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U.S. Policy Documents


「国防計画見直し」報告に関するステートメント


統合参謀本部議長
ヘンリー・H・シェルトン

はじめに 
 
 2001年の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)報告には、2つの困難な課題があった。第1に、QDRは、危険で変化しつつある安全保障環境の中で世界における米国の国益を擁護し、促進するための軍事力の短期的能力に関する重大な懸念に対処することだった。第2に、QDRは、将来の安全保障の課題に応えるように米軍を変革するという大統領の目標を実現する必要があった。QDRに盛り込まれている国防戦略と計画の提言は、関連する短期・中期・長期のリスクを均衡させながら、これらの2つの課題の達成に向けて大きく踏み出したものである。

 過去10年間、戦略環境に対応するために、米軍には多岐にわたる要求が課されてきた。組織と調達が縮小する一方で、任務と要求が増大してきたために、米軍の各部分に無理が生じ、その結果、戦略と戦力構成と資源の間に不均衡が生じてきた。このような状況の中で、2001年9月11日、米国の敵は、米国土に対し大規模な通常兵器以外の攻撃を実行する力のあることを証明した。米国の主権に対する非対称的な攻撃が現実のものになった。QDRは将来の国防要求に応えるための変革に広範な方向性を設定しているが、戦略と資源の間の微妙な均衡を維持する一層包括的な指針が必要になる。

QDRの評価

 QDR2001が描く国防戦略は、今後資源の裏付けがあれば、戦略環境における当面の課題と将来の課題に適切に対処していくであろうと私は考える。戦略目標は、予測できる将来において、米軍が多岐にわたる任務の遂行に必要な戦力を引き続き生み出していくであろうことを認識している。特筆すべきことは、QDRが、複数の地域において同時に起きる重大危機に対応し、敵または敵の作戦を打ち破る能力を求めていることである。私は、世界で起きる複数の危機に対応する信頼できる軍事力を維持することは、米国が世界の中で指導的役割を遂行するために絶対的に不可欠であると考える。

 QDRが明らかにした多岐にわたる軍事的な要求は、戦力規模と戦力構成を決める基礎になる。QDRによる提言は、総合戦力にとって最良の組織・要員・訓練・装備を決めるための出発点になる。戦力構成を見てみると、現在の戦力は、新国防戦略を中程度のリスクで遂行する力を有している。しかしながら、この初期評価を確認するためには、様々なシナリオに基づく戦闘分析をさらに十分に行う必要がある。

 何よりもまず第1に、持続可能な作戦テンポ(OPTEMPO)と要員テンポ(PERSTEMPO)で戦略要求を満たすために十分な兵力定数を維持する必要がある。そうでなければ、米国の最も重要な軍事上の財産である優れた人員を危険にさらすことになる。私は、中程度のリスクで新国防戦略を遂行できる兵力定数と戦力構成を維持することは重要な課題になると信じる。米軍は、QDRによる大幅な変革と「生活の質」改善のための優先事項、そして軍事作戦と維持、資本再構成、そして近代化というお互いに競合する要件の間で、2003年度予算から、限られた資源の均衡をはかる必要がある。特に懸念されるのは、急速に老朽化が進んでいる兵器システムである。われわれは、これまでに年間調達費を600億ドルの水準まで引き上げてきたが、一方で、現在の戦力構成を維持し、老朽化問題に対処するためには、1000億ドルから1100億ドルの支出が必要であるとの見方もある。この要求を満たすために現在の運用費の資源を充当することがあれば、短期的に、そしてやがては中期的に軍のリスクは増大する。

 QDRは、将来の課題に対処するために米国軍隊を変革するための優先順位を定め、主要な目標を明らかにしている。QDRは、新たな作戦概念と先進技術能力を要求し、そして合同による組織・実験・訓練にさらに力を注ぐことを求めている。しかしながら、将来の合同作戦面での大幅な改善を真に達成するためには、さらに多くのことが必要になる。第1に、国防総省全体にわたる変革のための戦略、合同の組織ビジョン、そして合同の変革指針が、軍の活動の指針・統合・歩調の調整に欠かすことができない。第2に、われわれは、計画・プログラム作成・予算・調達という、組織としての主要なプロセスを国防総省全体にわたり改革する必要がある。これら2つの要件は、相互依存の関係にある。これら2つを平行して進めていかなければ、真の進展はない。さらに、変革が行われている期間、われわれは、国家の要求を満たす兵力も必要である。このために、対テロ作戦を開始する今と同様に今後も、現在の兵力に引き続き依存していくことになる。われわれは、積極的な変革と実験が実際に平時と戦時の任務を遂行する戦力の短期・中期的な能力に及ぼす影響を認めて、計画に組み入れる必要がある。変革が進行中の部隊や、実験に関わる部隊の中には、要求される作戦時間内に危機に対応する余裕がない、または準備ができないところもあるだろう。このことは、変革の速度を緩めることを示唆するものではない。今日の要求が、将来への備えの必要性を抑えるようなことがあってはならない。

 QDRは、米国土の防衛が米国軍隊にとっての最優先事項であると述べている。このことは、9月11日に、痛みを伴って強化された。米国は、米国の領土、主権、国内の米国民そして重要なインフラを目標とした攻撃を抑止し、先制し、防衛すると同時に、こうした攻撃による影響とその他の国内緊急事態に対処していかなければならない。米国土の防衛には、すべての関連活動を統合するための責任の明確化に始まる包括的戦略が必要である。ブッシュ大統領による国土安全保障局の設置と同様な措置を、国防総省内部でも行っている。まず手始めに、国防総省の統合国土安全保障作業部会が、国土安全保障局の役割と国防総省の任務を明確にし、資源面への影響の検討を行う。さらなる分析と、国土安全保障局との交流が、米国におけるテロとの戦いのための、連邦・州・地方当局との連携強化に必要となる。こうした分析が、統一指揮計画に重要な変更をもたらすことになる。

 QDRのほかに、いくつかの分野でさらなる作業が必要である。最初に、戦略遂行に重要な予備軍構成部隊の役割に注目し、予備役と州兵の即応態勢・変革・民間雇用主からの支援、さらに兵力定数と戦力構成の基礎に関する結論を導き出すことになる。

 戦略的な機動力とその維持、米軍インフラの保守および再編成を含む後方支援能力は、引き続き当面の懸念事項である。すべての要件の包括的分析を終えて、資源の適切な優先順位を決める必要がある。戦略輸送に関しては、われわれは、最低でも、「2005年機動力要件研究」で求められている能力を積極的に備える必要がある。さらに、過度のインフラを削減する権限を求めていく中でさえも、米軍の任務遂行にとって不可欠な生活の質のための施設・設備の修復・近代化・改善を加速させる必要がある。こうした短期・中期・長期的な後方支援要求は、すべてのレベルのリスクに重要な意味を持っており、適切な注意を払う必要がある。

 人員は、引き続きわれわれの最も重要な資産である。QDRは、国防総省の人的資源システムの変革にとり良い出発点である。われわれは、現在高度に訓練された職業軍人と民間人の要員を擁しているが、将来必要とされる質の高い兵力の維持のために、医療、給与パリティ、住宅改善等の生活の質改善計画を支える資金が引き続き必要になる。兵力の補充と維持のための最良の方法を決めるためには、さらなる分析が必要である。

リスクの評価


 ダイナミック・コミットメントやポジティブ・マッチ等の戦争ゲームの分析方法によると、QDRが、戦略と戦力構成の不均衡を低減させ、その結果、新戦略を遂行する現兵力の短期リスクは中程度のものになることを示している。こうした評価には、米軍が異なる地域で同時に起こる2つの重大な危機に対応し、一方の敵に対して決定的な勝利をおさめ、もう一方の敵の作戦に打ち勝つという最も厳しいシナリオが含まれている。

 時間がたてば、QDRの完全に意味するところが明らかになるだろう。米国の世界における短期・中期的な国益を引き続き擁護・促進しながらも、米軍が変革した軍事力を展開する能力の評価は、米軍全体と米国各軍の変革指針の作成が進むにつれて、より正確なものになるだろう。最後に、戦力構成・予算・インフラへの影響は、米国各軍が2003年度予算編成と計画目標覚書を完成した段階でより明確になるだろう。

まとめ
米国各軍と各戦闘指令官および統合参謀本部は、QDRを戦略要件に基づくものにすることを確保するために、国防長官室と協力してきた。QDRは、現在から将来にかけて、米軍が従事していく方法に関するビジョンを示している。さらに、QDRは、2つの重要な面、つまり戦略と戦力構成の間で、また今日の要求と将来の要求の間で、均衡に向けて国防総省を動かす。この均衡を保つことは、米軍が引き続き現在および21世紀において優位を確保するために欠かすことができない。

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[注:本稿は、2001年9月30日に、米国国防総省が連邦議会に提出した「4年ごとの国防計画見直し」報告(Qeadrennial Defense Review Report)の一部]

 

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