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*以下は、2003年6月27日、内外情勢調査会で行われたベーカー大使の講演要旨を、同調査会の会報誌から許可を得て転載したものです。

日米の信頼と絆で脅威に対処を
 

駐日米国大使 ハワード・H・ベーカー

ハワード・ヘンリー・ベーカー駐日米国大使は6月27日、内外情勢調査会全国月例懇談会で、「日米関係を語る」と題して要旨次のように講演した。

 ブッシュ大統領と小泉純一郎首相は最近、テキサス州クロフォードのブッシュ大統領の牧場で日米首脳会談を行いました。ブッシュ大統領は小泉首相に対して、イラクでの戦争に対する日本の揺るぎない支持に感謝し、日本があの不幸な国の復興のために選ぶいかなる積極的な役割に対しても、それを期待すると繰り返し述べました。

 日米両国はただ単に共通の利害と価値観を分かち合っているのみならず、共通の目的をも分かち合っているのです。われわれはテロリズムと独裁体制という問題に直面しています。この2つはわれわれの平和と安全保障に脅威を及ぼしていますし、経済問題、環境問題、社会問題に対しても、われわれは一緒に取り組んでいくことが必要です。

 大統領と首相の緊密な絆は彼らの会話にもうかがわれますし、お互いに対する接し方にもうかがうことができます。小泉首相とブッシュ大統領の関係は仲間、友としての関係であり、対等な関係です。両者に見られる友情は、本当に大きな形で、われわれが共通の問題に対処する上でも、また、共通の解決策を見いだす上でも大いに助けになっています。

 日米両国のような強い独立した友同士は、必ずしも常に意見が一致しているわけではありません。しかし、われわれは常にお互いのために支持し合っています。アメリカは「日本に対する攻撃はアメリカに対する攻撃と見なす」としばしば言ってきました。こうした発言からも、両国がお互いにコミットしていることがよく分かります。われわれはお互いに対して永続的な信頼関係を持っています。アメリカは日本に対して信頼感を持っていますし、日本もアメリカに対してそう感じていらっしゃるということで勇気づけられています。

 北朝鮮問題で多国間協議を

 私が日本の友人と話をする際、昨今、中心的なテーマがあるように思われます。それは朝鮮半島の情勢です。私が懸念しているのは、北朝鮮からの脅威は非常に重大なものだということです。世界平和にとっての脅威は重大ですし、日本にとっての脅威は、より差し迫ったものです。核武装した北朝鮮という国が突きつける脅威は、全世界が憂慮しなければならない問題です。

 日本の拉致被害者の方々は、本当に大きな人間の悲劇です。ブッシュ大統領はクロフォードでの首脳会談で、小泉首相とこの問題を率直に、直接的に話し合いました。そして、これは個人的に悲劇であることを、アメリカは理解しているとはっきり伝えました。これは日米双方にとっての痛みです。

 この問題の簡単な解決策は私にはありませんが、拉致問題からも、日米両国の関係がいかに重要か、われわれが協力して取り組んでいくことができるということがよく分かると思います。

北朝鮮の指導部は、いかに自分たちが危険なゲームをしているかを理解しているのかどうか、疑問に思います。無責任な国が核兵器を持つという脅威ほど恐ろしいものはないと思います。われわれは朝鮮半島問題で、まさにそういう状況に直面しているわけです。

 彼らは一連の挑発行為を行っています。アメリカ、日本、韓国、さらには全世界の文明社会に対して挑戦を突きつけています。核兵器を開発するという攻撃的な行動に対して、何かやれるならやってみろ、と言っているわけです。

 国際社会、アメリカ、韓国、日本、中国、その他の国々は非常に忍耐強くやってきた。しかし、忍耐にも限界があります。北朝鮮の人々は、その忍耐が切れる状況に差し迫っているのだということを理解しているのでしょうか、疑問に思います。世界もアメリカも平和的な解決にコミットしています。しかし、大統領も言っているように、いかなる選択肢も排除されてはいません。

 北朝鮮は、北朝鮮とアメリカ、2国間の交渉をすべきだと言っていますが、脅威は2国間に限られていません。北朝鮮が核の挑発をするということは、アメリカにとってはそれほど脅威ではありませんが、世界平和にとっては大きな脅威ですし、日本にも韓国にも大きな脅威が突きつけられているのです。中国にとってもそうでしょうし、おそらくロシアにとってもそうでしょう。従って、2国間レベルだけで取り組むべきではない。広範な形で交渉し、より脅威にさらされている国々も交渉に取り組むべきです。

 ブッシュ大統領ははっきりと、アメリカは北朝鮮を攻撃する意図はないと断言しています。すなわちこれは、北朝鮮がまず核に対する野望を放棄しなければいけないということです。そして、完全かつ不可逆的な、検証可能な形で国際社会が実際に核を放棄したことを確認できるようにする。また、北朝鮮の国民を圧政から解放する。そのための援助をする。

 北朝鮮に対して、国際的な査察を受け入れ、ただ口で言うのではなく、はっきりとした検証可能な形で核を放棄したことを証明しなければいけないと要求することは、合理的なことではないでしょうか。私の考えでは、この地域であれ世界中であれ、こういったことを許せば、核の脅威の下に不安に生きていかなければならない。ですから、私たちは協力しなければいけないと思います。

 日本の国際貢献に期待

 小泉首相は多くの分野で勇気を示されました。その指導力に、私は敬意を払いたいと思います。イラクに関しては、ことに勇気のある政治家、勇気のある指導者としての行動を取られました。というのは、イラクについてアメリカへの支持を表明することは、日本では人気がなかったからです。自分の政治生命をかけて個人的な勇気、指導力を発揮してくださった。これはこの10年間、あるいはこの世紀でもまれに見る行動だったと思います。

 「10年先、日本はどうなっているだろうか」とよく聞かれます。これは日本が決めることだと思いますが、将来の課題の解決に当たり、日本がどのような資産を持っているかは言えます。第一に、強力な経済力以外にも、民主国家として十分機能しており、民主国家として政治を非常にうまくやっていることを挙げたい。

 日本は質の高い、能力のある指導者を選び、その人たちに意思決定をしてもらう。人気のない意思決定をすることもあるでしょうが、そういった日本のすばらしい政治制度は成熟した民主主義国家を表しています。ですから、効率的な、非常にうまく機能している民主国家であることを第一の資産に挙げてもいいと思います。

 もう一つ、日本は世界のこの地域の繁栄になくてはならない国です。日本は、アジア地域という非常に危険が多い、開発途上国が大きく伸びている地域の中心にあります。日本には、この地域の将来について中心的な役割を果たしていく機会があります。

 世界という場にどのように日本が参加していくのか。日本は意識的に、あるいは無意識的に、まだ十分な役割を果たしていないのではないか、もっと世界というひのき舞台で大きな役割を果たしたい、と考えていらっしゃるのではないでしょうか。

 日本は国連安保理の常任理事国になりたいと考えていらっしゃる。これはアメリカ政府もずっと前から支持してきたことです。世界というひのき舞台でいろいろな機会が生まれるに際し、日本はそれに貢献したいと考えていらっしゃる。日本という国境を越えて、ゴラン高原で、東ティモールで貢献されていますし、そしてイラクでももうじき参加してくださるのではないかと言われています。

 成熟した政府の証拠の一つは、危険があるにもかかわらず責任のある行動を取り、世界、そしてこの地域における平和と安定のために積極的に協力する、世界の強力な一員として行動を取る意思があることです。

 最後に、アメリカについて一言申し上げたい。アメリカは確かに世界一の経済力を持っています。軍事力においても世界で指導的な立場にあります。私の考えでは、アメリカという国は同情心の深い、他人のことを理解する国だと思います。自由を愛し、世界中が自由になるように努力し、暴力を非難します。日本からの拉致のような問題がどうして起こるのか理解できない。また、貧しい人々、虐げられた人々に同情的です。

 私たちは力や資源がたくさんあるばかりでなく、ブッシュ大統領はその力を使って世界的な指導力を示そうとしています。私はアメリカについて楽観的です。経済はダイナミックであり、成長し拡大しています。人権を保護し、虐げられている人たちを助け、アメリカの民主主義をさらに改善する。

 アメリカの若者の将来も明るい。アメリカの若者も教育レベルが高く、意識が高く、民主主義に参加する意思のある人たちです。彼らも大きな貢献をすることができます。若い人たちの才能を政策に反映させるのが私たちの責任です。

 日本に長くいればいるほど、日米間の言語や文化などの違いを感じますが、日米両国はより近くなっているというのが私の強い印象です。昔以上に両国はお互いを理解しています。両国はお互いにその将来に大きな役割を果たしていくことができるのです。

 【質疑応答】

 質問 北朝鮮に核放棄を迫るため、日本と米国、韓国の3国は対話と圧力で臨むとうかがっています。ただ、この3国間に温度差もあるように見えますが、これについてどんな感想をお持ちでしょうか。また、いかなる選択肢も排除されていないとおっしゃいましたが、北朝鮮に対する先制攻撃もこの中に含まれると考えてよいのでしょうか。

 大使 アメリカ大統領、アメリカ政府は、北朝鮮というチャレンジが平和的な手段で解決されることを望んでいます。われわれは軍事的に北朝鮮と対決する気持ちはありません。平和的な解決策を手にしたいと決意を固めています。しかし、忍耐にも限界があること、彼らは危険なゲームをしていることを理解していただきたいと思います。

 質問 アメリカは小泉総理の再訪朝を支持するでしょうか。

 大使 アメリカは、首相が第1回の訪朝をされたときに支持しました。長期的に考えて、小泉首相の訪朝は有益だったと思います。小泉首相が再び訪朝されることに関しては、私は日本に対して、このような政策を取るべきだ、取るべきでないということは申し上げません。首相が再度訪朝されるということであれば、アメリカはそれに反対しないということに、私はほとんど確信を持っています。

 質問 アメリカ経済の先行きについて大使はどうご覧になっていらっしゃいますか。それから為替政策についてですが、ブッシュ政権は強いドルを望む等の方針を打ち出していらっしゃいますが、これはアメリカの実体経済に合致しているとお考えでしょうか。

 大使 為替レートの問題に対して私はお答えする資格がないし、権限もない。為替レートについてはまったく分かりません。

 アメリカの経済は健全だと思います。問題はありますが、全体的に、傾向としてはよい方向に進んでいると思います。途切れ途切れになるかもしれませんが。

 日米貿易は非常に重要な関係です。先日、日米両国が貿易問題でほんの数年間にどれほど進展してきたか考えてみました。私の前任者は自動車、柑橘類、鉄鋼といった問題に取り組みました。とげとげしいこともありましたが、現在はそういったことはほとんどありません。日米経済関係、貿易関係、お互いの投資問題などに関しても、これまでの歴史上なかったほどよい状況にあると思います。

 質問 アメリカ国内からは日本の構造改革、規制改革のペースが遅いのではないかとの批判も聞こえてきます。日本の現状について大使はどんな感想をお持ちでしょうか。また、改革の推進に際して、もっとこの分野に力を入れるべきだとのお考えがあったらお示しください。

 大使 アメリカでそう言っている人が確かにいるかもしれません。でも、アメリカの構造改革もあまりスピーディーに進んでいないという人もいます。批判は、友人の間ではよくあることだと思いますが、全体的に見て、構造改革、経済改革、そして国際的な改革、日本の外交といったもの、すべてうまくいっていると思います。

 質問 北朝鮮は濃縮ウランによる核計画推進など、米朝枠組み合意に違反しています。これを受けて、アメリカは軽水炉建設の事業を中止されるのですか。

 大使 枠組み合意の中で軽水炉を完成させることは、慎重に取り組むべき問題です。軽水炉を完成させる一方において、北朝鮮に対して核開発をやめろということはなかなか難しいと思います。この2つはまったく同じではないにしても関連しています。従って私の推測では、もし北朝鮮がやり方を変えない、核兵器開発をやめないということならば、枠組み合意の枠を超えて、アメリカが軽水炉の完成を支持する可能性は小さいと思います。(文責 在編集部)

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