embassy seal U.S. Dept. of State
Japan Embassy flag graphic
U.S. Policy Documents


「新戦略枠組み−21世紀の脅威への対応」

ジョン・R・ボルトン国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)

[国務省エレクトロニック・ジャーナル U.S. Foreign Policy Agenda(2002年7月号)より]

 世界がテロリストの冷酷な野望を目の当たりにした9月11日の悲劇的な事件以来、ブッシュ政権は、差し迫ったテロの脅威に対応するとともに将来の脅威を明らかにすべく、迅速に行動してきた。ニューヨークとワシントンを襲ったテロは、比較的ローテクな手段によるものであったにもかかわらず、膨大な損害をもたらし、前例のない多数の死傷者を出した。テロの脅威と戦うに当たり、われわれは、さらに大きな殺傷力とインフラ破壊能力を持つ兵器による攻撃手段の強化に対応する準備をしなければならない。

 大量破壊兵器の拡散がもたらす危険はしばらく前から存在するが、米国がテロの脅威を地球上から排除する努力をしている現在、われわれは、テロリストが化学・生物・核兵器を手中にするという現実的な新たな脅威を軽視してはならない。ブッシュ大統領が警告したように、「われわれの連合に参加する国家はすべて、破壊的なテロの脅威、すなわち生物兵器、化学兵器、または核兵器によるテロの脅威を深刻に受け止めなければならない」。イラン、イラク、北朝鮮などの敵対的国家の独裁者は、すでに何らかの大量破壊兵器を所有し、さらに開発を行っている。こうした諸国と同盟するテロリストは、大量破壊兵器を求めており、機会さえあればわれわれに対してそのような兵器を使おうとしている。

 現在の安全保障状況を概観してみると、テロ支援国家と大量破壊兵器拡散とが強く結びついていることは明白である。ごくわずかな例外を除き、テロ組織が国家の支援を受けずに大量破壊兵器を入手した例はなく、また入手することは不可能である、とわれわれは確信している。したがって、われわれは、国家によるテロ支援に終止符を打ち、国際的な拡散防止条約に反して大量破壊兵器を入手している国家を公表する措置を講じている。

 こうした差し迫った脅威に対応するためには、挑発に対しては圧倒的な報復攻撃を行うという威嚇で先制攻撃を抑止する冷戦時代の「相互確証破壊」や「封じ込め」の概念は、もはや適切ではない、とブッシュ政権は考えている。核兵器を保有する超大国の敵国からの脅威が、われわれにとって最大の脅威であった時代には、この戦術は理にかなっていた。しかし、世界各地を移動するテロリストが、米国とその同盟国に敵対する独裁政権の命令に従って行動する世界においては、こうした戦術は意味をなさない。われわれは、国際的な安全保障状況の変化に合わせて、防衛と資源を適応させなければならない。

 この新たな安全保障状況に対応し、ブッシュ大統領とロシアのプーチン大統領は、2002年5月にモスクワで行われた首脳会談で、「新戦略枠組み」と称する包括的な安全保障戦略について合意した。この新戦略枠組みには、戦略核兵器の削減、ミサイル防衛システムの確立、大量破壊兵器の拡散防止と拡散対策措置の強化、およびテロとの戦いにおけるロシアとの協力、などが含まれる。この枠組みは、冷戦後の、より協力的な米ロ関係によって、軍備管理問題への新たなアプローチが可能になったとの確信から生まれたものである。

 これに従い、ブッシュ、プーチン両大統領は、米ロ各国の戦略核弾頭を向こう10年間で1700から2200発の水準まで削減することを誓約する歴史的な文書に調印した。こうした戦略核兵器への依存度の軽減は、限定的ミサイル防衛に基づく新たな抑止の概念とともに、新戦略枠組みの主要な要素となっている。

 米国は6月に、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を正式に脱退したため、無法国家による弾道ミサイルの脅威に対抗するための防衛システムの開発と配備が可能となった。米国とソ連がABM制限条約に調印した1972年当時には存在しなかったミサイルの脅威が拡大してきており、米国がそうした脅威に対して防衛する上で、この条約が根本的な問題となっていた。また、相互確証破壊という冷戦時代の概念に基づくこの条約は、ロシアとの正常かつ建設的な関係の確立を妨げていた。現在米国は、アラスカ州フォートグリーリーに迎撃ミサイル用の地下サイロ6基を建設中であり、このほかにも、米国とその友好国・同盟国のために、限定的ミサイル攻撃に対する陸海空の多層的な防御体制の配備計画を進めている。米国は、ロシアや米国の同盟諸国と協力して、そうした防御システムの研究開発を進める予定である。無法国家のミサイルの脅威は、こうした国々の目前にも迫っているからである。

 拡散防止の努力を通じてミサイルおよび核技術の拡散を妨げることも、新戦略枠組みの重要な要素である。ブッシュ、プーチン両大統領は、大量破壊兵器拡散防止のための協力を強化することで合意している。米国とロシアは、核拡散防止条約(NPT)、生物兵器禁止条約(BWC)、化学兵器禁止条約(CWC)等、重要な国際条約に対する支持を再確認しており、米国は、各条約加盟国による完全な条約遵守を引き続き要求する。こうした国際条約に加え、ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)やワッセナー条約等の多国間規制も、機密技術や軍民両用技術の輸出抑制に重要な役割を果たす。

 ロシアの一部機関がイランのような国にミサイル・核技術を輸出することに関する米国の懸念について、われわれはロシアと話し合いを続けている。ロシアが輸出規制法を施行し違反者を処罰する努力を強化するよう、米国はロシアと協力していくことを誓約した。何よりも、拡散防止規則に違反しようとする者が、大量破壊兵器の開発に必要な材料や技術を入手できないようにしなければならない。

 新戦略枠組みの包括的な安全保障制度は、冷戦後の米ロ関係だけでなく、21世紀にわれわれが直面する安全保障上の新たな脅威を、より正確に反映している。それは、個別に確認することの難しい、国境を越えたテロの脅威、そして生物・化学・核技術が敵対的な勢力の手中に落ちた場合の極めて現実的な脅威である。米国とロシアのパートナーシップと協力は、ブッシュ政権の当初からの重要な目標であり、米国とロシアは、両国と文明社会全体を脅かす危険を排除するために協力していく。

 HOME |  U.S. CITIZEN SERVICES |  VISAS |  POLICY ISSUES |  STATE DEPARTMENT
CONTACT US |   PRIVACY |  WEBMASTER
Embassy of the United States