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*以下は、2004年1月10日付朝日新聞朝刊12面「私の視点」に掲載されたベーカー大使の寄稿を、同新聞社の許可を得て転載したものです。

日米はリスクと成果の共有を

ハワード・H・ベーカー駐日米国大使

 昨年は、困難で危険に満ちた年であったが、一方で大きな成果もあった。

 私たちは、残忍な独裁者であるフセイン元大統領からイラクを解放し、彼を拘束した。圧政から解放されたアフガニスタンでは新たな憲法が採択され、民主主義への道のりが始まった。ブッシュ大統領は、混迷する地域に新たな希望をもたらす中東和平ロードマップをまとめた。大量破壊兵器の拡散阻止の必要性について国際的な合意を取り付けることもできた。

 日本は、アフリカ開発会議を主催することにより、指導力と精神的な関与を示した。日米経済は、いずれも一年前に比べ回復し、世界中の経済に好影響を与えている。両国はまた、租税条約や社会保障協定を含む重要な二国間合意をまとめた。米国は、日本が日米双方のビジネス機会の拡大に資する商法改正を行ったことを歓迎している。ブッシュ大統領は日本を訪れ、日米同盟の強さと重要性を示した。

 しかし、課題は依然として多く残る。解決すべき最も重要な課題は朝鮮半島における脅威であり、この問題は日米両国にとり深刻な懸念である。私たちは、協議が再開され、それにより北朝鮮が核兵器開発計画を完全で非可逆的、検証可能な方法で放棄し、拉致被害者とその家族の悲劇が解決されることを希望する。

 私たちは、テロとの戦いに勝利しており、戦いの手を緩めてはならない。また、イラクに安定をもたらし、中東全体の緊張を和らげる必要がある。そして、世界貿易機関(WTO)のプロセスを修復し、先進国と開発途上国双方に利益をもたらす国際的経済交渉に弾みを取り戻さなればならない。

 日米両国は、双方の起業家にビジネスチャンスをもたらす投資と規制緩和を促進するため、緊密な協力を続ける必要がある。食品安全の確保は、公衆衛生上のみならず経済的にも重要な課題である。一頭の牛が牛海綿状脳症(BSE)に感染したことで、米国の農業輸出に10億ドルの損害が予測される。私は、日米が安全な牛肉の輸出再開の方策を見出し、それにより両国がともに恩恵を受けると信じている。米国は、以前より日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りを支持しており、最近では、国際熱核融合実験炉(ITER)の日本誘致に支持を表明した。私は、これらの目標が実現されることを期待する。

 日本は経済的指導力の維持のためにも、銀行問題、特に不良債権問題を解決する必要がある。この問題は、米国のみならず世界にとっても重大な関心事である。日米の相互依存は進んでおり、世界第2の経済大国の失速は認められない。私は、日本がこの問題解決のため積極的な改革を実行することを希望し、そうすると信じている。日本の利益は米国の利益であり、逆もまた真なのである。

 経済活動は、世界情勢に大きく左右される。同時多発テロは、旅行業界に大きな打撃を与え、米国の入国管理制度は変更を余儀なくされた。米国の新しいビザ(査証)申請手続きは申請者に多少の不便を強いるものの、こうした予防策導入の理由がすべての人に理解されるものと期待する。

 安全対策は経済にも影響をもたらす。したがって米国は良き隣人としてだけでなくビジネスへも配慮し、ビザの発給が可能な限り円滑で確実にできるよう最大限の努力を払っている。日本経済の強さの回復は、経済的にも安全保障上も重要である。日本はアジア地域の安定の要だからである。米国は日本の成功を求め、また必要としている。

 日本は世界の大国である。日本の役割は、経済分野のみならず開発援助、科学技術、安全保障の分野にも広がっている。日本は、自らの道を自ら決める主権国家である。しかし、日本の方針は他国にも影響を及ぼす。そして、米国と同様、日本は長期的ビジョンを犠牲にすることなく直面する問題への解決を見出さなければならない。

 国際社会は、日本が世界で指導的役割を果たすことを期待している。したがって私は、日本が、国際社会における役割を明確にする中で、憲法に関する歴史的な議論を進めていることに意を強くしている。

 小泉首相は、テロとの戦いにおいて、勇気ある指導者としての姿を示した。私は、日本がイラクでの人道支援のため自衛隊を派遣することを決定し、マドリードのイラク復興支援会議で寛大な支援を約束したことを歓迎する。私たちは過酷な世界に生きており、多くの困難な決定をしなければならない。決定が困難であればあるほど、それがいかなるものであれ反対する者が増える。しかし、日本がどのような国になりたいか、世界をどのような場所にしたいか、またそれをどのように達成するかの選択は日本自身の手にある。

 日米関係はかつてないほど良好である。日米のパートナーシップは、両国のみならずアジア・太平洋地域そして世界にとり極めて重要である。日米の利益、すなわち経済の安定や国民の健康、安全保障や自然環境はすべて互いに関連しており、両国は運命をともにしている。米国は、2人の勇敢な日本人外交官の死に哀悼の意を表する。望むと望まざるとにかかわらず、私たちはリスクを共有している。日米は、協力することによりその成果をともに享受することができる。

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