「日本の写真フィルム・印画紙市場へのアクセスについて」 日本政府がWTOで行なった事実表明の履行に関する報告書 米国通商代表部・商務省 1998年8月19日 この報告書は、米国政府の諸機関で構成される「フィルム監視・執行委員会」の第 1回報告書である。同委員会は1998年2月3日、写真フィルム・印画紙の輸入に対す る日本市場の開放度に関して日本政府が世界貿易機関(WTO)で行った事実表明が、 どの程度履行されているかを点検する目的で設置された。 同委員会の調査によって、日本政府は、写真フィルム・印画紙分野で市場アクセス を改善し、競争を促進する必要があるという米国政府の見解が確認された。スーパー マーケット、デパート、コンビニエンスストアやその他の写真専門店ではない「非伝 統的な」店舗では、外国製フィルムの取扱高がここ3年間で倍増した。こうした店舗 は写真材料市場の中でも比較的オープンで、競争が活発な分野であり、その理由の1 つには、米国政府が国際貿易上取った措置の結果、この問題に焦点があてられたこと がある。一方、売上高で日本のフィルム市場の約半分を占める伝統的な写真専門店で は、外国製フィルムの取扱高がやや減少した。WTOでの事実表明を完全に履行する ために、日本政府は、中・小規模店舗に有利な小売制度の撤廃や、写真フィルム・印 画紙分野の取引を不当に制限する商慣行の改善といった、意味のある追加措置を講じ、 輸入品に対して流通システムをオープンにすべきである。 情報源 この報告書は、日本の写真フィルム・印画紙市場に関する資料と情報を丹念に集め、 分析したものである。監視・執行委員会は1998年春に、日本全国の写真材料卸売業者、 小売業者、ラボ業者合わせて250社にアンケートを送付した。アンケートでは、フィ ルム市場の競争を促進するための日本政府の措置や、問題になりそうな商慣行につい て特に尋ねた。東京の米国大使館は、ワシントンの監視・執行委員会の委員と協力し、 個々の事業者に聞取り調査をすることによって、アンケート調査のフォローアップを 行なった。米国政府によるアンケート調査やフォローアップ調査に加えて、監視・執 行委員会は、コダックが1995年の写真市場調査をフォローアップするかたちで行なっ た、日本の小売店舗のフィルム取扱高と価格についての調査を点検した。監視・執行 委員会はまた、1998年6月に発表された公正取引委員会(公取委)による日本の写真 フィルム・印画紙分野に関するフォローアップ調査や、公取委や通商産業省(通産省) その他の政府機関から得た情報も考慮した。他の外国フィルム製造業者、日本の写真 業界紙、日米両政府の他の機関、業界からもさらに資料や情報を入手した。 最近の傾向に対する評価 監視・執行委員会が分析した結果、外国製フィルムの取扱高と価格は、市場の主要 な2つの分野で明らかに異なることがわかった。伝統的な写真専門店では、外国製フ ィルムの取扱高が1995年以降わずかに減少した。一方、「非伝統的な」店舗では取扱 高が倍増した。資料はまた、非伝統的な店舗において、コダックと富士フイルムの価 格差が非常に大きい事実を明らかにした。つまり、これらの店舗では、消費者がコダ ックのフィルムを安い値段で入手している。一方で、伝統的な店舗ではコダックと富 士フイルムの価格差は比較的小さい。こうした結果は、非伝統的な店舗が伝統的な店 舗に比べて、はるかにオープンであることを示している。 この分析を基に米国政府は、日本政府が、WTOで行った以下のような事実表明を 確実に履行するため、さらに措置を講じる必要があると結論づける。それらは、 ・日本の流通システムはオープンであり、日本政府は、写真フィルム・印画紙の輸入 を促進している ・日本政府は大型店舗の出店を阻むような慣行を禁じている ・日本政府は流通経路における取引を不当に制限する商慣行に対して措置を講じてい る (日本政府がWTOで行なった事実表明の履行状況の詳細については、添付資料を参 照) WTOパネルに対する日本政府の事実表明にもかかわらず、通産省は、外国企業の 日本の写真フィルム・印画紙市場へのアクセスを改善するような措置をほとんど講じ ていない。日本政府は、外国企業の日本市場へのアクセスを改善するために、リベー トや取引条件の設定などの商慣行をいかに利用するかを説明した、通産省の「商慣行 改善指針」を執行するための積極的な措置を講じると表明したが、同指針については 事実上、何らの措置も取っていない。 さらに、日本の流通システムの構造的変化によって、非伝統的な店舗の重要性が高 まっている一方で、通産省は大型店より中小小売店に有利な規制制度を維持し続けて いる。これは、日本政府のWTOに対する事実表明に全く反している。日本政府は、 大型店の開店や増設を阻むような慣行を禁じると表明したにもかかわらず、小売業に 関する法律や規制はいまだに外国企業にとって重要な販売経路である非伝統的な店舗 の進出を実質的に阻んでいる。 伝統的店舗と非伝統的店舗のアクセス度の違いは、米国政府が日本の卸売業者と小 売業者から受け取った、富士フイルムとその特約店による潜在的に問題がありそうな 商慣行についての報告と一致している。公取委は、1997年に日本の写真業界の実態調 査を終えたのち、富士フイルムとその特約店に対し、リベートや積立保証金、富士フ イルムによる販売奨励金の支給などの問題のある商慣行を取止めるよう指導した。公 取委のフォローアップ調査によると、富士フイルムとその特約店はこの指導に従って 上記の慣行を改めた。しかし、米国大使館が行った聞取り調査やコダックが実施した 調査、外国フィルム製造業者から入手した情報によると、通常、仕入先の圧力に耐え 得るほど力がない小規模小売業者は、依然として富士フイルムからの圧力やその他の 排他的商慣行に対して懸念を抱いていることがわかった。こうした懸念は、特に外国 製フィルム・印画紙の販売促進への報復措置として、現像・焼付サービスやフィルム の配達の遅延・中止といった慣行に集中した。また、公正取引協議会が、小売業者に 対して写真製品の安売り広告を止めるよう指示した件についても懸念が表明された。 最近の傾向を生み出した要因 写真フィルム・印画紙の分野で明らかな最近の傾向は、いくつかの重要な要因によ る。外国フィルム製造業者が日本市場で活発なマーケティング努力を続けたことが、 非伝統的店舗で外国製フィルムの取扱高が増えた要因の1つとしてあげられる。例え ばコダックは、1998年の長野冬季オリンピックのスポンサーになったことで、そのブ ランドイメージと認識度を高めた。コダックはまた、日本の有力なおもちゃ製造業者 であるバンダイと、レンズ付きフィルムの販売にあたって共同ブランド契約を結ぶな ど、日本企業と新しい提携関係を結んできた。しかし、こうした努力も以下にあげる 要素なしでは、限られた影響しかなかったかもしれない。 ・一般に小売業において起っている、写真フィルム・印画紙の流通における構造的変 化 -- こうした変化によって、長年の間、外国企業を排除する傾向にあった伝統的 な流通システムは徐々に崩れつつある。消費者が大規模小売店舗や他の非伝統的店 舗を利用するようになるつれ、伝統的写真専門店のマーケットシェアは、1995年の 50%から現在の約46%にまで減少した。 ・富士フイルムとその特約店がいくつかの商慣行を見直す契機となった、米国政府に よる国際貿易上の措置 -- 業界の調査や日本の写真業界紙は、WTOで日米間のフ ィルム問題が取り上げられている過程で、富士フイルムが、米国政府が問題として 取り上げたいくつかの慣行を改めたり、あるいは除去した事実を明らかにしている。 一方、WTOの場で懸念が表明されたが故に着手された公取委の写真フィルム・印 画紙に関する実態調査は、富士フイルムとその流通業者に、競争を不当に制限する 慣行を取止めるよう、さらなる圧力を加えた。 ・写真フィルム・印画紙分野における、競争を不当に制限する排他的商慣行を改善す るために日本政府が取った措置 -- 今年初め、公取委は、コダックがその顧客であ る小売店に代わって指摘した、富士フイルムの報復的措置にまつわる問題を処理し た。公取委はまた、全日本写真材料商組合連合会による現像・焼付サービスの価格 競争の制限を、引き続き放任しないようである。 さらに必要な措置 今回の分析で、外国企業の市場アクセスが、市場の中でも非伝統的で比較的オープ ンな分野で改善されていることが分かったが、WTOでの事実表明を完全に履行する ためには、日本政府は写真フィルム・印画紙市場を開放し、競争を不当に制限する商 慣行を除去するためのさらなる措置を講じる必要がある。 米国政府は特に、通産省がその商慣行についての指針をより広範に知らしめ、卸売 業者と小売業者に遵守させるための一層の努力をするよう求める。また公取委に対し ても、排他的取引契約や抱合せ販売などの、独占禁止法に違反するような流通分野で の特定の商慣行を記述した1991年の「流通・取引慣行に関する独禁法上の指針」の普 及をはかることを求める。 さらに通産省は写真フィルム・印画紙市場の流通経路で起っている構造的変化を促 進する措置を取るべきである。われわれは、日本政府が、外国小売業者と消費財製造 業者に対する主要な市場アクセス障壁である大規模小売店舗法を廃止する動きを歓迎 する。しかし同時に、大店法に取って代わる新しい措置や、都市計画法などの小売業 に影響を与える他の措置が、地元の利益に利用され、大規模小売業者によってもたら される競争を不当に制限することがないよう、通産省が努力することを強く求める。 加えて、通産省が、現存する排他的な流通構造を維持し、外国企業のアクセスを阻み、 日本の消費者に不利益を与えてきた、中小企業に有利な小売制度を撤廃するよう求め る。 また日本政府は、写真フィルム・印画紙分野での反競争的商慣行の疑いがある行為 を調査するために、公取委の予算と人員を増やすべきである。写真小売業者が富士フ イルムとその流通業者による報復を恐れて公取委にこうした行為を報告したがらない 可能性を考えると、公取委はより積極的な調査方法を考慮すべきである。日本の企業 と外国フィルム製造業者に聞取り調査した結果、さらに実態調査が進められれば、競 争相手の製品・サービスに乗り換えた業者に対する、現像・焼付サービスの中止など の富士フイルムの報復行為や、小売業者がフィルム製品の安売り広告を止めるように 指示されるなどの、競争阻害に関わる問題が明るみになる可能性が示唆された。公取 委の調査努力を支援するため、監視・執行委員会は、各企業が公取委の調査または執 行が必要と思われる行為を公取委に報告するように強く奨励し、米国政府も公取委に 報告した業者が、結果として商売上報復されないように、公取委に対し適切な措置を 取るように強く求めて行く。 米国政府は、こうした監視・執行努力や、写真フィルム・印画紙市場の開放と規制 撤廃を進める他の方策が、より広範な規制撤廃・市場開放のための措置に則っている と信じている。そして、こうした措置こそが日本経済の回復に不可欠なのである。写 真フィルム・印画紙分野で外国企業が直面する市場アクセス障壁は、日本経済の中で も多くの分野で存在する。閉鎖的な流通システム、過剰規制、排他的な商慣行といっ た障壁は、外国との競争を阻むばかりか、日本経済の成長をも阻害している。 米国政府の継続的な監視努力 米国政府は引き続き、写真フィルム・印画紙市場における日本政府の措置を積極的 に監視し、その市場を開放するよう求めていく。こうした日本市場の監視が、市場ア クセスや競争、特に非伝統的な流通経路における競争をいくらか改善したとは思うが、 日本政府がWTOで行なった事実表明を完全に履行するためには、より多くの措置を 十分に取る必要がある。監視・執行委員会は今後も定期的に情報や資料を集め、日本 政府がWTOで行なった事実表明に則った措置を十分に履行しているかどうかを点検 し、半期に一度、その結果を報告していく。第2回点検報告書は1999年初めに作成さ れる。 *** 日本政府のWTOでの事実表明に関する履行状況評価 1998年8月19日 米国政府は1998年2月3日、日本の輸入写真材料についての新しい市場開放イニシ アチブを発表した。このイニシアチブの下で米国政府は、政府の諸機関で構成される 「監視・執行委員会」を設置し、輸入写真フィルム・印画紙に対して市場を開放する ための努力について、昨年日本がWTOパネルに対して行なった公式の事実表明の履 行状況を点検した。WTOパネルでの事実表明で日本政府は、外国企業のアクセス改 善を促進し、競争に対する不当な制限を取り締まる政策を講じると述べた。同委員会 は、日本の事実表明のいくつかの項目の履行状況について、以下のように評価した。 流通システムの開放性 日本政府はWTOに対して、日本の流通システムは開かれており、日本政府は特に、 輸入品の日本市場へのアクセスを改善するために1990年に通産省が発表した「商慣行 改善指針」を精力的に執行することによって、流通分野の近代化を促進していると述 べた。同指針は特に、市場の透明性を高め国際貿易における障害を除去するために、 日本企業に対し以下の商慣行を改善するよう指導している。それらは、リベート、返 品、希望小売価格、派遣店員、取引条件、流通分野におけるサービス、流通の系列化、 多頻度小口配送、情報システムの促進、である。しかし通産省は、1990年の発表以降、 この指針についての情報を伝える努力をしていないばかりか、指針実行のフォローア ップさえしていない。最近米国政府が行なった日本の写真フィルム業界のアンケート 調査によると、ほとんどの卸売業者や小売業者は指針について何も知らず、通産省か ら指針実行について何の指示も受けていない。 通産省は、日本の流通システムを開放するために重要な措置を全く取っていない。 逆に通産省は、依然として伝統的な写真専門店の市場支配力を保護し、大型店やコン ビニエンスストアのような非伝統的な小売業者の営業活動を制限するような措置を取 り続けている。例えば通産省は、1997年12月15日発行の白書の中で、中小小売業者が 増大する大型店の購買力にどうすれば対抗できるかといった点について提言を与えて いる。(通産省はまた、この問題について将来さらに新しい指針を発表する予定があ ることを示唆している)この白書で通産省は特に、卸売業者に大型のチェーン店との 取引の比率を下げ、中小小売業者との取引の比率を上げることを奨励している。 さらに通産省は米国政府に対し、通産省は商慣行に関する問題を扱う権限はないと 繰り返し述べたにもかかわらず、今年4月、中小小売商業振興法に則り、コンビニエ ンスストアの取引条件(リベートなど)について調査する旨を明らかにした。同法の 下で通産省が介入することは、コンビニエンスストアに不要な制限を課す結果を招き かねず、結局、伝統的な写真専門店に不当に利益を与える可能性がある。通産省によ るこうした措置は、日本市場にアクセスするために成長する非伝統的流通経路に大き く依存している輸入品を阻むことになる。 大規模小売店舗の開店に関する慣行 日本政府はWTOパネルでの事実表明で、大型店舗の開店を阻害するような慣行を 禁じていると述べた。1998年5月27日、日本政府は、西暦2000年4月を以って大規模 小売店舗法(大店法)を廃止することを決定した。米国政府は、大規模小売店舗の開 店・営業・増設の大きな障害だった同法の廃止を歓迎した。ある日本政府高官は、大 店法がWTOパネルによって「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」違反と判 定される恐れが非常に高いことへの懸念から廃止が決まったことを認めている。 大店法廃止にともなって、日本政府は新たに大規模小売店舗立地法(大店立地法) を制定し、需要と供給を調整するメカニズムの使用を禁止した。新法は、地方自治体 に対し大型店舗の開店や増設に関する権限を与えている。新法はまた、地方自治体は、 中央政府が策定する指針に規定されている環境要因(交通渋滞、騒音など)に限定し て、透明性の高い基準を適用するよう義務づけている。 米国政府は日本政府に対し、新しく制定される大店立地法についての強い懸念を表 明した。特に、利害関係者がガイドラインの素案を検討しコメントできるようにする こと、中央政府が地方自治体による新法の施行を厳重に監視していく必要性、大型店 舗の開店や増設を予定する小売業者からの苦情の処理を助ける必要性についての懸念 を表明した。 米国政府はまた、最近改正された都市計画法によって新たなゾーニングの権限を与 えられた地方自治体が、この権限を使って大規模小売店舗の進出を阻むのではないか と深く憂慮している。改正都市計画法の下で地方自治体は、中小小売店舗だけに限定 する「中小小売店舗地区」などの新たな「特別用途地区」を設定できるようになって いる。 米国政府は日本政府に対し、地方自治体が新たな措置を濫用して、現行の大店法の 下で大型店舗がおかれているのと同様の(あるいはそれよりも悪い)環境を作り上げ ようとしたり、大型小売店舗に不当な制限を課したり、中小小売店舗を有利に扱った りしないことを保証するよう強く求める。米国政府はこの問題についても、今後とも 厳密に監視していく。 競争政策の執行 日本政府はWTOパネルに対し、製造業者による流通経路の支配を防ぐためにフィ ルム業界を積極的に監視し、競争を促進し、また供給業者が写真フィルム・印画紙分 野の取引や流通経路を不当に制限する商慣行を行使することを防ぐよう独占禁止法 (独禁法)を執行していくことを表明した。 監視・執行努力 公正取引委員会(公取委)は今年、数回にわたって監視・執行措置を取った。まず 6月には、WTOの場で懸念が表明されたが故に着手された1997年の日本の写真フィ ルム・印画紙に関する実態調査のフォローアップを行い、短い調査報告書を発表した。 このフォローアップ調査で公取委は、富士フイルムは積立補償金制度や卸業者に対す るリベートなどの、1997年の調査で指摘された問題のある慣行を是正したと述べた。 公取委はまた、ミニラボ機が著しく低い価格で販売されたり、ミニラボ機の販売にカ ラー印画紙の購入が義務づけられるといった、ミニラボ機の販売に関する慣行を是正 するための措置も取られたと報告している。 しかし米国政府は、写真材料分野に関する自らの調査の過程で、こうした問題の多 い慣行がいまだに存在することを示す具体的な例について幾つかの報告を受けた。従 って米国政府は、公取委はこれらの慣行についてさらに監視を強める必要があると確 信する。例えば米国政府は、富士フイルムが同社の現像処理サービス店にミニラボ機 を著しく低い価格で販売しているといるとの報告を受けた。同様に、公取委のフォロ ーアップ調査では、公取委は地方自治体に対して、フィルムの調達においては特定の ブランドを指定しないよう指導したとしているが、米国政府が入手した情報によると、 神奈川県を含むいくつかの地方自治体では依然として入札で富士フイルムを指定して いることがわかった。 このフォローアップ調査に加えて公取委は、1998年、コダックによる具体的申立て に応じて執行措置を取った。その申立てとは、ある日本の小売業者がミニラボ機と印 画紙を外国の供給業者のものに変更した際、富士フイルムは報復措置として同社が引 き続き取り扱っていた特殊な現像処理の収集・配達サービスを止めたというものであ る。この事例を知らされた公取委は、富士フイルムに警告を与え、同社の報復措置を 止めさせた。 しかしながら米国政府は、引き続き、富士フイルムに挑戦する小売業者や卸売業者 に対する富士フイルムの圧力や報復措置に関する報告を受けている。これらの報告の 大半は伝統的写真専門店からのもので、これらの専門店は営業力がないために、富士 フイルムの圧力にほとんど抵抗できない。米国政府に寄せられた富士フイルムの行為 には、具体的には以下のようなものがある。@配達を遅らせるA現像焼付サービスや フィルムの配達を取止めるB小売業者に対しフィルム製品の安売り広告を止めるよう 命じるC富士フイルムのラボ機の使用を印画紙またはフィルムの供給の条件とする - - 多くの場合、ラボ機は極端に低い価格(あるいは無料)で販売されるD富士フイル ムのラボ機に変更しようとしない小売業者に対し、近所に富士フイルム系列の店舗を 開くといって脅かすE市場を支配し価格を維持するために、卸売業者による取引きを 制限したりして、小売業者への富士フイルム製品の供給量を制限するF富士フイルム の特約店が協力して圧力をかけて、小売業者を財政上困難な状況に陥れ、富士フイル ムの要求に従わざるを得ないようにする。 競争の促進 日本政府はWTOに対して、独禁法執行努力の一環として、公取委の「流通・取引 慣行に関する独禁法上の指針」を積極的に運用していくと述べた。このガイドライン は、排他的取引契約や抱き合わせ販売などの、独禁法に違反し、競争を妨げるような 商慣行の具体的な種類を説明している。米国政府が日本の写真材料業界を調査したと ころ、公取委の流通ガイドラインは広く知られていないことが分かった。公取委は、 このガイドラインを広めるためにさらなる措置を取るべきである。 価格競争制限の防止 日本政府はWTOパネルに対し、小売価格の競争を制限する目的で不当景品及び不 当表示防止法(景品表示法)を執行しないと述べた。フィルムの現像やプリント料金 の宣伝に対して厳しいガイドラインを規定することによって、景品表示法を使って小 売価格競争を制限しようとする全日本写真材料商組合連合会(全連)の圧力に公取委 が抵抗していることを米国政府は支持する。米国政府はこの問題について、今後とも 厳密に監視していく。 公取委は昨年、景品表示法適用にあたっての透明性を高めるために、ある程度の措 置を取った。例えば、同法の適用をより理解してもらうためのトレーニングセミナー を開催した。しかしながら公取委と都道府県は、相変わらず景品表示法を根本的に不 透明な形で適用し続けている。1997年、公取委は459件の警告を発し、各警告につい てその理由を説明する情報を多少は公表してはいるものの、それらの情報は措置に至 った根拠を完全に評価するには不十分である。景品表示法はまた、47都道府県全てに 幅広い執行権限を与えている。1997年、都道府県は801件の警告を発したが(これは 公取委の措置件数のほぼ2倍に近い)、都道府県は警告の理由について何らの形でも 公表あるいは説明をしていない。 日本政府はまた、WTOパネルに対して、公正取引協議会は非会員を脅かしたり何 らかの措置を取ったりすることはないし、公正競争規約は写真フィルム・印画紙製品 には適用されていないと述べた。しかし、写真機類小売業公正取引協議会(公取協) が規約違反として取った措置は、1995年の37件から1996年の64件とほぼ倍増した。し かも、1996年には、公取協は非会員に対しても少なくとも43件の措置を取っている。 この事実から、公正競争規約は非会員を拘束しないという日本政府の説明には疑いを 持たざるを得ない。公取協の規制施行に関する報告が不透明であることから、米国政 府は、公正競争規約が写真フィルム・印画紙製品に適用されていないとは認められな い。 ***