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以下は、2003年8月6日付読売新聞朝刊(9面)に掲載されたベーカー大使の寄稿を、読売新聞社の許可を得て掲載したものです。


金融改革と日本の将来

金融システム回復 課題

  ハワード・ベーカー駐日米大使は、日本経済と金融システム問題についての見解をまとめた「金融改革と日本の将来」を、読売新聞に寄稿した。     

 評論家やアナリストは、日本が直面する課題をあげつらう。不良債権、長引くデフレ、財政赤字、資源の効率的な活用を妨げる規制…。しかし、こうした否定的な面だけに焦点をあてると、日本が持つ潜在的な経済力や、改革の進展が見えにくくなる。今回、私は日本の強さを検証するとともに、日本経済の将来に極めて重要である金融改革の進展に焦点をあてたい。

 日本の生活水準の高さや世界最大の債権国の地位は、いくつかの要因によってもたらされた。第一に、教育水準が高く、勤勉な労働力という人的資本だ。昨年、日本の研究者が化学と物理学でノーベル賞を受賞したことは、日本がこれからも、科学技術大国であり続ける可能性を示している。日本のアニメやポップ音楽の国際的な成功は、日本の現代文化やライフスタイルが世界で受け入れられることを知らしめた。

 第二の要因は、日本の産業資本だ。数多くの世界レベルの企業が、消費者向けや産業向けの製品・サービスを提供している。第三は、日本の金融資本だ。日本は世界最大の債権国であり、百七十五兆円を超える対外純資産を持っている。第四は、日本の民主主義制度がうまく機能していることだ。

 日本の人的資本、産業資本、金融資本、民主主義体制をもってすれば、現在抱える問題に取り組み、経済の輝かしい未来を達成するのは十分に可能だ。だが、輝かしい未来に向けたステップとしてどうしても欠かせないのが、金融システムの機能の回復だ。それだけに、最近の金融改革の進展には励まされる。

 小泉政権の金融再生プログラムは不十分との指摘もあった。しかし、りそな銀行が資本不足を認めて、公的資金を要請し、これに対して政府が果断な対応をしたことは、計画が働いたことを示した。
 政府は、りそなの資本増強にあたって、これまでよりも厳しい条件を課した。りそな首脳陣は入れ替えられた。(公的資金の注入と減資により)既存株主の出資比率は低下することになる。経営と株主責任の原則の徹底は、りそなやそれ以外の銀行の業務改善にもつながるだろう。

 二兆円の資本注入によって、りそなの自己資本比率は12%以上に上昇し、国内で営業するのに最低必要な4%を大きく上回る。これによって、りそなは、債権や他の資産を徹底的に再評価し、過去の過ちに苦しむことなく、リスクに見合った健全な貸し付けを再開できるようになる。

 将来、公的資金を必要としないよう、しっかりと組み立てられた公的資金注入は、理にかなっている。私は、日本が狭い個々の利益を超え、全体的な公の利益を追求できる国であるという確信を新たにした。これは、日本が、より明るい未来を作るために、利用できる膨大な資源を、活用し始めた徴候でもある。

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