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米国通商代表部(USTR)外国貿易障壁報告

〔日本に関する部分〕
2000年3月31日

目次

 

貿易概要

概観

日本と規制撤廃

日米間の規制緩和および競争政策に関する強化されたイニシアティブ

分野別規制撤廃

電気通信

相互接続と料金設定

線路敷設権

アンバンドリング

賃借回線

その他の障壁

医療機器・医薬品

住宅

金融サービス

エネルギー

天然ガス

構造的規制撤廃

独占禁止法と競争政策

公取委の独立性

カルテル対策の執行

民事的救済制度

公取委による規制撤廃促進

独禁法適用除外制度

産業再生法

公取委の人員・予算

流通

大規模小売店舗の規制

透明性その他の政府慣行

規則制定プロセスの導入

規制インパクト分析

情報公開法

行政手続の改善

行政指導の行使

民間部門の規制

輸入政策

蒸留酒

品種試験

燻蒸政策

生鮮リンゴ -- 火傷病の検疫義務

生鮮ジャガイモ -- ジャガイモシストセンチュウとジャガイモガンシュ病菌

生鮮ピーマンと生鮮ナス -- タバコベト病

水産物

一般食料品

輸入通関手続

革・革製品

コメ

木材製品・住宅

海洋船舶

基準、試験、表示、認証

バイオテクノロジー

栄養補助食品

食品添加物

残留農薬

動物用医薬品

政府調達

コンピューター

建設、設計、エンジニアリング

医療技術

人工衛星

スーパーコンピューター

電気通信

NTT資材調達取決め

公共部門における電気通信機器およびサービスの調達に関する合意

知的所有権保護

特許

著作権

商標

営業秘密

水際規制

サービス障壁

保険

1994年の保険合意

1996年の保険合意

専門職業サービス

会計監査業務サービス

法律業務

投資障壁

反競争的慣行

排他的な商慣行

公取委の独禁法執行実績

競争を阻害する法

不当景品類および不当表示防止法

再販価格の維持

政府と産業の関係

民間規制

非公式な業界管理

電子商取引

その他の障壁

航空宇宙

自動車・自動車部品

自動車

自動車部品

民間航空

成田空港問題

ダイレクト・マーケティング

電力会社

板ガラス

紙・紙製品

消費者向け写真フィルム・印画紙

海運・貨物

自動二輪車

半導体

鉄鋼


貿易概要

 日本経済は引き続き、低成長、輸入需要の低迷、そして過剰な規制の状況にある。主として日本の内需の停滞、そして米国経済の好調な伸びの結果として、米国の対日貿易赤字は1998年の640億ドルから15.5%増の739億ドルへと急上昇した。1999年の米国の対日輸出は0.6%減の575億ドルとなった。これに対して1999年の米国の日本からの輸入額は7.9%増加し、1314億ドルになった。1998年における米国の対日直接投資総額は382億ドルとなり、1997年に比べ13.1%増加した。こうした直接投資は主として製造、金融、卸売業の各分野におけるものである。

 

概観

 クリントン政権は、米国の製品・サービスに対する日本市場の開放を最優先事項としている。この目標達成に向けた米国の多面的な戦略によって、過去7年間に米国の対日輸出は20%も伸びた。この目的に沿って、米国は引き続き財政面からの景気刺激策の実施と日本の金融部門の改革が不可欠であることを強調するとともに、今後も日本が利用可能なあらゆるマクロ経済政策の手段を用いて、金融システム強化の措置を取り、包括的な規制撤廃・市場開放措置を実施することを求める。自律した強力な経済回復のために、日本がこうした分野で真剣な行動を取ることが極めて重要である。

 米国は、日本の市場開放のために、(1)日本経済のより多くの分野に競争をもたらすための主要な構造改革と規制撤廃の奨励、(2)新たな貿易合意・協定の交渉、(3)自動車・自動車部品、保険、および政府調達を含む主要分野をカバーする既存の貿易合意・協定の監視と履行、そして(4)地域および多国間フォーラムを通じた懸念事項への対処を中心とする多面的アプローチを追求してきた。

 米国の対日経済関係への包括的アプローチは、1993年7月にクリントン大統領と当時の宮沢総理大臣が調印した「日米間の新たな経済パートナーシップのための枠組み」(枠組み合意)で初めて明らかにされた。この合意は、米国と日本が同時に個別分野における市場アクセス障壁、分野横断的な構造問題、およびマクロ経済問題に対処することによって、日本の市場開放に意味のある進展を達成することを可能にした。日本は、輸入品に対する公式の関税率を非常に低い水準まで引き下げたが、不透明な行政慣行や手続き、差別的な規格、排他的な商慣行、そして国内企業を保護し、競争力のある外国製品の日本市場への自由な流入を制約する事業環境などの広範囲にわたるその他の市場アクセス障壁は残されている。枠組み合意の革新的な特徴として重要な点は、合意の監視に当たり、定量的かつ定性的な客観基準を重視したことであり、これによって両国政府は合意の下での進捗状況をより正確に評価することが可能となる。

 1993年以降、米国は日本との間に38件の貿易合意・協定を結んでおり(うち3件は1999年に締結)、その対象分野は自動車・自動車部品、保険、民間航空および港湾慣行から、農産物、娯楽、ハイテクまで多岐にわたる。こうした合意・協定は、流通、競争政策、投資など構造的課題にも幅広く対処するものである。いずれの合意・協定も、米国の輸出業者や競争力のある製品・サービスを提供するその他の企業に新たな販売の機会を提供するだけでなく、日本の生産者・消費者にも恩恵を与えるものである。事実、こうした2国間合意・協定の下での重要な進展の結果として、1993年以降、半導体、医療・電気通信機器、および自動車部品を含む多くの分野で米国の市場シェアが大幅に拡大している。

 枠組み合意を基盤として、クリントン大統領と当時の橋本総理大臣は1997年6月に、「規制緩和および競争政策に関する強化されたイニシアティブ」(強化されたイニシアティブ)に着手した。このイニシアティブは、包括的な規制撤廃を促進し、日本の競争政策を強化するための2国間取り組みの主要な手段となっている。1999年5月、米国と日本は、強化されたイニシアティブの下で、電気通信、住宅、金融サービス、医療機器・医薬品、およびエネルギーの各分野における規制撤廃措置を詳しく述べた「第2回共同現状報告」を発表した。また日本は、競争政策、流通、および透明性の課題に関する分野横断的な構造問題に取り組むための具体的な措置の実施にも同意した。

 1999年10月、米国は日本に対し、日本経済をさらに開放し、米国その他の外国企業の市場アクセスを拡大するための大胆な規制改革の採用を求める45ページの要望書を提出した。両政府とも2000年3月31日までに「第3回共同現状報告」を完成させることを目指しているが、これにはイニシアティブの当初の2年間に達成されてきた多くの実績を基盤とする、日本の一連の追加的な規制撤廃措置が詳述される。

 米国は1999年7月、日本電信電話(NTT)の再編成の結果設立されたNTTの後継企業4社による開放された非差別的かつ透明な調達を求める新たな2国間調達措置の締結に成功した。この4社を合わせると、電気通信機器の日本最大の購入者となる。また1999年4月に米国と日本は、日本のより活発な対日直接投資環境を創り出すことを目的とする日本の構造・規制政策の改革措置を強調した投資報告書を発表した。

 米国は1999年も引き続き、既存の合意・協定の完全実施ならびに実施の成功を確保するため、それらの監視と履行に注意を集中し、日本が自動車・自動車部品、保険、建設、およびその他の政府調達に関するものを含む2国間合意・協定を進展させることを要求した。ここ数年の間、日本の経済停滞によって多くの分野で前進が妨げられているが、米国は引き続き日本による日米貿易合意・協定の実施を厳密に監視することにより、こうした合意・協定に基づく米国の権利の履行を確保する努力を継続する。米国はまた1999年には鉄鋼貿易政策に大きな力を注いだ。1999年の日本からの鉄鋼輸入は前年に比べ54%減少したが、米国は日本製鉄鋼の輸入が危機以前の水準に戻って安定するよう輸入水準の厳しい監視を続けている。

 加えて米国は、日本が1998年2月に発表した市場開放のためのイニシアティブを通じて、日本の写真フィルム・印画紙分野への意味のあるアクセスを提供することを引き続き要求した。米国は1999年6月に第2回フィルム監視報告書を発表した。これは、日本の写真フィルム・印画紙市場の開放度に関して日本がWTOに対して正式に述べた意見表明の実施状況を見直す年2回の報告書である。報告書は日本が実施した競争促進措置の一部を受け入れ歓迎する一方で、日本の写真フィルム・印画紙市場開放のさらなる進展の必要性を特に強調した。米国は、2000年春に次回の監視報告書を発表する予定である。

 また1999年を通じて米国は、現政権の市場開放目標を達成するために、世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)など多国間および地域フォーラムに依存した。さらに米国は、日本の市場アクセス障壁に関連する諸問題に対処するためWTOの紛争処理メカニズムに引き続き訴えている。1999年2月、WTO上級委員会は、日本に輸出される果実の品種試験にかかわる日本の不当に煩雑で差別的な要件について、米国に有利なパネル裁定を支持した。米国と日本は、日本によるWTO裁定・勧告の実施について協議を続けている。

日本と規制撤廃

 日本による最近の規制撤廃への取り組みにもかかわらず、不必要でコストのかかる過剰な規制が引き続き日本経済の負担となっている。こうした規制は日本の経済活動全体の約40%に適用されている。価格統制、煩雑な試験・認証要件、そして他に例を見ない規格などの過剰な規制が、日本の経済成長を抑制し、日本における事業コストを上昇させ、民間部門では競争による市場に基づく効率性の向上を妨げ、輸入を阻害している。また、過剰な規制は価格をつり上げ、日本の消費者の生活水準を低下させている。日本政府の推定では、政府の現行の規制緩和計画が完全に実施された場合、1998年度から2003年度までの期間に日本のGDPは年率でさらに0.9%上昇し、日本の経常収支黒字の対GDP比率は0.9%減少する。2000年1月に日本の経済企画庁が発表した調査結果によると、1989年以降、主要8分野で実施された規制緩和措置は、日本の消費者にとっておよそ820億ドルの節約をもたらした。同じくこの調査の試算によると、国内の電気通信および電力分野の規制緩和だけで1998年に日本の平均的な4人家族にもたらした節約はおよそ453ドルである。

 政府による過剰規制は、日本の成長を減速させるだけでなく、日本で事業を行う米国企業が直面する多くの市場アクセス問題の核心ともなっている。規制の中には輸入を直接の対象としているものもある。その他の規制は、外国企業、日本企業を問わず新たな市場参入者から現状を保護する制度の一部となっている。米国は、米国企業の市場アクセスを阻む規制の排除を積極的に求めており、最近の日米貿易合意・協定の多くは日本市場の規制に関連する問題に対処している。

日米間の規制緩和および競争政策に関する強化されたイニシアティブ

 枠組み合意の目標を推進し、日本における規制撤廃の動きを加速させ、外国の製品・サービスの市場アクセスを改善するため、1997年6月19日、クリントン大統領と当時の橋本総理大臣は「規制緩和および競争政策に関する強化されたイニシアティブ」(強化されたイニシアティブ)を取り決めた。強化されたイニシアティブは、電気通信、住宅、医療機器・医薬品、金融サービス、エネルギー等の分野別の問題と、競争政策、法律業務、流通、透明性、その他の政府慣行を含む分野横断的な構造問題に対処している。強化されたイニシアティブの下で米国は、日本における外国製品・サービスの市場アクセスを妨げる政府の法律、規制、行政指導やその他の措置の改革を求めてきた。

 強化されたイニシアティブの2年目である1999年には、日本の規制障壁の多くを排除する上で著しい進展があった。1999年5月に発表された「第2回共同現状報告」で、日本は多くの重要な規制撤廃措置に合意した。その中には次のようなものが含まれる。

  • 柔軟な電気通信網設備の利用を自由化することによって、事業者がそれぞれのネットワークをより迅速かつ効率的に拡張できるようにする。
  • 革新的な医薬品の日本への導入を促進するために、革新の価値と市場の役割を認識し、新しい医療機器の新たな償還カテゴリーを迅速に設定するための簡素化された透明な手順を確立する。
  • ビッグバン計画の下でいくつかの金融サービス関連措置を制定する。これには、米国の場合と同様の不良債権に関する情報開示基準の採用、新しい投資信託商品の導入、そして証券取引法の公正取引規則の改善などがある。
  • 日本の電気事業法を改正し、あらゆる発電施設の建設および改良に関して、許可・承認制から届出制に移行する。
  • 都市部住宅地域における3階建て多世帯木造住宅に関する性能規定型規格の導入時期を、2000年度から1999年5月1日に前倒しする。
  • 新しい「大規模小売店舗立地法」の地方自治体による実施を厳密に監視し、同法の乱用や一貫性に欠ける施行がないようにする。
  • 反カルテル措置の執行に関して、調査権限をさらに強化する。
  • 日本政府の規制の実施、改正、あるいは廃止のためのパブリック・コメント手続を採用・実施する。

 1999年10月、米国は日本に「日本における規制撤廃、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する日本政府への米国政府要望書」を提出した。この要望書は、米国が、強化されたイニシアティブの3年目において各分野および構造問題について求めている規制撤廃措置を詳細に述べたものである。米国政府担当者は、1999年から2000年初頭にかけて行われた実務者レベルの会合で、日本がこれらの措置を採用することを求めた。2000年2月、こうした要求に対する措置の現状について話し合い、未解決の課題に関する意見の相違を埋めるために、米国通商代表部次席代表と日本の外務審議官が議長を務める高官レベルの会合が開かれた。両政府は、2000年3月31日までに、日本経済のさらなる規制撤廃のための新たな実質的な市場開放措置を具体的に述べる第3回共同現状報告を発表することを目指すことで合意した。

 

 

分野別規制撤廃

電気通信

 米国は、強化されたイニシアティブの下で、米国、外国および日本の事業者が市場に参入し既存の国内事業者と競争できるようにし、日本の電気通信分野における競争を促進する規制改革を求めている。この分野は、長年にわたり過剰かつ時代遅れの規制に妨げられ、新規事業者の参入と発展を阻止するため市場で影響力を行使する支配的事業者である日本電信電話株式会社(NTT)に支配されてきた。これらの問題をさらに悪化させているのは、電気通信分野を規制する郵政省が、競争を促進する確固たる法的権限を持っておらず、また、地域の産業や技術開発の促進をはじめとする同省の他の多くの任務が、電気通信分野の競争促進という同省が明言する要望と対立することが多い、という事実である。そのため、日本における競争の促進を妨げあるいは減速させる規制上の決定が行われてきた。日本の電気通信規制の枠組みは、事業者が市場を支配しているかどうかではなく、事業者の回線が自社回線であるか賃借回線であるかに焦点を当てている。前者のアプローチは支配的事業者規制と呼ばれ、政策決定において競争を第一義とするものであるため、米国をはじめとするほとんどの競争市場の規制当局者によって採用されている。このアプローチの下では、規制当局者は、サービスや基礎施設の支配を通じて消費者や競合事業者を「人質」に取れる立場にある「支配的事業者」を集中的に監視する一方で、そうした市場力を持たない事業者には、新たなサービスや技術の導入を加速するために運営上の制約を最小限に抑えることを認めている。

 米国は、日本が、消費者の利益となる競争促進を電気通信規制の明白な主要目標として確立する法的枠組みを採用し、支配的事業者規制をこの制度の主要素とすることを強く求めている。米国は、米国企業が競争力を発揮してきた分野、そして既存のおよび今後行われる投資が、革新的で競争できる価格のサービスによって、より必要な成長をもたらすと思われる分野に特に焦点を当ててきた。日本の電気通信・放送サービス市場は年間1300億ドルの規模を持つと推定されており、さらに大きく拡大する可能性があるため、日本の電気通信市場がより開放され市場アクセスが改善されれば、米国のサービスや機器の輸出業者にとっても機会が大きく拡大することになる。

 第1回および第2回共同現状報告で強調されたように、日本は、米国が関心を持ついくつかの分野での取り組みに、ある程度の進展を見せている。特に、日本は以下の項目に合意した。(1)2000年の相互接続料金設定の際に、競争を促進する方法を導入する。(2)小売料金と相互接続料金との関係が地域の競争を妨げないようにすることも含め、暫定的な接続料金の引き下げを促進する。(3)支配的な移動体通信事業者(NTTドコモ)の相互接続料金が、コストに基づき非差別的であることを保証する措置を取る。(4)事業者が自社ネットワークを構築あるいは管理する際に与えられる柔軟性を増大させる。(5)ケーブルテレビ事業者の外資規制を廃止する。(6)デジタル加入者回線(DSL)等の新たな広帯域幅技術の導入に必要な規制変更を制定する。(7)衛星デジタル放送事業者にチャンネル数の大幅な増加を許可する。(8)国際電気通信事業者が、高い国際精算料金制度を使わずに賃借回線を利用できるよう、また、国際通話料金を競争市場の料金に見合うようなものにするよう規則を自由化する。(9)日本の主要な国際電気通信事業者であるKDDの外資規制を廃止する。(10)国際電気通信トラヒックの第三国中継に対する制約を廃止する。(11)線路敷設権という希少資源へのアクセス改善を目的とする線路敷設権に関する検討を完了する。(12)無線機器の試験・認証の料金を引き下げ、その手続きを簡素化する。

 米国が引き続き注意深く監視しているこれらの措置と確約は、重要な市場アクセスや規制障壁への取り組みに役立つはずである。しかしながら、特に地域通信市場での効果的な競争を確保するためには、日本は、独立した規制当局者が、依然として日本政府が株式の過半数を所有する事業者の経済的利害に片寄らず、新規参入者に公平な機会を提供することを認めることができるということを示す必要がある。

 米国は、1999年10月の規制改革要望書で、日本が電気通信規制の構造を根本的に変革し、日本市場における競争を促進するために「電気通信ビッグバン」に着手することを求めた。これには、新規参入者に対する規制の負担を取り除く一方で、支配的事業者による反競争的慣行に対するセーフガードを与えることになる規制制度の採用が含まれる。米国はこうした政策変更を支持し、日本が次のような広範な分野に関連する市場アクセス障壁に取り組むよう具体的に求めた。

相互接続と料金設定

 支配的事業者が競争を妨げることに対するセーフガードの不十分さを最も顕著に表す一例が、NTTの地域会社が競合事業者に対して課すことを許されている高いコストと煩雑な条件である。NTTの地域会社がそのネットワークを使用する競合事業者に課す相互接続料金は、通常の1通話につき米国における同様の料金の4から10倍、英国の4倍、スウェーデンやフランスの2.5倍以上である。こうした事態が起きるのは、NTTがその非効率性を競合事業者に転嫁することを許されてきたためである。さらに郵政省は、NTTが自社の小売顧客に対してはISDNの価格を抑えて提供する一方で、ISDNのような新しいサービスの開発や導入で膨張したコストを回収するために、こうしたコストを競合事業者に負担させることを認めてきた。このような典型的な「価格圧縮」行為、すなわち競争事業者がNTTの小売料金と同水準あるいはそれ以下の料金で競争できるサービスを提供しようとした場合に、それらの事業者に損失を出させること、によってNTTの市場支配の継続が保証される。またこれは、郵政省がISDNとファイバートゥザホーム(FTTH)の促進という産業政策に関与すると同時に支配的事業者の規制を試みるという日本の規制制度に固有の矛盾を際立たせている。

 この種の行為は地域の競合事業者に多大な影響を及ぼしており、競合事業者は地域サービスの多くで赤字を出し、また多くの場合、すべての通話から得る収入の7割前後を相互接続料金としてNTTに支払っている。この問題に加え郵政省は、NTTの地域会社がトラヒックをNTTのネットワーク内にとどめておくために、実質的な独占(地域の全加入者の98%)を支える差別的料金設定方式を採用することを許可してきた。こうした料金設定方式の下では、NTTの地域会社の加入者は、たとえ同じ地域内でも競合事業者の地域ネットワーク内の番号へのコールに対しては割引料金の適用を受けることができない。このような割引料金制度の大半はインターネットのアクセスに使われているため、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)は、NTTの膨大な顧客ベースにサービスを提供しようとするとNTTのネットワークの使用を実質的に強要されることになる。その結果、競合事業者は自社のネットワークにISPを受け入れるという収益の高い事業ができなくなり、また、その加入者がNTTのネットワークでISPにアクセスした場合には多額の相互接続料金を負担させられることになる。こうした状況下では、競合事業者はISPを受け入れる能力を失うだけでなくNTTに相互接続料金を支払わなければならないため、NTTのダイヤルアップ・インターネット・サービスのユーザー定額料金と競争することもできなくなる。日本の電気通信市場でインターネット・サービスの重要性が増大していること、そして予測可能な将来においてインターネット・アクセスのダイヤルアップ・サービスの優位が予想されることから(本章の「電子商取引」の項を参照)、郵政省がNTTの地域会社の料金設定方式に対して対策を講じようとしないことは、電気通信における競争とISPの両方の発展を大きく妨げるものである。

 競争を妨げるのではなく促進する相互接続料金を実現するために、米国は、日本が長期増分費用方式(LRIC)として知られる競争促進型の相互接続料金方式を採用することを強く求めてきた。この方式は、北米、ヨーロッパ、アジア各地の競争市場において規制当局者が採用している。1998年5月の強化されたイニシアティブに関する「第1回共同現状報告」で、日本は2000年にLRICを導入することに同意した。

 米国はまた、LRICの導入に先立って日本が相互接続料金を大幅に引き下げることを求めている。郵政省はこの暫定的相互接続料金の引き下げに最大限努力することを確約しているが、米国は、依然として引き下げが最小限にとどまっていることを引き続き懸念している。例えば、1998年度の地域内交換の相互接続料金の下落はわずか6%前後にとどまっており、1999年度の計画ではわずか4%の下落となっている。

 また、日本の電気通信市場への新規参入者は、支配的な移動体サービス供給者であるNTTドコモの相互接続料金およびアクセス料金が極めて高く不透明であることについても懸念を表明している。こうした法外な料金がどのように計算されているのかは全く説明されていない。加えてドコモは、その市場力(加入者2500万人以上)を利用して、そのネットワークへの着信と発信の双方について料金の設定を許可されるべきであると主張している。これによって新規参入者は、最も重要な戦略の1つである価格競争が不可能になるため、極めて不利な立場に置かれる。その結果、通常、新規参入者がドコモに通話を接続するために支払う1分間当たりの料金は、ドコモが新規参入者に通話を接続する場合に払う料金よりはるかに高くなる。郵政省は1999年4月に、ドコモの相互接続料金をコストに基づいた非差別的なものにすることを約束したが、状況はあまり改善されていない。米国は郵政省に、ドコモが相互接続制度の透明性を高め、他の事業者が小売料金を設定することを認め、「指定事業者」へのより厳しい相互接続条件をドコモに課すための措置を取るよう求めた。

 

線路敷設権

 日本では線路敷設権へのアクセスがないため、新規参入する競合事業者が競争するネットワークを構築するには膨大な時間と費用がかかる。特に、NTTやその他の公益事業(電気通信会社にかなりの投資をしている)が、自社の電柱、とう道、管路、その他の線路敷設権施設へのアクセスを拒否あるいは遅延させたり、その使用に法外な料金を課したりすることに対するセーフガードがない。従って、新規事業者がこれらの施設の使用権を得ることは極めて困難であり、時間と費用がかかる。さらに、新規参入者が自社のケーブルや設備を敷設するための道路工事をしようとすると、迷路のようなさまざまな制約に直面する。業界筋によると、日本ではこうした制約のため他の主要国際都市に比べ工事費が約10倍以上かかり、工事に要する期間は6倍になる可能性がある。米国は、日本が、電気通信事業者やケーブルテレビ事業者が非差別的かつ透明でタイムリーなコストに基づくアクセスを確保できるよう、競争志向の規則を確立するよう提案した。日本政府は米国の要請を受けて、この問題に取り組むための研究会を発足させた。しかしながら、線路敷設権を支配するNTTおよび電力会社が透明性向上のために申請手続を自主的に公表するというこの研究会の提言は、競争の促進に必要な措置にはほど遠い。米国は引き続き、新規競合事業者へのアクセスを求める根本的な決断を求めている。

 

アンバンドリング

 支配的地域事業者が、他の事業者が必要とする「アンバンドル」(あるいは細分)されたネットワークの各要素へのアクセスを提供することを強制するために、新規参入者のネットワーク構築を支援するための政府による強化された監視が必要である。現在、日本の相互接続に関する指針は、新規参入者のために「アンバンドル」されなければならない機能のわずかを挙げているのみであり、こうしたアンバンドルされた要素が競争志向に料金設定されるよう求めてはいない。米国は、日本が、支配的事業者によってアンバンドルされなければならない要素のリストを拡大するとともに、新規および既存の要素がタイムリーで妥当かつ非差別的な料金および条件で提供されるよう求めた。こうした強制的なアンバンドリングは、米国市場では約束されており、新規事業者がネットワークを構築する上で大きな助けとなる。

賃借回線

 新規参入者が他の事業者から回線を賃借することを郵政省が許可しないため、新規参入者は競争するネットワークの開発を制約されている。郵政省は、新規事業者が他の事業者の設備を使用する手段をいくつか提供しているが、そのためには郵政大臣の認可を申請しなければならない。そのため、新規事業者にとって余分な時間と費用がかかり、また郵政省の認可の基準の多くが不透明であるため、新規事業者の事業計画が不確実なものとなる。米国は、郵政省が現行の制約を廃止し、事業者が政府の認可なしでネットワーク内で自社設備と賃借設備とを自由に組み合わせることができるようにすることを求めている。

その他の障壁

 米国はまた、日本が、NTTのネットワークへ相互接続するために必要なNTTの建物内のスペース(コロケーション・スペース)へのアクセスや、日本各地の民間の建築物の屋内配線へのアクセスが困難であり費用がかかるとの新規参入者の不満に対処することを求めた。最後に、1999年7月1日にNTTが再編によって4社に分割されたことに対して、米国は、日本が再編後のNTT各社による反競争的な相互補助に対するセーフガードを強化することを求めた。

 これらの課題のいくつか、特に相互接続原価計算、差別的料金設定、アンバンドリング、そして賃借設備の利用は、日本のWTOでの確約に関連するため、問題解決に向けた日本の努力は厳しく監視される。

 

医療機器・医薬品

 1986年の「市場重視型個別協議」(MOSS)での医療機器・医薬品合意に基づき、米国と日本は、医療機器・医薬品分野における規制および市場アクセスの問題に対処することを目指している。MOSS医療機器・医薬品作業部会は現在、強化されたイニシアティブの下での医療機器・医薬品問題の話し合いの場ともなっている。その中には、引き続き2国間協議の焦点となっている償還および規制の問題がある。日米両国は、1999年9月、さらに2000年1月と3月に、日本の医療機器・医薬品の規制撤廃について政府間協議を行った。これらの協議は、強化されたイニシアティブの下での日本の約束の実施状況を点検し、そして日本の規制および償還の構造を改善するための追加措置について合意するために開かれた。

 いくらかの改善はあるものの、日本の医療機器・医薬品の承認手続は、依然として他の先進諸国に比べて遅れている。こうした遅れは、米国のメーカーにとっても日本の医療制度にとっても不必要なコスト負担をもたらす。強化されたイニシアティブの下で、日本は2000年4月までに新薬の承認申請の審査期間を18カ月から12カ月に短縮することによって承認過程を迅速化することに合意した。この歓迎すべき変化によって、日本で新薬がより迅速に発売できるようになり、日本の消費者も米国のメーカーも同じように恩恵を受ける。日本はすでに、この約束を実施するための諸措置を取っている。例えば、承認審査のための主要諮問委員会である中央薬事審議会を改革し、審査員と申請者がより頻繁に会合し直接話し合えるようにしている。米国は、引き続きこの方針の実施を注意深く監視しており、日本が新薬申請承認手続を改善する具体的な追加措置を取るよう求めている。

  医療機器の製品サイクルは比較的短いため、わずかな遅延でさえも、メーカーにとっては大きな損失につながる可能性がある。米国は、日本に医療機器承認制度の改善を求めており、特に日本の異なる審査機関の間の二重審査を減らすことを強調している。米国は、こうしたプロセスの一貫性と迅速性を向上させ、臨床試験を必要としない機器の範囲を明らかにするという厚生省の計画を好ましく受けとめており、今後の進展を注意深く監視するとともにさらなる前進を要請する。また米国は、日本が生体親和性試験の方法を改正し、一般的な国際慣行により近いものとすることを求めている。

 医薬品・医療機器の承認の際に外国の臨床試験データの受け入れを制限するという長年の日本の慣行により、米国企業は重複する臨床試験の実施を日本でも求められ、不必要かつ不当な時間と資源の負担を強いられている。強化されたイニシアティブの下で、日本は医療機器・医薬品の新製品の承認における外国の臨床試験データの受け入れを大幅に拡大することに合意した。この措置は、米国企業が新製品の試験と承認に費やさなければならない時間と費用を大きく削減する。米国は、日本が医薬品規制調和国際会議(ICH)の指針および日本の医薬品試験実施に関する基準(GCP)の指針に沿った外国の臨床試験データをすべて受け入れることを約束したことを歓迎し、その実行を注意深く監視する一方で、日本がICHの指針に基づき明らかに必要な場合にのみ追加的な国内臨床試験を義務付けることを求めている。また米国は、国内データの要求による(承認の)遅れを防ぐため、医療機器の償還手続でも、日本が外国の臨床試験データの受け入れを拡大するための追加措置を取ることを求めている。

 米国は、規制障壁に加えて、日本の現行の償還制度と、医療機器・医薬品の価格改定という日本の長年の慣行に関連する特定の市場アクセス問題にも取り組もうとしている。米国は引き続き、日本が透明で利害の対立がなく、客観的な基準に基づく償還制度を確保することを求めている。日本の健康保険制度の下では、医薬品・医療機器の償還価格は革新的な製品の真の価値を必ずしも適切に反映するものではない。米国の目標は、価格設定の決定が、恣意的とも思える方法で行われないようにするために、客観性と透明性を促進することである。

 日本市場で販売される米国製医療機器の大半は、「機能別」価格制度の対象となる。これは、新たに市場に導入される製品を、同様の製品と同じ償還カテゴリーに分類し、すでに市場に出ている他の製品の価格に基づいて新製品の価格を設定する制度である。米国は、この制度を改革する日本の計画について特に懸念を抱いている。日本の再編計画が現在の草案通りに実施された場合、主として米国のメーカーが供給しているペースメーカー、PTCAカテーテル、そして整形インプラントに関しては、高機能の製品も普及型製品も同様に価格設定されうる。新製品と旧製品の価格を同様に設定することによって、この制度は革新を認めず、日本における革新的な医療機器の導入を妨げたり阻止する可能性がある。またこの計画の結果として、こうした最も新しく、最も革新的な製品の多くが、今年は2年に1回の定期的な価格改正に加えて、さらにもう1度価格を引き下げられることになりうる。加えて、日本が採用する広範な「機能別」カテゴリーの数が少なくなることで、新カテゴリー設定の正当化が非常に難しくなる可能性がある。米国は、日本がそうした好ましくない結果をもたらさないための措置を取ることを強く求めている。  

 日本は、医療制度改革をまとめる際に、患者に、より効果的かつコスト効率のより高い治療をもたらす革新的な製品の導入を遅らせたり妨げたりすることのないよう、革新の価値を正式に認めることに合意した。日本は、2002年4月1日までに各措置の最終決定をすることを目標に、革新的な製品の扱いも含めた医薬品改革を検討・計画・実施しているが、米国は、日本が引き続き医薬品の価格設定制度について、米国産業を含む関係者とともに検討と調査を行い、革新の促進と革新的な医薬品の入手の向上を目指すことを求めている。

 日本では、意思決定プロセスへのアクセスと透明性が欠けることが医療機器・医薬品の分野で長年の課題となっている。強化されたイニシアティブの下で、日本は、外国の医薬品・医療機器メーカーに、関連審議会に対して日本のメーカーと同等の立場で意見を提供することのできる意味のある機会を与えることにより、医療政策を検討する際の透明性を確保することに合意した。また日本は、外国の医薬品・医療機器メーカーの要請があれば、 これらのメーカーに厚生省のあらゆるレベルの担当者と意見を交換する機会を与えることに同意した。この約束はこれまで適切に実行されている。米国は、日本が米国産業会からの提案を慎重に検討するとともに、日本の最終案にそうした提案を取り入れることを促している。

 最後に、米国は日本に対し、(医薬品の)大量購入をしないことや病院の専門化が十分に進んでいないといった日本の医療制度の根底にある構造的問題に対処するよう強く求めている。こうした問題が、効率的な医療の実施を妨げ、コストを大きく引き上げ、新しい革新的な医療機器・医薬品の迅速な導入を妨げている。米国は引き続き、日本の医療制度改善とコスト削減には、非効率性を排除し、外国製医療機器・医薬品へのアクセスと使用を拡大することが必要であることを強調している。これは日本の医療制度と日本の患者に大きな利益をもたらす。

 

住宅

 強化されたイニシアティブの下で設置された住宅専門家会合は、1999年2月と12月、および2000年2月に開催された。この会合は、外国の木材および非木材建築資材・システム供給業者による日本市場へのアクセス改善を推進している。日本がこの目標を達成し、性能規定型基準の適用範囲を拡大することにより、米国の輸出業者の機会拡大につながり、日本におけるより高品質の安全で低価格な住宅の建設が促進される。

 この分野における米国の取り組みにより、いくつかの顕著な変化がもたらされている。例えば、第2回共同現状報告の下で、日本がパブリック・コメント手続きを採用したことにより、日本の住宅政策の根幹を成す建築基準法の改正案策定と実施に当たり、米国の建築資材供給業者が参加しやすくなる。日本はまた、3階建て多世帯木造住宅に性能規定型基準を導入すること、そして米国式の建築資材・工法の市場開拓を支援する一連のセミナーを米国政府と共催し、これに参加することに合意した。

 1999年10月の日本に対する規制改革要望書で、住宅に関する米国の提案は、質の高い賃貸住宅および中古住宅・改築市場の発展を妨げる法律、政策、手続きに焦点を合わせた。こうした構造的な欠点を是正することにより、日本の住宅市場は大きく拡大し、米国の供給業者にとって新たなビジネスチャンスが生まれる。例えば、米国は、日本が賃貸借に関する法律を見直すことにより、家主が物件を保守・管理・改修する金銭的誘因を提供することを提案した。これを受けて日本は借地借家法を改正し、建物賃貸借契約の自動更新を廃止し、賃借人が退去要請や賃貸料値上げに抵抗する権利を制限した。2000年3月1日に発効したこれらの改正により、日本は初めて質の高い賃貸住宅市場を整備し、家族向け住宅の選択肢を拡大し、国内外の建築業者・供給業者に対し膨大な機会を創出することが可能となる。

 日本の住宅市場全体に占める中古住宅市場の割合は、米国に比べ、はるかに小さい。適切な建物評価制度がないことで、市場に出回る中古住宅の数が少なく、日本の住宅市場は人為的に制限されている。日本では住宅の築年数が過度に重視されるため、中古戸建住宅の改築や販売が抑制され、その結果、日本の消費者は改築を住宅に対する長期的な投資ではなく単なる消費支出と考える。米国は、日本が建物評価制度を見直し、住宅価格の査定に際して保守・管理や改築が考慮されることを提案している。また米国は、日本政府の住宅金融公庫が、質の高い中古住宅に対する融資期間を新築住宅に対する融資期間に近づけることを求めている。

 さらに米国は、日本の消費者が他の先進諸国の住宅では一般的にみられる機能的な設備を利用できるよう、(生ゴミ)ディスポーザーや内装仕上材などいくつかの具体的な製品分野における規制撤廃を提案している。こうした製品は、米国の住宅では標準設備であり、ヨーロッパでも一般的にみられるようになっているが、日本では全く見られない。ディスポーザーの使用は、生ごみ焼却のための焼却炉使用を抑えることによりダイオキシンの排出を減らせるほか、焼却炉ではエネルギー効率が良くないためエネルギーの使用も抑えられる。また、ごみ埋め立て用のスペースを確保しなければならないとの重圧を軽減し、焼却施設の改良に資源を注入する必要性を減少させるなど、日本にとって多くの面で利点をもたらす。

 建設省は、こうしたディスポーザーと各地の下水道との接続について同省には何の権限もないと主張している。しかしながら、建設省当局者は1999年12月、米国の貿易交渉担当者に対し、同省が地方自治体当局にディスポーザーの使用許可について「慎重に対処」するよう求めたことを認めている。さらに、多くの市や一部の県が、ディスポーザーの販売を禁止している。2000年3月1日に行われた会合で、米国の業界代表らが日本に対して、ディスポーザーの有用性や環境調和性を実証する数々の最近の調査結果を提出した。米国はこの問題について日本に対する要求を続ける。

 最後に、米国は、特定の4階建て木造建築物に関する性能規定型建築基準の導入など林産品分野における追加的な自由化を主張している。このような措置により、1999年に日本が3階建て木造建築物に対する制限を緩和したことで実現された木造住宅建設ブームを拡大することが可能となり、米国の林産品産業に対する機会の拡大をもたらす。

金融サービス

 これまで日本の金融市場は極めて細分化されていると同時に厳しく規制されており、そのため外国企業が競争力を持ち得る革新的な商品の導入が抑制され、そのほかにも外国企業の事業機会が制約されてきた。アクセスを妨げてきた制約としては、行政指導の利用、系列制度(企業の結合関係)の存在、透明性の欠如、不十分な情報開示、有価証券の定義に関するポジティブリストの採用、そして新商品申請の処理に長い時間がかかることなどが挙げられる。これらの制約のひとつひとつが、日本における完全に競争的な金融サービス市場の発展を妨げてきた。

 米国と日本は1995年2月、こうした障壁を撤廃あるいは削減するために、包括的な金融サービス合意である「金融サービスに関する日米両国政府による諸措置」に調印した。この合意には、資産運用、証券、およびクロスボーダー資本取引という主要分野における広範な市場開放措置が盛り込まれている。この合意調印後の5年間に、日本は、具体的な約束を指定された期限内に実行している。中には予定より前倒しで実施されたものもある。いくつかの分野では、日本は金融市場の自由化を改善するための追加措置を取ったり、あるいは今後そのような措置を取ることを発表している。  

 1995年の合意以降の進展を基盤に、1996年11月、当時の橋本龍太郎総理大臣は、2001年までに日本の金融市場をニューヨークやロンドンと並ぶ市場にするために、金融・証券分野の広範な規制撤廃を行う「ビッグバン」構想を発表した。この金融改革計画には、金融業態の枠を超えた、より広範な相互参入の許可、株式売買委託手数料や外国為替取引の自由化、情報開示ルールの強化、そして資産運用規制のさらなる自由化など大きな変更が含まれている。これらの大きな変化は、米国の金融サービス供給業者にとって新しい重要な事業機会をもたらす可能性がある。日本では1997年末の大手金融機関の破綻を受け、金融部門の安定性に関する不安が高まったが、日本政府はこれまでのところ、少数の例外を除いて、改革スケジュールを堅持している。

 1999年5月、ノンバンク金融機関が社債発行による調達資金を貸付業務に充当することに対する法的制約が解除された。10月には、 株式売買委託手数料の自由化が完了し、銀行と証券の相互乗入れに対する制約が撤廃され、銀行、証券、保険の相互乗入れに対する制約が緩和された。1999年に可決された法律により、日本銀行の振替決済取引制度内で、日本の国債を保有する非居住者および外国法人に対して免税措置が適用されるようになり、また有価証券取引税と取引所税が廃止された。1999年4月1日に新たな会計基準が導入され、日本の会計慣行も改善を続けた。新基準には、連結会計手続、企業年金資産の時価会計、そして売買目的の市場性金融資産の公正価値会計などが含まれる。

 この数年間に、日本の金融部門にはいくつかの注目すべき変化が見られる。まず、監督と開示が改善されている。外国の金融機関が証券や保険の分野で大きな買収を行っており、また2000年2月には、国営化された大手銀行を外国の投資グループに売却する交渉がまとまった。日本の金融機関の間では、コスト削減と競争力向上を目指した統合が増えており、一方、各種金融機関の間の従来の壁が徐々になくなりつつある。こうした変化は、外国金融機関が日本で明確かつ公平な場で競争する機会を広げた。監督と開示は改善されてはいるが、今後も日本が国際的な基準と最良の慣行に沿った形で金融機関に対する明確かつ一貫した規制および監督制度の確立に向けて前進を続けることが重要である。

 米国は引き続き合意の実施状況を監視し、実施された措置の効果を合意に謳われている定量・定性基準によって評価する。1999年12月に行われた見直しで、米国は、日本が国際的な基準と最良の慣行に沿った形で金融機関に対する明確かつ一貫した規制および監督制度の確立に向けて前進することの必要性を強調した。また米国は、日本の「ビッグバン」構想が引き続きスケジュール通りに実施されるよう日本の進展を監視している。また日本は1997年12月に、WTOの金融サービス協定に調印し、この協定は1999年3月1日に発効した。このため日本は日米間の2国間協定の多くの自由化措置を約束したことになる。

エネルギー

 米国と日本は1998年5月、強化されたイニシアティブの下で、エネルギー作業部会を設置することで合意した。米国は、こうした話し合いは、この重要な分野の規制撤廃を進める日本に意見を伝える手段であり、また世界でも最も高い部類に入る日本のエネルギーコストを2001年までに外国と同水準まで引き下げるという日本政府の目標を支援する手段であると考えている。日本が目標を達成できるかどうかは、主として、日本が世界第3位の規模を持つ電力市場に新規参入者を呼び込み、この分野に活発な競争をもたらせる能力にかかっている。

 資源エネルギー庁および同庁を所管する通商産業省の民間諮問機関である電気事業審議会の委員会が、1998年の1年をかけて、日本の電力市場の自由化計画を作成した。この委員会は1998年12月に最終報告を発表し、その中で電力市場の「部分自由化」を求めた。これは、日本の総電力消費量の約27%を占める、特別高圧電線(2万ボルト以上)で電力供給を受けている大口需要家に対する電力小売販売を自由化するものである。米国政府は、電力産業の自由化を歓迎する一方で、電気事業審議会の案では、エネルギーコストを大きく引き下げるという日本の目標に対し、わずかな進展しか期待できないとの意見を表明した。

 エネルギー作業部会の1年目に、 米国は、(1)電気事業法および高圧ガス保安法の下でのエネルギー関連機器の承認・検査に関する規制、(2)既存発電施設の能力拡充に関する規制、(3)予備発電機の認証・承認基準、そして(4)セルフサービス用給油ポンプの製造・設置に関する規制等、日本のエネルギー分野における米国の機器・サービスの販売を妨げている特定の規制への取り組みに関する提案を行った。

 米国は、日本がこうした規制や認証手続を簡素化すること、適切な場合には民間部門の自主的な基準の活用を拡大することにより性能ベースの規制を採用する取り組みを加速すること、国際的に認められた試験データおよび認証を受け入れること、そして規則制定や基準作成の過程において透明性を向上させる追加措置を取ることを求めた。日本は、タービン、コンプレッサー、給油ポンプ、予備発電機など特定のエネルギー関連機器の輸入に関する基準、検査、認証基準などの規制に対する米国の懸念の多くに対応する具体的な措置を取ることに合意した。日本はまた、既存発電施設の拡張に関する規制の自由化にも合意した。米国は、日本のエネルギー産業への新規参入および追加投資を促し、エネルギー価格を引き下げる日本の取り組みを支援するこうした措置の実施を監視している。

 強化されたイニシアティブの3年目に、米国は日本が電力分野の独占市場を競争市場に移行させるために極めて重要な具体的措置を取ることを求めた。こうした措置には、(1)投資や市場参入を抑制する規制その他の障壁の削減、(2)競争を促進する行動を導く優遇策や規律の導入、そして(3)適切かつ公正な規則が設定され、ビジネス上合理的な意思決定ができるよう、規則・手続きの設定・導入について完全な透明性を確保することなどが含まれる。米国と日本は1999年11月、2000年1月、そして2000年2月に開かれた作業部会の会合で、こうした提案について詳細に協議した。米国は、世界各地での経験から、(佐藤元通商産業大臣が日本のエネルギー規制緩和構想に着手した際に提案したように)これまで垂直統合されていた電力会社の事業を、発電、託送、配電の各事業に分離することが、競争の促進と大幅な効率性向上に必要であると一般的にみられていることを指摘した。また米国は、日本が託送システムへのオープンで公正なアクセスを確保し、新たに規制緩和された市場に関する情報、および託送へのアクセス料金・条件に関する情報への完全なアクセスを確保するため十分な監視制度を確立することを求めた。米国は、日本の各種報告書・規制・指針案について日本に提出したパブリック・コメントの中で、これらの課題についてさらに詳しく触れた。

 日本は2000年3月21日に電力部門の部分的自由化を実施する。また2000年中に、電力およびガス分野を含めた自然独占の独占禁止法適用除外規定を廃止する。米国は引き続きこの分野における進展を緊密に見守り、日本がオープンで公正な市場アクセスを確保するための追加措置を講じることを強く求める。

天然ガス

 1999年5月、国会は日本の天然ガス分野の規制緩和法案を可決したが、2001年初めまでこの分野の規制緩和の実施は予定されていない。通商産業省と公正取引委員会は先頃、ガス事業に関する公正取引指針案を作成し、これに対して米国はパブリック・コメントを提出した。 2000年後半には、いくつかの研究会が、天然ガスパイプライン使用の託送料金の設定方法を検討し、2001年初めまでにそうした料金を定めることを目指す。1999年から2000年までのエネルギー作業部会の会合で、米国は、新規参入発電会社は燃料として天然ガスを使用する可能性が高いため、ガスの規制緩和が電力の規制緩和に大きく影響するとの懸念を表明した。そのようなケースでは、ガス託送料金だけでなく、パイプラインや、日本のガスがすべて経由する液化天然ガス・ターミナルへのアクセス料金や条件が極めて重要となる。

 

構造的規制撤廃

独占禁止法と競争政策

 強化されたイニシアティブの下、米国は、競争政策を強化し、日本の独占禁止法(独禁法)のより効果的な執行につながる多くの漸進的な措置を提案してきた。米国は、日本での独禁法の執行および競争政策のさらなる強化が、市場アクセスの改善に極めて重要であると考える。外国企業は日本の流通経路への参入に際し、自動車、板ガラス、写真フィルム・印画紙市場を含む広範囲な分野で数多くの障壁に直面している。1999年10月以降、米国は、強化されたイニシアティブの下で、以下のような独禁法および競争政策上の問題に関して真の進展を達成することを特に重視してきた。

公取委の独立性

 独立した公正取引委員会(公取委)は、日本の独禁法執行制度における長年の重要な原則であり、米国はこの原則を堅持すべきであると強く信じる。これに関して米国は、日本の中央省庁再編の一環として2001年に公取委が総理府の一機関から新しい総務省の下に移行しても引き続き独立性が確保されるよう、日本が追加措置を取ることを求めている。特に、新しい総務省が電気通信政策も担当することから、重要な電気通信分野において、公取委が独禁法の執行決定についても競争の促進についても、独立して行動することができなくなるという現実的な危険性が高くなる。米国は、郵政省や総務省が電気通信分野における公取委の独禁法適用に干渉することがないよう政令を出すことや、公取委の人事制度と予算の独立性も堅持されるよう提案した。

カルテル対策の執行

 日本では、入札談合や共謀的なカルテル行為が依然として深刻な問題である。1999年10月の規制改革要望書で、米国はこうした行為に対抗するため、より積極的な取り締まりを求め、日本が公取委、法務省、その他の関係政府機関による調査の責任分担を強化することを要望している。さらに米国は、公取委による違反者の調査・刑事告発の権限を強化する方法、調査妨害に対するより強力な罰則、そして行政課徴金制度の改正を検討するために諮問委員会を設置することを提案している。入札談合の取り締まりを強化するため、米国は、刑事事件としての入札談合に対する警察庁と県警察本部による捜査を強化する新たな計画、公取委と違法の疑いのある談合行為を捜査する他の法執行機関との協力関係の強化、共同して談合行為に参加した入札者に対する罰則の強化と談合者による過剰請求額の全額賠償、および談合行為が成立する機会を減らすためのその他の措置を提案した。  

民事的救済制度

 日本の現行法の下では、独禁法に違反したとされる者に対して、損害を受けた側が民事上の差止め請求訴訟を起こす権利がない。独禁法に基づく損害賠償金を求める民事訴訟が起こされた例は、1947年以降わずか11件のみである。その理由の1つは、個人が企業に対して損害賠償訴訟を起こすには、まず公取委が当該企業に対して最終決定を出さなければならないことである。米国は、個人の訴訟当事者が差止め請求による救済と金銭的損害賠償を制限なく受けられることが、包括的な独禁法制度の重要な要素であると確信している。つまり、反競争的行為によって直接損害を受けた個人が救済を求めることができる選択肢が必要となる。

 さらに、個人による独禁法の執行は、日本企業に対し、独禁法に沿った事業慣行の重要性を強調する手段となり、その結果、市場の自由・開放・競争を維持することができる。通商産業省が設置した研究会が1998年6月に発表した報告は、私人による差止め請求訴訟を認めることを慎重ながらも支持している。同じく民事差止め請求による救済の問題と民事損害賠償請求訴訟制度の改革を検討している公取委の研究会が、1999年10月に最終報告書を発表し、また1999年12月には公取委が、2000年初めに法案を通常国会に提出することを発表した。米国はこの方針を歓迎するものであるが、この法案に、独占や取引を制約することを目的とする競合者間の取り決めといった最も深刻な独禁法違反に対する差止め請求が含まれるかどうかは不明である。しかも、研究会は損害賠償請求訴訟を妨げる障害の軽減について、ほとんど結論を出していない。従って米国は、日本が民事差止め請求による救済と訴訟による損害賠償に関する現行の制限に包括的に対処する法律を制定することを強く要求する。

公取委による規制撤廃促進

 日本の規制改革の成功には、効果的な競争政策という堅固な基盤に基づいた改革が行われなければならない。競争促進を任務とする唯一の日本政府機関として、公取委は競争政策と規制改革の支持者としての取り組みを大幅に強化すべきである。米国は、公取委が、業界や業界団体によって競争あるいは市場参入を制限するために使われる可能性がある「民民規制」の監視を強化することを求めた。米国はまた、公取委が日本の公益事業の規制緩和プロセスに積極的に参加することを提案した。これは、電力と天然ガスの分野で健全な競争政策に沿った最大限の規制緩和の実施を確保し、既存の公益事業者による反競争的行為に対し独禁法による厳正な対処を期するためである。さらに米国は、公取委が、流通分野での競争と効率を促進するさらなる措置として、極めて寡占的な分野におけるメーカーと流通業者間の資本・人事関係の調査、大規模小売店舗設置計画の審査プロセスの緊密な監視、そして独禁法順守計画のさらなる促進などを提案した。

独禁法適用除外制度

 1999年10月の規制改革要望書で、米国は、日本がガス、電力、鉄道事業などの自然独占に関する独禁法第21条の適用除外制度を2000年4月までに廃止することを提案した。公取委は、独禁法第21条を2000年初めに撤廃する法案を提出することを明らかにした。米国は、長年にわたり、この適用除外制度の廃止を求めており、この法案に対して国会が迅速かつ完全に対処することを歓迎する。

産業再生法

 1999年10月に施行された日本の産業再生法は、事業革新法に取って代わるものである。事業革新法では例えば、主管大臣が監督下にある産業の複数企業が共同で事業改革案を提出した場合に公取委と協議をすることを認めていた。この協議制度は、独禁法に基づき共同行為を審査するという公取委の通常の慣行から逸脱しており、公取委の独立性を不当に低下させ、独禁法の適用除外と解釈される可能性があった。

 米国は長年にわたり事業革新法のこの側面に反対しており、産業再生法が制定されれば、これが公取委の独立性に及ぼす影響に関する懸念を完全に払拭する機会となることを指摘してきた。産業再生法では、旧法で最も問題となっていた表現の大半は削除されたが、それでも再編企業が共同で産業再生法の下での優遇措置を申請する際には、当該産業を監督する主管大臣が申請の最終判定を行うという考え方を取っており、その大臣と公取委の審査との関係については明確にされていない。米国は1999年10月の規制改革要望書で、日本が、この法律が独禁法に取って代わるものでもなく、公取委による独立した独禁法の執行を妨げるものでないことを確認すること、公取委がこの法律の下で提出されるすべての申請、特に共同申請について通知を受け、審査する機会が確保されること、そしてこのような申請に対する公取委のすべての意見をできる限り公表することを求めた。

公取委の人員・予算

 公取委は、歴史的に日本の省庁間における地位が低く、人員も不足し、審査権限が不十分であるため、独禁法を執行する能力が妨げられている。米国は10年以上にわたり、公取委が任務を完全に実行できるよう、予算と人員の大幅な増加を求めてきた。

 1999年度に公取委の職員数は、前年度に比べわずか9名しか増えず、合計558名となった。うち260名(1998年度に比べ7名増)が審査関連事務を担当している。特別審査部には審査官が63名(3名増)いる。米国は、2000年度には公取委職員を大幅に増やすか、あるいは少なくとも50名は増員することを提案した。その後、公取委は、目前に迫った政府機関の再編成による機会を利用して、45名の増員を要求した。残念ながら、日本の2000年度予算案では、公取委予算はわずか2.1%増、人員はわずか11名の増員(うち8名が審査局)にとどまっている。この程度の増加では、公取委が競争法・競争政策を適切に執行するには、依然として少なすぎる。最近、合併の増加(1999年に24.9%増)、持ち株会社の解禁、多くの独禁法適用除外例の適用範囲縮小あるいは廃止、そして規制緩和の強化により公取委が多くの事業行為を監視する必要性が増えたことなどにより日本の競争環境に大きな変化がありうることを考慮すると、公取委の強化が不十分であることは特に明らかである。米国は、また日本が合併・買収案に対し独禁法の積極適用を支持することを求めた。これには、合併計画に対する公取委による審査のための人員・予算を追加することや公取委審査プロセスの透明性を向上させることが含まれる。

流通

 日本の流通制度には、多くの規制があり非効率的であるため、貿易や対日投資に対する大きな障壁になっていると広く認識されている。強化されたイニシアティブの構造問題に関する小委員会を通じて、米国は、通関に時間がかかることや小売分野に過剰な規制があることなど日本で流通コストが過度に高くなる原因となる法律、規制、慣行に注目している(本章の「輸入政策」の項を参照)。1999年10月の規制改革要望書の中で、米国は日本に対し、外国企業が直面している流通面での主要な問題点に対処するため、大幅な規制撤廃措置を実施することを求めた。

大規模小売店舗の規制

 「大規模小売店舗法」(大店法)は、長年にわたり、他の小売施設に比べて輸入製品を扱う可能性の高い大規模小売店舗の日本での新設、拡張、営業を制限し、外国の投資家や輸出業者に対する障害となってきた。大店法は、大規模店舗の営業を規制することで、コストを上昇させ小売業の生産性を低下させ、国内新規投資を妨げ、製品やサービスの選択の幅を狭め、質の低下を招いて、日本の消費者にも不利益をもたらしていた。

 1998年5月、国会は、大店法を廃止し、2000年6月1日をもって「大規模小売店舗立地法」(大店立地法)に代替する法案を可決した。大店立地法では、大規模小売店舗の規制に際し需給状況を勘案するのではなく、当該店舗の設置・拡張が地元の環境、特に交通、騒音、駐車場、ゴミ処理に及ぼす影響を勘案することが定められている。この法律の下では、地方自治体が、大店立地法が許す範囲を超える厳しい制限を新規の大規模小売店舗に適用することはできず、また競争を理由に新たな大規模小売店舗の参入を制限することもできない。

 米国は、大店法の撤廃を歓迎するが、大店立地法の運用次第によって、大規模小売店舗に対する市場アクセスが拡大するかどうかが決まる。1999年6月、通商産業省は、パブリック・コメントを募集した後、大店立地法に関する指針を取りまとめた。これは、大規模小売店舗の新設または拡張の場合に勘案しなければならない騒音、交通、駐車場、ゴミ処理に関してナショナル・スタンダードを定めるものである。この指針は、地方自治体が大規模小売店舗に対して意見を提出したり勧告を行う際に使用するためのものでもある。通商産業省は1999年10月、再びパブリック・コメントを募集した後に、大規模小売業者が大規模小売店舗を設置する際に必要となる情報の種類、店舗計画の説明会、そして大規模小売店舗と地方自治体が関連の手続きを公表するための手順を明らかにする省令を定めた。

 強化されたイニシアティブの第2回共同現状報告の中で、日本は、(1)大店立地法の目的が妨げられていないことを確認するため、地方自治体による同法の施行を緊密に監視すること、(2)通商産業省内に、同法の施行に関する苦情を受理し、その解決を促進するための窓口を設置すること、(3)同法の適用に関する苦情の解決を促す適切な措置を取ることを約束した。

 こうした好ましい進展にもかかわらず、米国は、日本の大規模小売業者の多くと同様に、地方自治体による新たな権限の乱用または一貫性のない適用の可能性を懸念している。この新しい法律の円滑な施行を促進し、透明性を向上させるため、米国は1999年の規制改革要望書の中で、日本に対し、(1)大店立地法の適用について関係者からの苦情を受理し、その解決を促進するために通商産業省内に設置される窓口の名称、所在場所を公表すること、(2)新法が施行される2000年6月1日までに、この窓口に十分な人員配置を確保すること、(3)地方自治体職員に対し、指針・省令の内容、大店立地法の下での地方自治体職員の法的責任と権限に対する制限、および窓口の役割について周知させるために広範な啓もう活動を実施すること、そして(4)大店法から大店立地法への移行期間中に、大規模小売店舗の設置または拡張を妨げたり、小売業投資家による秩序ある事業拡張計画を抑制するような障害を排除するため、すべての必要な措置を講じることを求めた。

透明性その他の政府慣行

 近年、日本は行政手続法の施行、パブリック・コメント手続の採用、そして情報公開法の制定などを通じ、より透明性が高くアカウンタビリティ(説明責任)のある規制制度を構築する措置を取ってきた。米国は、これらの措置を歓迎する。しかしながら、米国は、日本が1999年のOECD報告書「日本の規制改革」で必要とされているレベルの透明性とアカウンタビリティを確保するには、更なる措置を講じる必要があると考える。OECDによれば、「規制や行政プロセスの透明性が欠如していることは、日本国内の規制制度の大きな弱点である。すべての市場参入希望者と競争者にとり、規制に関する適切な情報を入手することは、潜在的費用、リスク、市場機会に対する正確な評価に基づいた決定を行うために不可欠であり、規制に透明性が欠けていることは、そうした事業者すべてに影響を及ぼし、特に外国企業には不釣合いなコストを課している」。OECDは、「投資、市場参入、そして革新は、規制の透明性とアカウンタビリティの向上を通じて促進されるべきである」と結論づけている。

 米国は、日本が規制制度の透明性とアカウンタビリティの向上を目的とした広範な規制改革計画を導入することを求めてきた。そうした改革計画の基本前提として、各省庁が新たな規制を採用、あるいは既存の規制を変更・継続する場合には国民に対し正当な理由を説明しなければならない。規制を常例としてではなく、例外として位置づけるべきである。つまり、公共政策上の利益に直接結びつかない規制は廃止すべきか、または採用すべきではない。国民は規制の制定や評価プロセスに参加するための効果的な手段を与えられるべきである。そうした改革計画は、公的規制と民間規制の双方を対象とすべきである。日本の規制制度の透明性とアカウンタビリティが欠けていることにより、外国企業は不利益を被っている。このため、米国は長年にわたり、日本が行政手続・慣行をよりオープンで透明性の高いものにすることを強く求めてきた。強化されたイニシアティブの下で、米国は以下のような具体的な懸念を表明している。

規則制定プロセスの導入

 日本は1999年4月1日付で、行政措置として、政府全体に適用される初のパブリック・コメント制度を採用した。これは、中央政府機関が、政令、府令、省令、および告示等の規制案について、または複数の個人に対してなされた行政指導について、通知をするとともにパブリック・コメントを募集することを義務付けるものである。こうした規制プロセスにおける透明性の向上にもかかわらず、米国は、日本の省庁がパブリック・コメント募集に十分な時間を与えないことが多く、またほとんどの場合、受理したパブリック・コメントを十分に検討していないのではないかと懸念している。この制度が、国民の参加を可能な限り最大限促進できるような方法で実施されることを期するため、米国は日本に対して、(1)パブリック・コメント手続を立法化すること、(2)一般市民からコメントを募集することも含め、パブリック・コメント手続実施の1年目について徹底的な見直しを行うこと、(3)コメント期間を少なくとも30日間とし、可能な限り60日間とすること、(4)あらゆる審議会(審議会、研究会、勉強会、懇談会)が報告書や提言書をまとめる前にパブリック・コメントを募集することを義務付けることを求めている。

規制インパクト分析

 OECDは、日本についての報告の中で、「規制の評価は、政府関係者が、規制に関する自らの決定がもたらす結果を理解し、規制の透明性を向上させ、経済手段等のより柔軟で費用効果の高い政策手段を見出すことに寄与する。日本では、そのような代替的措置はあまり採用されていない」と述べている。日本の政策決定と行政運営の透明性を向上させるため、米国は、日本が、経済的影響の大きい規制の変更を評価する際に、政府機関全体に規制インパクト分析(RIA)を導入することを促した。RIAの一環として、米国は、日本が各省庁に対し、(1)規制案および主たる代替案について、予測される公共上の費用・便益の分析(数量分析・非数量分析の双方)、および社会の主たる構成要素に及ぼす影響を分析すること、(2)規制案を検討する際に、入手可能な最善の科学的・技術的・経済的データを使用すること、そして(3)最終的な規制変更が行われる前に、国民に、費用・便益分析やその前提条件の妥当性と方法論について意見を述べる機会を与えることを義務付けることを要求した。

情報公開法

 1999年5月、日本は情報公開法を可決した。これによって、国内外を問わず、個人あるいは企業が中央政府省庁が保有する情報の公開を要請することが、初めて可能となる。この新法は2001年に施行される。地方自治体では、長年にわたり情報公開条例が施行されている。米国の要求にもかかわらず、新法は、特殊法人には適用されない。しかしながら、日本政府は1999年7月、特殊法人の情報の一般公開を義務付ける法案について検討・提言する目的で、行政改革推進本部に「特殊法人情報公開検討委員会」を設置した。委員会は2000年7月に最終報告をまとめる予定である。

行政手続の改善

 行政手続をより透明・公正にすることを目的として定められた行政手続法(1994年施行)の規定にもかかわらず、米国企業は、日本におけるそうした手続きの特徴として、煩雑で予測不可能であることを繰り返し訴えている。強化されたイニシアティブの下で、米国は、日本政府が各省庁に対し、(1)申請を正式に受理し審査を開始する前に、申請者に事前協議すなわち申請の内容・範囲等について事前に当該行政庁と協議することを義務付けないこと、(2)行政庁が、申請に必要な情報が欠けていると判断した際には、申請に不足しているすべての内容、提出しなければならない情報、およびそうした情報を要求する法的権限を明らかにした書面を申請者に提示すること、そして(3)申請者の要請に応じて、申請に係る(審査の進行)状況を述べた書面、および申請の決定(あるいは処分)の時期の見通しに関する書面を申請者に提供することを指導するよう要求した。

行政指導の行使

 日本における非公式の指導、すなわち「行政指導」の過剰かつ広範な行使について透明性が欠けていることは、依然として米国にとって重大な懸念事項である。1994年の行政手続法では、政府から口頭で指導を受ける民間の当事者に対し、または複数の個人に対して行政指導を行う場合は、要請があれば、行政指導を書面で交付しなればならないとされているが、総務庁の調査によれば、これが実行された例は極めて少ない。OECDの報告書によれば、書面による指導に関する行政手続法の規定にもかかわらず、行政指導が一般に公開された例はわずか33件にとどまっているため、米国は日本が、具体的で説得力のある理由がない限り、すべての行政指導を書面で交付することを義務付ける適切な措置を講じることを要求した。

民間部門の規制

 日本が規制を廃止・緩和するに当たっては、特殊法人、事業者団体等の民間部門組織(「民間規制組織」)が、政府規制に代わり民間の自主規制(「民民規制」)を行使することを許さないことが不可欠である。また、日本経済における民間規制の役割の透明性を向上させ、これを監視する必要性がある。市場参入や事業活動の規則、承認、基準、資格、検査、試験、認証制度等の民間規制は、事業活動に悪影響を及ぼし得る。強化されたイニシアティブの下で、米国は、日本が、法律、政令、省令、または地方自治体条例で明確に認められている場合を除いて、製品の認証や承認等の政府の機能や公的政策機能を民間組織に委譲することを禁止するなど、各種の措置を講じることを要求した。

 

輸入政策

 ウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)で、日本は、医薬品、紙および印刷物、ビール、ウイスキーおよびブランデー、農業・医療・建設用機器、家具、鉄鋼、玩具については、「ゼロ・フォー・ゼロ」の関税撤廃方式に同意した。日本はまた、化学製品のハーモナイゼーション(税率統一化)制度も採用した。日本は、さらに、銅とアルミニウムの関税を引き下げ、最高税率を12.8%から7.5%に引き下げた。日本は、1997年の「情報技術協定」の署名43カ国の1つである。この協定は、2000年までに対象製品の大半の関税を撤廃するものである。日本で高関税が残っているのは、主に、加工食品、木材・木材製品、皮革・皮革製品などの農産物および食料品である。無色蒸留酒の関税は、1997年12月のWTO紛争処理裁定に従って撤廃された。 1998年末、WTOの医薬品関税制度の参加国は、乳癌やエイズのための薬品等、新たな製品項目にも適用を拡大することに合意した。米国、欧州連合、カナダ、その他の参加国は1999年7月1日の目標期日までにこの制度を実施したが、日本はまだ実施に至っていない。

 1997年11月、カナダのバンクーバーで行われたアジア太平洋経済協力(APEC)の首脳会議では、米国、日本、およびその他16のAPEC加盟国・地域が、環境関連製品・サービス、エネルギー、水産物、玩具、林産品、宝石・宝飾品、医療機器・器具、化学製品、および電気通信相互認証協定の9分野における貿易自由化促進措置(早期自主的分野別自由化計画 --EVSL)を承認した。APEC首脳会議の指示通り、この計画が、1998年に成功裏に完了するためには、世界第2位の経済国である日本がこの計画に完全に参加することが極めて重要とみられていた。日本は、国内からの強力な圧力を受けて、1998年11月のAPEC首脳会議で、水産物および林産品の両分野の関税引き下げに参加することを拒否し、そのためAPECによるこの包括措置の採用が阻止された。しかし日本は、他のAPEC加盟国とともに、WTOのすべてのEVSL分野で関税引き下げ交渉を行うことを約束した。米国は、日本が「早期関税引き下げ」計画(EVSL計画のWTOにおける名称)において建設的な役割を果たすことを求めたが、日本はこの問題について沈黙を守り続けた。1999年11月にシアトルで開催されたWTO閣僚会議に先立ってこの問題に関するコンセンサスが得られなかったのは、日本の支持の欠如が大きな原因である。

蒸留酒

 1996年7月、WTOの紛争処理小委員会(パネル)は、米国、カナダ、欧州連合(EU)が日本を相手に起こした訴えを認める裁定を下した。同パネルは、日本の輸入蒸留酒に対する酒税法に差別的効果を認め、WTOの下で課せられた義務に違反するという判断を示した。日本がWTO規則で規定されている「妥当な期間」内に酒税法をWTOの基準に準拠させる意志がないことが明らかになったため、米国は拘束力を持つ仲裁を求めることを余儀なくされた。1997年2月に下された裁定は、米国の立場を支持した。米国と日本は、度重なる交渉を行った結果、1997年12月に和解に達し、日本が酒税法をWTOの基準に準拠させることが確認された。日本は、ウイスキーとブランデーを含むすべての褐色蒸留酒、ウォッカ、ラム、リキュール、およびジンの関税を2002年4月1日までに撤廃することにも同意した。

 日本は酒税制度を1997年10月1日、1998年5月1日、2000年10月1日、の3段階で見直している。1998年5月までに、焼酎乙類を除き、すべての蒸留酒の税率がWTOの基準に準拠するようになった。同時に、輸入ウイスキーとブランデーに対する関税が58%引き下げられる一方で、焼酎甲類の税率が59%引き上げられた。2000年10月1日には、焼酎乙類の税率も統一化される。

 米国の蒸留酒産業の報告によると、関税引き下げは予想通り、米国産蒸留酒の対日輸出の著しい増加をもたらした。1998年の米国産蒸留酒の対日輸出は、1997年に比べて23%増加し、他の市場に対する輸出の増加を上回った。米国産蒸留酒の対日輸出の増加は、現在の日本経済の停滞が米国の対日輸出全体に打撃を与えている中で、特に際立っている。1999年の第1〜3四半期には産業全体の成長が前年同期比でおよそ9%も落ち込む状況の中で、例えばウォッカなどのいくつかの部門は、ほぼ200%もの伸びを示した。

 米国は、日本による紛争解決合意事項の実施を引き続き厳しく見守り、合意されたスケジュールに沿って関税が引き下げられ、さらには撤廃され、また、合意の恩恵を損なうような新たな措置が取られないようにしていく。

品種試験

 リンゴ、サクランボ、クルミ、ネクタリンといった米国の農産物は、不必要な植物検疫制限の対象となってきた。日本は、米国からの輸出について、すでに輸入許可を得た産品であっても、新たな品種が追加されるたびに、既定の検疫措置を繰り返すことを義務付けてきた。

 品種試験の問題の解決に向けた長年の2国間協議を通じた努力が不成功に終わり、米国は、1997年10月、日本をWTO紛争処理手続に訴えた。その結果、1999年3月19日、WTO紛争処理機関(DSB)は、日本の品種試験要件は、(1)十分な科学的根拠がなく、WTOの「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」(SPS)の第2条第2項に違反し、(2)リスク査定に基づいておらず、第5条第1項に違反し、(3)日本はこれらの要件を公表していないため、付記条項B第1項で日本に課せられる透明性の義務に違反している、とのパネルおよび上級委員会の裁定を採用した。以来、米国と日本は、DSBの裁定と勧告を日本が実施することについて協議を行っている。

 WTOへの提訴に加えて、米国は昨年、リンゴ5品種、サクランボ2品種の米国生産者による検疫方法の有効性が米国政府の試験によって実証されているにもかかわらず、日本がこれらの品種に対する輸入禁止を解除しなかったことを憂慮していた。米国は1998年末および1999年初めに、日本政府との高官レベルの協議で、その懸念事項について話し合った。日本は1999年半ばにこれらの品種に対する輸入禁止を解除し、米国は1999年の収穫を日本へ輸出することができた。

燻蒸政策

 日本の植物検疫規則では、輸入生鮮園芸産品の検査の際に、積荷に生きた虫がついていることがわかった場合、それが深刻な害虫と見なされるかどうか、あるいはそれがすでに日本に存在するかどうかにかかわらず、燻蒸を義務付けている。この義務付けは、レタス、切り花など、一般に燻蒸に耐えられず、廃棄されなければならないデリケートな園芸産品の取引に、特に不利益な要因となっている。事実、日本の青果輸入業者によると、燻蒸のリスクが除外されたならば、米国産レタスの輸入が急増するという。現状では、燻蒸による損失のリスクが高いため、売り上げは年間平均500万ドルに満たない場合が多い。

 外国政府からの度重なる改革要請を受けて、農林水産省は、植物検疫法を一部改正し、害虫53種、植物病10種を燻蒸の対象外とする検疫対象外病害虫リストの採用を開始した。これは一見重要な進展のように思われるが、このリストには、米国の生鮮果実および野菜につく普通の昆虫が入っていない。この中には日本で発生することが知られているものもある。米国は引き続き、適切な技術協議や規制撤廃協議の場において、過剰かつ不必要で貿易を歪めるような燻蒸を減らすため、日本政府が検疫対象外の病害虫の包括的なリストを作成すること、そして透明性のある検査手続を確立することを求めていく。

生鮮リンゴ -- 火傷病の検疫義務

 日本は、輸入リンゴに検疫上の過剰な制約を課しており、米国および外国の生産者による日本市場へのアクセスを阻んでいる。中でも懸念されるのは、リンゴの果実が火傷病菌の媒体となるという十分な証拠がないにもかかわらず、日本が火傷病の伝染防止を目的とする検疫義務を課している点である。火傷病防止のための日本の検疫義務は、栽培期間を通じて3回にわたる樹木ごとの検査を義務付けるとともに、日本へ輸出されるリンゴはすべて500メートルの緩衝地帯内で栽培されることを義務付けている。これらの要件はコストを大幅に上昇させ、米国産リンゴの日本での競争力を弱めさせている。

 米国は、生鮮リンゴを媒体とする火傷病伝染の理論上のリスクが微小であることを示す歴然とした証拠を提示しており、日本が緩衝地帯を廃止するか10メートル以内に縮小するとともに、樹木ごとの検査の義務付けを廃止することを引き続き要求している。この問題の解決のために、今年、米国と日本の科学者間の話し合いが継続される。

生鮮ジャガイモ -- ジャガイモシストセンチュウとジャガイモガンシュ病菌

 日本は、米国からの生鮮ジャガイモの輸入を禁止している。農林水産省当局者は、ジャガイモシストセンチュウとジャガイモガンシュ病菌を日本国内へ入らせないようにするために、この禁止事項が必要であると主張している。米国は日本の意見に異義を唱え、太平洋岸北西部、カリフォルニア州、その他米国のジャガイモ輸出地域には、ジャガイモシストセンチュウとジャガイモガンシュ病菌は見られないことを実証した。

 米国は、日本が、ジャガイモシストセンチュウとジャガイモガンシュ病菌の発生していない地域で栽培された生鮮ジャガイモに対する輸入禁止を直ちに解除することを求めている。1999年7月の、日本からの最新の情報によると、農林水産省は、輸入禁止の立場を繰り返すとともに、仮に輸入が認められたとしても、輸入後の検疫が必要となる数々のジャガイモの病原菌について新たな懸念を表明している。米国は引き続き、日本が生鮮ジャガイモの検疫リストからジャガイモシストセンチュウとジャガイモガンシュ病菌を除去することを要求していく。

生鮮ピーマンと生鮮ナス -- タバコベト病

 日本は引き続き、タバコベト病に関する懸念に基づき、生鮮ピーマンおよび生鮮ナスの輸入を禁止しているが、ピーマンやナスの果実がこの病気の媒体となるという証拠は全くない。

 1999年8月に行われた第1回の2国間協議で、米国は、ピーマンとナスの果実はタバコベト病の伝染経路外にあることを強調した。日本は、タバコベト病を理由に生鮮トマトの輸入をすべて禁止した当初の姿勢(これは1999年に解禁された)と同様に、今回も当該果実が病気の媒体となるという証拠の欠如については対応せず、自然感染の記録があると述べた。2国間および国際的な協議を通じて、米国は、ピーマンとナスの果実がこの病気の媒介とはならないとの主張を継続する。

水産物

 日本は、水産物について9種類の多国間輸入割当と、2種類の2国間輸入割当を維持している。米国の輸出水産物で、日本の輸入割当の対象となっているのは、スケトウダラ、すり身、スケコ(スケトウダラの魚卵)、ニシン、マダラ、サバ、ホワイティング(タラの一種)、イカ、およびその他数種の水産物である。割り当てで規制されたこれらの対日輸出品目は、年間売り上げが数億ドルで、日本への水産物輸出総額のほぼ4分の1に相当する。過去数年間、主として日本の景気後退が原因で、これらの輸入割当品目の売り上げは減少傾向にある。ウルグアイ・ラウンドで、日本は、多数の水産品目について関税をおよそ3分の1引き下げることに合意したが、輸入割当制度の修正あるいは撤廃については確約を避けた。日本は1997年にサバ、アジ、コンブの輸入割当制度の運用改善のための措置をとったが、米国の輸出業者にとっては、その申請手続やその他の水産物に関する透明性の欠如が依然として懸念事項となっている。1998年2月に東京で行われた年次水産貿易協議で、米国と日本は、タラコの輸入割当(IQ)カテゴリーの中でスケコとマダラコを区別することの難しさなど、水産物輸入割当カテゴリーの運用に関する問題について話し合った。

 また、日本はAPECの早期関税引き下げ計画を支持する意志がないことも明らかになり(本章の「輸入政策」の項を参照)、このため水産物関税の段階的廃止について、より広範なコンセンサスの形成が阻まれた。

一般食料品

 ウルグアイ・ラウンドで日本は、すべての農産物の関税をバインド(現行率よりも上げないこと)し、バインドした関税率を1995年から2000年までの間に平均36%引き下げ、各関税品目については、最低15%引き下げることに同意した。日本はまた、輸入される牛肉、豚肉、生鮮オレンジ、チーズ、菓子類、植物油、その他の品目の関税を漸進的に引き下げることに同意した。

 しかし、ウルグアイ・ラウンドによる関税引き下げの完全実施後でさえも、牛肉、生鮮オレンジ、生鮮リンゴ、ワッフルその他のベーカリー製品、菓子類、スナック食品、アイスクリーム、柑橘その他の果汁、およびトマト加工品等を含む、広範な中間製品および消費者向け食料・飲料製品が、依然として10%から40%の関税を課されることになる。こうした輸入税は、食料品の消費者価格を引き上げ、米国の食料品・農産物輸出業者にとっては毎年推定5億ドルの売り上げの損失につながっている。米国は、WTO農業交渉を通じて、高価値食料品に対する日本の高関税を大幅に引き下げることを求める。

 日本はまた、ウルグアイ・ラウンドで、すべての輸入禁止措置と輸入割当枠(ただしコメは除く)を関税制度に変えることに同意した。その関税は、1995年から2000年にかけて引き下げられる。小麦、大麦、でんぷん食品、ピーナッツ、および乳製品に課せられていた輸入割当に代わって、関税割当制度が導入された。日本は、これらの産品について、政府による貿易管理と価格安定化制度を維持しているが、現在、わずかではあるが輸入自由化の提案を検討中である。

 米国は、日本がウルグアイ・ラウンドで合意した農業に関係する措置(特にコメの輸出入)と牛肉および豚肉のセーフガード(緊急輸入制限措置)の履行状況を厳しく見守っている。また、製品基準や表示の問題等、衛生、安全、または環境の保護に不必要と思われ、形を変えた保護主義となり得る、いかなる技術的あるいは食品安全関連の措置にも反対することに、日米2国間の努力を傾けてきた。

輸入通関手続

 日本の輸入通関手続は、近年改善されているとはいえ、先進国の水準に比べると依然として時間と手間がかかり、米国の輸出業者および日本の消費者の双方が負担するコストを引き上げる要因になっている。

 強化されたイニシアティブおよび税関当局間の定期的な2国間協議により、日米両国は輸入通関手続改善の継続的な努力について協議している。こうした協議は、日本の輸入通関手続における変更を促す効果があった。主な変更事項としては、電子メールを利用した事前分類情報システムの確立、すべての航空貨物を成田空港から30km離れた貨物一時保管所(原木貨物エリア)を経由して通関させる規則の撤廃、コンピューター化された税関手続体制の導入、そしてそのコンピューターシステムと厚生省、農林水産省の検査当局との統合、などが挙げられる。

 こうした変更により通関手続に要する平均時間が短縮されたが、まだ問題は残っている。例えば、日本の平均通関処理時間は、依然として、他の先進工業国に比べて長い。1999年6月の日本貿易振興会(JETRO)の調査によると、日本の海上貨物の引渡しまでに要する時間は、他の調査対象国(米国、英国、ドイツ、フランス、オランダ)に比べ、3倍以上である。また日本の航空貨物の引渡しまでに要する時間は、英国に比べると短いが、米国とドイツよりは長い。

 こうした欠点に対処するため、米国政府および米国企業は、日本が(1)低リスク貨物(現物検査不要)は、保税地域に移さず、到着地点での引渡しを可能にすること(2)通関の事前手続を改善することによって、貨物の到着前に税関およびその他すべての関連日本政府機関が、申告を受理・処理し、現物検査が必要かどうかを決定し、直ちに決定内容を輸入業者に通知できるようにすること、および(3)最小限の書類に基づいて引渡し決定ができるような通関プロセスを導入し、後に完全な書類作成、そして関税の支払を行えるようにすること、を要求している。

 加えて、手数料も依然として高い。米国は、日本が、効率性向上と人員削減のために、輸入免税基準額を1万円(100ドル以下)から3万円に引き上げることを求めている。また米国は、日本が、関税の課税対象となる輸入価額の計算を、「運賃保険料込み条件」(CIF)ベースでなく「本船渡し」(FOB)ベースとすることも要請した。

 最後に、通関処理の受付時間が短すぎる。午前8時半から午後5時までの受付時間を、土曜、日曜、祝日も含む毎日午前6時から午後10時までに延長すれば、貨物の通関処理受付時間が旅客荷物の取り扱い時間と同等になり、輸入業者にとって大きなプラスとなり、通関後の輸送を容易にすることができる。また米国政府と米国企業は、日本が、保証書制度、銀行保証、あるいは24時間銀行員体制を導入することによって、1日24時間、税関の貨物引き渡しが行える手続きを確立することを求めた。

 通関のコストと遅延が、米国の既存あるいは将来の輸出業者、通信販売業者、国際宅配業者、そして製品・機器の輸入を必要とする日本が拠点の事業者に及ぼす影響が広範囲にわたるために、日本の通関手続の効率化がもたらす効果を金額で推定することは難しい。しかし、米国のある国際宅配業者の推定によると、免税基準額を変更するだけでも、年間の関税支払額が何百億円も減少し、日本の消費者からの大幅な受注増を促すことになる。

革・革製品

 1991年、日本は革製履物の輸入を自由化し、その輸入割当を年間240万足に設定した。これは、1998年度までに年間約1200万足に拡大された。ウルグアイ・ラウンドで日本は、割当枠を満たしていない革製履物、クラスト革、その他の革製品の関税を8年かけて引き下げることを約束した。

 日本の輸入割当設定プロセスは透明性を欠いている。米国の業界の報告によると、輸入予測量を決めるために革靴の輸入業者と協議を行うことがない。事実、日本の当局者は、輸入割当を、割当枠を使用する予定の企業に限定する努力を全くしていない。米国政府および米国の革・革製履物産業は、引き続きこうした割当枠の撤廃を要求している。

 関税割当を超えて輸入される履物には、依然として厳しい市場アクセス障壁がある。2000年1月1日から、37.5%の関税率または1足につき4425円の関税のうち、どちらか高い方が課されているが、これは2002年までに、30%または4300円のうちのどちらか高い方に引き下げられる。原則では、8年の段階的引き下げ期間に、割当枠超過分の関税率は50%引き下げられ、円建ての最低代替関税は10%引き下げられることになる。しかし実際には、円建ての最低代替関税は、割当枠超過分の関税率の、より大きな引き下げの効果を帳消しにするような形で適用されている。また、1998年度には割当枠を超えた輸入が大きく伸びたが、それでも合わせて割当枠内の輸入の約5.9%にすぎなかった。これは、割当超過分の輸入に対する高関税率が、輸入増加を実質的に抑制する効果を持っていることを示唆している。

コメ

 手厚く保護されている日本のコメ市場は、長年にわたって自由化のターゲットとなってきた。ウルグアイ・ラウンドで、日本は国内コメ市場の開放に着手し、コメのミニマムアクセス(最低輸入割当量)を設定することに同意した。日本は1995/1996年に37万9000トンの輸入を約束した。この割当量は、ウルグアイ・ラウンド実施期間(2000/2001年)の終わりまでには、75万8000トン強に増加する予定となっていた。ウルグアイ・ラウンド以来、米国は日本への最大のコメ輸出国であり、日本の総輸入量の約半分を供給している。

 1999年4月1日、日本の新たなコメ輸入制度が実施され、それまでの輸入割当制度が関税割当制度に変更された。「関税化」により、日本のミニマムアクセス割当を超えるコメ輸入には一定の関税が適用される。関税割当制度を採用することによって、日本はミニマムアクセス輸入の年間増加率を0.4%まで下げることを認められる。そのため、日本の1999年の輸入量は64万4000トン(精米ベース)で、従来の制度の場合に比べると3万8000トン少ない。

 日本のウルグアイ・ラウンドでの確約にもかかわらず、米国産のコメによる完全な市場アクセスは達成されていない。日本の食糧庁が通常の入札制度の下で輸入するコメが、最終消費者に届くことはほとんどない。これらの輸入米は備蓄に回されるか、食糧援助のために輸出される。また、食糧庁の同時売買契約方式(SBS)の管理によって、米国の輸出業者は日本の消費者との直接の接触をさらに阻まれている。SBS制度は、日本の輸入業者と外国のコメ輸出業者が、食糧庁の介入なしで日本の消費者の需要に応えられるようにすることを意図していた。

 しかしながら、SBSの現在の実施方式では、日本の消費者が輸入米を選ぶ機会はほとんどない。米国産のコメは、他の輸出国からの、より安く質の低いコメと混ぜられ、米国産と同等の品種・品質の他の輸入米と競争することが妨げられているため、消費者は、米国産とはっきりわかるコメを買うことができない。加えて、SBSによる入札後60日間以内に輸入米が出荷されなければならないため、日本の卸売業者へ年間を通じて安定した供給をすることが事実上妨げられている。

 米国のコメ産業は、日本市場の要求に応えるために多大な努力を払ってきた。日本の消費者と協力して、日本市場専用に作られる独特の品種の生産、取り扱い、精米の技術を改良してきた。こうした取り組みを前進させるために、米国のコメ産業は日本と積極的に技術協議を行っている。また米国のコメ産業は、SBS入札方式の下で価格競争力を向上させるために多大な努力を払った。1999年度の米国産コメのSBS平均購入価格は1トン当たり8万4201円で、1998年度の平均購入価格11万4238円に比べて26%低く、これまでSBS方式の下で米国が提示した最低価格となった。これに対して、1999年度の米国産コメのSBSマージンは平均1トン当たり18万9885円で、SBS入札制度の導入以来、名目上2番目に高く、有効従価税率(226%)では最も高かった。

 米国は、日本政府と何度も話し合いを重ね、日本の新たな関税化政策が日本のコメ市場へのアクセスに及ぼす影響を検討してきた。これらの協議を通じて、米国は、米国のコメ産業が今後も日本のコメ市場で過去4年間と同等のアクセスを達成することを期待していることを伝えた。同時に、米国と日本は、日本のコメ市場へのアクセスを含む数々の農業問題について定期的な協議を行うことで合意した。そうした会合の1回目が1999年9月、ジュネーブで開催された。その会合で米国は、日本の食糧庁が輸入制度を透明な方法で実施することによって、米国のコメ輸出業者が日本の最終消費者との間に効果的な商業関係を築けるようにすること、そして市場が通常に機能できるようにし、SBS認可が食糧庁の利益に基づいて発行されることのないようにするために、SBS制度の改正を考慮することを要求した。

 ウルグアイ・ラウンドのミニマムアクセスによる日本のコメ輸入における米国の市場シェアは、1998年度の47.7%から1999年度には47.9%に増加した。これは米国の期待に沿った増加である。米国は日本のコメ輸入を注意深く監視しており、状況が変化した場合には日本の政策に対応するあらゆるオプションを検討する。

 1999年度に、農林水産省は、過剰生産米17万トンを買い上げ、同量の政府備蓄旧米を飼料用に放出するための資金を確保した。この資金は、1トン当たり約20万円(1900ドル)という、食糧用のコメと飼料用のコメの大きな価格差を補助するものである。農林水産省がこのような処分策を取ったのは、これが初めてではない。前回までの処分量は計1300万トン、費用総額は3兆円(250億ドル)前後に上る。今回は飼料としての処分量はこれまでより少ないが、30年間に及ぶ累積効果によって飼料用穀物の輸入が大幅に減少し、世界のコメ市場が混乱する。

木材製品・住宅

 日本は引き続き、米国の木材製品の最大の輸出市場である。1999年の米国の木材製品輸出総額は15億ドルで、前年比3%減となった。この減少の原因は、輸入木材製品の多くを使用する住宅産業の停滞である。

 日本における米国製木材製品の市場を拡張するため、米国は日本に、建築基準法、日本工業規格(JIS)、および日本農林規格(JAS)の規定・基準の改正等、残る障壁の除去を求めている。これらの障壁は、輸入建築資材の承認と受け入れを制限している。

 日本が木材製品市場の開発のためにできることは、規制環境の改革のほかにも多数ある。例えば、住宅購入を増やすために消費者の信頼を回復すること、新規・中古住宅市場を刺激するために税制改革を継続すること、土地法・賃貸法を改革すること、住宅ローン制度の拡大、そして国内木材製品産業に対する補助を廃止することなどである。

 長年にわたり、米国の日本におけるもう1つの目標となっているのが、付加価値木材製品の関税撤廃である。日本が早期関税引き下げ計画を支持しなかったことによって(本章の「輸入政策」の項を参照)、木材製品(木材、紙、印刷材、木製家具)の関税の段階的廃止についての合意が不可能となった。米国は引き続き、日本が2002年から2004年の間に木材製品の関税を廃止することを目指して、WTOの新たな交渉の枠内で協定締結に建設的な役割を果たすことを求める。

 住宅は、強化されたイニシアティブの5つの優先分野の1つに指定されている。同イニシアティブの下での住宅協議における米国の中心になる目標は、木造建築の促進であり、この分野における進展については、この報告書の規制撤廃の項に詳述されている。強化されたイニシアティブに関連して行われる会合に加えて、米国と日本は、建築専門家会合、JAS技術委員会、および木材製品小委員会でも、木材製品および住宅建築資材の問題について話し合っている。

海洋船舶

 ボート、船舶用エンジン、船舶用機器に関する日本の小型船舶安全規制の不透明な制度は、この分野の市場アクセスの深刻な阻害要因となっている。運輸省と小型船舶検査機構が実施するこの規制は、あいまいで、恣意的かつ一貫性のない解釈が行われやすい部分が多い。試験の要件にはコストのかかるものもあり、また書類要件は不透明で煩雑であり、企業に製品の設計、材料仕様、製造技術に関する自社所有機密情報の開示を強いるものである。検査料金は高く、検査実施の費用に関連がない。

 この規制制度は、米国のメーカーのコストを不必要に引き上げ、日本の消費者に高価格の負担をかけるとともに、輸入ボート、モーター、機器へのアクセスを減少させるものであり、また米国やヨーロッパの規制に比べて安全性を高めるものでもない。日本は過去に小型船舶および船舶用エンジンの国際安全基準を採用する意図を表明し、国際基準作成委員会に積極的に参加している。しかしながら、日本は小型船舶規制を国際慣行に合致させることにおいて、ほとんど前進を示していない。米国は、強化されたイニシアティブの下で、日本に対してこの問題について引き続き懸念を表明していく。

 

基準、試験、表示、認証

 認証に関連する問題が、引き続き日本市場へのアクセスを妨げている。技術の進歩により、日本の基準は時代遅れで制限的なものとなりつつあるが、日本の産業界は、競争を制限する日本独自の安全その他の基準を支持し続けている。しかし、一部の分野では、日本は国際慣行に合わせて、制限的な基準の簡素化、統一化、および廃止を実行してきた。

 基準、認証に関する外国企業と日本政府の間の紛争を担当する主たる機関は、市場開放問題苦情処理推進本部(OTO)である。OTOは、1994年に総理府に移され、所管省庁に対して、取るべき措置を勧告する権限を与えられた。OTOは、ある程度の影響力を行使してきたが、依然として正式な強制権限は持っていない。

 

バイオテクノロジー

 日本は、遺伝子組み換え(GM)食品の承認プロセスにおいて、概ね科学的なアプローチを取ってきた。これまでに、バイオテクノロジー製品の規制官庁である農林水産省と厚生省は、トウモロコシ、ジャガイモ、綿、トマト、大豆など29種のGM植物品種の輸入を認めている。

 米国と日本のバイオテクノロジー製品の安全性評価に関する規制アプローチはよく似ているが、米国は、日本が2001年4月からトウモロコシおよび大豆を原料とする加工食品および半加工食品24種の表示義務を最近決定したことを大いに懸念している。米国は、表示の義務付けが、健康上のリスクがないのにリスクの存在を示唆し、消費者によるバイオテクノロジー食品の購入を抑制することを懸念している。実際、農林水産省の表示義務付け計画の発表に対して、表示義務付けの対象となる製品のメーカーの多くは、すでに遺伝子組み換えでない原材料に切り替えているか、今後切り替えることを発表している。

 農林水産省は、表示の義務付けをバイオテクノロジー食品にも拡大することの目的は、消費者への情報提供であると述べている。米国は同省に対して、消費者が遺伝子組み換え食品について情報を得ることは重要であるが、教育資料や公共のフォーラム等、表示に代わるいくつかの手段を利用した方が、遺伝子組み換えについて一層意味のある情報を消費者に提供できることを伝えている。米国は今後も、この重要な分野で残る課題に対処するため、2国間および多国間の場で、日本と緊密に協議を続けていく。

栄養補助食品

 従来、日本では、栄養補助食品(ビタミン剤、ミネラル、ハーブ、および非有効成分)は薬品として分類されてきた。その結果、日本市場ではそうした補助食品の形態、用量、および小売形態に厳しい制約が課されている。これらの規制は、多くの外国補助食品業者に過剰なコストと困難をもたらし、その結果、米国企業のプレゼンスを相対的に弱めている。米国は、栄養補助食品の問題を、市場重視型個別協議(MOSS)および強化されたイニシアティブのプロセスで取り上げている。

 1996年3月、日本の市場開放問題苦情処理推進本部(OTO)は、通常、海外で食品として流通・販売されている製品は、医薬品としての規制の対象から除外して、食品として日本市場に受け入れることを提言した。しかしながら、厚生省の措置は、まだOTOの提言の趣旨を実現するには至っていない。

 日本の自由化プロセスの下で、一部のハーブ、ミネラル、ビタミン剤は食品指定を受けた。しかしながら、この扱いによって、米国の産業にとって販売・表示の問題が解決されたわけではない。それは、これらの栄養補助食品が、今度は食品として食品衛生法による食品添加物規制に従わなければならないからである。錠剤の製造に使われる一般的な賦形剤で、食品衛生法による食品添加物ポジティブリストに入っていないものを含有する製品は、依然として日本で販売することができない。食品衛生法がもたらすもう1つの問題は、イチョウの葉に含まれる安息香酸や安息香酸ナトリウムのように、自然に存在する化合物の一部も、食品添加物と見なされることである。従って、こうした制約のため、これらの製品を大幅に調合し直さずに販売することが不可能となる。

 厚生省は、栄養補助食品の取り扱いについて調査するために、政府、産業、および学界の専門家から成る研究会を設立した。この研究会は1999年12月に中間報告を発表し、パブリック・コメントを求めた。この報告は、2000年1月のMOSS協議および強化されたイニシアティブの協議で検討された。2000年4月に予定されている最終報告は、日本における栄養補助食品の規制に関するあらゆる側面を取り上げ、厚生省によるOTOの提言採用の基盤となる。米国は、中間報告に対するパブリック・コメント期間の導入を歓迎する。と同時に、日本が、栄養補助食品に使用される賦形剤の審査・承認を迅速化する制度を確立し、科学的なデータ・情報の裏付けがあれば、ミネラル、ビタミン剤、ハーブの栄養・健康上の利点を宣伝できるようにし、ハーブ、ミネラル、ビタミン剤、賦形剤、および栄養・健康上の利点の審査基準を明確に公表し、そして日本における製品の評価・承認の際に補助的な国内データを要求せずに外国のデータ・情報を利用するなどにより、OTOの提言を完全に実行することを求める。

 米国は、引き続き、MOSS協議および強化されたイニシアティブのプロセス、OTO、およびその他の場で、OTOの提言の完全な、意味のある実施を通じて、米国製栄養補助食品の市場アクセスの改善を目指し、厚生省に働きかけていく。

食品添加物

 国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品添加物専門家委員会によって、世界各地で一般に安全と認められている食品添加物についても、そうした加工食品の対日輸出が日本の基準によって妨げられることがある。例えば、日本は、数々の国内・国際基準設定機関によって評価され認められている食品添加物であるソルビン酸カリウムの入ったライトマヨネーズ(およびクリーミーマスタード)の輸入の許可を拒否している。しかし、この添加物の入った他の多くの食品が日本への輸入を許可されている。

 日本は、食品衛生法を改正することによって、国内規制をWTOの「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」(SPS)に合致させようとしている。現在、日本の食品添加物規制は、食品衛生法第6条に基づき厚生省が指定した「非天然」食品添加物リストに代表されるように、依然として独自なものである。米国政府は、米国の企業や業界団体に対して、厚生省に新規の食品添加物の承認を申請する際には、審査のために十分な時間を取るよう奨励している。米国は、強化されたイニシアティブの下で、日本の食品添加物規制の問題を取り上げてきており、今後も日本が、消費者を保護するとともに国際食品貿易を促進するような規制を採用するよう要求を続けていく。

残留農薬

 厚生省は、農薬の新しい残留基準を設定し、コメントと検討の機会を含め、WTOに十分な通告をする作業を継続している。米国政府は、該当する化学物質に関する米国の基準および国際基準についての科学的データを提供している。

 日本が、国際的に認められた許容水準に合致した残留農薬基準を設定した点については進展が見られるが、輸入食品および農産物に関する非関税障壁が不当に貿易を制約しないようにするためには、日本との作業がさらに必要である。

動物用医薬品

 日本は普通、科学的証拠を評価する前に、FAO・WHOコーデックス委員会による国際基準の採用を待つ。しかし、そのような方針は、日本における動物用医薬品の許容水準設定を、時に必要以上に遅らせている。時宜を得たリスク評価を行わずに、これらの薬品の検出可能な水準の残留を禁止するという日本の慣行は、WTOのSPS協定に基づく日本の義務に反する可能性がある。米国は日本に対して、新しい動物用医薬品の許容水準をタイムリーに設定するために科学的証拠の評価を行うように、またコーデックスの審議結果を待つためにプロセスを遅らせないようにして、日本で販売される動物用医薬品の安全審査プロセスの改善を続けることを求めている。

 

政府調達

 米国政府は、日本の公共部門6分野、すなわちコンピューター、建設、医療技術製品・サービス、人工衛星、スーパーコンピューター、そして電気通信機器・サービスの各分野で、2国間合意を締結してきた。これらの合意の目的は、日本の政府調達市場における外国企業のアクセス改善と、売り上げの拡大である。この目的達成に向け、これらの合意は、これまで米国やその他の外国企業が日本の政府調達市場に完全かつ対等に参入することを妨げてきた、従来の日本の調達慣行を是正しようとするものである。一般的に、これらの合意は、調達プロセスのすべての段階で内外の供給業者にあらゆる公開情報への平等なアクセスを提供し、仕様作成にコメントや参加できる平等な機会を確保し、単一業者に発注する調達件数を削減し、公正な入札異議申し立て制度を義務付けている。

コンピューター

 技術・性能ともに世界のリーダーである米国のコンピューター製品・サービスのメーカーは、引き続き、在日外国企業の中でも最大手で最も成功した企業となっている。これら米国企業による日本の政府コンピューター調達市場への参入が余りに不十分であったことに対処するため、日米両国は1992年、コンピューターに関する政府調達合意(日本の公共部門のコンピューター製品およびサービスの調達に関する措置)を結んだ。外国のコンピューター製品・サービスの政府調達を拡大することを目標としたこの合意は、日本の公共部門のコンピューター調達制度に係る手続きを、以下のことを義務付ける規定により改善した。(1)すべての潜在的供給業者に対し、招請前情報への公平なアクセスと参加の機会を等しく与える。(2)調達仕様作成に関与した業者はすべて、当該調達への入札を禁止する。(3)単一業者からの調達は、GATTおよびWTOの政府調達に関する協定で正当と認められる例外を除き禁止する。(4)入札の評価は、入札説明に明記される一連の評価基準に基づいて行う。(5)不当に低価格での入札を禁じる。

 1999年5月に東京で行われた2国間の年次合意点検会合において、日本は、1997年度に関するデータを提示した。それによると、日本政府のコンピューター調達市場において外国メーカーが占める割合は、対前年度比0.6%増え16.5%となった。しかしこれに先立ち、1995年度から1996年度にかけて、日本の公共調達市場における外国のコンピューター製品・サービスのシェアは、37%激減している。米国は、多少の進展があったことは認めるものの、日本政府のデータによると、日本政府のコンピューター調達市場における外国メーカーの占める割合が、コンピューター合意達成当時とほとんど変わらないことに対し深い懸念を表明した。さらにこれは、日本の民間コンピューター市場における外国メーカーのシェアがほぼ一貫して30%を超えているのに比べると、引き続き好ましくない数字である。米国は、合意の目標を達成するには、日本がさらに努力する必要があるとの結論に達した。

 日本の民間部門と公共部門のコンピューター市場における米国のシェアの間に引き続き格差があること、またコンピューター産業における急速な技術の進歩を考慮し、1999年、米国は日本に対し、コンピューター合意の実施を更新・改善することを求めた。この目標に向けて、米国は日本に対し、公共部門の調達においてインターネットをさらに十分に活用すること、入札審査における総合評価落札方式(OGVM)の利用を拡大すること、そして入札候補業者に提供する調達予定についての事前情報の対象件数を増加させることを求めた。

 日本は、中央省庁の政府調達の公告や資料をインターネット上に統合する意向を明らかにしており、1999年末、これを立ち上げるための正式な委員会を2000年初頭に設置する計画の概要を示した。日本の最終的な目標は、あらゆる製品カテゴリーについて、日本政府による調達の入札に必要なすべての情報を掲載した単一のウェブサイトを作成し、インターネット上での入札も可能にすることである。米国は、日本がこの計画を推進するに当たり、外国のコンピューター・メーカーの意見を十分に勘案するよう求めている。

建設、設計、エンジニアリング

 公共事業に関する日米合意は2つある。1991年の大型プロジェクト特例措置(大型公共事業への参入機会等に関する日本政府の措置 ? MPA)と、公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画(「行動計画」)を含む1994年の日米公共事業合意である。MPAは、日本の公共事業市場へのアクセス改善を目的とするもので、国際協力が勧奨される40件のプロジェクトリストが含まれる。行動計画の下では日本は、WTOの政府調達に関する協定(GPA)に規定される金額以上の額の調達については、オープンで競争的な手続きを採用しなければならない。米国は、これらの合意の下で引き続き進展がみられないことに大きく失望している。1998年7月から1999年7月まで、前年同期に引き続き、外国の設計・建設企業が獲得した日本の公共事業契約の総額はわずか5000万ドルにとどまった。1999年7月以降、外国企業が獲得した契約総額は、わずか4000万ドルである。総額2500億ドルに上る日本の公共事業市場における米国のシェアは、一貫して1%を大きく下回っており、これは、世界における米国企業の競争力を考えると問題となる事実である。比率で見ると、日本企業は米国において、米国企業が日本で獲得する公共事業の12倍を獲得している。

 日本の公共事業市場は、その閉鎖性と企業が互いに協議を行い落札者を事前決定する「談合」が広く行われることで知られている。公取委は1999年に、千葉県における公共コンサルティング契約2500件について、落札者の事前決定に関与した300社近い日本の建設コンサルタント業者などを調査した。調査の結果、公取委は、これら企業に対し公共事業への入札をわずか2カ月間禁止しただけである。米国は、この分野において公取委がさらに強力な措置を取ることを求めている。

 この分野での進展がないため、日米両国は、米国政府の要請で1999年1月にこれらの合意に関して特別の協議を行い、さらに1999年7月の年次点検会合と2000年1月の特別の協議において次官級の話し合いを行った。米国は、米国企業に対する十分な市場機会を引き続き妨げる、以下の慣行を重視した。(1)ジョイントベンチャーの参加企業を3社に限定する「共同企業体結成準則」(「ジョイントベンチャー3社規則」)を含め、大型建設プロジェクトのためのジョイントベンチャー結成に対し恣意的な制約を設けていること、(2)外国企業に開放されている建設・コンサルティング・プロジェクトの件数が極めて少ないこと、(3)あいまいかつ不当に制限的な(入札参加資格)要件を継続して使用していること。

 米国は2000年1月、前年7月に行われた次官級会合でなされた提言に対し日本が何ら行動を取っていないことに深い失望を表明し、厚生省、郵政省、農林水産省をはじめとして発注機関の中には、米国企業に対し行動計画に基づいた調達を一件も発注していないところがあることを指摘した。米国がジョイントベンチャー3社規則撤廃を繰り返し要請しているにもかかわらず、建設省は、建設プロジェクトのジョイントベンチャー要件の自由化に進展を見せていない。1999年7月の年次点検会合で、日米両国は、日米建設協力フォーラムを設置することに合意した。このフォーラムの目的は、日米企業のジョイントベンチャー結成を促進し、日本の公共事業市場への米国企業のより十分な参入を可能にすることである。1999年10月に第1回のフォーラムが開催され、日本は2000年春に、第2回フォーラムを開催することに合意した。米国は、これらのフォーラム会合が、米国企業の受注契約件数の増加につながることを期待している。

 設計・コンサルティングの分野で、日本は1998年以降、3つの措置に着手している。しかし2000年1月の点検会合の中では、これらの措置にもかかわらず、行動計画の対象である設計・コンサルティングの調達件数が増加していないことが明らかになった。特に懸念されるのは、調達が行動計画による限度額を満たしているか否かを判断する際に、2種類の設計契約(基本設計と実施設計)を統合するという措置に進展が見られなかったことである。この措置は事実上、調達限度額を半減させ、異なる年度の契約を統合することを可能にするものである。米国は、この措置が完全に実施されれば、行動計画の対象となる設計・コンサルティング調達件数が大幅に増加すると確信している。他の2つの措置は、設計業務の外注に関するものと、設計・コンサルティング企業がジョイントベンチャーを結成することをさらに自由化するものである。米国はまた、ひながたとなる計画管理・建設管理(PM/CM)プロジェクトの立ち上げに進展がないことにも失望している。

 さらに米国は、2000年1月の点検会合の中で、日本が依然として、あいまいかつ不当に制限的な入札参加資格要件を採用していることに改めて懸念を表明し、建設省発注の調達を含む最近の設計・コンサルティングおよび建設の実例を挙げた。米国は日本に対し、調達に参加できる企業の数を制限するのではなく最大化するために、特定の調達に適用する要件を明確にすることを求めた。米国はまた、WTOのGPAの対象となる日本の県や市町村などの地方自治体を含めた発注機関の中には、故意に調達額をGPAの限度額以下になるように計算することで、外国企業に開放しないようにしている可能性があると懸念を表明した。

 1994年の合意に有効期限はないが、日米間の年次協議を義務付けるメカニズム自体は、日米両政府が協議継続に合意しなければ2000年3月31日に失効する。(MPA下での協議メカニズムは、すべてのMPAプロジェクトが完了するまで維持される。)米国は、この分野において問題が継続しており、行動計画の実施に関する政府間協議を続ける必要があると考える。

 米国は、日米公共事業に関する2つの合意の対象となっている大型プロジェクト数件を監視している。これには、中部国際空港、関西国際空港第2滑走路建設、新北九州国際空港、羽田空港、第2京阪高速道路、九州大学移転プロジェクト、九州国立博物館などがある。最近行われた点検会合の中で、米国は、米国企業にとって特に関心が持たれるものとして、これらのプロジェクトと、景気対策により予算化されたいくつかのプロジェクトを取り上げた。

医療技術

 日米両国は、1994年11月、日本の公共部門調達市場において、競争力のある外国医療機器・サービスの市場アクセスと販売を大幅に拡大することを目的とした医療技術合意(日本の公共部門における医療技術製品およびサービスの調達に関する措置)を締結した。米国企業は引き続き世界最大の先端医療技術生産者であり、この合意は、米国やその他の外国企業が日本の公共部門において、より効果的に医療技術製品・サービスを販売できるようにするための重要な一歩である。

 この合意には、政府機関が主な医療機器・サービスを調達する際に採用しなければならない公正かつ透明な手続きが述べられている。また、合意の実施を毎年評価するために使用できる定量的・定性的な基準が設けられている。これらの基準には、各政府機関が外国企業と結んだ契約の金額・シェア、随意入札による契約の件数・金額、調達情報への外国企業によるアクセスなどがある。合意の1つの重要な要素は、指定の上限金額(1998年4月1日に38万5000 SDRに引き下げ)を上回る中央政府の調達には、最低価格制度ではなく総合評価落札方式(OGVM)による入札審査に基づいて決定することが義務付けられている点である。これが重要である理由は、概して米国製機器の方が革新的で特殊な機能あるいは極めて優秀な性能を備えており、総合評価落札方式を採用すれば、調達の決定に当たり、当初の価格だけでなく製品の寿命全体にわたる製品価値の総合的な評価を考慮することが可能となるからである。そのため、購入者は、価格と性能の最も望ましいバランスに基づいて製品を選択する柔軟性を確保できる。

 市場重視型個別協議(MOSS)および強化されたイニシアティブのプロセスを通じ、米国は、日本が地方自治体による入札審査に当たり総合評価落札方式の採用を認めるための必要な措置を講じることを求めた。1999年2月17日、日本は、地方自治体による調達に当たり総合評価落札方式の採用を認める政令を定めた。この新たな政策により、高度な医療機器だけでなく広範なハイテク製品の米国輸出・製造業者にとって、日本市場へのアクセスは拡大することになる。米国の業界の推定によると、この措置により、米国の対日輸出が約5億ドル(うち推定1億ドルが米国製医療機器の販売だけで)増加する可能性がある。

 この合意の年次点検会合は、最近では1999年9月に行われた。日本が提出した1997年度のデータによると、外国メーカーの市場シェアは、4.4ポイント上昇し45.6%となった。1996年度から1997年度にかけて、合意の対象である調達総額は750億円強から530億円へと29.6%減少したにもかかわらず、シェアはこのように拡大した。また1997年度には、外国企業と国内企業の直接競争も大幅に増加し、1996年度には契約全体の7%であったが、1997年度には14.7%となり、この分野における競争が一層活発化していることを示した。

 この合意の下で大きな進展が見られるものの、米国は引き続き、日本が公共調達プロセスの透明性を向上させ、地方自治体レベルでの総合評価落札方式の採用を拡大することにより、さらなる進展を図ることを求める。

人工衛星

 1990年の日米人工衛星調達合意(非研究開発衛星の調達手続)に基づき、日本は研究開発用以外の衛星調達について、外国の衛星メーカーに門戸を開くことを約束した。合意の定義によると、「研究開発用(R&D)衛星」とは、どちらの国にとっても新しい技術を宇宙において開発もしくは実証すること、または非商業的な科学的研究を行うことを、専らまたは概ねの目的として設計され、かつ、使用されるものとされている。商業目的または定期的なサービス提供を目的に設計・使用される衛星は、明らかにこの合意の定義による研究開発用衛星の基準を満たさない。合意の適用範囲には、日本電信電話(NTT)および日本放送協会(NHK)による放送衛星の調達が含まれる。

 現在まで、この合意は、日本政府の調達市場を外国からの競争に開放することに成功している。この合意に述べられている競争的手続に基づき、1990年から1999年までに6回にわたって公開入札が行われたが、いずれもこの分野では世界をリードする米国の衛星メーカーが総額10億ドルを超える契約を受注した。この分野での米国企業の競争力を考えると米国はこの成功が今後も続くことを期待している。

 米国は、引き続き日本による合意条件の順守を慎重に監視するとともに、研究開発用衛星について広範すぎる定義が使われ、米国衛星メーカーの調達機会へのアクセスが不当に奪われることがないように期する。

スーパーコンピューター

 日米両国は、米国のスーパーコンピューター・メーカーによる日本の高性能コンピューター市場への公正なアクセスを確保するため、1990年日米スーパーコンピューター合意(スーパーコンピューター導入手続)を締結した。この合意の中で、日本は公共部門におけるスーパーコンピューターについて、透明性があり開放された、非差別的、競争的な調達手続を導入し、調達機関がその任務の遂行を最善な形で行えるスーパーコンピューターの調達を完全に可能にすることを約束した。

 1990年のスーパーコンピューター合意に基づく結果は、一様ではない。競争的な日本の民間スーパーコンピューター市場における米国のシェアと、日本の公共部門のスーパーコンピューター市場における米国のシェアとの間には、依然として大きな格差がある。1993年度および1994年度に日本の公共部門のスーパーコンピューター市場で米国のシェアが顕著に伸び、日本の民間スーパーコンピューター市場での米国のシェアである45〜50%に近づいたが、合意の下でのその後の結果によると、今後に期待を持つことは難しい。米国企業からの調達は、1995年度には11件中わずか1件、1996年度には8件中2件、1997年度には5件中1件、1998年度には15件中2件、そして1999年度の最初の8カ月間では9件中2件にとどまっている。日本の公共部門市場と民間市場における米国のシェアの格差に加えて、近年、米国は、日本の一部公共機関がスーパーコンピューター調達に当たり不適切な技術的要件を採用していることに懸念を表明している。米国は引き続き、日本が、中立的・非差別的な技術的要件の採用も含め、2国間スーパーコンピューター合意条件の忠実な実施を確保するよう働きかける。

 1999年4月30日、日米両国は書簡の交換により、この分野での顕著な技術発展に歩調を合わせるため、スーパーコンピューター合意の適用上限を5ギガフロップスから50ギガフロップスに引き上げることで合意し、この変更は1999年5月1日付で実施された。

電気通信

NTT資材調達取決め

 1999年7月1日、NTTが持ち株会社(日本電信電話株式会社)となり、地域会社2社(NTT東日本、NTT西日本)および長距離・国際電話会社(NTTコミュニケーションズ)に再編されたのと同時に、日米両国は新たなNTT資材調達取決め(NTT再編後の資材調達に関する措置)について合意した。この合意は、これまでのNTT資材調達取決めに代わるものである。NTT資材調達取決めは、1980年に初めて締結されて以降6回にわたり更新されてきた。NTT後継企業4社を合わせると、引き続き日本の単一で最大の電気通信機器購入者となり、最近の統計によると、300億ドルの規模を持つ日本の電気通信機器市場の約3分の1を占める。このような「NTT市場」は、これまでも、また今後も、米国その他の外国の電気通信企業にとって大きな関心の対象である。

 この新合意は、NTT後継4社による調達のすべてを対象としており、有効期限は2年間である。 新しい合意の中味は、(1)NTT各社の調達を政府が引き続き監督することを確保し、(2)両国政府が進展を評価するため年次点検を行うことを約束し、(3)NTT各社が両国政府による点検のためデータを提供することを義務付け、(4)NTT各社にオープンで非差別的、競争的、かつ透明な調達を義務付ける、簡素化された新たな調達手続を明らかにすることである。NTT再編成による変化と、国内外の供給会社およびNTT各社の置かれる事業環境の変化を反映し、この合意は、(1)従来の「提案要請」方式、(2)革新的な製品を提供する企業がNTTに直接提案を提出できる手段、そして(3)NTTが継続した購入を行う手段、という3種類の調達方式の仕組みについて詳しく述べている。

 1998年10月、旧NTT資材調達取決めの最後の2国間点検会合の中で、NTTは外国製品調達総額が1996年度の1730億円から、1997年度には1850億円に増加したことを報告した。1997年度のNTTによる製品・サービス調達全体が減少している事実に鑑みると、外国製品調達が増加したことは意義深いものである。米国は、こうした事実が、日本の電気通信機器市場の競争拡大、および開放性、公正性、透明性の改善という目標に近づく上でNTT資材調達取決めが効果を発揮していることを示すものであると信じている。 それでも、米国は、この点検会合およびその後の新NTT資材調達取決めに関連する交渉の中で、NTT各社による外国製機器調達が増加を続けること、そして各社の調達に占める外国企業のシェアが伸び、(従来外国製品に対する開放度がはるかに高い)日本の民間電気通信事業者および世界の電気通信市場の水準に近づくことを期待していることを述べた。NTT各社は年間100億ドルを超える機器・サービスを調達しており、今後は、米国企業の得意分野であるデータやインターネット関連技術の調達を増やす予定であるため、「NTT市場」へのアクセス改善は、米国企業にとり新たに大きな機会をもたらすはずである。新しいNTT資材調達取決めの第1回年次点検会合は、2000年下半期に行われる。

公共部門における電気通信機器およびサービスの調達に関する合意

 1994年の電気通信機器およサービスの調達に関する日米合意(日本の公共部門における電気通信機器およびサービスの調達に関する措置)の目的は、外国電気通信機器・サービスの日本の公共部門に対するアクセスの大幅な拡大である。この合意に基づき、日本は、大規模電気通信調達に関して入札前の資料提供招請や仕様草案作成への不平等な参加、あいまいな発注決定基準、そして単一企業への過度の発注といった障壁を撤廃するための手続きを導入した。また、この合意には、進捗状況を測るための定量的・定性的な基準が盛り込まれている。これらの基準には、(1)外国製品の年間購入額・シェア、(2)機関別の外国製品・サービス年間調達数、(3)機関別の外国製品・サービスの発注契約件数、(4)随意入札の結果発注された年間契約件数・契約額、そして(5)外国企業にとっての新たな下請けの機会などがある。

 1999年5月に行われた年次点検会合では、1997年度のデータが点検され、米国は、日本政府の電気通信製品・サービス調達における外国製品のシェアが、日本政府のデータによると3.9%と引き続き低いことに対し深刻な懸念を表明した。外国企業は1995年度に13%の市場シェアを獲得したが、1996年度にはこれが3.5%に減少した。1997年度にはわずかに伸びたものの、この分野での明らかな趨勢は、引き続き、日本の民間市場において外国供給業者が収めた大きな業績とは全く対照的である。民間市場では、特にNTTの新たな競合各社による外国製品・サービスの購入が、1997年には1996年に比べて28%伸びている。

 5月に行われた点検会合で、米国は、日本の政府調達が随意契約に過度に依存し、その件数が増加していることに対して失望を表明した。合意では、単一企業への発注を減らすことが要求されているにもかかわらず、1997年度には政府による電気通信機器調達全体における随意契約の割合が27%に達した。政府機関の中で最大の電気通信機器購入者である郵政省の場合、調達全体の優に3分の1が随意契約によるものであった。通商産業省も随意契約への依存度が非常に高かった。

 また、この点検会合で米国は、日本の防衛庁が明らかにこの2国間合意の対象となっているにもかかわらず、防衛庁による調達に関して日本が情報を提供していないことについて深刻な懸念を表明した。米国は、JR各社のデータが欠けていることについても疑問を呈した。最後に、米国は政府機関が日本独自の規格、特定の地元企業に有利と思われる仕様、そして外国の供給会社を事実上締め出すような短い入札期限を採用していることについて懸念を表明した。

 次回の年次点検会合は、2000年春に行われる予定である。

 

知的所有権保護

 米国は、強力な政策を通じ、日本における知的所有権に関する目標達成を求めてきた。その政策は、緊密な2国間協議および交渉による合意(1994年の日米間の特許に関する2つの合意を含む)、多国間および地域の討議の場での効果的な政策調整、そして必要に応じ日本における米国の知的所有権を守るための強力なWTO措置を組み合わせたものである。

 1996〜97年の録音物をめぐる紛争は、WTOで初の知的所有権をめぐる紛争となったが、日本が米国に有利な形でその義務を果たすために法律改正することで解決に至った。この政策の成果として、日本における米国の知的所有権に対する保護水準が高まり、また世界的な知的所有権保護の強化を推進する上で日本の役割が拡大した。日本における知的所有権侵害は減少し、知的所有権に関する日本の法的・行政的枠組みは大きく改善されているが、米国は、日本がさらなる措置を取ることが必要と思われる多くの分野を挙げている。それには、(1)依然として残る特許関連問題への対処、(2)著作物保護の改善と拡大、(3)著名商標の保護の拡大、(4)営業秘密情報の保護の強化、そして(5)国境における取り締まりの不透明なメカニズムの明確化とアクセス拡大が含まれる。こうした懸念事項が存在するため、1999年4月現在、日本は、米国がより強力な知的所有権保護を求める国のリストである米国通商法スペシャル301条「監視リスト」に記載されたままであった。

特許

 米国は、特に、登録のアクセスおよび承認の改善と、特許請求の範囲を厳格に解釈する日本の慣行の改革に注目している。日本は、1994年の2国間の特許に関する2つの合意事項に基づく約束を履行するため、いくつかの措置を講じている。それは、日本特許庁への英文での特許出願提出を許可すること、特許権の設定登録後に誤訳の訂正を許可すること、従属特許の強制許諾を止めること(ただし反競争的慣行があるとされたケースは除く)、競合他社(者)に特許が与えられる前に第3者がそれに反対し同時にすべての反対意見を聞くことを認める慣行を止めること、そして改正された早期審査制度を提供することである。こうした措置が講じられた後も、米国は、日本の特許行政に関し、裁判所での特許訴訟に比較的時間がかかること、証拠開示手続の順守を強制する効果的な手段がないこと、そして証拠開示により明らかにされた秘密情報に対する保護が十分でないことなど、いくつかの側面に懸念を持っている。

 特許法改正案が1999年に国会で可決され、2000年1月1日に施行された。この法律は、法廷で原告が特許侵害を証明しやすくすることを意図したものである。主な条項としては、侵害者による自己の行為を正当化する要件を強化すること、侵害者が(損害額の)計算鑑定人と協力することを義務付けること、損害賠償額を裁判官の裁量とすること、詐欺行為によって特許を取得したケースでは刑罰を重くすること、そして裁判所が日本特許庁から技術上の助言を得ることを許可することなどがある。日本の裁判所は、特許権者のプロセスが実際に使用されていることの立証責任を要求しており、これが外国の特許権所有者にとっては特に負担となっているが、改正によってこの立証責任が軽減されるかどうかを、米国は注意深く監視する。

 2001年10月1日をもって、出願審査の請求をすることができる期間について、特許出願から7年が3年に短縮される。特許庁は、2000年末までに審査期間をさらに短縮し、12カ月間とする目標を立てている。さらに、政府の諮問委員会が1999年12月に発表した報告は、日本政府が、日本における知的所有権利用を改善するため、弁理士の数を増やし、弁理士に許可される業務範囲を拡大する措置を取ることを求めている。小委員会の提言に基づき、特許庁は2000年内に国会に法案を提出する予定である。これらの措置は、実施されれば日本における特許保護の水準をさらに強化するものであり、米国はこれを好ましく受けとめている。米国は引き続き、日本がこれらの規定を実施し、特許法を執行することを要求する。

著作権

 近年、日本は、コンピューター・ソフトウェアの著作権侵害に対する取り締まりに進展を見せており、米国の業界の計算による「著作権侵害率」は、1994年には、(使用されているソフトウェアの)約50%であったものが、1997年には約30%に低下した。米国は引き続き、日本がさらに著作権侵害率を引き下げることを求めている。著作権侵害の有効な抑止策への大きな一歩としては、実際の損害額賠償ではなく懲罰的損害賠償を可能にし、証拠収集のより効果的な手続きを規定するため、日本の民事訴訟法を改正することがある。加えて米国は、日本が、民間部門に模範を示すため、率先して、政府の業務には合法的に製造・許可されたソフトウェアのみを使用することを明確に約束する政策声明を出すことを求める。

 1997年3月、日本は著作権法を改正し、その結果、米国その他のWTO加盟国で過去50年間に制作された録音物が保護されるようになった。これは、WTOで初の知的所有権をめぐる紛争の解決事例である。この紛争は、日本が「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS)に従って既存の録音物に対して完全な「遡及的」保護をしていないとして、米国が1996年にWTOに提訴したものである。米国は、デジタル音楽放送サービスを含むデジタル網における著作権侵害についても、同様の解決を期待している。日本はまた、世界知的所有権機関(WIPO)著作権条約とWIPO実演・レコード条約に同意している。これらが批准されれば、インターネット上で送信される作品の製作者や実演家に新たな保護が与えられる。

 日本は2000年にWIPO著作権条約を批准する予定であるが、その準備として国会は1999年、著作権法を一部改正した。改正法の主な規定には、著作権回避を意図した装置の製造・流通、および営利目的で著作権管理情報を不法に改ざんすることに対する刑事罰が含まれる。この法律は、回避を行うことを専らその機能とする装置のみを対象とするため、米国は、著作権回避装置に対する罰則の適用がほとんどないことを懸念する。この法律はまた、上映権の対象を映画から静止画にも拡大するとともに、消尽の準則が映画、書籍、CDにも適用されるよう譲渡権を設定している。

 米国の一部団体は、作曲に対する著作権保護の程度に関する日本の慣行に対して懸念を表明している。日本の当局は、発行時点での共同著作者の行為に対して硬直的で形式的な規則を適用しているようで、そのため、あるケースでは作品の著作権が保護期間全体にわたらない結果となっている。この慣行に対しては、ベルヌ条約に基づき疑問が生じる。

商標

 日本は、1997年、商標法の数々の改正を行った。これらの改正は、商標権の取得を迅速化し、著名商標の保護を強化し、未使用の商標に関連する問題に対処し、さらに商標登録手続を簡素化して日本が商標法条約に従うことを目的としたものである。また、これらの措置は商標権侵害に対する罰則も強化している。残念ながら、日本の不正競争防止法には著名商標の保護を強化する規定があるにもかかわらず、著名商標の保護は依然として弱いままである。

 2000年初めのマドリッド協定議定書の批准に備えて、国会は1999年に新たな法案を可決した。2000年1月1日をもって、日本は受理された商標出願の出願公開制度の導入を開始した。2000年3月14日をもって、商標権設定が登録されれば、その商標権者は当該商標の出願から登録までの期間の損害賠償を受けられるようになる。さらに、米国は、日本が商標登録手続の迅速化を図り、商標登録の所要期間を36カ月から1年強に短縮したことを歓迎する。

営業秘密

 日本は、裁判における営業秘密の保護を強化する目的で民事訴訟法を改正し、営業秘密を含む訴訟記録を公共の閲覧の対象から除外したが、この改正は、当該問題に十分に対処したものとはいえない。日本国憲法で非公開審理が禁止されているため、日本の裁判所で営業秘密の悪用に対する補償を求める場合、営業秘密の保持者は、秘密の保護を求めるに当たって、その秘密の要素を明らかにすることを余儀なくされる。この事実に加えて、営業秘密に関する裁判所での審理がいまだに一般公開されており、訴訟当事者も代理人の弁護士も守秘義務を負わないため、日本の裁判所における営業秘密の保護は今後も米国や他の先進諸国の裁判所に比べ、はるかに弱い状況が続く。米国は、これを容認しがたく、日本がこの分野でさらなる改革を実行するよう引き続き求める。

水際規制

 米国は、日本の水際規制措置を強化するため、日本が税関記録や情報提出手続を改善し、外国の知的所有権保有者が日本の税関当局の保護を受けやすくなることを求めている。さらに日本が、職権上、大蔵省関税局(JCTB)を通じて商標権・著作権の水際規制を行う限りにおいて、(知的所有権)侵害物品を積極的に阻止することにより取締り強化の努力が行われるべきである。加えて米国は、特許製品の並行輸入を認めた1997年の日本の最高裁判決を憂慮し、引き続き関税局によるこの政策の実施を監視する。

 

サービス障壁

保険

 日本の民間保険市場は世界有数の規模であり、暫定的なデータによれば1998年度の元受正味保険料総額は3310億ドルに達する。この他に、簡保(簡易保険制度)と呼ばれる公営の大規模な郵便生命保険事業、国民医療健康保険制度、そして数多くの相互扶助組織(共済)が、巨額の保険を提供している。多くの国と同様、民間保険市場の監督は、伝統的な生命保険と損害保険(動産保険と災害保険)の部門に分かれている。さらに日本の場合、生命保険商品と損害保険商品の双方(例えば、ガン保険、医療保険、傷害保険など)を扱う、いわゆる「第3分野」 があり、これは市場全体の5%を占めているにすぎない。これまで、外国や日本の中小保険会社は、この小規模な第3分野で活躍しており、この分野でのシェアの約4割を占めている。一方で生保・損保分野におけるこれらの保険会社のシェアは常に5%を割りこんでいる。

 日米両国は、1994年10月と1996年12月の2度にわたって、日米経済枠組み合意の下で2国間保険合意を締結している。1996年の合意が必要となった理由は、日本が1994年の主要な合意事項に反した形で日本の保険会社の子会社が第3分野で営業することを認める意向であったことが、米国側に明らかになったためである。主としてこうした取り組みと、両合意の実施に対する米国の現政権の緊密な監視により、日本の保険市場の規制緩和は進み、かつては小さかった生保・損保分野における外国企業のプレゼンスも大きく変わり始めている。米国その他の外国保険会社は、第3分野における順調な業績を維持する一方で、近年は生保・損保分野でも、商品開発と革新的なマーケティング、そして直接投資により急速にシェアを拡大している。

1994年の保険合意

 1994年10月の「保険に関する措置」は、 日本の保険業の大幅な改革の立法化直前に実施されたが、この中で日本は、保険分野の規制緩和推進のため数多くの措置を講じることを約束した。これらの措置には、透明性の向上と手続上の保護強化、日本の商品と保険料率の認可制度に簡素化されたアプローチを導入すること、保険会社に対する認可手続の改善、仲介(ブローカー)制度の開始、そして公正取引委員会による業界の調査などがある。日本の商品認可制度に関して、日本政府は、検査要件の軽減や検査期間の短縮、そして「ファイル・アンド・ユーズ」制度のような迅速な承認審査制度の導入等の措置を通じて、申請審査プロセスを迅速化・簡素化することを約束した。米国は最近、日本に対して、現行の商品認可・届出制度を改善する方法についていくつかの提言を行っている。

 簡保に関して、日本は1994年の合意の中で、簡易生命保険法(「簡保法」)により郵政省が基本的な保険商品11種類を提供することが認められていること、また郵政省がこの11種類から派生する25種類の商品を提供していることを確認した。日本はまた、簡保法で認められている商品または特約の範囲内の限られた変更を除いて、郵政省が提供する保険商品または特約を拡大または変更するには国会の承認が必要であることを確認した。日本は、簡保提供についてのいかなる変更に関しても、日本で営業する外国保険会社に対し、その件につき通知を受け、コメントを提出し、郵政省当局者と意見を交換するための意味のある公正な機会を提供することを約束した。

 最後に、1994年の合意には、生命保険会社による損害保険市場への参入と、損害保険会社による生命保険市場への参入という「相互参入」に関する規定が盛り込まれており、これは、極度に細分化された保険業の規制緩和が、外国保険会社や日本の中小保険会社を犠牲にして進められることのないようにすることを意図したものである。具体的には、日本は、外国および日本の中小保険会社が、大幅に規制緩和された生保・損保分野で競争するために応分の期間を与えられるまでは、第3分野での「激変」を緩和することに合意した。

1996年の保険合意

 1996年12月の「補足的措置」は、日本の大蔵省が実施する生保・損保分野における規制緩和の範囲と時期を定めた。この合意は、激変を避けるいう約束に沿った形で、第3分野における日本の保険子会社の事業活動範囲も定めている。1997年12月、日本政府はWTO金融サービス協定の下で、こうした約束に拘束力を持たせることに合意した。

 具体的には、1996年の合意の下で、日本は、年齢、性別、運転歴、地域、車両の使用状況など各種のリスク基準によって保険料の異なる自動車保険の申請を認可することを約束した。日本はまた、自動車および火災保険の業界一律の料率を設定する料率算定会の権限を廃止することに合意した。さらに日本は、「届出制度」の対象となる商品の範囲を拡大するとともに、保険会社が企業向け火災保険に弾力的な料率を適用することを認められている契約額の下限を、1998年4月までに70億円まで段階的に引き下げることを約束した。

 第3分野に関して1996年の合意の下で、日本は、外国企業が規制緩和後の生保・損保分野でプレゼンスを確立するために十分な期間が経過するまで、日本の保険会社の新規子会社が、がん保険、医療保険、傷害保険など外国保険会社にとって特に重要な第3分野の商品を販売することを禁止または大幅に制限することを約束した。

 この合意には、1996年の合意による生保・損保分野の規制緩和措置を日本が1998年7月までに完全に実施した場合、第3分野における激変を避ける措置を解除するための2年半の「時計の針」を始動させることが定められた。日米両国は、1996年の生保・損保分野の規制緩和要件がすべて実施されているかどうかについて、まだ最終的に共同で判断するに至っていない。

 2つの保険合意の下での2国間協議は、最近では1999年4月にワシントンで行われた。これは、1998年6月に保険を含む金融サービスの監督・規制のために設立された独立規制機関である金融監督庁の代表者が初めて参加した正式の2国間協議となった。日米両国の保険規制制度に関する現行および今後の計画について相互理解を深めるため、米国は4月の会合で規制当局者間の協議機会を設け、全米保険監督官協会(NAIC)の代表がこれに参加した。

 この点検会合の中で、日本政府が提供したデータと1994年の合意に盛り込まれた客観基準を使い、日本による1994年と1996年の合意規定の実施状況を評価した。また、日米両国は、商品認可、資源と技術、保険契約者保護機構、保険料率算定会、そして日本の保険分野の行政・規制の変更に関する課題について協議した。米国は、1998年11月に発表された公取委による保険業に関する実態調査報告書を検討した。この報告によれば、当時の日本の保険業は規制緩和実施の当初で困難に遭遇していたが、競争に対する制約はほぼなくなっていた。しかしながら、米国は、この報告が系列会社による(損害)保険購入慣行における「機関代理店」の役割を看過していることを指摘し、公取委が、日本の大手保険会社が系列関係を乱用しないことや競争を阻害するその他の商慣行の採用を控えることを確実にするため、十分な予算・人員を配置することを求めた。また米国は、加盟企業によるカルテルのような活動が繰り返されることを防止するため、公取委が改革された損害保険料率算定会を緊密に監視しすることを求めた。

 さらに米国は、団体傷害保険の販売慣行、日本の保険会社によるその他の特定商品の販売など、第3分野に「激変」が起こる可能性について懸念を表明した。最後に、米国は、合意の下で義務付けられた90日間以内の商品認可申請処理を金融監督庁が履行できるかどうかについて、業界が引き続き憂慮していることを指摘し、日本の商品認可制度がますます規制緩和の進む保険分野で効果的に機能できるよう、日本が同制度に大きな変更を加えることができるかどうかを検討した。

 米国は引き続き、日本の保険行政のいくつかの側面について懸念している。外国企業は、この分野において日本が取る重要な行動につき、しばしば透明性の欠如に直面している。最近の例とし、日本は1999年12月に、保険業界と十分に協議することなく、生命保険契約者保護機構の財源の増額と権限拡大を計る急なプロセスを開始した。同様に、新しい保険商品および料率の認可プロセスも、明らかに透明性が欠如している。外国保険会社は、金融監督庁が商品認可に当たって採用している基準が、最小限で、あいまいかつ恣意的である可能性を指摘している。また、保険会社によれば、金融監督庁が、商品申請を支える追加的な情報提供を要求する際にも、同庁職員がそうした要求を文書で交付することには消極的である。

 強化されたイニシアティブに基づく 1999年10月の規制改革要望書で、米国は、こうした懸念に対処するため、保険に関する要望リストを拡大した。具体的には、米国は、金融監督庁が行政手続法で求られているように、規制対象企業とのあらゆる意思疎通を公正で透明な方法で行うためさらに努力をすること、日本政府が金融監督庁の人員と組織の専門性を大幅に強化すること、そして日本が近代化・簡素化された商品認可制度を採用することを要請した。米国はまた、日本が簡易保険制度(簡保)の役割を拡大する計画の可能性があることについても深刻な懸念を表明した。米国は、民間保険会社が提供している商品分野にも簡保を拡大することは、日本の規制緩和の目的と市場の「ビッグバン改革」に相容れないことを指摘した。米国は、簡保が保険業法の対象外で金融監督庁や公取委の監督の対象にならないことについても懸念を表明した。これらの事項については、1999年11月および2000年2月の規制緩和構造作業部会の会合で協議され、この中で米国は、日本がこうした要望を受け入れることが、米国の対日保険アジェンダの進展における重要な一歩となることを強調した。

 1994年と1996年の2国間保険合意に従ってこれまで日本が取ってきた規制緩和措置は、重要な成果をもたらしている。過去2年間に米国その他の大手外国保険会社数社が日本市場に参入しており、日本市場における外国企業のプレゼンスは大幅に拡大し、料率・商品の競争も盛んになった。しかしながら、懸念事項はいまだに残っており、米国は引き続き、日本との間の懸案の解決を求めるとともに、1994年と1996年の2国間保険合意における約束を完全かつ誠実に実行することを求める。

専門職業サービス

 現政権は引き続き、建設、設計、エンジニアリング・サービスについては、日米公共事業合意を通じて、法律業務については、強化されたイニシアティブの下で、また会計監査業務サービスについてはWTOにおいて、日本における専門職業サービスのアクセス改善を求める。

 外国企業や個人が日本で専門職業のサービス業務を提供しようとしても、複雑で多岐にわたる法律、規制、商慣行などの障壁に阻止される。米国の専門職業サービス供給者は、極めて競争力が高く、米国はそうした業務の輸出が引き続き伸びると期待している。これらの業務は、米国からの輸出として重要であるだけでなく、米国の他のサービス業務や製品の輸出業者の日本市場へのアクセスを容易にする手段としても重要である。さらに、米国の専門職業サービス供給者は、国際市場での幅広い体験から得た貴重な専門知識を提供し、彼らが業務を行う国の経済革新を刺激できる。

 WTOの専門職業サービスに関する作業部会を通じて、WTO加盟国は、会計士が国境を越え、または他の国で業務を提供できるよう会計分野の規制に関する規律を作成した。1998年12月にWTOで採択されたこの規律は、次回の交渉ラウンド後に発効する。また、「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS)交渉も、会計その他の専門職業サービスの自由化へのさらなる交渉機会を提供する。

会計監査業務サービス

 米国の会計監査業務サービス供給者は、日本におけるさまざまな規制その他の市場アクセス障壁に遭遇し、この重要な市場に貢献する能力を阻害されている。日本では、規制対象の会計業務を提供できるのは、日本の法律下で公認会計士の資格を持つ者、あるいは監査法人(日本の公認会計士5人以上のパートナーにより構成される)に限られている。外国会計士が日本で職業資格を得るには、外国人向けの特別試験に合格しなければならない。この試験が最後に実施されたのは1975年である。日本では、公認会計士は日本公認会計士協会の会員になり、会費を支払わなければならない。

 日本の公認会計士だけが、監査法人を設立、所有したり、監査法人の役員を務めることができる。監査法人は、外国公認会計士をスタッフとして雇用することができるが、外国公認会計士が監査業務を行うことは許可されていない。さらに、監査法人が外国公認会計士をパートナーまたはアソシエートとして雇用できるのは、そのパートナーまたはアソシエートが監査業務を提供しない場合に限られる。監査法人が税に関する業務を提供することは禁じられているが、全く別個の事務所を持つ限り、同一人物がその2つの業務を行ってもよい。監査法人には会社設立が要求されるが、監査以外の会計業務を提供する事務所はこの限りではない。

 しかし、外国企業の支店や子会社は、規制対象の会計業務を提供することはできない。また、外国企業が、国際的に認知された社名を使って業務を行うこともできない。その正式な社名は日本語でなければならず、しかも日本公認会計士協会の承認を受けなければならない。米国は引き続き、日本がこの制約的な市場を開放するよう要求する。

法律業務

 1970年代以降、米国の弁護士は日本の法律業務市場へのアクセス拡大と、日本人弁護士との提携関係の完全な自由化を求めてきた。しかし、日本弁護士連合会(日弁連)の強行な反対と消極的な日本の官僚組織により、この目標は大きく阻まれてきた。

 1987年以降、日本は、外国弁護士が事務所を設置すること、および日本で外国法事務弁護士(外弁)として、原資格国の法律に関連する事柄について助言を行うことを許可してきた。ただし、これは、「外国弁護士による法律事務の取り扱いに関する特別措置法」(1986年改正、法律第66号)(外国弁護士法)により制限を受けている。同法が施行されて以降、日本は外国弁護士に対するいくつかの制限を自由化した。例えば、(1)日本での国際仲裁において外国弁護士による当事者の弁護を許可したこと、(2)外国法事務弁護士として登録するために必要な職務経験年数を5年から3年に短縮したこと、そして(3)第3国で原資格国の法律業務に従事した期間を3年間の職務経験資格に充当できるようにしたこと、などが挙げられる。しかし日本は、日本において外国弁護士が遭遇する最も厳しい規制、すなわち日本人弁護士の雇用や日本人弁護士とのパートナーシップの形成の禁止事項については、廃止を固く拒否している。

 強化されたイニシアティブの下での1999年10月の日本に対する規制改革要望書の中で、米国は、日本における法律業務のインフラが、市場の自由化や規制緩和によって創り出される機会に対応しようとする国内外の個人や企業のニーズに応え得るものになることの必要性を強調した。米国は、もし日本が、自国において世界的に競争力のある法律業務の発展を引き続き阻害し続けるならば、金融サービス分野をはじめとする日本の再編のプロセスは著しく妨げられることを指摘した。日本、外国双方の個人と企業は、国内および国際取引に対して完全に統合された国際的法律業務サービスを受けることができなければならない。

 外国弁護士との完全なパートナーシップ形成は、他のほとんどの国で一般的な慣行であるが、日本人弁護士と外国弁護士の完全なパートナーシップ形成を許可する代わりに、日本は1995年に外国人弁護士法の改正を通じて、日本独自の制度となる日本人弁護士と外国法事務弁護士との「特定共同事業」制度を創設した。 1998年に、特定共同事業に許可される業務範囲が拡大されたものの、これまでに外国法律事務所が特定共同事業を形成した例は限られている。また共同事業を形成した外国法律事務所も困難に遭遇している。

 米国は、パートナーシップと雇用の解禁を最優先事項としており、日本は、依頼人のニーズに最もよく応える業務サービスの提供を可能にする最適な業務提携の形態を外国弁護士や日本人弁護士が自ら決定できるようにすべきであると主張する。米国はまた、共同事業制度はパートナーシップに代わる十分な役割を果たすものではなく、また制度特有の欠陥を是正するために調整ができるものでもないことを強調している。

 1999年12月、日本政府の規制改革委員会は、内閣の承認を受けた報告書で、「われわれは、外国法事務弁護士による日本人弁護士の雇用を(法律によって)禁止することに合理的な理由は何ら見出せない」と述べ、当面、日本は、「外国法事務弁護士と日本人弁護士による包括的・総合的な協力関係に基づく法律サービスが、あらゆる事案について提供できるよう」、特定共同事業の目的を規定した規制を見直すなどの措置を講じるべきであると提言した。この政策提言にもかかわらず、法務省は2000年1月に、「共同事業制度をさらに改善できるかどうかを検討する」と述べるにとどまった。

 同じく1999年に米国は、強化されたイニシアティブに基づき、日本が、日本弁護士連合会(日弁連)および地方弁護士会が外国弁護士に影響を及ぼすすべての規則・規制の新たな設定または改正について、外国弁護士が参加できる意味のある機会を確保するよう要求した。特に、米国は日本が以下の措置を講じることを提言した。(1)外国弁護士に関係する登録、懲戒、その他すべての規制や問題を検討する日弁連および地方弁護士会の委員会に対し、外国弁護士がこれまで以上に意見表明をし、効果的に参加できるよう日弁連および地方弁護士会に義務付けること、(2)日弁連および地方弁護士会に対し、規則や規制の採用あるいは実施に先立ちパブリック・コメント手続を使用することを義務付けること、(3)外国弁護士の登録に要する時間を短縮すること、そして(4)日弁連および地方弁護士会が、共同事業に対していかなる制限も課さないことを確保すること。

 また、1999年10月の要望書で、米国は、日本が外国弁護士が外国法事務弁護士として登録する際に必要とされる3年間の職務経験年数に、日本での経験年数を現行の1年間だけでなく、全期間を充当できるようにすることを要求した。日本での経験が他の国での経験に比べて価値が低いというこの慣行に合理的な根拠がないことを法務省は認めようとしない。

 また米国は、外国弁護士が、いわゆる「第3国」法(すなわち、外国弁護士の自国の司法権下にある法律以外の法律)に関する助言を提供することに対する制約を撤廃することを求めた。また、最高裁判所司法研修所に入所できる修習生の数を、できる限り早く、遅くとも2000年4月1日までに、年間1500人以上に増やすこと、そして司法研修所以外で法曹資格を取得できる代替案を検討するよう提言した。2000年初めの段階で、修習生の数は年間1000人に増員されており、法務省はさらなる増員を検討している。

 米国は引き続き、日本がパートナーシップおよび雇用を解禁し、外国弁護士に対する規制の透明性を向上させ、日本における法律業務に対するその他の不必要で不当な制約を廃止することを求める。

 

投資障壁

 日本は世界第2位の経済大国であるにもかかわらず、総生産に対する外国からの対内投資総額の割合が主要OECD諸国の中で最も低い状況が続いている。例えば、1998年度の対日直接投資(FDI)総額は105億ドルで、日本の国内総生産(GDP)の0.27%にすぎなかった。しかしながら、対日直接投資は元の水準が低いとはいえ急速に増加しており、1998年度には前年比で89.4%の増加となった。1999年度上半期には、日本の自動車および電気通信分野への多額の投資に後押しされ、対日直接投資は前年度同期に比べ166%増の113億3000万ドルとなった。日本の対外投資総額(フロー)は引き続き対日投資をはるかに上回っているが、対外投資と対日投資の差は縮小しつつある。その比率は1990年から1996年では平均で11対1であったが、1998年度には3.9対1に縮小している。大蔵省が発表した数字によると、1998年度の日本の対外直接投資フローは前年比で24.5%減少し407億4000万ドルとなった。日本における合併・買収(M&A)への外国企業の参加も、増加傾向にあるとはいえ他のOECD諸国に比べると少ない。1999年1月から9月までに826件のM&Aが記録されており、これは前年に比べ22.6%の増加である。

 日本は、対内投資が他の先進工業国に比べて大きく遅れていることを認識し、対日直接投資により魅力的な環境を作ることを目的とするいくつかの措置を講じた。1994年には、総理大臣を議長とする対日投資会議を設立した。同会議の任務は、日本の投資環境を改善するための措置を促進し、投資にかかわる省庁間の政策調整を行い、投資促進措置に関する情報を広めることである。同会議は、対日直接投資を奨励し政策提言を列記した政策声明を定期的に発表している。1999年4月、対日投資会議は、「対日投資促進のための7つの提言」に関する専門部会報告を発表した。この報告では、M&A促進のための規制撤廃や追加措置が提唱されている。

 対日直接投資に関する直接的な法的制約の大半は撤廃されたが、官僚の裁量の差別的行使が時折見られるなど、官僚的な障壁が残っている。現在、日本の外国為替法では大半の場合、投資計画について事後届出しか要求していないが、農業、鉱業、林業、漁業などの多くの分野で依然として省庁への事前届出を求めている。しかしながら、対日直接投資フローの低水準は、政府関連の障壁よりも排他的な商慣行と高い市場参入コストの影響を反映している。

 既存の日本企業の買収が難しいこと、また仮にそのような企業を買収したとしても他の日本企業と通常の取引形態を継続できるのかという懸念があることから、日本では合併・買収による投資アクセスが他国に比べて難しい。しかしながら、経済再編の圧力とM&Aの急増が系列関係をある程度弱体化させている。米国の投資家は、日本におけるM&Aの実現を阻む障壁として、財務の透明性と情報開示の欠如そして経営手法が異なることを挙げている。関連企業間の株式持ち合いが広く行われていること、また外国企業による従業員の雇用が難しいことも外国からの直接投資を阻んでいる。

 1995年7月、米国と日本は、「対内直接投資と需要・供給関係に関する政策と措置」と題する合意に調印した。この取り決めは、枠組み合意の投資に関する交渉過程で日本が講じてきた対日直接投資奨励策について述べるとともに、日本による以下の約束が盛り込まれている。

  • 外国企業に対し対日直接投資関連の金融・税制上の優遇措置についての情報を提供し、こうした措置の下での融資・適格基準を拡大する努力を推進する。
  • 1992年の対内投資法に基づく低金利融資や優遇税制措置を外国投資家に提供する。
  • M&Aに外国企業が参加するための環境を改善する措置を提案する。
  • 対日投資会議、市場開放問題苦情処理対策本部(OTO)、日本貿易振興会(JETRO)、および株式会社対日投資サポートサービス(FIND)の対日直接投資促進の役割を強化する。

 対内投資法の有効期限は1996年5月から2006年5月までに延長された。さらに通商産業省は、ハイテクプロジェクトへの外国投資家を対象とする日本開発銀行の融資金利を引き下げた。1996年4月には、外国企業が優遇税制措置を受けるための資格が、日本での事業開始後5年間から8年間に延長された。しかしながら全体的に見ると、日本の対日直接投資奨励策は大半が国内向けの投資促進制度に付け加えられたものであり、外国からの対日投資が引き続き低水準にあるいう事実を直ちに覆すのに十分なものではないようである。

 投資合意の調印後、投資作業部会の2国間協議は、日本市場の基本的な運用規則に必要な修正により広く焦点を当ててきた。これは、日本における外国投資(および国内投資)の全般的な環境を改善するのに役立つであろう政策修正を促すのが目的である。より具体的には、米国は日本に対して、直接投資環境の改善に重要な3つの側面を支持する措置を考慮するよう求めている。それらは、(1)日本における資本の生産性を向上させるために、より活発で効率的なM&A市場を発展させる。(2)土地市場の流動性と外国投資家の土地へのアクセスを改善する。(3)日本の労働市場の柔軟性を向上させる。

 1998年7月、投資作業部会は、1995年の投資合意のフォローアップ報告書を作成することに同意した。この報告書は、上記の3つの分野で必要とされる政策修正に焦点を当てている。そのプロセスの一環として、米国は1998年10月、政策修正が日本の投資環境の大きな改善につながる可能性の最も高いと思われる分野について具体的な提案を行った。

 合併・買収の分野での米国の提案は以下のものである。

  • 新たなリスクベンチャーへの投資をする親会社の税引き後コストを引き下げることにより投資を奨励するために、連結納税制度を認める。
  • 日本における広範な株式持ち合いを解消するための措置を取る。
  • 企業幹部が株主の利益より会社への忠誠を優先させることがM&A案の早期拒絶につながり得るが、これを減らすためにコーポレートガバナンスを改善する。
  • 株式交換を認めたり株式上場の要件を緩和するなどの金融市場の規制撤廃・緩和を継続する。
  • 他企業とのM&Aに関心のある企業を援助するため、財務情報の開示を改善する。
  • 会計や法務の専門家を管理する規制をさらに緩和するなど、M&A関連のサービスを入手しやすくする。
  • 企業やその資産の「救済的な」買収あるいは合併を容易にするため、より円滑で柔軟な倒産手続を導入する。

 土地や不動産取引に関する米国の提案は、土地市場の流動性の改善に焦点を当てており、以下の点を含む。

  • 租税負担を取得税から保有税へ一層転嫁するために、追加的な土地税免除措置を取る。
  • 都心部の土地開発に関する規制を緩和するとともに、農地の転用に対する制限を緩和する。
  • 新規の投資家が取得した不動産を柔軟に利用できるように、賃貸規則を改正する。
  • 不動産取引に関する情報の公開を制度化する。
  • 不動産投資信託(REITs)の創設を支援するために、特別目的会社法(SPC)やその他の関連規則を改正する。

 最後に米国は、日本における労働力の流動性向上の必要を強調し、以下の点を提案した。

  • 年金のポータビリティを向上させる有用な方法として、確定拠出型年金制度を導入する。
  • 外国投資家が必要とする現地の人材を獲得するのを支援するために、有料の職業斡旋所に対する規制を撤廃する。
  • 新規投資家が労働力を入手しコストを削減できるように、また失業者の就職を支援できるように、人材派遣業を自由化する。
  • 労働規則に関する過剰に厳しい規制を緩和するとともに、不必要に企業経営のコストを引き上げ効率を低下させているその他の官僚的な手続きを緩和する。

 1999年5月の日米首脳会談で、投資作業部会は、「対日直接投資に関する日米共同報告書」を大統領と総理大臣に提出した。この報告書は、主要な課題と日本政府による投資環境改善の進展について見直したものである。同報告書はまた、両国政府が今後も投資問題について情報を交換し協議を続けることを確約している。

 報告書が提出されてから数カ月の間に、日本はM&Aの分野で外国人投資家に機会を与えるであろう法律を新たに制定し、また改正した。その中には、再編中の既存企業(国内および合弁)に対して、事業再編計画が政府によって承認された時点で税制や信用上の救済を与える産業再生法が含まれる。新倒産法(民事再生法)も、強制的な資産の清算よりもスピンオフ等の事業の再編を奨励するという点で、投資の機会を提供する可能性がある。またその他の法改正は、M&Aの主な手段である株式交換のほか、優秀な社員の獲得を望む外国企業にとって重要な課題である社員のストックオプションを規定している。さらに日本政府は、企業の効率化努力を支援する事業分割に関する法案を準備している。米国企業はこうした変化を賞賛する一方で、これらの措置の利用を支援する日本の税制改正を引き続き求めている。

 1999年10月、投資作業部会は、対日投資フローの改善について残る課題を見直し、日本が果たした進展を評価するための会合を開いた。この協議を基盤に米国と日本は、2000年3月1日に対日直接投資およびM&Aに関する合同会議を開催し、民間部門と日本の関係省庁から積極的な参加があった。会議には、日米の実業界を代表するおよそ560名が出席し、日本が国内外からの投資を促進する手段としてコーポレートガバナンスと規制の透明性を向上させ、会計および情報開示の基準を改善し、不動産と労働力の流動性を向上させることが必要であるとの一致した意見を述べ、また詳細な提案を行った。さらに両国の実業界は、スピンオフや新たな買収を支援する連結納税制度の早期導入を求めた。

 

反競争的慣行

 反競争的慣行は、日米貿易関係の各分野に及ぶ課題である。反競争的慣行および独占禁止法の運用については、本項で取り上げるほか、本報告の強化されたイニシアティブおよび板ガラスをはじめとするいくつかの項でも触れている。

排他的な商慣行

 日本の市場に参入または参加しようとする米国企業は、市場アクセスの機会を妨げる数多くの排他的商慣行に直面する。その例としては、次のようなものがある。

  • 入札談合、価格統制、排他的な取引など、民間の反競争的慣行。これらは独禁法に違反するが、処罰されない場合が多い。
  • 企業の提携および排他的な購入者・供給者間ネットワーク。これは、同一企業グループ(系列)に属する企業から成る場合が多い。
  • 外国からの直接投資や外国企業による日本企業の買収を妨げる企業慣行(例えば、不透明な経理・財務内容の開示、系列会社間に広く見られる株式持ち合い、多くの企業に見られるような実際に市場で取引される普通株の対総資本比率の低さ、そして社外取締役の登用が一般的ではないことなど)。
  • 事業者組合やその他の業界団体が導入・運用する業界独自の規則。組織加盟企業間の「秩序ある競争」を保つために、価格、手数料、リベート、広告、表示等を制限あるいは規制するもので、非加盟企業にも適用されることが多い。

 排他的な商慣行は、日本経済に大きな損害を与えている。例えば、東京における多くの製品・サービスの価格は、他の国際都市に比べてかなり高く、2倍以上になる例も多い。排他的な商慣行は、市場メカニズムを制限することによって、企業や消費者の選択肢を狭め、製品・サービスの価格を上昇させる。加えて、こうした慣行は、斬新な製品・サービスで日本市場に参入しようとする競争業者の意欲に水を差し、新たな国内産業や技術の発展を阻害する。こうした慣行は、潜在的な外国投資家の意欲をそぎ、外国投資家の市場進出とその革新的技術がもたらすはずの経済への刺激効果を減少させるとともに、外国企業による輸出・販売の重要なルートの開拓を難しくしている。

公取委の独禁法執行実績

 反競争的な商慣行が広く見られる主な理由の1つは、これまでの公取委による独禁法執行の実績が乏しいことにある。公取委は、政治的影響力に欠け、執行権限を積極的に行使する力のないことを、国内で常に批判されてきた。日米構造協議、日米枠組み合意、強化されたイニシアティブ、そして2国間の独占禁止に関する年次協議に基づく米国の継続的な努力により、近年改善が見られ、これらが一体となって公取委機能の段階的強化に対する日本国内の支持増大に貢献している。それでもなお、公取委の執行努力は、日本市場を米国その他の外国企業からの競争に開放することを確保するために必要なレベルには達していない。

 近年、独禁法違反に対する措置および課徴金の徴収という面では、公取委の実績は向上しているが、公取委は効果的な執行制度の確立において深刻な制約に直面している。例えば、1998年に公取委は27件について法的措置を取り、行政課徴金は計31億4000万円となった。しかし、これは絶対額としては依然として少なく、また日本は最近、今後独禁法に違反した場合に課徴金を減額される中小企業の数を増やす法律を制定した。さらに、公取委は、進んで違法行為を報告した企業に対して課徴金を減額あるいは免除する柔軟性を持たない。米国は、公取委が、米国司法省の企業赦免制度のような制度の採用を検討することを提案している。米司法省の制度は、カルテルの摘発・訴追に大きな効果を発揮している。

 また、世界的に見て、刑事罰則より行政措置に大きく依存する競争政策当局は日本の公取委だけではないが、公取委が独禁法の刑事罰条項をまれにしか適用しないために、カルテル行為に対する抑止力が弱くなっている。さらに、企業役員が独禁法違反で懲役刑を受けた例は1件もない。それでも、公取委は1999年には独禁法違反の刑事訴追を2件行っており、これは過去最高の年間訴追件数である。

 刑事違反の訴追件数が限られている理由は少なくとも2つある。まず第1に、公取委は、強制捜索・押収あるいは尋問を行う権限等、日本の他の刑事捜査当局に与えられているような捜査権限を持たない。このような弱点により、公取委は法務省への刑事事件提出を裏付けるに十分な証拠を集めることが難しい。第2に、法務省が公取委から刑事事件付託を受理した後に、訴追に必要な証拠が不足していると判断した場合には、訴追中止の決定を総理府に報告しなければならない。この特別な手続要件があるために、法務省の検察官は、総理府に訴追中止の報告をしなければならない事態が決して生じないようにするために、刑事告発を裏付ける極めて強力な証拠の提供を公取委に求めることになる。このような組織的な弱点のため、日本においては、例えばカルテル行為等の活動により企業役員や企業を刑事訴追することは、一般的ではなく、例外的なことである。

 強化されたイニシアティブの下で提起された、公取委の人員配置および今後の再編成に関する問題に加えて、公取委の組織としての独立性に関する問題も提起されている。しかしながら、最近の公取委委員の陣容の変化は、この懸念に対処する取り組みが行われていることを示唆している。公取委の現在の委員長は、元検察官で、元法務省高官であることから、国民は公取委のより積極的な執行の役割を期待している。1999年には、キャリアの大半を通商産業省官僚として過ごした委員が退任した後、後任として、大手エレクトロニクス企業の元幹部役員である大学教授が選ばれた。

競争を阻害する法

 公取委は、競争を歪め往々にして反競争的効果を持つ数々の法律・規制を運用したり、その運用を助けている。

不当景品類および不当表示防止法

 公取委は、景品その他の販売促進手法の使用に過剰に制約的な制限を課しており、そのため、そのような販売促進に使われる合法的な懸賞や賞品提供までも制約されている。社名や製品名を浸透させるために革新的なマーケティング手法に頼らざるを得ない新規の外国企業には、公取委の景品に対する規制が大きな制限になる。さらに、この法律は、紛らわしい、あるいは詐欺的な広告や表示の抑止を目指しており、それ自体は有意義な方針であるが、公取委は、「公正取引協議会」(本質的に民間の事業者団体)に「公正競争規約」を作らせ、これを通じて自らの販売促進、広告、表示の基準を設定することを許している。事業者団体は、こうした規則の名の下に、景品表示法に基づく公取委の規制より厳しい基準を付け加えることができ、実際にそうする場合が多い。米国は引き続き、日本が、公正取引協議会を独禁法の適用外とする景品表示法第10条第5項の必要性を見直し、この項の廃止を目指すことを要求する。

 2000年1月現在、公取委が承認した民間景品表示規約が48ある。1996年4月、公取委は景品その他の販売促進に関する規則を漸次自由化した。例えば、「オープン」懸賞(購入の必要のないもの)賞金最高額の1000万円への引き上げ、デパートによる景品提供に対する制限の廃止、消費者向け景品の上限額(5万円)の廃止(ただし、取引額に対する割合に基づく金額制限は維持)などの措置が挙げられる。さらに、過去2年間で、公取委は個別業種ごとの景品制限29項目のうち24項目を廃止した。引き続き、より厳しい規則が適用される5業種は、不動産、家電製品、新聞、雑誌、病院経営である。しかし、公取委によるこうした改善も、米国が枠組み合意の下での協議や、強化されたイニシアティブの下で要請した、競争を促進する大胆な自由化措置には及ばない。

再販価格の維持

 1997年4月、日本は独禁法の製品適用除外をすべて廃止したが、著作物(書籍、雑誌、新聞、CD)のみが特別な例外となっている。独禁法の下で、小売価格の維持が他の慣行と異なる扱いをされるべき理由はない。公取委は、著作物に対する小売価格維持のための適用除外の制限または廃止を検討してきた。1998年1月13日、公取委の研究会はこの制度の段階的廃止を提言し、1998年3月31日、公取委は以下のような決定を発表した。

  • 競争政策の視点からは、再販価格維持のための適用除外を廃止すべきである。しかし、この問題については、文化的な効果や影響を慎重に考慮しながら、さらに検討すべきである。
  • 最終決定が下されるまで、適用除外の適用を書籍、雑誌、新聞、音楽用CD、カセットテープ、レコード盤に限定する。
  • 従って、関係業界は、この制度の弊害を是正するために真剣に取り組むべきである。

 

政府と産業の関係

 日本の規制当局者は、自らの役割について、単に法の支配に基づく中立な審判者にとどまらず、それぞれの担当業界の指導に積極的に関わることであると考えている。日本の政府と産業の緊密な関係は、国内企業に有利であるため、日本市場に参入しようとする外国企業にとっては不利に働くことが多い。この関係について、特に懸念される点を以下に述べる。

民間規制

 日本が規制の撤廃および緩和を進めるに際して、業界団体その他の民間組織に、政府の規制に代わって民間の規制(いわゆる「民民規制」)の導入を許可しないようにすることが肝要であることを、米国は強調してきた。市場参入および事業の運営、認可、基準、資格、検査、審査、認定制度に関する規則を含む民間の規制は、事業活動に悪影響を及ぼす可能性がある。強化されたイニシアティブの下で米国が特に挙げた懸念の1つは、日本政府が、業界基準の作成、製品認定、参入許可などの政府または公共の政策機能を、公式または非公式に業界団体その他の事業関連組織に委譲していることである。残念ながら、一般にこうした組織には、開かれた、透明で非差別的な審議を行う義務や、外国企業を協議に参加させる義務はない。米国は、日本に対して、このような政府または公共の政策機能の権限委譲をやめることを要請した。こうした権限委譲の必要性が示された場合には、米国は、業界団体が、開放された透明かつ非差別的な方法でこれを行うこと、また団体に加盟していない企業の事業活動を制限しないことを確保しようとしている。

非公式な業界管理

 日本の産業は米国に比べて強く規制されている。その規制の多くは、省庁と当該の業界、業界団体、またはその他の事業関連組織との間の協力的な協議、企業に対する「行政指導」、そして退官後の官僚を企業や業界団体に送り込む「天下り」(文字通り天から下るという意味の)という慣行など、さまざまな手段を通じて、秘密裏に、非公式に実施されている。

 

電子商取引

 日本は、世界第2の経済大国として、また米国に次いで世界第2位のエレクトロニクス産業を持つ国として、電子商取引の重要な市場であるとともに、グローバルな電子商取引とインターネットの規制枠組みに関する国際的議論の場においても中心的な役割を果たしている。米国は、日本がこれまでの政策声明および規制行動において、インターネットおよび電子商取引のための開かれた民間主導型の、最小限に規制された環境を支持していることを歓迎する。それでも、日本では、インターネットおよび電子商取引共に発展が他の先進諸国に比べて遅れており、1999年現在、インターネットに接続している日本の家庭は全体の約11%(これに対して米国ではほぼ37%)にすぎない。日本におけるインターネット・ユーザーは増加しているが、米国は引き続き日本と協力し、特に日本におけるインターネット・アクセスの高料金の問題に取り組むことによって、この重要な分野の活発な成長を確保していく。OECDの推定によると、日本におけるインターネット・アクセス料金は、米国、ニュージーランド、カナダの2倍、韓国の4倍に相当する。これは、日本の電気通信分野の市場アクセス障壁によるものであり(本章の「分野別規制撤廃」の項を参照)、米国と日本は現在、強化されたイニシアティブの下で、この課題に取り組んでいる。

 1997年7月、クリントン大統領が「グローバルな電子商取引に関する枠組み」に関する政策文書を発表したのに続き、米国は、同文書中の各種商取引問題に関する日本との協議を開始した。1998 年5月のバーミンガム・サミットで、クリントン大統領と当時の橋本総理大臣は、「電子商取引に関する日米共同声明」を発表した。共同声明の中で日米両国は、(1)民間部門が電子商取引の開発をリードするべきであること、(2)政府は産業界の自主規制を奨励すべきであること、(3)政府規制が必要な場合には、最小限の、透明かつ予測可能な規制にするべきであること、そして(4)電子商取引規制の枠組みは、国ごとでなくグローバルな基準で作成されるべきであること、について合意した。

 共同声明は、次のような具体的な政策課題にも言及している。(1)プライバシーおよび消費者の秘密データの保護は、産業界の自主規制によって保護されるべきであり、その際、ガイドライン、実行メカニズム、および救済措置の起案は業界の義務とする。(2)電子通信には関税を適用すべきではなく、米国と日本は、電子送信について免税環境を維持するため、WTOにおけるグローバルな理解に向けて努力する。(3)コンテンツは利用者の要請に応えて、国境を越えて自由に伝達されるべきである。(4)インターネット上の契約実行には、電子認証・電子署名が必要となる。(5)米国と日本は、民間主導による各種の実施手段および技術の開発を支持する。(6)電子商取引の税制上の取り扱いは、OECDで継続中の協議の場で議論されるべきである。

 これらの理念は、1998年6月、総理大臣の諮問委員会である高度情報通信社会推進本部が発表した政策文書でも繰り返された。日本は、こうした一般理念を支持する一方で、電子認証を従来の手書きの署名や個人捺印と法的に同等に扱う新たな法案を2000年春に提出する計画など、具体的な政策分野の作業も進めている。1999年11月、通商産業省、郵政省、法務省が共同で電子認証に関する政策草案を発表し、コメントを求めた。同月、警察庁も独自に政策草案を公表した。米国の業界代表者のコメントは、日本が選択する政策には政府公認の認定要件を入れないこと、また日本が引き続き他国の政府と協力して法的枠組みの一致に向けて努力することを要求している。警察庁の草案について、産業側は、過剰に制約的であり、非生産的であるとの懸念を表明した。米国は、この法案の進展を注意深く監視していく。

 米国は引き続き日本と協力し、これらおよびその他の電子商取引に関する問題に取り組んでいく(例えば、インターネット上の知的所有権保護、消費者保護、電子決済システムなど)。また米国は、今後も日本における電子商取引とインターネットの発展を監視し、日本政府出資による電子商取引の試験台プロジェクトが米国企業の参加に対して完全に開放されていること、また電子商取引およびインターネット関連の規格と技術が引き続き開放性と国際的な互換性を保つことを確認していく。米国はまた、可能な限り最も自由な体制が促進されることを確保するために、郵政省などの規制当局の活動も監視する(例えば、新しい規格や技術に関するライセンスの要件や制限)。

 

その他の障壁

航空宇宙

 日本は米国の航空機と航空宇宙製品の最大の外国市場であり、多数の日本企業が米国航空宇宙関連企業と長期の生産的な関係を結んでいる。いずれにせよ、米国は、日米の航空宇宙関連貿易のいくつかの側面を、引き続き注意深く監視している。

 その中の1つとして、日本の防衛庁には、外国技術を日本国内生産に向けてライセンス化しようとする傾向があり、その結果、米国の国防関連航空宇宙分野の輸出は、市場原理に沿った環境における輸出より少なくなっている。商業航空宇宙産業に関しては、通商産業省が、国内航空宇宙産業を支援する上で積極的な役割を果たし、新規事業や技術の実現可能性調査のための資金提供をしているほか、日本の主要航空宇宙企業間の仕事の割り当てに重要な役割を果たしているが、米国は通商産業省のこうした役割を監視している。また米国は、防衛庁が防衛関連航空宇宙事業の開発に果たしている役割も慎重に監視している。こうした事業により、相当量の米国の航空宇宙技術が日本に移転され、日本は外国の航空機組立企業に対する、部品および構成部品の主要な供給国になっている。

 宇宙システムに関しては、米国は、実績のある米国の技術や製品の調達を制限する可能性のある、日本の国産プログラムの開発努力を監視している。米国は引き続き、日本が国産宇宙技術開発偏重の傾向にある分野へのアクセス拡大も要求していく。その中には、宇宙記録機器と科学器具、地球資源センサーと天体調査用衛星、ソフトウエアおよび地上データ処理・保管・流通システムなどがある。

 米国政府は、日本の航空宇宙関連市場が開放性を維持し、日本政府の措置が米国の航空宇宙企業を差別しないよう、引き続き動向を監視していく。

 

自動車・自動車部品

 1995年の日米自動車合意は、市場アクセス障壁を撤廃し、この分野での販売機会を大きく拡大することを目指すものであった。この合意の下で、日本は外国自動車メーカーによる市場アクセスの改善、日米両国における米国のOEM部品メーカーの販売機会拡大、そして米国その他、外国の競争力のある自動車部品メーカーによる日本の補修部品市場へのアクセスを制限する規制の撤廃を約束した。合意には17の客観基準が盛り込まれており、日米両国はこれらの基準に基づいて進捗状況を点検してきている。合意調印と同時に、日本の大手自動車メーカー5社は、外国製自動車部品の国内での購入を増やし、米国における自動車および主要部品の生産を拡大する計画を発表した。

 米国政府は、自動車産業の米国経済における重要性を考慮し、自動車合意の迅速な実施を優先事項としている。この合意の実施を監視し、合意の進捗状況を点検するために、米国通商代表部と商務省が率いる省庁横断の執行チームが設置された。このチームは、合意調印以降の進捗状況を評価した報告書を半年に一度作成してきている。報告書の第6版(最新版)が、1999年6月に発行された。

 一部の分野では満足できる結果も見られるが、米国政府は、この合意の主要目標の達成に向けた進展が見られないことを引き続き懸念している。1999年10月にブリティッシュコロンビア州のバンクーバーで行われた自動車合意第4回年次見直し会合において、米国は具体的な懸念事項を日本側に伝えた。EU、カナダ、オーストラリアの代表からも同様の懸念が示された。米国は、日本に、具体的な追加措置を取り、日本の自動車市場におけるアクセスと販売機会の継続的な改善を確保するよう求めるとともに、内需主導の成長促進のため、早急に実質的な規制撤廃と市場開放措置を取ることを求めた。米国は1999年11月に行われた非公式の会合で、これらの要求を再度行った。

 

自動車

 ダイムラー・クライスラー、フォード、およびゼネラル・モーターズの3社が製造した自動車の日本での売り上げは1999年も減少を続け、3社の売上合計は1998年に比べ19.7%の減少となった。これは、1997年に前年比20%減、1998年には34.5%減 という、2年連続の前年比売上減に続く減少である。1999年のダイムラー・クライスラー、フォード、およびゼネラル・モーターズの3社による輸出の減少は、同年の日本の自動車市場の収縮率0.31%を大幅に上回っている。自動車産業の構造改革の結果、米国企業は日本における販売・流通戦略を変更した。しかし、米国の自動車メーカーがディーラー網の強化に努める中で、日本の自動車流通網への外国企業のアクセスは、依然として懸念事項となっている。

自動車部品

 米国製自動車部品の対日輸出は、1998年 に7.5%減少した後、1999年には11.5%の減少となった。これに対して、1993年から1997年までは、米国製自動車部品の輸出は平均年率20%の伸びを示した。日本向け売り上げは引き続き低い水準にあり、OEM部品の最近の受注減により、さらに売り上げが減少するのではないかとの懸念が強まっている。また、米国製補修部品の売り上げは、伸び率は高いものの、実際の売上高は、米国内の日系自動車メーカーに対しても、日本国内の日本の自動車メーカーに対しても、引き続き低水準である。

 2国間における自動車貿易のこうした傾向により、合意の下での進展について深刻な懸念が生じている。こうした懸念に対処するため、米国は日本に対し、この分野における追加的な市場開放および規制撤廃の措置を取るよう強く求めた。1999年10月の自動車合意の年次見直しの場で、米国と日本は、前回の協議で出された提案について協議するとともに、規制撤廃、競争促進、および基準に関する課題で前進を遂げるための新たな提案についても話し合った。自動車流通制度の主要販路であるディーラーシップを強化するため、米国は、日本が新車登録を簡素化することを提案した。また日本は、通商産業省、日本輸出入銀行、および日本開発銀行が提供している輸入促進策や融資制度を改正して、外国企業にとってより有用なものとするため、米国政府および産業界と緊密な協議を行っている。基準に関しては、米国は、米国の検査機関に日本の要件の検査での立ち会いを許可すること、デトロイトにいる運輸省関係者の役割を拡大すること、そして日本が完成検査の必要性を見直すことを提案した。

 加えて米国は、(1)車検・整備制度における不必要な要件を撤廃することによって、より多くの整備工場(特に外国製自動車部品を使用する傾向がより強い独立整備工場)が車検検査や整備を行えるようにすること、(2)分解整備に関する規制(重要保安部品リスト)から、さらに多くの部品を除外すること、(3)専門認証工場で働く整備士に、その工場で行われる整備に適合する免許を付与し(整備士認証の専門知識と技術の向上を可能にするため)、独立した補修市場の発展を助長するために合意の下で設立された専門認証工場の発展を促進すること、そして(4)日本の事業者団体やその他の利権団体が、規制撤廃の意図する効果を損なうことを防ぐため、規則の作成と実施に関する政策を見直すことを提案した。また、米国は日本に対して、外国製自動車部品の輸入促進を目指すジェトロのプログラムを引き続き支持すること、そして運輸省が自動車部品のリコール制度の設置案を再燃させないことを求めた。

 1999年2月に開催された非公式協議で、日本は、 本年中に新車登録制度を簡素化する措置を取り、その一環として、2000年までに、すべての新車登録手続のための「ワン・ストップ・ショップ」を設立する予定であることを米国に伝えた。また日本は、米国およびその他の外国自動車メーカーと個別に協議し、すでに設置した輸入促進制度をいかにして各社にとって有益な形で応用するかについて話し合うことに同意した。自動車部品については、日本は、車検制度の規制撤廃の可能性について協議することに同意し、また認証整備士制度をさらに自由化するために、特別認証整備士の分類を新たに加える意図があることを米国に伝えた。これは米国の要請に応じた動きである。

 一方、日本の自動車メーカーは、自動車合意調印時に発表された自主グローバル事業計画の実施で、かなりの進展を示してきた。米国において、日系メーカーは乗用車、小型トラック、またエンジン、トランスミッションを含む各種構成部品の生産を大きく増やした。こうした増産は、米国の部品会社に新たな販売機会をもたらし、米国の労働者の雇用機会を増大してきた。さらに、日本の自動車メーカーは、1999年には米国市場への投資を再び確約した。

 米国は引き続き、日本による自動車合意の実施を注意深く監視し、日本に対して、あらゆるレベルで、 合意の下でのさらなる進展を果たすための具体的な措置を取るよう強く働きかけていく。また米国政府は、2000年12月に現行の自動車合意が失効した時点でどのような後続の合意を求めるかについての見解をまとめるために、米国の産業、労働団体、その他利害関係者との協議を始めている。

 米国は、日本の新たな燃費規制の作成における環境目標に同意することを言及する一方で、そうした規制の適用や執行が透明で非差別的であることを確保する方法について協議を行っている。米国と日本は、近い将来これらの課題について合意に達することを求めている。

民間航空

 1998年3月14日、スレーター運輸長官と当時の藤井運輸大臣は、日米間の民間航空サービスの大幅な拡大を約束し、さらなる自由化の足掛りとなる合意覚書に調印した。この合意は、いわゆる「先発」航空会社(米国側では、ユナイテッド航空、ノースウエスト航空、フェデラル・エクスプレス)で、米国内のゲートウエー地点から日本各地へ、そして日本以遠の第3国へ運航する航空会社の日米間の運航に対する規制をすべて撤廃し、便数の制限をなくした。また、米国は新規に2社の旅客航空会社を追加指定することができるようになり、1社(トランスワールド航空)は直ちに、もう1社は2000年以内に参入可能となる。

 さらに、現在日本路線を持つ「後発」貨客航空会社(旅客と貨物の両方を扱う航空会社)であるアメリカン航空、デルタ航空、コンチネンタル航空、および新規2社は、合計往復フライト数を現在の週46便から90便まで増やすことができ、巨大な航空市場である日本への便数がこれまでの3倍近くに増える。後発の貨物専用航空会社であるユナイテッド・パーセル・サービスとポーラー・エア・カーゴの両社は、日本以遠の目的地に貨物運送が新たにできる貴重な機会が得られる。さらに、もう1社の貨物専用航空会社も2002年には参入が可能となる。

 この合意覚書により、初めて、日米間および日本以遠の路線において、米国の航空会社間、日米の航空会社間、そして米国と第三国の航空会社間の広範なコード・シェアリング(共同運航)が認められた。チャーター便に関しては、合意覚書により、2000年1月1日から、両国にとって年間600便の利用が可能になった。2002年には、これが年間800便に増えることになっている。この合意覚書における流通や運賃に関する規定も競争を推進するものであり、日本は、米国の航空会社が航空券の卸売業者や旅行代理店と契約し、直接、消費者にサービスを提供する事業を設立する、公正かつ平等な機会を保証した。

 合意覚書によると、「オープンスカイ」を目標とする新たな一連の協議が2001年1月1日までに開始される予定である。これらの協議を通して完全自由化の合意が成立しなければ、2002年1月1日に、追加的な恩恵が自動的に効力を発する。現政権は、その国際的な民間航空政策である「オープンスカイ」政策に沿って、さらなる自由化を目指すことを確約する。その目的は、民間航空への政府介入を最小限にとどめ、内外の旅客・貨物輸送航空会社が、相互の市場で競争するための十分かつ平等な機会を提供することである。  

 米国の業界の推定では、この合意の結果、米国の旅客は、より競争的な市場における追加的なサービスという点で、4年間で12億ドルの利益を得るはずである。米国航空会社は、市場シェアの増大が予想されることもあり、4年間で40億ドル強の収入増が見込まれる。また米国の業界の試算では、今後4年間で米国の航空サービス輸出が40億ドル近く増加する。

 1999年の合意覚書の実施は、順調に進んだ。日本およびアジアの大半の国における景気後退により、日本で操業する米国の航空会社は影響を受けたが、離着陸の回数とスロットに対する需要は依然として高い。概して好ましい2国間関係において、成田空港における離着陸スロットの不足と不適切な施設(下記参照)が、1つの傷になっている。一部の米国の航空会社からは、東京の空港へのアクセスがないために、1998年の合意覚書によって与えられた権利を十分に行使することができないとの苦情が聞かれた。日米の航空会社間の協力体制も拡大されている。その代表例として、全日空がユナイテッド航空のスター・アライアンスに加わったことが挙げられる。

成田空港問題

 成田空港におけるスロットの不足と不適切な施設をめぐる問題は、1999年にさらに深刻化した。8月には、成田空港関係者が年初の非公式合意を取り下げたため、ある米国航空会社と空港当局の間で長い間続けてきた施設の改修工事に関する話し合いが決裂した。成田空港関係者のこうした動きにより、1994年に合意された非公式な「基本計画」の下で詳細に規定された、米国航空会社の大半が使用している成田空港の古い(第一旅客)ターミナルビルの総合的な改修工事の完了が、さらに遅れることとなった。この米国航空会社と米国政府は、論争を解決し、すでに合意されていたレベルまで、設計と工事を加速するよう尽力してきた。しかし、空港施設の改善は関係者全員に利益をもたらすにもかかわらず、空港当局の態度は消極的である。一部の米国航空会社は、成田空港のスロットおよび施設はいずれも米国およびアジアの主要空港と比較して不足しており、成田空港のスロットが追加され施設が拡張されない限り、現行の自由化協定や、将来的な2国間の「オープンスカイ」協定の利益を十分に享受することができないとの懸念を表明している。

ダイレクト・マーケティング

 近年、日本では、家庭用品、パーソナルケア用品、健康食品のダイレクト・マーケティングが、地元の小売店より割安な価格での販売方式として普及度を増しており、米国の輸出品を日本各地に流通する効果的な制度であることが証明されている。また、日本でのディストリビューターは、主婦や高齢者などパートタイマーが多く、ダイレクト・マーケティングはそうした人々の家庭の収入を補う手段ともなっている。通商産業省は、詐欺的あるいは不当な商法を禁止する消費者保護法の執行を通じてダイレクト・マーケティングを規制している。

 220億ドルに上る日本のカタログ販売市場は、2年連続で減少した後、1998年度はわずかながら約1%の増加を記録した。ダイレクト・マーケティングの売り上げのうち、インターネットによる消費者への直接販売(B2C)は、総売上高はまだ少ないものの(1998年度で6億5000万ドル)、急速に拡大している。最も成功しているB2Cモールの「楽天」は、(1999年12月現在)1500のテナントショップを持ち、全テナントを合わせた月間の売上高は、700万ドルに上る。業界の楽観的な予想では、B2C市場は、2003年には320億ドルに達するとされている。

 インターネットは、ダイレクト・マーケティング事業の性質を変えつつある。日本のB2CおよびB2Bのカタログ販売は米国のそれに比べてはるかに遅れているが、その一因は、日本では従来、顧客企業が、取引企業の営業員の、より個人的な配慮を求めてきたことである。しかし、日本の顧客企業が、価格に対してより敏感になり、新たな供給会社に転換する意志を持つに従い、オンライン・サービスの向上と電気通信コストの削減も要因となって、インターネット上で商品を購入する傾向が高まると予測される。

電力会社

 日本の電力料金は、先進国の中で最も高い。米国は、日本の電力産業のコスト削減に最も効果がある方法の1つは、燃料以外の調達に本格的な競争を導入することであると考える。現在、燃料以外の調達額は、年間約200億ドルである。

 総じて、電力会社の多くは、輸入を増やして、コストを削減する努力をしてきた。特に、潜在的な供給会社として登録されている企業の数を増やし、インターネット上で日英2カ国語でアクセスできる調達関連情報のレベルを向上させている。電力会社と米国の非燃料資材および機器の供給会社との交流を促進する団体である、ニューオーリンズ協会(NOA)に積極的に参加している電力会社もある。しかし、企業および部門によって努力の程度に差が見られる。外国からの調達の手続きを著しく改善した企業がある一方で、遅れている企業もある。1996年に開始された電力卸売の自由化(小売市場は、2000年3月に一部自由化される)を含め、電力産業に競争が導入されたことにより、火力発電部門は、外国からの資材および機器の調達に、より前向きになっている。しかし送電・変電部門は、新技術の導入に関してより慎重であり、従来の国内の供給会社から引き続き調達する傾向がある。これらの部門は、自然独占構造によって引き続き保護されているため、調達慣行の改善にあまり関心がない。

 日本の電力会社は、電気通信関連製品の外国からの調達拡大に多大の努力を払ってきた。日本のすべての電力会社とその電気通信関連子会社は、1994年以来、在日米国大使館が企画・主催する「温泉コミュニケーション」購買セミナーに積極的に参加している。これらの非公式の会合は、電力会社と、米国の電気通信機器供給会社との交流を促進するものである。このプログラムの成果として、米国企業は、合計数億ドルに上る、数十件の調達契約を獲得している。

 外国企業がいまだに直面する障壁には、日本の電力会社が適用する基準や仕様があり、これらは外国企業に対して差別的なもの、またはその他不当に多大な負担を強いるものが多い。この点に関して問題が残っているのは、性能ベースの技術基準ではなく、狭義の仕様ベースの技術基準を採用していることと、供給会社が外注の予備部品についての詳細情報の提供を義務付けられていることである。日本政府は1997年3月以来、性能ベースの基準に向けて動いているが、1つには電力会社の調達マニュアルを新たな性能ベースの基準に合わせて改定する必要があるため、電力会社の調達方法には変化がない。

 米国はまた、調達過程における透明性と公平性の拡大を求めている。特定の電力会社への指定供給会社リストに加わるには、通常、コストと時間のかかる手続きが必要であり、例えば、専有的な製造過程に関する詳細な情報の提出を求められる。調達情報への平等なアクセスについても問題があり、外国企業は往々にして調達契約が決定するまで調達について知らされないことが多い。外国からの調達を拡大してコストを削減するためには、電力会社は、仕様を英語で用意し、入札書類、図面および説明書類、さらに契約書をすべて英語で受理することが重要である。

 地域電力10社は、年間約400億ドルを投資しており、その約5割は建設工事費に充てられ、残りは非燃料資材および機器の調達に充てられる。電力会社の建設工事調達の手続きは、透明性が不足しており、また外国企業にアクセスが開放されていない。さらに、日本の業界関係者は、電力会社が発電所建設に投資する資金の一部は、業界への政治的支持を得るために使われていることを認めている。

 電力会社は、電力売上のうち相当額を、研究開発費に充てている。そして研究開発費の一部は、選ばれた大学教授の研究費や海外旅費に充てられている。大学教授の中には、将来の電力供給システムの運営について協議する、通商産業省の諮問委員会に招待されて参加する者もいる。こうした協議の公正・中立を保つためには、電力会社から資金援助を受けた者は参加させるべきではない。

 ミクロ・ガスタービンをはじめとする米国の新技術が、日本にも導入されつつある。新技術の健全な開発を促進するために、日本は、これらの製品の輸入障壁となりうるものを慎重に検分し、排除すべきである。

板ガラス

 板ガラスは、日本が市場開放に抵抗している分野の典型的な例である。他の諸国での豊富な経験と成功例を持つ米国の板ガラスメーカーが、日本においても長年にわたり積極的な努力をしているにもかかわらず、日本の寡占的な板ガラス市場の障壁を乗り越えられずにいる。

 日本の板ガラス産業は、日本の景気後退によって大きな打撃を受けている。過去30年間、日本の板ガラス市場には変動があったが、国内メーカー3社の市場シェアは事実上変わっていない。この3社は、株式の過半数所有、持分権および金融面でのつながり、社員の派遣、そして購入割当等、さまざまな方法で流通経路を強力に支配している。同時に、各社とも価格、生産能力、製品構成の変更について事実上足並みをそろえて行うことによって、一定の市場シェアをほとんど変わることなく維持している。1999年半ばまでのシェアは、旭硝子が40%以上、日本板硝子が約30%、セントラル硝子が約20%である。米国メーカーの製品を含む輸入品が残りを占める。

 1995年1月、米国と日本は、日本の板ガラス市場を外国企業に開放するための合意である「日本国政府及びアメリカ合衆国政府による板ガラスに関する措置」に調印した。この合意に沿って、日本のガラス流通業者は、競争力のある外国ガラスメーカーを参入させるため、供給源を多様化し、資本関係に基づいて供給業者間の差別をしないことを公式に表明した。日本のガラスメーカーも、事実上排他的な流通網の多様化を支持することを表明した。また、この合意により日本政府は、公共工事プロジェクトにおける非差別的な板ガラスの調達を奨励すること、そして米国が優れた製品を持つ複層・安全ガラスの利用を促進することを約束した。合意の下で、流通システムの開放度を評価する年次調査が行われた。

 この合意は、いくつかの重要な成果を上げている。例えば、合意の結果として、日本は1999年3月30日に、住宅および商業用建築物の省エネ基準を採用した。この基準により、新築住宅に設置されるガラスのエネルギー効率が平均2割上昇し、商業用建築物の場合は1割上昇する。こうした変化はいずれ、複層ガラスの需要を増加させ、日米両国のメーカーに利益をもたらす。また、この合意の結果として、 日本は多くの知名度の高い公共建設プロジェクトに米国製ガラスを使用した。

 しかし、依然として重要な目標が達成されていない。すなわち、日本の企業および流通業者が、米国製ガラスの高品質と低価格とを進んで認めているという事実があるにもかかわらず、日本の板ガラス市場における米国その他の外国のガラスメーカーのシェアは依然として微々たるものにすぎない。米国企業の報告によると、建設関連板ガラス市場における米国企業のシェアは、過去4年間伸びていない。日本の通商産業省は、米国が輸入ガラスの市場でトップの地位にあり、同期間に着実に市場シェアを伸ばしていると主張しているが、通商産業省のデータには、建設関連板ガラスだけでなく自動車用その他の特殊ガラス(液晶表示装置用ガラス等)の輸入が含まれている。米国の業界は、これらの建設関連以外の製品は全く別の流通システムを通して販売されており、この合意の原因となった諸問題とは関係がないことを指摘している。日本のメーカーの外国子会社も、日本の板ガラス市場に供給しており、通商産業省は、こうした日本企業の海外関連会社からの輸入も、外国企業の市場シェアの推定に含めている。日本企業の海外関連会社は、親会社の流通システムに特権的にアクセスできるため、こうした会社の対日売上高は、市場の開放性を正確に表すものではない。日本の板ガラス市場における外国企業のシェアは、合わせて約7%である。米国およびEUをはじめ、他のほとんどの主要工業国では、外資系企業の市場シェア(輸入および国内生産)が日本の水準の5倍以上となっている。  

 日本の板ガラスメーカーの国内流通業者に対する支配は、弱まる気配を見せず、むしろ強まっている形跡がある。メーカーは、日本の景気後退と、それによる金融市場の引き締めを利用して、大部分のガラス流通業者に対する資金面での支配を強化している。メーカーが自社の従業員を配置して流通を支配しているケースもいくつかある。また、一部の日本のメーカーは、流通業者に外国製ガラスの取り扱いをあきらめさせるために、攻撃的な価格戦略を採用しているようである。

 こうした活動に気付いた日本の当局者は、公取委が実施し1999年5月20日に発表された調査を引用し、日本の独禁法に違反する慣行はなかった、と述べている。しかし、公取委は、板ガラス市場における国内3社の支配的地位を指摘し、深刻な懸念となり得る多くの分野を挙げ、公取委が板ガラス産業の監視を継続する意図を表明した。1999年12月21日、公取委は、日本の自動車用ガラス協会および日本最大の板ガラスメーカーの子会社に対して正式の判断を下し、その他の3つの業界団体に対しても同様の行動について警告を発した。これらの団体は、加盟企業が自動車用の輸入ガラスを販売してはならないことを決定し、これに従わない加盟企業には供給を中断すると脅かして、この決定を強制した。

 「日本国政府及びアメリカ合衆国政府による板ガラスに関する措置」は1999年12月31日に失効した。米国と日本は、この分野に残る市場アクセス障壁に対処するために、2000年3月に政府間協議を行い、その後、同年春に政府・産業の合同会議を行う予定である。

紙・紙製品

 1992年4月、米国と日本は「日本における外国紙製品に対する市場アクセスを増大させる措置」に調印した。これは、日本の紙製品市場へのアクセスを大幅に拡大することを目標とする5カ年合意である。この合意で、日本政府は、企業が競争力のある外国製紙製品の輸入を増やすよう奨励し、透明性のある企業調達ガイドラインを導入し、日本市場の主要エンドユーザーに外国製の紙の使用を奨励し、さらに独占禁止法順守制度を導入することを約束した。日本はまた、市場に関する情報や低金利融資という形での、外国の紙メーカーに対する支援の提供を約束した。この合意は、1997年4月に失効した。

 1999年まで、日本の紙・板紙製品の輸入には、意味のある増加が見られず、日本の紙・板紙市場における輸入品のシェアは、依然として主要工業国の中で最も低い水準にある。米国のメーカーが挙げている主要な問題点は、日本における独禁法の執行が不充分であることと、排他的な商慣行の存在である。米国の交渉担当者は、強化されたイニシアティブの構造問題作業部会の下で、この分野に影響を及ぼす競争問題について話し合ってきた。同作業部会は、独禁法の執行および競争政策を取り扱っている。

消費者向け写真フィルム・印画紙

 世界第2位の規模のフィルム市場を持つ日本で、外国の写真フィルム・印画紙メーカーは、市場アクセスと販売を制限する各種の障害に直面している。これらの障害は、外国企業による日本の主要なフィルム流通経路へのアクセスを妨げている。

 USTRは、イーストマン・コダック社(コダック)の提訴を受けて広範な調査を実施した後、1996年6月、日本での消費者向け写真材料の販売・流通に関する日本政府の慣行が不当であると判断した。その調査は、日本政府が、米国製の消費者向け写真材料の対日輸出を妨げる市場構造を構築、支持、黙認したこと、そしてこうした市場構造の中で、これらの製品の対日輸出を阻害する制約的な商慣行が生じていることを明らかにした。

 これらの懸念事項に対処するため、米国は、日本政府の措置が関税・貿易一般協定(GATT)に反するとして、日本に対するWTOの紛争処理手続を開始した。この手続きに、EUとメキシコも第3者として加わった。

 WTOのフィルム問題に関するパネルは、1998年1月30日に最終報告を発表し、日本はGATTの義務に違反していないとの判断を示した。米国は、パネルの判定に強い失望を表明し、中間報告は、米国が提起した核心的な諸問題、中でも日本がその市場を保護するために取った数多くの措置の複合的な影響について触れていないと述べた。

 1998年2月3日、現政権は、日本への写真フィルム・印画紙輸入の開放性確保の努力に関して日本がWTOで正式に意見表明した内容が正しく実施されているかどうかを点検するため、省庁間監視・執行委員会を設立した。この監視・執行委員会は、日本の写真フィルム・印画紙市場を調査し、米国およびその他の外国フィルムメーカーと日本政府から入手した情報・データを評価した。同委員会は、半年に1度、報告を行うが、1999年6月に第2回の報告書を発表した。

 総じて、この報告書は、日本が1998年9月から1999年4月までの対象期間に、日本の写真フィルム・印画紙市場をより競争的にするために取った建設的な諸措置を歓迎している。例えば、公取委は、独禁法執行と競争政策促進の動きの1つとして、日本の写真感光材料工業会に対して、同工業会とその加盟企業が行っている生産・販売・在庫データの交換は独禁法違反になる可能性があるとして、そうした行為を中止するよう公に警告を発した。また、この報告対象期間中に公取委は、公取委による景品表示法適用の透明性を改善するため、具体的な変更を行った。これは、同法が小売における競争を制約するために不当に使われないようにするために役立つはずである。また流通に関しては、この報告書は、日本の流通システムの質と効率性を高めるための通商産業省の計画について述べている。

 こうした建設的な動きはあったものの、報告書は、日本がWTOに対して意見表明した内容が日本の市場に確実に反映されるようにするために日本が取るべき追加措置の概略を述べている。米国は引き続き、問題となる商慣行に関する報告を受けている。その例としては、富士フイルムの卸業者が、競合ブランドの写真フィルム・印画紙の販売を促進する小売業者に対して納品を中断したり、富士フィルムのみを販売することに同意した小売業者に限って低い卸売価格製品を提供したりすることが挙げられる。これらの申し立てには、公取委による追跡調査が必要である。こうした状況の中、強化されたイニシアティブの下で、米国は、日本が、独禁法の積極的な執行と競争政策の支持に必要な人員と予算を公取委に与える、競争政策の強力な枠組みを確立することを求めた。また、6月の報告書は、日本の流通システムをさらに開放し、大規模店舗の出店を抑制する慣行を禁止する上で、通商産業省が果たすことのできる重要な役割を指摘した。フィルムメーカーも含め外国企業にとっては、大規模店舗は主要な、拡大しつつある販路であるため、米国は、2000年6月に施行される大規模小売店舗立地法(大店立地法)に、大きな関心を寄せている。米国政府は、この新しい法制度が大規模店舗を出店する者にとって過度な負担とならないことを確保するため、引き続き日本と緊密に協力していく。

 委員会は、半年に1度、フィルム監視報告書を発行しているが、次回の報告は2000年春に行われる。委員会が分析中の予備データは、日本市場のこの分野には引き続きアクセス障壁があることを明らかにしている。1999年にコダックの委託で、日本の写真フィルム・印画紙市場の動向を評価するために行われた調査によると、調査対象となった日本の店舗の44%が、コダック製品を扱っていた。調査結果によると、コダック製品は、引き続き、ディスカウントストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストアといった新しいタイプの店舗で販売されていることが多く、またそうした店舗で最も競争的に販売されている例が多い。このことは、米国が強化されたイニシアティブ等に基づいて、独禁法執行、大店立地法の非差別的な施行、そして日本の流通経路のさらなる開放を進める日本の活発な取り組みを確保することの重要性を、さらに強調している。

 監視・執行委員会は、日本のフィルム市場への外国企業のアクセス、そして日本がWTOへの意見表明の内容に従ってこの市場を開放する取り組みを、引き続き綿密に点検している。

海運・貨物

 日本に寄港する米国の海運会社は、長年にわたって、制約的、非効率的、かつ差別的な港湾運送サービス制度に直面してきた。米国連邦海事委員会(FMC)は、広範な調査と審議の末、1997年2月、日本が不公正な港湾慣行を継続しているとの判断を下し、日本の海運会社に対して課徴金を課すことを決定した。日米両国が1997年4月に合意に達したため、FMCはこの決定の実施を延期した。この合意で、日本は外国海運会社に港湾運送事業免許を与えるとともに、港湾における荷役作業を割り振り、海運会社が船舶の運航に関わるすべての変更について事前承認を得ることを義務付ける事前協議制度を改革することを約束した。

 日本が1997年7月31日までにこうした改革を実行しなかったため、FMCは1997年9月4日、上記の課徴金を課した。日米両国は1997年10月、オルブライト国務長官と当時の斉藤駐米日本大使との書簡の交換を通じて合意に達した。この合意では、日本政府、外国船主、日本船主、および日本港運協会(日港協)が、事前協議制度の改善、およびその代替制度の確立の2点を約束した。運輸省も、外国海運会社の港湾運送事業免許の申請内容が、4月の合意で定められた要件を満たしていれば、申請を認可することに同意した。米国は、こうした行動が、日本の港湾慣行の改革に強固な基盤を提供するものと考える。制裁措置は、1997年11月13日に停止された。米国は、この合意の完全な実施を確保するため、引き続き進捗状況を積極的に監視している。

 規制撤廃の提言作成の任務を課されていた運輸省の港運小委員会は1999年6月、最終報告書を発表した。米国は、この報告に関して、特に需給調整要件の廃止をはじめとするいくつかの点を好ましく受けとめているが、(報告書が)埠頭における真の競争を促進していないこと、および新たな規制を追加していることに強い懸念を表明した。主な懸念事項には、人員配置の最低基準の引き上げ、そして海運会社による港湾労働者の年金・福利資金への「自主」拠出の要請などがある。この報告書は米国の期待通りのものではないが、米国は、運輸省が最終報告書に基づいて規制撤廃法案を起草・支持する取り組みを注意深く監視していく。さらに、米国は、日本が1997年のオルブライト・斉藤交換書簡で確約された内容を実現するよう、督促していく。

自動二輪車

 日本には、大型自動二輪車の使用に対する2つの規制があり、これが日本の大型自動二輪車市場を人為的に制限し、米国の輸出に悪影響を及ぼしている。これらの規制は、道路交通法に含まれているもので、自動車専用道路における2人乗り走行(乗客1人を乗せた走行)の禁止、および他の普通自動車の標準制限速度に比べて自動二輪車および軽自動車の制限速度が低く規定されていることである。米国は、1994年3月に初めて、日本に対して、これらの制約は不必要であり、むしろ高速道路の安全を損ねるものであるとの理由で、こうした負担の大きい制約を除去するよう訴えた。

 制限速度の問題については、交通の全体的な流れより速い、あるいは遅い速度で走行する車両は事故の危険性がより高いことが、多くの交通調査結果で示されている。従って、自動二輪車の制限速度を自動車より低く規定している現行法は、事故の危険性を高めている。1999年3月、日本はようやく、「自動車専用道路における軽自動車および自動二輪車の最高制限速度を時速100kmに引き上げることが適切であるかどうか」を調査することを決定した。米国は、この調査の完了後(2000年3月末までに完了の予定)、日本が制限速度の統一化に特に問題がないと判断した場合には、日本が、日本の自動車専用道路の制限速度統一化のための手続きをタイムリーに行うことを要請した。

 2人乗りの問題については、米国は1999年6月、日本の市場開放問題苦情処理推進本部(OTO)に嘆願書を提出し、自動車専用道路における自動二輪車の2人乗り禁止の解除を再び要求した。また、これを支持するために、米国は、1999年11月に行われたこの問題に関するOTOの聴問会で証言をし、証拠を提示した。この証拠は、自動車専用道路は通常の道路より安全であること、また乗客を乗せた自動二輪車は1人乗り走行の自動二輪車より安全実績がはるかに優れていることを示した。従って、現行の法律では、乗客を乗せた自動二輪車は、より安全性の低い非自動車専用道路を走らなければならないため、事故の危険性が高まる。OTOおよび日本政府は現在、米国の嘆願を検討中である。

半導体

 日米両政府が貿易問題への取り組みで前進した分野の1つが、半導体である。両政府および両国の半導体産業による長年の努力の結果、業界レベルの協力においても、市場アクセスにおいても、大きな前進が達成された。日本による外国製チップの購入は、ここ数年、一貫して全体の3割を超えている。1996年の半導体に関する2国間合意(日米両国政府間の半導体貿易に関する取り決め)が1999年7月31日に失効し、それに代わるものとして、米国、日本、韓国、および欧州委員会(EC)が、多国間の半導体共同声明を発表した。この新しい声明は、半導体の公正な開放された国際貿易の確保を意図したもので、政府間および政府・産業間の定期的な会合など、1996年の合意の主な要素を取り入れている。しかしながら、米国は、今後も四半期ごとに日本市場における外国製半導体のシェアを監視し、年に1度、商務省の「米国の産業・貿易展望」(U.S. Industry and Trade Outlook)に、外国製半導体の平均シェアを報告する。

鉄鋼

 米国の鉄鋼産業は、1998年に極めて大きな打撃を受けた。これは、日本をはじめとするアジアにおける鉄鋼需要が突然大幅に減少したために巨大な供給過剰が生じ、日本企業がその多くを米国市場に回したためである。1998年の米国市場への輸入は主として日本からのものであった。1999年の日本からの米国の鉄鋼輸入は1998年に比べ大幅に減少したが、今後同じ事態が繰り返されないようにするために、1998年の輸入急増の根本的な原因に対処する必要がある。

 1999年8月、大統領は、経済的に正当化できない生産能力を支持するさまざまな慣行に取り組むために、現政権が、日本を含む鉄鋼輸出国との2国間のイニシアティブに着手することを発表した。米国は1999年9月に、日本との対話を開始した。その目的は、両国の鉄鋼産業の状況を見直すこと、競争的な環境で市場に基づく貿易を促進すること、そして両国の鉄鋼産業に影響を及ぼす政策や多国間フォーラムによる世界的な過剰生産能力への考え得るアプローチについて意見を交換することである。

 米国は、この2国間の対話を利用して、特に日本の鉄鋼市場における競争と再編成を阻む可能性のある障害などの懸念事項を提起している。懸念事項には、日本における輸入競争が比較的少ないこと、日本の価格が比較的高いこと(公表データに基づく)、そして再編成や競争の拡大を同時に要求することなく、鉄鋼産業を継続的に支持するために、政府の政策や(事業革新法、産業再生法のような)法律が利用されていること、などがある。

 米国の鉄鋼メーカーは、日本の鉄鋼メーカーが反競争的慣行に関わっているのではないかとの懸念を、しばしば表明してる。日本の国内市場に関しては、日本の総合鉄鋼メーカー5社が、生産量、価格設定、および市場割当の目標を調整しており、また通商産業省もこの事実をすべて知っている、と言われている。加えて、日本の鉄鋼メーカーが、2国間鉄鋼貿易を規制するため、外国のメーカーと一連の取り決めを結んだとされている。さらに、米国は、大手総合鉄鋼メーカーが輸入を強く阻むやり方で鉄鋼流通経路を厳しく管理していることも懸念している。申し立てられているこれらの慣行は、過去30年間にわたって日本の大手5社の市場シェアが安定している事実を説明することができよう。米国は、日本政府当局者に対して、これらの申し立てられている活動に関する懸念を表明し、そうした活動に積極的かつ効果的に対処することを求めた。米国は引き続き、鉄鋼産業における反競争的な活動、市場アクセス障壁、あるいは市場を歪曲する貿易慣行にはどのようなものにも、積極的に対処していく。

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