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日米国会議員連盟朝食会における

ウィリアム・S・コーエン米国防長官講演

2000年9月22日

ホテル・オークラ(東京)

 日米国会議員連盟会長である中山太郎博士より、私の長年にわたる日米関係への貢献について大変暖かいお言葉をいただき感謝申し上げる。中山博士は、湾岸戦争当時の優れた外務大臣として、また日米国会議員連盟の重要な指導者として著名な方である。

 私はまず、本日この朝食会に出席させていただいたこと、またこれだけ多くの国会議員の方々が出席されていることに対し、特に感謝を申し上げたい。私の24年間にわたる議員生活でも、これほど多くの議員が出席した朝食会には出た記憶がない。したがって、私は、米国の同僚議員よりも皆さんの間での方が人気が高いことは明らかである。私は、特に、新しい会期の始まるこの時期の議員生活がいかに多忙であるかを理解している。その中でこれだけ多くの方々が集まられたことは、日米関係の強固さを表すとともに、この同盟関係におけるわれわれの役割に対する皆さんの支援、そしてそれがアジア・太平洋地域の安全保障にいかに大きな役割を実際に果たしているかを表すものであると信じる。

 私はまた、この機会に、トーマス・フォーリー大使に感謝の意を表したい。大使とは、私が議員生活を始めた1972年以降、ともに議員を務めてきた。私が1年生議員であったその当時、すでに下院の優れた指導者だったフォーリー大使は、その後、下院議長を務められた。また大使は、国内問題のみならず国際問題についても、極めて賢明で知識と洞察力を備えた人物として常に尊敬されていた。私は、フォーリー大使が日本において、わが国を代表し、日本の皆様と緊密に協力しながら果たしてきたすばらしい業績に対して、特に感謝の意を表したい。

 議員連盟会員ならびにご来賓の皆様。先ほどお話があった通り、今回の私の旅は国防長官として10回目のアジア・太平洋地域の訪問になる。「地中海は過去の海であり、大西洋は現在の海であり、太平洋は未来の海である」という、世紀の変わり目を迎えた当時の国務長官の言葉を思い起こす。

 今から100年以上前のこの言葉がいかに予言的なものであったかは、極めて明らかである。しかしながら、あいまいな憶測は、もはや憶測ではなくなっている。未来は間違いなくここにある。その未来は今であり、アジア・太平洋地域は世界で最も活気に満ちた、極めて重要な地域である。過去においても未来においても米国の対アジア戦略の要石である日本で、今回の私の旅が終わりを迎えるのは、誠にふさわしいことだと思う。日米同盟とわれわれの政策の成功は、地域安全保障の強化に貢献してきた。

 私は、この8日間にこの地域全体を訪れる機会を得たが、その間、明確で極めて一貫したメッセージを耳にしてきた。安定、経済成長、公正な貿易、社会の発展、そして地域の協力への強い願いがある。その政治的論争の方向と協力の意欲は、過去4年間で大きく改善されてきたと思う。しかしながら、安全保障環境においては、現在はまだ非常に大きな変化の時期である。本日、私は、多少の時間をいただき、米国がこの新たな環境の下で、どのようにして安定化を推進する役割を果たそうとしているかについてお話ししたい。

 アジア・太平洋地域全般におけるわれわれの目標は、安全保障の諸要因および、私の言う「好循環」を着実に強化することである。米軍のプレゼンスが安全保障環境を作り出し、それが安定につながり、安定が投資につながり、投資が成長と繁栄につながり、成長と繁栄が民主主義につながり、民主主義がさらなる安定を作り出す。これが、米国が安全保障政策によって完成させようとしている好循環である。

 米軍のプレゼンスとそれが促進する安定は、日本から始まる。われわれが日本に期待するのは、日米の友好関係と強力な経済的つながりのためだけでなく、日本が果たす指導的な役割のためでもある。われわれが、日本との同盟を引き続き米国の地域戦略の最も重要な要素とすることにコミットしている理由はそこにある。

 今から4年前、われわれはこの関係を、アジアのダイナミックな安全保障環境に、より対応したものにする努力を強化し始めた。例えばわれわれは、「防衛協力のための指針(ガイドライン)」の改正を行った。この新しいガイドラインは、われわれが人道的活動や平和維持、その他日本の安全保障に影響を及ぼす有事などにおける2国間協力に役立つ。われわれは、戦域ミサイル防衛等の極めて重要な分野における協力を強化している。つい先週もニューヨークで、米国と日本は、ここ日本における米軍のプレゼンスを支える資金の裏付けとなる5年間の協定である特別措置協定に署名した。もちろん、この協定には国会の承認が必要であるが、私はこれが党派を超えて広く支持されることを願っている。なぜならこれは、2カ国だけの問題ではなく、日本の地域安定化への重要な貢献となるからである。

 日米両国は、このニューヨークでの会合で、「環境原則に関する共同発表」を行った。この声明は、合意された環境基準に沿って米国が在日米軍基地を運営するコミットメントを再確認し、潜在的な問題に対処するにあたり米国が日本政府と協力する際に従う手続を述べている。

 さらに重要な点として私が皆さんに確約したいのは、米軍人は日本での勤務を誇りにしているという点である。彼らは、日本を守り地域の安定を拡大するために、日本にいる同僚および自衛隊の同僚たちと協力することを望んでいる。われわれはそのことを理解している。われわれはまた、米軍の活動や訓練日程が日本国民の負担となり得ることを理解している。問題を最小限に抑えるべく、できる限りの努力をしている。しかし、われわれはまた、皆さんの支援と理解を必要としている。

 実弾射撃演習であれ夜間離着陸訓練であれ、米軍の訓練は日米同盟の信頼性にとって極めて重要である。前にもお話ししたことがあるので、お聞きになられた方もあると思うが、昨年のコソボ紛争における空爆は、戦史における有数の、というより最も成功した空からの軍事作戦であったことは、ご記憶にあるだろう。この作戦で米軍は延べ3万8000回出撃したが、われわれが失った飛行機はわずか2機、パイロットの死亡はゼロであった。これは、わが国がパイロットに対して高度な訓練の実施を求めているからである。

 したがって、必要な時、危機が発生した時、そして安全保障が危機に瀕した時には、パイロットとその支援要員は自らの使命を遂行する準備ができていなければならない。訓練は、確かに負担となり得る。また、基地周辺住民に対して何らかの制約を課すことにもなり得る。しかし、日本の自衛隊あるいは米国の軍隊が、可能な限り最高の訓練を行わずに、息子たちや娘たちを危険な場所へ送り出すことは無責任なことである。私は、これらの問題が時折発生し、皆さんの選挙区で問題となっていることを理解している。今後も、われわれが皆さんのニーズに敏感であり続け、また、この同盟維持のためにわれわれが必要とする安全保障上の要件に対する皆さんの理解を得られるような方法で、こうした問題の解決が続けられることを願っている。

 強力な日米パートナーシップは、アジアにおける米国のより広い関与の基盤を築いている。私は、古代ギリシャの訓戒に、「神は、破滅させようとする者を、まず予言者とする」というのがあることをよく理解している。しかし、私が予言者となっても大きなリスクはないと思う。この場合、アジア地域における米国の関与の前提および理論的根拠は、基本的に政治的関与、軍事的関与、経済的関与の3つの要因から成る。これは、予測可能な未来においても変わることはない。

 政治的関与については、米国は太平洋国家であるという純然たる事実がある。この地域における米国の国益は大きく、それはますます拡大している。米国の国益から出た実際的な結果の1つは明らかであり、それは、中国との平和的かつ建設的な関与である。中国は国際社会の責任ある一員となる必要がある。皆さんもご存じと思うが、最近、米国議会上院は中国との貿易関係を恒久的なものにする法案を可決した。この実現には長い期間を要したが、法案は圧倒的な大差で可決された。私は、これが、今後の対中関係の緊張緩和や地域の長期的安定と繁栄に貢献するという点で、われわれに利益がもたらされるものと信じる。

 これに加え、米中の軍事関係も軌道に戻っていることをお伝えしなければならない。1年前のベオグラードにおける中国大使館誤爆事件の結果、この1年間は、われわれにとって長く厳しいものであった。過去1年間、非難の応酬がなされたことは、皆さんの知るところである。この7月、私は北京を訪問し、江沢民国家主席をはじめ、中国国防相および中国のすべての指導者と会談した。中国側も、両国関係を正常化させることを希望していることは明らかであり、彼らは、私の訪問が可能な限り暖かく実り多いものとなるよう努力を惜しまなかった。私は北京と上海を訪問し、遅浩田国防相に来年早々の訪米を要請した。また、1998年の前回の訪中時には、海上での衝突防止を目的とした軍海事協議協定に署名した。1カ月前には、米海軍の軍艦が中国まで航海し、現在は中国の軍艦が米国を訪問している。

 中国について語るとき、私は2つの根本的に誤った認識を払拭することが重要であると考える。米国が、アジア・太平洋地域の他国すべてと協力しながら、何とか中国を封じ込めようとしているとの指摘がある。ご存知のように、中国を封じ込めることは不可能であり、私は、すべての人がそれを理解すべきであると考える。封じ込めはわれわれの政策ではない。わが国の目標は、中国が発展し、より開放される過程で、同国に関与することであり、中国が地域の安定に建設的な役割を果たすよう奨励することである。

 中国に対する関与の基盤は、民主主義という共通の価値と安全保障上の共通の利害の上に成り立つ堅固な日米関係であることは、いくら強調してもしすぎることはない。私は、この点をできる限り明確にしておきたい。訪中の際、私は多くの中国の人々、中国国防科学アカデミーや人民解放軍の指導者に対し、このことを明言した。われわれの安全保障関係の基盤は日本である。米国が対中関係の改善に努めても、そのことが日本との関係の弱体化につながることは決してない。これはゼロサム・ゲームではない。対中関係を強化する一方で、日本との関係を弱めるというものではなく、むしろその逆で、日米関係は強化される必要があり、これは米国が中国との強固な関係を築く上でも米国に影響力をもたらすことになる。そしてそれは、あらゆる国にとっても利益となる。

 アジア・太平洋地域における米国の政治的関与の中で、現在わが国が抱えるもう1つの課題はインドネシアである。インドネシアは、戦略的に重要な国である。世界で4番目に多い人口を抱え、最大のイスラム教国家である。また、北東アジア経済の要となる海上輸送路にまたがって位置している。インドネシアは、この2年間で、民主化に大きく踏み出したが、現在もなお、政治、経済、そして安全保障面で重大な問題に直面している。

 私のインドネシア訪問には、日本から2人の優秀なジャーナリストが同行したため、私がインドネシアで果たした役割については日本でも報道されている。私は、ジャカルタで同国の指導者層と会い、インドネシアにおける民主主義のルールへの移行を実行するワヒド大統領の決意に対する支持を表明した。われわれは、インドネシアに変化と改革および経済的繁栄をもたらすための大統領の努力を支持するが、彼を待ち受ける問題は数多く残されている。

 そうした中でも、われわれが最も危惧しているのは、東ティモール情勢である。そこでは、現役あるいは退役軍人一派に支持されていると思われる西ティモールからの民兵組織が、東ティモール民兵組織と紛争を起こしている。東ティモール人への人道援助を行うために現地に入る国連職員に対し、インドネシア政府が身の安全を保証したが、それ以後もこうした紛争が継続することは許されない。ご存じのように、その後、3人の職員が殺害され、死体は切断され火もつけられた。この事件を受けて、国連安全保障理事会は、こうした行為を非難し、インドネシア政府に対し民兵組織の武装解除と解体、さらに彼らを裁判にかけることを求める決議を採択した。

 私は、インドネシア政府に対し、そのメッセージを伝えた。それは、同国が、そうした措置を講ずることなく、民兵組織を引き続き抑制せずに放置すれば、米国がインドネシアの軍事交流を停止するだけでなく、世界銀行の声明にあるように、インドネシアが国際金融支援を受けられない可能性が非常に高くなるなどの影響が大いにありうる、との内容である。したがって、インドネシアが民主主義に向けた自国の行動に対する国際社会からの善意を維持し強化することが重要である。そしてそのためには、同国政府の強力な指導力が必要となる。

 ここで、わが国の軍事姿勢について、簡単に触れたい。その中核となる前提ならびに意図は、米軍が引き続き地域を安定化させる力となることであり、大規模な軍隊を有する複数の国家の存在や地域紛争と対立の歴史があるため、米国のそうしたプレゼンスが求められている、ということである。日本だけでなく朝鮮半島における米軍のプレゼンスの継続が極めて重要なのは、そのためである。

 日本の前に、私は韓国を訪問し、金大中大統領と会談した。私は、南北朝鮮和解の実現に向けての同大統領の努力を讃えた。金大統領の勇気とビジョンは大きな賞賛に値する。一方で、大統領は慎重に進もうとしており、また、一部和解が実現しても、あるいは南北再統一が実現したとしても、引き続き米軍が朝鮮半島に駐留しなければならないことを十分に認識している。大統領の話では、北朝鮮の金正日総書記もこれに同意している。それは、米国がプレゼンスを削減あるいは撤退した場合、別の国家がその空白を埋めようとするからである。それはどの国家であろうか。この地域で新たな覇権を握ろうと突如としてさまざまな国家が競い始めることになる。それは、おそらく軍備拡大競争、緊張の増大、そして紛争の可能性をも意味する。

 したがって、金大中大統領は、北朝鮮との平和的統一を強く求めている一方で、同時にわれわれが強力な軍事力を持つ必要があることも理解している。金大統領が過去数回にわたり、韓国国民に対し、朝鮮半島の統一が仮に達成されたとしても、その後も米国が韓国に留まることが極めて重要であることを強調しているのはそのためである。

 では、その他の地域にも目を向けてみたい。私は数カ月前にオーストラリアを訪問した。幸いなことに、オリンピックの始まる前だったため、現在ほど混雑していなかった。今週初めのシンガポール、タイ、フィリピン訪問は、偶然にも私にとって波乱の多い旅となった。というのは、フィリピン政府と、ホロ島に捉えられた外国人の人質救出を慎重に行う必要性についての話し合いを行ったからである。そして、その夜、人質救出を行うことが発表され、印象深い夜となった。

 私が訪問した国々は、すべて米国のプレゼンスの継続を望んでいた。シンガポールでは、チャンギ海軍基地に大規模な埠頭が建設されており、米航空母艦が寄港できるようになる。リー・クアンユー上級相は、米航空母艦が可能な限り頻繁に寄港することを望んでいる。それは、米軍のプレゼンスがこの地域のすべての国々に対し、米軍は撤退しないこと、また米国は受け入れ国が希望する水準の前方展開体制にコミットしているとのメッセージを送ることになるためである。

 米国は、各国の許可を得て、駐留している。歓迎されないところへは行かない。しかし、幸いなことに、この地域の国々の指導者は、われわれが領土を求めているのではないこと、誰かを征服しようとしているのではないことを理解している。むしろ、米国は安定した環境を創出しようとしている。それは、私が先に申し上げた「好循環」のことである。すなわち、安定と安全が存在するところには投資が流入する。投資が流入すれば繁栄の機会が生まれる。そして、繁栄によって安全と民主主義がさらに促進される。不安定が発生すると、その瞬間に投資は流出してしまう。そして、それにともないあらゆる社会問題、すなわち景気低迷、減少する資源を奪い合う競争、そして救済を約束する多様な政治グループが生まれる。

 現在、安定の強化推進に貢献する多くの機関が存在している。このうちのいくつかについて、簡単に触れたい。ASEAN地域フォーラムは、私がこれまで述べてきたような活動を推進する機関である。そして、私が今回の旅で強調してきたことは、われわれが、日本、フィリピン、シンガポール、タイ、そして韓国との2国間関係を強化する中で、できる限り多国間でも訓練をすることが重要であると考えていることである。

 われわれは、東ティモールのようなに事態に、将来直面することを余儀なくされる可能性がある。東ティモールでは、フィリピンが、オーストラリアやシンガポールなどの国と協力して国連の活動を遂行するために積極的な役割を果たした。どこかの国を脅かす人道上の災害が発生した場合、支援を要請される可能性がある。そのようなときに、この種の平和活動に関して何らかの計画があり、さらに共同訓練も行っていれば有益であると私は考えている。これは、明日にでも実現するというものではないが、いずれ実現する。世界はますます小さくなっており、われわれはいつかは協力関係の強化を計らなければならなくなる。

 実際、日本の皆さんが世界を小さくしている。ここ日本で開発されている技術が、世界を小さくしている。技術が地球をミニチュア化している。私たちはもはや、海を海と見なしてはいない。それは単なる池のような存在である。世界の国々も、遠くの外国というより、ほとんど隣接した国になっている。すべてが技術によって圧縮され、世界はますます小さくなり、ますます速く動いている。皆さんはその一部であり、したがってこうした傾向が進むにつれて、またアルビン・トフラーのいうフューチャー・ショックの時代にあって、われわれが2国間での協力とともに多国間協力を進めることが、ますます必要となり、求められるようになると考える。

 結論を申し上げたい。私に割当てられた時間を超えてしまったようだ。私は、良い時期と悪い時期の両方に日本を訪問してきたということを申し上げておきたい。私は、景気の良し悪しにかかわらず、常に定期的に日本を訪れ、米国がこの2国間関係を重視していることを伝えたいと望んできた。これは米国にとって重要なことである。そして、皆さんも、この関係が日本にとって大変重要であると今でも感じておられることを望んでいる。新しい太平洋の世紀の夜明けにおける継続的なリーダーシップの下、米国は、平和と繁栄の新たな世紀の創出の一翼を担う用意がある太平洋地域のパートナーとともに、太平洋国家として存在し続けていく。ご清聴を感謝する

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