても過言ではありません。また、日本が繁栄すれば米国も繁栄し、米国が繁栄すればまた日本も繁栄するのです。

 沖縄はこのパートナーシップの中で重要な役割を果たしています。しかし、日米両国の経済関係について話をする際に、両国の関係の安全保障という側面を軽視することはできません。世界的テロ、そして一握りの独裁者たちの手の中にある大量破壊兵器が、新たな課題を突きつけています。こうした課題は、この地域における平和の維持に沖縄が果たしてきた重要な役割を際立たせてはいますが、その一方で、私達はまた、こうした役割を沖縄が自ら望んだのではないということも承知しております。沖縄に駐留する米軍の存在が、地域の安定にとって不可欠ではあるものの、沖縄と沖縄県民の皆さんにとって負担となっていることを米国民は理解しています。こうした事実の認識に基づいて、私たちはこれまでと同様に、「特別行動委員会(SACO)」の最終報告に織り込まれた措置を実施し、また他の協力事業を行なうことにより、皆様の負担の緩和に最大限の努力を払っています。

 明らかに地域の安全と安定は経済成長の前提条件です。沖縄は、日米両国の安全保障関係で重要な役割を果たしている一方で、両国の経済面のパートナーシップでも重要な役割を果たすことができるのです。日本経済は多年にわたり停滞し、米国も景気後退がやっと終わろうとしています。経済が厳しい時代は、日米両国が緊密に協力し合う重要性が強調されます。私達には、官民ともに、若年層には雇用機会を創出し、中高年層には経済的安定を確保する責任があります。デフレ問題に取り組み、健全な金融部門を維持し、雇用と富を創り出す創造性を抑制する規制面の障害を緩和しなければなりません。また、日米両国は、この地域に繁栄と成長をもたらす責任を共有しています。

 私は、元政治家であり、政府の仕事を多年勤めた者としてこうした草の根および地球規模の関心事に多くの注意を払っていますので、稲嶺知事や皆様方をはじめとする多くの沖縄県民の方々も同様に、こうした問題を優先的な関心事とされていると聞き、心強く感じました。前にも言ったとおり、日本経済の健全さと繁栄は米国と米国民にとって重大な関心事であり、米国は日本との協力を望んでいます。

 沖縄はいくつかの経済指数では他県に遅れをとっていますが、例えば土地の美しさ、人々の心の温かさ、そして歓迎する心では、そしてその他の多くの面で沖縄が日本の先頭に立っていることを私は知っています。また、沖縄県は出生率と百歳を超える人の比率でも日本一、と聞いています。そして、沖縄は、特に観光、これは、英語では"tourism"と呼んでいますけれども、先ほどの話を聞いていますと、沖縄では"visitorism"、「訪問者」と呼ぶ、というふうに聞いています。これはなかなか良い言葉ですので、アメリカにも広めたいと思っております。沖縄やアメリカを見に来る男女の方々を"visitor"と呼んで"tourist"と呼ばないということで、私たちもその言葉を使って広めていきたいと思います。沖縄はその"visitorism"に非常に優れていますし、さらに、保健医療、あるいは高齢者向けの「シルバーサービス」といったサービス産業を発展させる潜在力でも、全国で上位に位置するに違いないと信じております。

 日本経済が直面する課題を簡単に解決する、といったような案を出せる人は誰もいないと思いますけれども、米国民は自らの経験に基づくアイディアを出すことができます。これらの政策課題、チャレンジといわれているものをどう対処するかは日本自身が決めることにある、と米国は心得てはいますが、日本の友人として、こうした米国自身の持つ知識を分かち合いたいと考えています。ケネス・ダム財務副長官は2週間前、ジャパン・ソサエティで講演し、日本の財政問題、デフレ傾向、不良債権に苦しむ銀行制度、そして構造改革の必要に迫られている産業に取り組むためのいくつかの政策措置を提案しました。もう一度申し上げますが、これは提案にすぎないということです。自分たちの経験に基づいて、アメリカの経験ではこういうことが役に立ったということを申し上げているだけで、日本は主権国家であり、どの分野でありましても国民と政府が一番自分たちにふさわしい解決策を取られるということは承知しておりますけれども提案としてお聞きくだされば幸せです。

 ダム副長官はその講演の締めくくりとして、小泉首相の改革への取り組みは世界と米国にとって重要だ、と述べました。その理由として、ダム副長官は、「持続的な世界経済の成長のためには、エンジンがひとつであるだけでは不十分で、世界の中でその地位を占めることができ健全で活力のある日本」の存在がなければ、地域の安全保障と世界の安全保障が損なわれる恐れがあるからだ、と述べています。

金融分野では、困難に陥った銀行制度の整理に必要な措置についての理解を深めることができる各国の経験があります。まず不良債権を認識し、破綻寸前の銀行を閉鎖し、残る銀行が正確なリスク分析を行い十分な資本を維持することを確実にし、そして銀行の経営が良好であることを確保することが必要であります。同時に、金融サービス業の効率と競争を高めることが必要であり、ここに沖縄がモデルになる可能性があります。私たちは、名護市の金融特区構想の進展を関心を持って見守っております。

 私たちはまた、競争を促進し、効率を高めることにつながる透明性や開放性の向上にも関心を持っています。「談合」は高くつくだけではなく、古い考え方です。日本が内外の企業に対し、情報および機会への完全なアクセスや規制改革プロセスへの参加の道を開くなら、沖縄を含めた日本の投資環境は魅力が増し、成長も促進されることでありましょう。米国商工会議所の友人の皆様は、これにきっと同感されることでしょう。

 情報技術(IT)に関して言えば、料金が割安で、利用し易く、なおかつ最先端を行くITや電気通信は、"島"という存在の経済の生命です。接続さえしていれば、距離は問題ではなくなります。AIG、シティバンク、オラクルといった米国企業が、沖縄のコールセンターでの成功を利用してまいりました。電子商取引でも大きな潜在力があるはずです。シンガポールをモデルとするならば、ITの拡大を優先事項としなければなりません。規制緩和、透明性、そして知的財産権(IPR)の順守・執行はこの分野の促進に不可欠な要素でしょう。

 けれども、日米パートナーシップの恩恵はそうした国レベルの取り組みに限定されるものではありません。そこで、沖縄の発展に特に関連すると思われる3つの分野について述べてみたいと思います。このそれぞれの分野で、米国在住の沖縄県出身の方々、8万人いらっしゃると聞いておりますが、そして沖縄の歴史的な、かつ現在も続く米国との関係が重要な役割を果たし得ると、私は考えています。

 まず第1に観光産業、先ほどはビジター産業と申し上げましたが、それが挙げられます。観光と会議ビジネスはすでに沖縄経済の柱となっていますが、さらに大きく成長する可能性を秘めています。沖縄には年間500万人近い日本人観光客が訪れますが、国際観光、特に西欧諸国からの観光は、おろそかになっているように見受けられます。この分野での寄与として米国国務省では、名桜大学とヒューストン大学の間の国際会議分野におけるカリキュラム共同開発プロジェクトを支援し、昨秋、国際訪問者計画(IVP)で、沖縄から3人の方に米国の観光産業を1カ月間、視察していただきました。沖縄自体が非常に素晴らしいものではありますが、沖縄のイメージを海外に広めるために、沖縄の自然美、豊かな文化、そして何よりも沖縄の人々がいかに親切であるかを売り込むためにできることはまだまだたくさんあります。

 2番目に、皆様が提案されている大学院大学構想があげられます。これは野心的なプロジェクトですが、成功すれば、国際企業の誘致にとって朗報となるはずです。私たちも一役担いたいと思い、当地の米国商工会議所も協力・支援体制にあります。教育はどのレベルでも重要であり、もうひとつ先見の明を示す構想に名護商業高校で開発中の特別金融カリキュラムがあります。全国でもおそらく初めてのプログラムで、米国総領事館では、名護商業高校の視察団がニューヨークのウオール・ストリートにある同様のカリキュラムを持つ公立高校を訪問するお手伝いを致しました。

 第3に、英語教育構想があります。英語能力の向上は国際企業を誘致するのにきっと役に立つはずです。私たちは、沖縄県と琉球大学がこの分野を優先分野としたのは先見の明があると考えています。ここでも私たちはお手伝いしたいと思っています。米国留学の奨学金制度がたくさんありますし、また米軍基地内の学校との交流も盛んです。私たちも支援している「小渕奨学金」は、沖縄から東西センターとハワイ大学へ留学生を送り出しています。また、地元小学校では米軍のボランティア達が一役買っていますがこれは双方にとって役に立っております。

 友人の皆様、私は生まれつきの楽観主義者であります。日米両国のパートナーシップは強固で、双方にとって有益です。協力して国外の脅威を、国内の景気後退を克服していきましょう。過去50年にわたる両国の協力は、世界第一位と第二位の経済大国、そして世界最大の、海を越えた二国間貿易関係という形で、日米両国民に多大な利益をもたらしました。

 はじめに言いましたように、沖縄は日米両国の安全保障関係で重要な役割を果たしているのと同様、日米経済関係においても重要な役割を果たすことができます。私はそのことを信じて疑いません。これまで、何が達成できるかをこの眼で直接見て参りましたので、協力できるということが良く分かっております。私の故郷のテネシー州では、200社を上回る日本企業が進出しています。それぞれの地域社会に溶け込み、雇用の創出と投資を行い、テネシー州の住民ばかりでなくもちろん日本の方たちにも役に立っています。そしてこういった進出企業はアメリカ経済の中に溶け込んでいるのです。

 テネシー州と同様に、沖縄もまたそうした成功例になると、私は確信しています。前向きな政策や適正な優遇策、そして積極的な広報活動を通じて、外国からの投資を増加させることにより、沖縄は地元の人々の雇用を促進し、所得を増加させ、生来のエネルギーと想像力を引き出すことができるでしょう。すばらしく、繁栄する沖縄を生むことができるでしょう。さらに想像もできないようなもっと建設的な結果が生まれるでしょう。

 日米両国のパートナーシップはこういうことを達成できますし、さらにもっと多くのことも達成できます。日米両国は協力し合うことにより、この他にも、繁栄と富を両国民にもたらす一助となり、世界全体を潤す数多くの例が生まれるものと思います。この素晴らしい日本という国、沖縄という県と協力していくことを、そして私たちの友好・同盟関係の拡大のために協力していくことを楽しみにしております。その将来の約束をどうもありがとうと、お礼を申し上げたいと思います。ご静聴どうもありがとうございました。

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